今だから見て欲しいメメタァインタビューこんなに信頼しあって仲のいいバンド見たことがない!この時代にブレイクしてほしいアーティスト
メメタァ
メンバー4人の信頼感と音楽への情熱ががっちりと噛み合った、こういうバンドこそ売れてほしいと強く願う。遅咲きバンドの希望の星・メメタァが今年4月に仕掛けた「4ヶ月連続配信リリース」という企画は、彼らの大きなジャンピングボードになる、かもしれない。誰もがうなずくグッドメロディ、怒りや悲しみを動機としつつもとことん繊細で前向きな歌詞、シンプルなロックをベースに最小限の楽器で最大限のエモーションを叩き出すバンドサウンド。そしていつどこでも変わらぬ笑顔とジョークが飛び交う楽しい会話。メメタァはもうすぐそこまで来ている。あなたのそばに。
――メメタァって、このメンバーになってから何年ぐらいでしたっけ。
西沢成悟(Vo&G):ちょうど3年ですね。2018年の7月に太陽さんが入ったので。
サンライズ太陽(Dr):メンバーそれぞれと成悟との付き合い自体はもっと長いんですよ。俺ら二人(太陽&工藤)はこいつ(西沢)が19歳の時から知っているので。
工藤快斗(G):そうですね。
カワギシタカユキ(B):僕が知り合ったのはもうちょっとあとですけど、けっこう昔から見てますね。
西沢:この二人(太陽&カワギシ)は先輩なんです。
太陽:成悟って、昔は尖ってたんですよ。しゃべってみるといい奴なんですけど、「何かやらかしそうだな」みたいな、そんな感じの怖さはずっとあった気がする。サイコパス感あったよね。
西沢:ないでしょ、そんなの(笑)。
太陽:笑ってるけど、目は笑ってないとか。
工藤:今もありますよ。
太陽:ニッシーって呼んでたんですけど、「ニッシー、飲みに行こうよ」ってよく誘ってた。
西沢:僕、あんまり飲みに連れていってくれる人がいなかったから。うれしかったです。
太陽:俺、成悟のことがずっと好きだったんですよ。メメタァの音楽がめっちゃ好きで、飲みに行って「将来一緒にやろうな」ってずっと言ってた。お互い別のバンドをやってたんで、「40歳、50歳になったら一緒にできたらいいよね」とか言って。
工藤:そんな話してたんだ。
太陽:そのうちに、当時のメメタァからベースとギターが抜けるという話になって。「おっ」と思って、でも「ドラムは残るんだ?」って。
西沢:もっとすごい言い方だった。めちゃめちゃ悔しそうに「ドラム抜けねぇのかよ!」って。新宿御苑前の焼き鳥屋で。
太陽:言った言った(笑)。それぐらい一緒にやりたかったから。しかもその時、目の前でカワギシに電話してバンドに誘い始めたんですよ。めっちゃ悔しかった。
カワギシ:元々メメタァと僕を知り合わせてくれたのが、太陽だったんですよ。
太陽:俺、メメタァの曲が好きすぎて、スタジオ入ってコピバンやってたんですよ。どうにかして成悟と一緒にやれないかと思って、「そうだ、コピバンやろう」と。知り合いのバンドマンでメメタァが好きな人がいっぱいいたから、そいつらを誘って、本人(西沢)に歌ってもらって。2回やったんですけど、2回目の時にカワギシにも来てもらった。
カワギシ:それで、僕が先に当選してしまったもので、「えー、ベースはあいつが入るのかよ」という言葉になった。
太陽:しばらくこいつの顔見れなかったですもん。「クソー、俺を置いていきやがって」って。でも今こうやって一緒にできてうれしいです。
メメタァ
――いい話ですねぇ。
太陽:俺とカワギシは、快ちゃん(工藤)とはメメタァに入るまでは面識はなくて。(西沢と)対バンしてたんだよね?
工藤:そう。
西沢:「閃光ライオット」とか、コンテストが流行ってた世代で。同世代でそういうのに出てたバンドが多かったんですけど、快斗もその中の一人ですね。
太陽:当時はどんな印象だったの?
工藤:なんか、対バンするたびにほめてくれる、良い人という感じ。
太陽:いるよね、そういう人(笑)。
西沢:毎回すごい怒られてるから。
工藤:メンバーにはめっちゃ怒られるんだけど、成悟は会うたびに「ギターいいよね」と言ってくれる。
カワギシ:心のよりどころになってたんだ。
西沢:で、入ってもらおうと思って電話したんですよ。「メンバーになってくれ」と言ったら、「今友達とゲームしてるからあとにしてくれ」と言われた(笑)。
工藤:そっちが先だったので。
カワギシ:先約は大事だね。
太陽:それぞれ違った視点のストーリーがあるんです。共通点は、3人もメメタァが好きなこと。
西沢:…ありがとうございます。
太陽:照れてる(笑)。だからケンカも全然ない。究極好きだから。
カワギシ:確かに、ずーっとこの空気のままでいるよね。
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――そして2018年夏にサンライズ太陽が加入して。そこからメメタァは生まれ変わった。
西沢:そうですね。この4人になってかなり変わりました。曲はそんなに変わってないんですけど。
太陽:あの時、ドラムの子が急に抜けちゃったんですよ。自分もちょうど、その時やっていたバンドのボーカルが抜けてしまって、動けていなくて。そこに電話をくれて「サポート頼めませんか」と言ってくれて、5日後だっけ?
西沢:そう。東名阪のライブが決まっていたんです。
太陽:「やっと来た!」と思って、仕事を全部休んで、「40歳50歳じゃない、ここだ!」と思った(笑)。
西沢:名古屋大阪には車も出してくれて、運転もしてくれた。
――いい人すぎるじゃないですか。サンライズ太陽。
太陽:僕はずっと「西沢成悟が売れないのは嫌だ」と言ってたんですよ。周りのバンドマンもみんな「こいつは絶対売れたほうがいい」とずっと言ってて。
西沢:…ほんとに?
太陽:そういう意思を持って入った。一人でも多く成悟の歌を聴いてほしいなという一心で入りました。
――もうちょっと具体的に言うと。彼のどこがそんなに好きなんだろう。
太陽:まず外見からしてちっちゃい体なんですけど、歌を歌う時はめちゃでかく見える。
カワギシ:小さな巨人。
太陽:19歳で初めて会った時に、ライブハウスの店長に「すごい新人がいるから見てくれ」と言われて、見に行った最初のライブでグッと引き込まれて。そんな人、自分の人生の中であんまりいなかったので。最初にそういう衝撃があって、それはその後対バンしていく中でも変わらないし、何なら「一緒にやりたい」という気持ちがどんどん増えていったから。今も一緒にやっていて楽しいし、最高だなという気持ちが増えていっているので、そう思わせてくれるボーカルですね。だからみんなも僕と同じ気持ちになってほしいんです。
西沢:うれしいなあ。
太陽:と思って入ったら、この二人(工藤&カワギシ)も同じ精神だった。うれしかったですね。
――この話を聞くだけで、全然知らない人も「いいバンドに間違いない」と思いますよ。そろそろ、今回の「4カ月連続配信リリース」の話題に移りますけど、これってそもそも誰が言い出したんですか。
太陽:レーベル(THE BONSAI RECORDS)の方の提案ですね。去年1曲配信したんですけど、そこからリリースが全然できていなかったので、バンドがせっかくいい感じになってきたのに、何か動いたほうがいいんじゃないか?というお話をいただいて。コロナ禍でも、ずっと曲作りはしていたんですよ。
カワギシ:成悟がめちゃめちゃ書いてくるんですよ。
太陽:それを形にして出したいという思いがずっとあったんですけど、この時期だから、アルバムを出してツアーをやるのも厳しいよねと。「だったら4カ月連続配信はどう?」みたいな感じでした。リリースがあれば、ツアーじゃないけどツアーっぽく見せれるし。結果、やって良かったよね。
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――4月に出た第一弾「ロスタイム」は、メメタァ王道の、シンガロングできるエイトビートのロックチューン。
西沢:前作までは「今あるものを肯定していく」というスタンスで書いていたんですけど、そこから成長していきたいというところを書く必要があるなと思って、リード曲を作ろうという気持ちで書きました。
太陽:本当は、1曲目の予定じゃなかったんですよ。でも成悟は「ロスタイム」の歌詞をすごく気に入っていて。何とかして形にできないか?と。本当にぎりぎりだったよね。
西沢:途中で歌詞を変えたんです。最初は「僕らは未来をみつけた」というサビのフレーズを繰り返していて、メメタァ的なライブのノリを考えると、サビの頭でリフレインしたほうがいいかなと思っていたんですけど、そうじゃない感じで、そこにストーリーがあるように歌詞を変えたら、ハマってくれました。でも快斗は歌詞を変える前から、気に入ってくれてたよね。
工藤:うん、気に入ってた。絶対いいと思ってたんだけど、なかなかうまくハマってくれなくて、大変でした。
太陽:4カ月連続配信の一発目だし、絶対にいいものしか出したくないと思ってた。前作(ファーストアルバム『いつか僕が見た夢』)のリード曲が「デイドリーマー」で、それは絶対に超えたいという話をしていて、「ロスタイム」はいい曲だけど、「超えて来ねぇな」とずっと思ってたから。「もうちょい粘ろう。頑張ろう」と言って、やっとできた感じ。
カワギシ:粘りに粘ったよね。
西沢:結果、良くなりました。
太陽:全員が「よっしゃ、これ行ける!」ってなったよね。今まで出してきた曲も、全部そうだったんですけど。
――そして5月に出た第二弾が「春風」。こっちはミドルテンポの、大きなグルーヴのギターロック。
工藤:「春風」はめちゃめちゃ早かった。
太陽:ほとんど成悟が作ったデモのまんまです。去年コロナでまったく活動ができない時期に、曲を作りまくってて、毎日3曲ぐらい送られてくるんですよ。その中で、宅録のアレンジそのままでやったのがこの曲です。
西沢:サウンドは一緒ですけど、歌詞はまったく違うんですよ。みんなが「歌詞がちょっとな」と言ってたので、むかつくなーと思って書き換えた(笑)。結果、いい歌詞になりましたね。懐古的ではあるんですけど、言葉使いが以前よりも大人になりました。振り返る歌は今までにもけっこう書いてるんですけど、言葉使いが子供だった気がして、でも「春風」は精神的に大人になった状態で振り返った曲が書けたなと思います。
太陽:この曲、好きだよ。
――第三弾は、カントリータッチの軽快な演奏が楽しい「ドライフラワー」ですか。これって、前にも音源化されてますよね。
西沢:弾き語りのCD(『トイレットペーパー』)に入ってるんですけど、メンバーが気に入ってくれたので。去年出した「wall around」も同じ弾き語りのCDから引っ張ってきて、これもそうですね。
太陽:成悟の弾き語りの曲には、フォーク調のものがあるじゃない? 俺はそれが好き。「僕がメガネをとったら」や、「ロックンロール」もそういう感じだし、そういう曲はできあがるのがめちゃ早い。
工藤:「こうしてほしいんだろうな」というのが伝わってくるので。
西沢:「ドライフラワー」はコロナ前に書いたんですよ。そして今、「ドライフラワー」という曲がこんなに流行るとは思ってなかった(笑)。
――アハハ。どっちが先なんだろう。
西沢:俺でしょ?
太陽:絶対そう。
カワギシ:でも今、言いにくいよな(笑)。
西沢:「ドライフラワー」は、周りのバンドがいなくなっちゃったりとか、自分のバンドとも照らし合わせて、いつかなくなっちゃうものしかないなと思って書いた曲です。ずっとこのままでいたいけど、でもやっぱりなくなってしまうものだと思った時に、考え方とか、やらなきゃいけないことが変わってくるのかな?と思って、そういう感じで書きました。
太陽:「ドライフラワー」を聴いて、ラブソングにもとらえられると思ってるんだけど。過去にもそういう曲があって、毎回聞くんだけど、「ラブソングじゃないです」と。
カワギシ:「少年」でしょ? 俺も、めちゃくちゃラブソングだと思ってた。
西沢:誰かに向けての愛情を歌ったものではないです。
――イメージを喚起する歌詞だと思いますよ。
西沢:そこが課題でもあったんですよ。僕の歌詞は具体的すぎて、それが強みでもあると思うんですけど、そのぶん想像をかきたてられないというか、何回聴いても同じようにしか聴こえない感じもあったんで。「ドライフラワー」がいろんなとらえ方ができる曲になったのは、すごくうれしいです。
メメタァ
――そしていよいよ第四弾、8月24日にリリースされるのが「life goes on」。締めくくりにふさわしい、とてもポジティブで、ぐっとくるメッセージ性の強い曲。
太陽:西沢成悟が今一番聴かせたい曲です。
西沢:まさにコロナ禍に書いた曲です。テレビを見ても、「コロナだけど頑張ろう」みたいなことはたくさんあるし、音楽業界の人たちも発信しているんですけど、当時蕎麦屋でバイトしていて、朝6時に店を開ける時に、ふと「けっこう頑張ってるんじゃないか?」と思ったんですよ。「もう頑張ってるんじゃないか?」と思うから、全体的な雰囲気に乗っかって「頑張ろう」みたいなことを言うのはどうなのかな?と。「もう頑張ってるじゃん」と歌う方が、ロックバンド的なんじゃないか?と。そっちの方が俺がやりたいことに近いなと思って、書きました。「頑張らなくていいし。てかもう頑張ってるし」という感じですね。それで、バイト中に歌詞を書いた。
――アハハ。バイトしなきゃ。
西沢:朝はヒマなんですよ。しかも飲食店はいろいろ厳しかったから。
――ああそうか。それを聞くと深い感じがしますね。飲食店のリアルが曲の背景にある気がしてくる。
太陽:成悟はいつも、立場の弱い人と同じ目線に立ってくれるよね。「やんなっちゃうよな」とかもそう。
西沢:“音楽を聴く気分じゃないなら映画でも見よう”という歌詞もそうで。みんなめっちゃ頑張ってて、ライブハウスをつぶさないように、バンドを続けて、音楽を絶やさないようにしようっていうのは、めちゃめちゃかっこいいと思うんですけど。それがその人の本当にやりたいことであればいいんですけど、なんとなくの雰囲気の中でそうなっちゃってるのであれば、やらなくてもいいと思うんです。俺はやりたくてやっているから、人がどう思おうと別にいいんですけど、もしもそういう人がいるのであれば、そうならないでほしいという気持ちはすごくあります。とにかく生きていれば大丈夫だと、俺は思うんですよね。
太陽:こいつ、いい奴だな。
工藤:おまえ最高だな。
――“君らしくなんかなくても良いから生きてておくれよ”。それが一行目。
西沢:音楽的にも、わりとよくできました。ライブ感があって、シンガロングもあるし、リフレインも使えたし、シティポップ感もある。僕、アナログフィッシュが好きなんですけど、ああいう感じをやってみたかったんですよね。アナログフィッシュにも『Life Goes On』というアルバムがあるし。それと、この曲は「雨」がテーマになっていて、じんわりした感じの歌詞なんですけど、アナログフィッシュに「No Rain(No Rainbow)」という曲があって、ミクロな視点の歌詞がすごく好きで。でも俺の場合は、雨のあとに虹が出なくてもいいというか。
――“雨上がりの空に虹が見えなくてもlife goes on”。そうか、そこに違いがある。
西沢:2番のサビは雨の描写を、わりとミクロな視点で描いています。“立てかけた傘が誰かに盗られてもlife goes on”とか。
――小道具が全部雨につながってる。よくできてますね。
西沢:けっこう力作なんです。意欲作。
太陽:すごいね。そこまでだとは思わなかった。素晴らしい。
西沢:そういう意味もあるし、メメタァにはメッセージ性の強い曲もあるので、それも引き継げるし、やりたいこともやれたし、「life goes on」という言葉的にも、次に向けて進んで行く感じで4作目が終われたし、ベストな順番だと思います。本当は、一発目にしようかと思っていたんですけど。
太陽:今まで一緒にやってきて、こんなに「力作ができた」と言うことはなかったんですよ。そんなにいい曲を最初に出しちゃうのはもったいなくね?と言って、最後になりました。
――まさに今聴いてほしい曲。
西沢:聴いてほしいですね。
メメタァ
――そしてライブは、レーベルツアーの「THE BONSAI RECORDS TOUR 2021“凡才の盆栽”」がもう始まっていて、9月4日の下北沢Shangri-Laがファイナル。ライブをやるのがいろいろ難しい時代ではありますけど、これからメメタァはどんなふうに進んでいきますか。
西沢:4人でいる時間がすごく好きなんですよ。だからライブはずっとやっていきたいし、配信でも聴いてほしいですよね。
太陽:コロナ禍でも、お客さんが増えたんですよ。配信をガンガンやっていたので。
カワギシ:ライブとかトークとか。
太陽:ライブで言うと、配信じゃなくて目の前のお客さんに聴かせてナンボだと言う人も多いじゃないですか。でも僕らは、成悟の歌を一人でも多くの人に聴いてほしいと思っているから、配信だと手軽に聴いてくれる人がけっこういて、僕らにとってはすごく良かった。まったく抵抗ないもんね。
西沢:テレビへの憧れがあるからね。
カワギシ:画面に映りたい(笑)。
太陽:これからも、いろんな人に聴いてほしいです。
西沢:音楽もそうだし、メンバー一人一人の人間性とかも含めて、広まったらいいなと思います。この4人で行きたいですね。
――行きたいですね。どこまで行きますか。
太陽:ロサンゼルスに行きたいですね。機材を積んで、みんなでバスに乗って旅をする。
――いいですねぇ。国内では?
太陽:ありきたりですけど、武道館でやりたいですね。この4人と、手伝ってくれる人、みんなで行けたら。
西沢:いろんな人に恩返しするためには、そうするしかないよね。
太陽:頑張りますんで、よろしくお願いします。
西沢:仮押さえしましょう。
カワギシ:15年後とかに?(笑)俺たち、50近くだな。
西沢:早めにやりましょう。
カワギシ:15周年ぐらいかな。
西沢:リアルだな。そのために頑張らないと。
取材・文=宮本英夫 Photo by 菊池貴裕
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