鳳翔大が語る『イッツショータイム!!』、社交ダンスと演劇を融合させた新たなエンターテインメントの相乗効果
鳳翔大
ボールルームダンス(=社交ダンス)と演劇を融合させ、新たなエンターテインメントの形を提案する、舞台FOCUS。その第4弾『イッツショータイム!!』が、8月の東京公演を経て、10月30日(土)、31日(日)に大阪COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールにて上演される。寂れた商店街にある小さなダンスホールを舞台に、そのホールを営む神保原家の三姉妹と、彼女たちを取り巻く会社の同僚やライバル、さらに商店街の再開発とホールの買収計画などが絡み、ダンスを交えて物語は展開。元宝塚歌劇団のスター、鳳翔大と伶美うららに加え、ボールルームダンス初挑戦となる千葉涼平、鈴木福、そして本作で初舞台を踏む土屋炎伽ら個性豊かなキャストも話題を呼んでいる。そんな本作の大阪公演を前に、三姉妹の長女で、亡き父の遺志を継ぎダンスホールのオーナーを務める神保原操を演じる、元宝塚歌劇団雪組の鳳翔大が見どころを語った。
――舞台FOCUS第3弾『I’m Here』に続いて、本作へのオファーを聞いた時はどのように感じられましたか?
前作の時はこの舞台に関わるのが初めてだったので、社交ダンスと演劇の融合が一体どんな風になるのかな? という不安と期待がありました。そして、初めて稽古場で皆さんと通し稽古をした時に、プロのダンサーさんのパワーに圧倒されました。当たり前の事で失礼なことかも知れませんが、皆さん本当にお上手で(笑)。本当に衝撃的でしたし、社交ダンスにより興味を持ちました。元々、この作品へのオファーをいただいたのが、元宝塚ということでしたが、私が雪組時代の『Shall we ダンス?』という作品で社交ダンスの経験があったので、それもオファーの理由だったと思います。当時のことが蘇りましたし、それもご縁かなと思いました。ただ、『Shall we ダンス?』の時は、ダンス教室にダンスを習いに来ていた役で、社交ダンスを習ったものの、上手く踊れないというキャスト設定でした。だから、きちんと社交ダンスを習う機会をもらえたことがすごく嬉しかったです。
――社交ダンスをもっとやってみたいと思ってらっしゃったんですね。
社交ダンスは衣装もとても豪華で華やかですし、宝塚と近いものを感じていました。だから、前作を観に来て下さった方からすごく好評で、もう1度観たいという声をたくさんいただいていたので、オファーを快諾しました。でも、去年の4月に上演するはずだったのが、コロナの影響で何回か延期になって、やっと今回上演できます。前作では、私は男性側で踊っていて、お客様も宝塚のイメージで観てくださっていましたが、今回は女性側で踊るので、新鮮に映ると思います。
――本作は、社交ダンスと演劇を融合させた新しいエンターテインメントと銘打たれていますが、鳳翔さんは社交ダンスと演劇の相乗効果を感じていますか?
客席と舞台が一体化しています。今回は特に、お話自体がシンプルなので、登場人物それぞれに感情移入できると思いますし、お客様それぞれに響くストーリーがあるはずです。夢を追うことを肯定する物語に社交ダンスが絡んでくるので、華やかですし、エネルギッシュで躍動感もすごいです。だから、東京公演でも頑張ろうとか元気をもらったという感想がすごく多かったです。プロのダンサーさんは、お芝居が初めての方が多かったのですが、ダンサーさんはエネルギーと生命力に満ち溢れていて、身体で表現することに長けているので、一緒にお芝居させていただいても楽しいです。自分が思ったことや、やりたいことをストレートに表現できて、心からのお芝居ってこういうことだよなと再認識できました。私自身もダンサーさん達からエネルギーをもらっています。
――ダンスも演劇もあることで、色んな見方のできる舞台だと言えそうですね。
お芝居が好きな方はお芝居の角度から見られると思いますし、ダンスがお好きな方はダンスを堪能できると思います。歌がない舞台というのは私も初めてですが、踊りと曲でつないでいく舞台というのはあまりないと思います。逆に言えば、歌がないのによくここまで盛り上がるなと思うくらいです。歌を使わずに、敢えてダンスとお芝居だけで表現しています。私も今までミュージカルをやっていたのでわかりますが、歌による感情表現を全部踊りで現しています。それこそ、日常のオフィスでのシーンでも、ステップやダンスで表現しており、そこがすごく面白いと思います。悲しい踊りなのか、対決するシーンなのか、仲良しなのかを、台詞や歌で表現するところをダンスで表現していますが、それがお客様にも鮮明に伝わるのが面白いですね。ダンサーさんたちのステップはキレキレで、優雅で、見どころは多いですし、感動してもらえると思います。
――宝塚で一緒だった伶美うららさんやw-inds.の千葉涼平さん、そして、鈴木福さんや土屋炎伽さんら個性豊かなキャストの方々との共演はいかがでしたか?
得意とする分野は皆さん違いますが、それぞれの個性が強すぎて(笑)。中々、これだけ異色なキャストが揃って、年齢もジャンルもバラバラな人が、最終的に全員で社交ダンスをやるという舞台もないと思います。ダンサーさんはお芝居を、役者陣は社交ダンスにチャレンジすることに対して、皆真摯に向き合っているところが、私はこの舞台の一番の見どころだと思っています。その姿は表には出ませんが、その結果が舞台に現れると思うので、お客様がその過程を知らなくても、そこに感動を見出してくれているのではないかと思います。だから、この先もこの企画がずっと続いて欲しいと思っていますし、私もまた出演したいです。社交ダンスと演劇の相乗効果で、この舞台を色んな方に知ってもらいたいですね。一度観に来ていただいたら、また次回も観たいと思ってもらえると思います。
――ダンスを辞め、ダンスホールの運営に力を注ぐ長女という役どころですね。
私の役どころは、今はダンスを諦めているけれど、ライバルだった炎伽ちゃんや姉妹の応援によって、ダンスをもう一度やりたいと思うようになるのですが、今は特にコロナで色々なことを制限されるような状況下なので、そういう彼女の心情は、より皆さんに刺さるのではないかと思います。夢を追うだけでもダメだと思いますし、現実的に自分のやりたいことを押し殺して他のことをやっていても、自分で自分に問いかけた時に、好きなことをやるのか現実的に向かい合うのかという狭間で迷うことって誰しもが経験することだと思うんです。それが些細なことであったとしても。こういうことは、色々な境遇の方が共通して感じていることだと思うので、この舞台を観て元気になったなとか明日から頑張ろうと思ってもらえたら嬉しいです。観たら元気をもらえるエンタテインメントショーだと思います。(私が演じる)操が葛藤するシーンもありますが、そこを姉妹やよきライバルなど、周りの支えによって乗り越えるところを観てもらいたいと思っています。
――大阪公演を前にした今の心境をお聞かせください。
FOCUS自体も大阪に来るのは初めてですし、東京と大阪でダンサーさんが違うのも異例です。大阪のダンサーさんとお会いするのも初めてなので、すごく新鮮で。東京公演から2ヶ月空くのも初めての経験で、この2ヶ月は気が抜けない状態でした。お芝居の方は、台詞はもちろんすべて入っていて、思い出すのですが、ダンスを踊る人が変わるというのは、あまりないことだと思います。でも、皆さんプロの方なので、身を委ねて楽しんでできればいいですし、一緒にいい作品を作りたいと思っています。後は、大阪のお客様に楽しんでもらいたいのが一番ですね。
――最後に、改めて本作の魅力をお聞かせください。
演劇とダンスを融合させたエンターテインメントはここでしか観られないということが、一番の魅力だと思います。いろんな舞台がありますが、社交ダンスをベースにした舞台というのは、なかなか観られないと思いますし、一度社交ダンスを生で観ていただきたいですね。社交ダンスをさらに盛り上げるために、私たちのお芝居がストーリー仕立てになっているので、その相乗効果によって、結果、たくさんのお客様に感動していただける舞台になっていると思います。稽古場で私が出ていないシーンの時はいつも一番前で見ているんですが、毎回感動します。ダンスは全身運動なので体力的に本当にしんどいはずなのに、どれだけやってもダンサーの皆さんは本当に楽しそうで、それを見ていると、自分が宝塚にいた頃のことも思い出しますし、プロの方でもこんなに練習されているのだと、私もすごく背中を押してもらっています。とにかく元気になりますし、この時代だからこそ観ていただきたいですね。観たら絶対後悔しないと思います。でも、観なかったら後悔すると思います(笑)。必ず、明日からの生きる活力になると思いますし、そういう舞台に仕上げたいと思っています。
取材・文=華崎陽子