Argonavisが紡いだ追憶の詩とメロディー 『Songful days SEASON2 with "Argonavis" powered by SPICE』

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2022.2.4
ARGONAVIS 五稜結人役・日向大輔 七星 蓮役・伊藤昌弘 撮影=福岡諒祠

ARGONAVIS 五稜結人役・日向大輔 七星 蓮役・伊藤昌弘 撮影=福岡諒祠

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2022年2月、「Songful days」の歴史に新たなページが刻まれる。これまでの、女性アーティスト、アニソンというラインナップから一歩踏み出した、初の男性アーティスト、声優ユニットの登場。記念すべき第一歩を記すのは、Argonavisだ。Argonavisは、アニメ、ゲーム、コミック、声優によるリアルライブなど様々なメディアミックスを展開するボーイズバンドプロジェクト『from ARGONAVIS(フロム アルゴナビス)』より、キャラクターとリアルライブがリンクするボーイズバンドとして活躍する5人組。この日ステージに立つのは、ボーカル・七星 蓮役の伊藤昌弘、ギター・五稜結人役の日向大輔の二人だ。

ちらちらと空から雪が降り出してきた――。しんしんと雪の降りしきる深い森。湖。雪に埋もれた小屋。暖炉に燃える炎。時代も場所もわからない。「旅人」と「私」との対話を、俯瞰のように見ているもうひとりの「私」という、奇妙にねじれた視点の中で淡々と物語は進む。ナレーター・芹澤優の、耳元で囁くような声が感情をくすぐる。映像とナレーション、そしてライブパフォーマンスとを交互に織り交ぜて進む「Songful days」。ストーリーを追いながら、観る者はその世界の奥へとさまよいこんでゆく。

場面が変わる。あかあかと火の燃える暖炉が、さっき見た森の中の小屋の暖炉とシンクロする。椅子に腰かけ、日向がアコースティックギターをかき鳴らす。伊藤は目を閉じてマイクをしっかりと握り、伸びやかなハイトーンを響かせる。曲は、2019年のデビュー曲「ゴールライン」だ。今日まで二人で何度もライブを積み重ねてきた、ツインボーカルの息はぴったりだ。続く「星に願いを」は、カバー。原曲のイメージを損なわず、ケレン味なく歌う伊藤。ストロークのリズムを変えながら、アルペジオをはさみながら、確かなギターを聴かせる日向。安定感と自信溢れるパフォーマンス。

森の中には私達の秘密の場所があるんです――。「父と母」「妹」との幸せな日々を語る「私」。どうやら「私」は、姉妹の姉のようだ。昔語りのシーンになると、景色が変わる。セピアがかった、美しい森の風景。一点の曇りもない幸せな描写。その向こうには一体何があるのだろう。

そんな昔語りの幸せな日々に呼応するように、あたたかい曲調と優しいメロディを持つ「Y」(TVアニメ『カードファイト!! ヴァンガード overDress』EDテーマ)。ゆるやかなミディアムテンポに乗せた、二人のハーモニーが心地いい。「スノースマイル」は、言わずと知れたカバー曲で、日向の丁寧なアルペジオ奏法と、情景を語るように歌う伊藤のボーカルが映えるスローバラード。この季節にも、この物語もぴったりの選曲だ。続くオリジナル曲「逢のうた」では、細やかなフィンガーピッキングで、リズムとコードを刻んでゆく日向。ハイトーンを、絞り出すように感情を込める伊藤。深まってゆく感情は、このあとの物語への布石だろうか。

戦争、拉致、そして死。物語は明から暗へと急展開し、「私」に地獄のような苦しみと後悔の念が降りかかる。これまでの「Songful Days」にはなかった、ダークでシリアスな展開に言葉がない。あまりにもつらく悲しい物語。救いはない? いや、そこには歌がある。

マイナー調のリズミックなテンポの中に、深いせつなさを秘めた曲調を持つ「Pray」は、ファルセットを使い、音域の広いメロディを歌う伊藤のパフォーマンスに惹きつけられる。清々しいアルペジオから始まる「As Is あるがままで」は、Aメロを伊藤が、Bメロを日向が歌い継ぐ、ツインボーカルに耳が行く。

「ギフト」(TVアニメ『カードファイト!! ヴァンガード 新右衛門編』EDテーマ)は、せつなさをはらみつつ疾走する、アップテンポの曲調体が動く。アコースティックギターと歌だけで、多彩な表現力を見せつける二人。リリース作品を聴くだけではわからない、生身の魅力がここにある。

あれから十年近くが経ちました――。「私」の語る物語はゆっくりと終幕へと近づいてゆく。秘密の花園は枯れてしまった。人の命も尽きてしまった。美しい日々の記憶と、湖に咲く睡蓮の花と、「旅人」を次の場所へと運ぶ船を残して。

遠藤正明のカバー「キミの詩-Sing a Song-」という、とてつもないパワーを必要とする力強いラブバラードに真っ向から挑む、伊藤の激しい歌いぶりが潔い。おだやかなスローバラードのオリジナル曲「流星雨」の一転して心静かに聴けるきれいなハーモニーがいい。それはまるであの秘密の花園のように、足元を埋め尽くした無数のイルミネーションライトが美しい。歌い終えた二人をねぎらうように、「Songful days SEASON2。旅は、続く――」と、優しいナレーションが響く。「Argonavisでした。ありがとうございました」と、画面に向けて伊藤が語りかける。ジ・エンド。

初の男性アーティスト、声優ユニット、バンド、女性ナレーターなど、様々な挑戦を積み込んだ物語は、確かな手ごたえを残して静かに幕を下ろした。2022年2月、「Songful days」の歴史に、確かに新たなページが刻まれた。次回は3月3日、主役は遠藤正明だ。今度は一体どんな物語が用意されているのか。興味と期待が高まるのを押さえきれない。

レポート・文=宮本英夫 撮影=福岡諒祠

セットリスト

Songful days SEASON2 with "Argonavis" powered by SPICE

01.ゴールライン
02.星に願いを(cover)
03.Y
04.スノースマイル(cover)
05.逢のうた
06.pray
07.As Is あるがままで
08.ギフト
09.キミの詩 -Sing a Song-(cover)
10.流星雨

ライブ情報

Songful days SEASON2 with "Argonavis" powered by SPICE

Streaming+
2022.2.10(Thu) 23:59まで視聴可能
料金:3,500円(税込)
※本公演は配信限定公演となります
イベントHP:https://eplus.jp/songfuldays/
主催・企画制作:SPICE/e+(イープラス)/Streaming+/イープラス・ライブ・ワークス
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