ナイーブ、パッション、ジェントル、3組のペアが織りなす2021年版『The Last 5 Years』舞台挨拶&ゲネプロレポート

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2021.6.30
『The Last 5 Years』舞台挨拶より

『The Last 5 Years』舞台挨拶より

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すれ違う二人の男女の5年間を、斬新な構成で描き出すオフ・ブロードウェイミュージカル『The Last 5 Years』が、2021年6月28日(月)に東京・オルタナティブシアターにて開幕した。

本作は、『Songs for a New World』や『パレード』で知られるジェイソン・ロバート・ブラウンが作詞・作曲・脚本を手掛けた人気作。2001年にシカゴで初演され、その後オフ・ブロードウェイに進出。世界中で繰り返し上演され、2014年には映画化もされている。今回の日本公演では、演出家の小林香が2021年版として新たな演出を試みる。出演するのは、木村達成×村川絵梨水田航生×昆夏美平間壮一×花乃まりあという、それぞれ異なる魅力を持つ3組のペアだ。ここでは6月27日(日)に行われた舞台挨拶と、水田航生×昆夏美ペアのゲネプロの模様をレポートする。

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

鮮やかなブルーを基調とした舞台セットがシンプルながらも美しい。同時に、物語の舞台となるニューヨークの都会的な空気も感じさせる。

静かにピアノの前奏が始まると、舞台上に一人の女性が現れる。舞台中央のソファに腰掛けるのは、最愛の人との別れに胸を痛めるキャシーだ。彼女の悲痛な想いが、流れるような美しいメロディに乗って響き渡る。ブルーのセットも相まって、まるで深い海の底にいるかのようだ。

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

一転、アップテンポで陽気なメロディに変わったかと思うと、エネルギーに満ち溢れた一人の青年が勢いよく舞台上に現れる。キャシーと出会い、新たな恋の始まりに胸を踊らせるジェイミーだ。舞台上を縦横無尽に駆け回り、キラキラと輝く瞳で愛を歌い上げる。

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

物語を通して、キャシーとジェイミーの視線が交わることはほとんどない。彼らは同じ板の上にいながら、異なる場所、異なる時間、異なる時の流れの中に存在している。駆け出しの女優キャシーは、ジェイミーとの別れから出会いまで。成功の階段を駆け上る小説家のジェイミーは、キャシーとの出会いから別れまで。
舞台上で二人が視線を交わすのは、真逆の時間軸が交差するほんの一瞬のみだ。観客はそれぞれの役者が演じる姿を通して、見えない相手の動き、表情、言葉を想像することになる。一見、一人芝居のようでもあるのだが、この芝居は紛れもなく二人の役者によって成り立っている。なんて演劇的なのだろう。

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

異なる時間軸を歩む二人の物語を彩るのは、ジェイソン・ロバート・ブラウンによる難解ながらも美しくメロディアスな楽曲の数々だ。1曲の中でしっかりとストーリーが展開し、登場人物の心情の変化が読み取れる。本公演ではオーケストラが舞台後方に控えており、シーンによってセットが動いてその姿が見えたり見えなかったりと、オーケストラそのものも作品の中にうまく取り込まれていた。

計14曲をほとんどソロで歌いこなし、舞台上で凝縮された5年間を演じる昆と水田は、それぞれキャシーとジェイミーのまっすぐで情熱的な生き方を体現していた。

ジェイソンのブロードウェイデビュー作でもある『Songs for a New World』の出演経験を持つ昆は、芯のある力強い声で難曲を伸び伸びと歌い上げた。オーディションシーンなどで披露するキュートなダンスもまた魅力的だ。1曲1曲、時を遡るキャシーの難しい心情の変化を丁寧に見せてくれた。

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

その長い手足を活かしたダンスと、時折見せる無邪気な笑顔が目を引く水田。時が経つにつれて大人びていくジェイミーの立ち居振る舞いや、わずかな表情の変化にドキッとさせられる。シーン毎に違った顔を覗かせ、一人の少年から大人の男性へと成長していくジェイミーを体当たりな演技で表現した。

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

『The Last 5 Years』舞台写真(水田航生×昆夏美ペアのゲネプロより)

一体、二人はどこですれ違ってしまったのだろうか。20代のキャシーとジェイミーの5年間に起きた気持ちと関係性の変化が、人生の難しさと切なさ、そして同時に素晴らしさを教えてくれる。演劇的要素の強い、想像力が掻き立てられるミュージカル作品に仕上がっていた。

【水田航生×昆夏美】オフ・ブロードウェイミュージカル「The Last 5 Years」ゲネプロ映像


ゲネプロの直前にはステージ上で舞台挨拶が行われ、キャスト6名と演出の小林が登壇した。

『The Last 5 Years』舞台挨拶より

『The Last 5 Years』舞台挨拶より

ーーまずは小林さんからご挨拶と作品の魅力についてお願いします。

小林:タイトルの通り、ある男女の5年間を描いた物語となっています。時が逆行する女性と、時間通りに進む男性の5年間が交錯するという演劇構造が、非常に話題になったオフ・ブロードウェイ作品です。ジェイソン・ロバート・ブラウンという作詞・作曲家が作り、彼の人生を反映していると言われており、彼の作った素晴らしい音楽、全14曲で彩られています。20年前に作られた作品を今、新たに上演する意味を考えまして、2021年版として取り組みました。この作品がみなさまのお手元に届く日を、とても楽しみに稽古をしておりました。

演出家 小林香

演出家 小林香

ーーそれでは、木村さんから順にキャストのみなさまご挨拶をお願いします。

木村:この作品のお話をいただいたとき、やらないという考えが自分の頭の中に浮かばなくて、今の自分ができる全てをこの作品に懸けたいなと思いました。今こうやって舞台稽古まで終わったんですけども、この作品に出会えてよかったなと心から思っています。そして、相手が(村川)絵梨さんで本当に良かったなと思います。たくさんの方に観ていただきたいです。

村川:私は11年前にこの作品をやらせていただいていて、すごく思い入れが強かった作品です。いつかまだできたら嬉しいなと思っていた作品が、11年越しにこういった形で叶うことになって。でも全く違う新しい『The Last 5 Years』になっていて、私も挑戦することだらけで、毎日本当に刺激と楽しみと、そんな風に過ごしていました。シンプルに、「観に来てください!」という気持ちで今ここにいます。

水田:只今、水田・昆はですね、この後に行われるゲネプロのことで頭が一杯で、気もそぞろでございます(笑)。難解な楽曲や作品に挑戦できることを幸せに思っていますし、今だからこそだせるパワーというものがこの作品にはとてもあって、それを2021年バージョンのキャストでできるということを本当に幸せに思っております。たくさんの方にこの演目がお届けできるように、一公演一公演、誠意を持って舞台に立ちたいと思います。

:水田くんが言ったように、今日これからゲネで明日は初日を迎えるという現実に、非常に緊張といろんな想いがあるんですけども、それだけこの作品をやらせていただくことにやりがいを感じています。元々この作品が大好きで、ジェイソン・ロバート・ブラウンが作る楽曲も大好きだったので、参加させていただいて本当に嬉しく思います。今、まだ必死にもがいている途中なんですけども、3組とも全然違う個性で、全くの別物という形でお客様にお届けできると思うので、「できれば3組とも観たらいかがでしょうか!」という感じです(笑)。頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

平間:今回この作品で一番楽しみにしていたことはですね、小林さんと一緒に作品を作れるということだったんです。すごく感覚的に稽古をしていくことしか自分はできないんですね。その感覚的なところを、言葉じゃない何かで小林さんと繋がり合えているように感じていて。今回も作品についてどうこうというよりは、宇宙の話とかをしながらここまでこれたので、本当に楽しく作品を作れたなと思います。そして、「感覚的な人と一緒にいることが多かったから、気持ちすごいわかります」という感じでついてきてくださる花乃ちゃんと一緒なので、本番が楽しみです。頑張ります。

花乃:たくさんの方に愛されているこの作品が、小林さんの新演出によって新たな魅力を伴っているなというように感じています。本当に難曲揃いで、私にとっては宝塚を卒業して初めてのラブストーリーということで、本当に挑戦が多いんですけれども、俳優として、こんなチャレンジができるのはありがたいことだなと思っております。5年間という時間に人生の煌めきがギュッと詰まった素敵な作品です。平間さんと一緒に頑張っていきたいと思います。

(左から)木村達成、村川絵梨

(左から)木村達成、村川絵梨

ーーここからは各ペアに質問をしていきます。木村・村川ペア、相手役の印象をそれぞれ教えてください。

木村:本当に頼れるパートナーだなと思っていますね。作品の軸を作ってくださり、僕はもう、彼女の周りを走り回るだけで本当にうまくいくという。ジェイミーにとっても木村達成にとっても、本当に欠かせない存在というか、いてほしい人ですね。この作品の中で1曲だけ目を合わせて愛を誓うシーンがあるんですけど、初めて目を合わせたときの彼女の衣裳が本当に素敵で。よくあるじゃないですか、奥さんがドレスを着た姿を見て泣いてしまうような。そんな感覚を初めて体感したというか、ビビッときましたね。という印象でございます。って、(村川さん)全然話に入ってきてくれないじゃん(笑)。これクロストークするくだりじゃないの?(笑)恥っず!(笑)

ーーそれを受け、村川さんいかがですか?

村川:頼りになるって言ってくれてるけど、こっちが頼りにしています。(木村さんは)すごくミュージカルの経験も多いし、勉強になることばっかりで。シュッとしてるんですけど、日に日に奇想天外なところもあって(笑)、楽しく過ごしています。喋るとギャップがあっておもしろい方ですよね、という印象です。

(左から)水田航生、昆夏美

(左から)水田航生、昆夏美

ーー水田・昆ペアは、このペアならではの見どころがありましたら教えてください。

水田:何ですかねえ〜。難しいね。

:“エネルギッシュ”って(小林)香さん言ってくれましたよね。“パッション”かな? 自分たちで言うの恥ずかしいね(笑)。

水田:逆に他の方に聞いていただきたい(笑)。でも、そのエネルギッシュなお互いのパワーが呼応し合っている感じっていうのは、とても尊い時間だなというのは思います。それは魅力なのかな、と。

(左から)平間壮一、花乃まりあ

(左から)平間壮一、花乃まりあ

ーー平間・花乃ペアは稽古を積んだ今、どんなペアになりましたか?

平間:小林さんから言っていただいたのは、見守っていきたくなる二人と言われるようなペアになったなということ。その感じは自分たちでもしています。劇場に入って他のペアを観させていただいて、形でいうと四角(木村×村川ペア)・三角(水田×昆ペア)・丸(平間×花乃ペア)みたいな感じ。なんとなくわかります? そういう感じのペアになったなと思います。

花乃:ジェイミーが結果的に浮気をしちゃうんですけど、平間さんは「許してあげちゃおうかな」「ヨシヨシしてあげようかな」と思ってしまうような女心に刺さるジェイミーを演じていらっしゃるので、そういう愛情深さが平間さんがお話しされた感じに繋がっているんだと思います。

ーー各ペアの話を受けて、小林さんいかがでしょうか。それぞれの魅力は?

小林:今、花乃さんは浮気を許容する発言をされましたけど、新婚さんですよね?

花乃:そうです。でもそれとこれとは別問題で……(笑)。

小林:あ、別問題なんですね。でも、確かに四角・三角・丸っていうのはわかりますね。言葉にすると、木村×村川ペアは非常にナイーブです。水田×昆ペアがもうとにかくパッション。そして平間×花乃ペアがジェントル。そんな3組なんじゃないかなと思います。稽古も別々にやりましたもんね。なので、3回同じことを繰り返しながら稽古をしてきて、お互いの稽古を全く見ない状況でやってきました。なので、自ずと個性を拾い上げさせていただき、それぞれの役者の意見も聞きながらできたと思います。全く同じテキストなんですけど、全然違う作品に仕上がっていると思いますので、3回ともぜひ観ていただきたいなと思います。

ーー最後に、小林さんから締めのご挨拶をお願いします。

小林:とにかく音楽の美しさと演劇構造の珍しさに話題がいく作品ですが、自分の人生を築き上げようとしている20代の若い男女が、愛する人のことや自分の夢のこと、それぞれに対して強い思いを持ちながら、自分に嘘をつくことなく一生懸命に生きている。だからこそ、一度はとても愛し合ったのにすれ違いが生まれていく。そんなことが描かれているミュージカルです。
今、人に会いたくても会えない時期が続いております。会えないけれども誰かのことを強く思う姿があちこちで見受けられますが、人を強く思う気持ちというものが人を生かすんだなということを、この演劇作品を通してしみじみ感じました。おそらく既婚者の方は特に「あ、わかる」ということが非常に多い作品だと思いますし、既婚者でなくても出会いと別れを経験したことがある人であれば、自分の人生に照らし合わせながら観ていただける作品にもなっていると思います。このオルタナティブシアターまで足をお運びいただけましたらとても嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。

『The Last 5 Years』舞台挨拶より

『The Last 5 Years』舞台挨拶より

上演時間はノンストップの90分。2021年7月18日(日)まで東京・オルタナティブシアター、その後、7月22日(木・祝)~7月25日(日)には大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールにて上演される。3組のペアの魅力がそれぞれ堪能できる至極のミュージカルを、濃密な劇場空間で味わってほしい。

取材・文・撮影=松村蘭(らんねえ)

公演情報

オフ・ブロードウェイミュージカル『The Last 5 Years』
 
スタッフ:
作詞作曲・脚本:ジェイソン・ロバート・ブラウン
演出:小林香
出演:木村達成×村川絵梨、水田航生×昆夏美、平間壮一×花乃まりあ
 
<東京公演>
日程:2021年6月28日(月)〜7月18日(日) 
会場:オルタナティブシアター
主催:アミューズ/シーエイティプロデュース
 
<大阪公演>
日程:2021年7月22日(木・祝)~7月25日(日)
会場:COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
主催:FM802 / キョードーグループ
 
料金:8,800円(全席指定・税込み)
※本公演の上演にあたり、新型コロナウイルス感染症対策としての取り組みに尽力してまいります。
 
オフィシャルサイト:http://www.last5years.net
オフィシャルツイッター@Last5Years_jp
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