コロナ対策をもアート作品に、満開の桜のアートを体験できる『NAKED FLOWERS 2021 —桜— 世界遺産・二条城』
2021年3月19日(金)より、世界遺産・京都の二条城にて夜間限定体感型アート展『NAKED FLOWERS 2021ー桜ー世界遺産・二条城』がスタートした。昨年春、3月20日(金)から約1ヶ月にわたり開催予定だった『FLOWERS BY NAKED 2020ー桜ー世界遺産・二条城』は、期間中に新型コロナウイルスの感染が拡大し、開催わずか1週間で中止に。夏には規模を縮小して『二条城 x ネイキッド 夏季特別ライトアップ2020』が行われたが、本展は1年前のリベンジも兼ねた開催と言ってもよいだろう。今年もネイキッド(NAKED,INC.)のアートが、二条城の国宝や重要文化財の歴史的建造物、約50品種300本の桜とコラボレーションする。昨年展示された作品に新作を加え、ソーシャルディスタンスやアルコール除菌の行為自体をもアートにし、安心安全を確保しつつ、「ネイキッドのアート x 二条城の夜桜」が楽しめる内容となっている。また昨年同様、来場が難しい人に向けて、VRでバーチャルお花見が楽しめる新企画も登場した。本展の見所は、ネイキッド代表でアーティストの村松亮太郎氏が昨年発表した、平和への祈りがネットワークでつながるアート作品『Breath / Bless Project』。シンガポールや東京で展示されていたが、今回は華道家元池坊の池坊専好氏とのコラボバージョンで、京都初展示となる。開催に先立ち、去る3月18日(木)、ネイキッド代表の村松亮太郎氏と、華道家元池坊の池坊専好氏によるオープニングセレモニーが行われた。その模様と『NAKED FLOWERS 2021ー桜ー』の様子をレポートしよう。
分断された世界をつなぐ“祈りのアート”
セレモニーは、台所前庭の『Breath / Bless Project』で行われた。本展の概要説明のあと、村松亮太郎氏と池坊専好氏がそれぞれ挨拶。
オープニングセレモニーに登壇した、NAKED, INC. INC.代表 村松亮太郎氏と、華道家元池坊 池坊専好氏
まずは村松氏。「去年(展覧会が)始まったのはいいのですが、新型コロナウイルスがちょうど増えていくところで、1週間で中止になってしまったので、今回リベンジというか。1年間、皆さん本当にタフな時間を過ごされたと思うんですね。今年こそはお花見できるように、良い時間を楽しんでいただけるようにと、万全の準備で臨んでおります」と本展への意気込みを語った。
続いて、ウィズコロナでニューノーマル(新しい生活様式)の時代になったことに触れ、「除菌やソーシャルディスタンスをアート作品にしたのが、本展の特徴です。除菌アートは「ネイキッド花つくばい」と申しまして、手をかざしていただくと、アートの花が咲くと同時に除菌されている。「やらねばならない」ではなく、「やりたくなる」アートになっています。「ディスタンス提灯」は、可愛らしい提灯を持って歩いていただくんですけども、提灯に映像が仕込まれていて、床に光のアートが映るんです。その光のアートがちょうどソーシャルディスタンスくらいの大きさになっているので、人のアートを踏まないでいると、自然にソーシャルディスタンスがとれる。それ以外にも、お家でもイベントが楽しめるようにVRという形をご用意しています」と、コロナ対策のアート作品の楽しみ方を語った。
NAKED ,INC. 村松氏
そして、今回の目玉作品は「Breath / Bless Project」。これは世界中のネットワークを介して繋がる、インタラクティブアート。仕組みについて村松氏は、「たんぽぽの綿毛をふっと吹くと、種子がネットワークを介してバーッと飛んで、世界中に存在している「Breath / Bless Project」の作品に連動して綺麗な花を咲かせるんです。今回で言うと東京タワー。今回はコロナなので、吹く代わりに携帯をかざしていただくのですが、ここ京都から桜の種子が飛んでいって、東京タワーで京都の県花・しだれ桜が咲く。逆に、東京タワーの「Breath / Bless Project」で同じことをしてもらうと、東京からこの二条城に桜が飛んできて、また別の桜が咲くという仕組みです。このコロナ禍で、世界の分断が進んでいることが個人的にすごく気になるところでしたが、平和を祈る気持ちは世界中みな一緒であろうということで、ボーダーを越えて「平和の花」を他の場所に咲かせるというテーマになっております。この歴史ある京都から桜が飛んでいくことに、すごく意味があると思います」と述べた。
『Dandelion』にスマホをかざす村松氏
さらに「僕はこのネットワークそのものがアートだと思っています。もちろん参加して花を咲かせてくれる人もアートを作り出している1人です。そして、このたんぽぽを他のアーティストの方が作っても面白いんじゃないかということで、特に二条城でやるのであれば、やはり専好さんに平和のたんぽぽをデザインしていただきたいということで、今回は池坊バージョンをやらせていただきました。この作品はここでしか存在しない、たった1つのアートになっています。専好さんのアートと、我々の「Breath / Bless Project」が融合した作品として、この世界遺産・二条城から世界に発信される。もちろんそれ以外にも唐門のプロジェクションマッピングや、桜のライトアップ、いろいろ用意していますので、二条城をぐるりと一周して楽しんでいただけたらと思います」と、挨拶を締めた。
木、そして様々な色の花、全てが命の証。
続いて、池坊専好氏は「今年『NAKED FLOWERS 2021 —桜—』とコラボレーションさせていただいたことを本当にありがたく思っております。そしてこのような状況の中で開催することができ、とても感慨深いものがございます。ネイキッドさんとはこれまでもご一緒させていただきましたけれども、今回はコロナという状況を受けて、平和への祈りということで、わたくしが常日頃から実践しております、生け花の精神を造形に込めました。誰もが閉塞感を感じた昨年から今まで、そのような中でも草木は必ず芽を出し、成長し、花を咲かせ、そして実り、また役目を終えて大地に帰り、また次の春への準備をしている。そんな草木の姿に、本当に大きな力と希望を感じました。その力強さと希望を、生花という形で表現したいと思いました」と述べた。
華道家元池坊 池坊 専好氏
そして、「ネイキッドさんの繰り広げられる現代的な世界観と、伝統文化の生け花は、一見相反しているように思われます。けれども、もともと生け花は、医学も技術も発展しなかった頃、人が困難に出会った時、自分では克服できない何かに晒された時、そのような中でもぐんぐんと生き続け、変わり続ける草木に、「こうであってほしい、こうありたい」という願いや希望を込めて生けたのが始まりと言われています。まさに今日の私たちも、昔の人が願いや祈りを込めた状況と変わらない難しさの中に置かれているのではないでしょうか。今回は木、そして様々な色の花を用いました。どれもが命の証です。そこに希望を見出し、早く平穏になってほしいと願う、誰かの幸せを祈る、健康を願う、そんな1人1人の心の温かさや深い気持ち、思いやりがまさにネットワークになって全世界に広がり、遠く離れた誰かを支え、癒し、励ましていく。この作品が、人が繋がりながら生きるアートになれば幸いです」と、作品についての思いを静かに、力強く語った。フォトセッションを挟み、セレモニーは閉幕。ここからは内覧会のレポートをお届けしよう。
『NAKED花つくばい』で除菌
NAKED花つくばい
会場の入り口となる東大手門では、コロナ禍で当たり前になった、手指のアルコール消毒をネイキッドがアートに変身させた。「NAKED花つくばい」は、日本文化の一つである、茶室に入る前に手を清めるための蹲(つくばい)をモチーフにした作品。手をかざすと、アルコールが噴射されると同時に、美しい桜の花びらが手のひらを舞い、アロマの香りが漂ってきた。ミストに含まれたアロマの良い香りと共に、回遊はスタートする。
『NAKEDディスタンス提灯 桜Ver.』でソーシャルディスタンス対策
東南隅櫓前テントでNAKEDディスタンス提灯を無料貸し出ししている
NAKEDディスタンス提灯
東南隅櫓前のテントでは、「NAKEDディスタンス提灯 桜Ver.」が無料で貸し出されている。足元に桜の花びらを型どったピンクの光が灯る。この提灯を持つことで、自分自身も光の演出に加わることができ、しかも光の輪でソーシャルディスタンスを保つことができる。清流園エリアでは、ディスタンス提灯と本物の桜が呼応するインタラクティブ演出も楽しめるため、ぜひ手に取って回ろう。
村松亮太郎 x レスリー・キーによる「NAKED BIG BOOK」
東南隅櫓前『NAKED BIG BOOK』
提灯を持って右手に目をやると見えてくるのは大きな本の形のモニュメント。東南隅櫓前には、アーティスト村松亮太郎氏と写真家レスリー・キーによるコラボレーション作品「NAKED BIG BOOK」が展示されている。レスリー・キーの切り取る鮮やかな写真を、村松氏が動的に表現。非常にパワフルで華やかな作品だ。背後に構える重要文化財・東南隅櫓前の厳かな雰囲気と現代アートが混ざり合う瞬間を目撃して、順路を進める。
春の訪れを感じるプロジェクションマッピング「立春」
重要文化財 唐門『立春』
重要文化財 唐門『立春』
重要文化財の唐門には、ダイナミックなプロジェクションマッピングが施されている。壮大な建築物の壁から門、全てに桜や蝶が舞い踊り、春の訪れを告げるカラフルで演出には圧巻の一言だ。
桜に出会うまでの道が、ピンク色に染まる
南門〜桜の園までの道『桜灯りのみち』
南門から、桜の木が密集する桜の園までの『桜灯りのみち』は桜色にライトアップされている。等間隔に置かれた『NAKED FLOWERS 2021ー桜ー』オリジナルのライトも雰囲気をグッと盛り上げてくれる。たまたまこの日は道の先を見上げると綺麗な三日月が夜空にポンと浮かんでいた。
魅惑的な桜のライトアップ
桜の園『ライトアップ』
桜灯りのみちを進むと、本物の桜の木が密集する桜の園にたどり着く。ただでさえ美しい夜桜を、夜ならではのライトアップで彩り、さらに魅惑的な表情を引き出す。桜が満開になる頃に訪れると、想像以上の景色が見られること間違いなし。なお、『NAKED INC PLAY!アプリ』をダウンロードし、入場時に配布されたマーカーを読み取るとARの桜が目の前に現れ、いつでも満開の桜を楽しむことができる。(AR対応の桜は緑の園にもあり!)
雄大な景色の移ろいを目の幅いっぱいに感じる『Colors of Spring』
内堀『Colors of Spring』
内掘では、お堀の壁全体を使ったプロジェクションマッピング「Colors of Spring」が目を喜ばせる。桜が咲いて鳥が飛び立ち、たんぽぽの綿毛が舞い、青い蝶が群れをなして横切り、強風で桜吹雪が起こり雨が降る、という雄大な景色の移り変わりを感じることができる。より映像に没入できるBGMにも注目だ。
音と光の演出「春の灯(はるのひ)」
香雲亭『春の灯』
香雲亭では「春の灯(はるのひ)」と名付けられた音と光の演出を目撃できる。音楽に合わせて変わるライトの色や、池に映り込む香雲亭や庭園の様子は、昼間の景色とは違う表情が見ものだ。また、ここではアロマの演出もあり、花の香りに包まれながら鑑賞することができる。
幻想的な夜桜のライトアップに思わず見とれる
清流園『ライトアップ』
所定の場所にディスタンス提灯を置くと……?
すでに桜が開花していた清流園では、幻想的なライトアップが行われている。生命力あふれる美しい桜の木を見ていると、どこか異世界に入り込んだような不思議な感覚を味わうことができる。また、ディスタンス提灯を所定の場所に置くと、ライトアップされた桜の木が呼応するインタラクティブな演出も体験できる。
東京と京都をつなぐ「Breath / Bless Project」
台所前庭『Breath / Bless Projet Dandelion』
そして台所前庭には、本展の目玉作品、アーティスト村松氏と池坊専好氏のコラボレーション「Breath / Bless Project」が座す。昨年東京とシンガポールで同時発表した、世界中に祈りを飛ばす参加型のアート作品だ。美しい生け花とネットワークで繋がった近代的なモニターが相まって、異彩の存在感を放っていた。
蝶に設置されたカメラにスマホをかざす
本来であれば、たんぽぽの綿毛を飛ばすように「Dandelion」に「Breath(息)」を吹きかけるのだが、コロナのため演出方法が変更に。会場に掲示されているQRコードを読み込み、表示されたマーカーを銀色の蝶にかざすと、高らかな音とともに綿毛と花が作品全体に咲き誇る(アプリのダウンロードは必要ない)。東京タワーのリアルタイム映像も繋がっており、東京タワーで誰かが同じ動作をすると、場所を超えて京都にも花が咲くという仕組み。ぜひ、東京へ、世界へ、平和の祈りを届けてみてはいかがだろうか。
オリジナルグッズの販売も
花みくじ
台所前庭の物販テントでは、『NAKED FLOWERS』のオリジナルグッズも販売している。紙で作られた色とりどりの花びらにおみくじがついている「花みくじ」や、「NAKED花つくばい」と「春の灯(はるのひ)」で使われていたアロマオイルとミスト、ドライフラワー、マスキングテープ、手ぬぐい、そしてVRキットなど、商品の種類も盛りだくさん。自宅でも『NAKED FLOWERS 2021 —桜— 世界遺産・二条城』の余韻を楽しむことができる。
オリジナルグッズの販売
『NAKED FLOWERS 2021 —桜— 世界遺産・二条城』は2021年3月19日(金)~4月11日(日)まで、世界遺産・二条城にて開催。詳しくはHPをチェックしよう。
取材・文・写真=ERI KUBOTA
イベント情報
会場 : 元離宮二条城
開催期間 : 2021年3月19日(金)~2021年4月11日(日)
開催時間 : 18:00~22:00 (最終入場21:00)
料金(税込) :
【月~木】大人(中学生以上) 1,400円、小人(小学生) 800円
VR&ゴーグル付/大人(中学生以上) 2,000円、小人(小学生) 1,400円
【金・土・日】大人(中学生以上) 1,800円、小人(小学生) 1,000円
VR&ゴーグル付/大人(中学生以上) 2,400円、小人(小学生) 1,600円
【レイト(金・土・日 入場20:00〜)】大人(中学生以上) 1,600円、小人(小学生) 800円
VR&ゴーグル付/大人(中学生以上) 2,200円、小人(小学生) 1,400円
※未就学児無料
※全て入場日指定の入場券です。
※各、障害者割引有(身体障害者手帳、療育手帳、戦傷病者手帳、被爆者健康手帳、精神障害者保健福祉手帳等をお持ちの方、本人及び介護者1名までが対象。入城改札口にて上記証明書を提示ください。)
URL:https://flowers.naked.works/
お問い合わせ : 元離宮⼆条城事務所 075-841-0096(8:45-17:00)
※会期中17:00時以降のお問い合わせは、050-1743-3167(17:00-22:00)までお願いいたします。
主催 : 京都市、NAKED FLOWERS 2021 -桜- 世界遺産・二条城 製作委員会
特別協力 : 華道家元池坊
協力 : @aroma
企画・演出・制作 : NAKED, INC.