岡宮来夢「表現者として自分の持ってるすべての力で立ち向かっていきたい」~『2.5Dアワード』俳優部門受賞記念インタビュー
岡宮来夢
日本2.5次元ミュージカル協会の公式メルマガ会員『2.5フレンズ』が選ぶ『2.5Dアワード』が2022年3月25日(金)に発表された。本賞は作品・俳優・演出家・脚本家の4部門を設置、2021年1月1日〜12月31日までに上演された2.5次元ミュージカル作品を対象に、20万人を超える会員『2.5フレンズ』の投票によって選出されたスペシャルなアワードだ。今回その俳優部門の受賞となったのは岡宮来夢。早速、受賞に寄せた“喜び”と“覚悟”の声をお届けしよう。
岡宮来夢
ーーまずは俳優部門受賞のお気持ちを改めて。
本当に「びっくり」と「嬉しい」の気持ちでいっぱい。日本2.5次元ミュージカル協会のこのアワードに俳優部門で選んでいただいたことにはすごく責任があると思いますし、本当にたくさんの方に支えてもらい、教えてもらったからこそ僕がここにいるので……自分だけの力で取れた賞ではないというのをすごく実感しています。日頃から応援してくださっているみなさんにも、ひとつ恩返しができたかな。とにかく感謝でいっぱいです。
ーー鶴丸国永役で出演されたミュージカル『刀剣乱舞』 〜静かの海のパライソ〜(以下、『静かの海のパライソ』)は作品部門を受賞。また、演出の茅野イサムさんと脚本の伊藤栄之進さんもそれぞれ受賞が決定しています。
ミュージカル『刀剣乱舞』 ~静かの海のパライソ~ (左から)鶴丸国永役の岡宮来夢、大倶利伽羅役の牧島 輝 (C)ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会
本当に素敵な作品に出会わせていただけて光栄ですし、刀剣男士キャストの一人として物語を背負わせていただけたことは、役者人生でまたひとつ礎になったなって思っています。『静かの海のパライソ』の題材となった島原の乱は、歴史上の出来事を調べれば調べるほど辛くて苦しくて悲しくもあったんですけど、稽古を重ねれば重ねるほどすごく愛に溢れた作品だと感じていました。刀剣男士が葛藤しながらも前を向いて立ち向かっていく──そんな勇気に溢れていた作品だったからこそ、こういったコロナ禍の中で今も何かを頑張っているみなさんの心にすごく刺さったというか、しっかりと僕らのメッセージが届いたんじゃないかなと思います。その時代に生きた人々がどれだけ切ない運命を辿ったかという物語が生々しく描かれながら、それでいて美しい作品としてお客様に届いたんじゃないでしょうか。
ーー『静かの海のパライソ』は2020年の春に新型コロナの影響で7公演のみ上演後中止になり、2021年に改めて再開されたという経緯もありました。
はい。僕は2020年の『静かの海のパライソ』の稽古の時、茅野さんから「これは伝説に残る作品になるぞ」と言われて……「自分は今回そういう使命を背負っているんだ」という自覚を背負い挑んでいました。そこから1年半経ってもう一度台本を見返すと、その間の自分の経験の積み重ねから当時とはまた違った台本の読み込み方ができて、あらためて僕から茅野さんに「これはやっぱり伝説に残る作品になりますね」と言ったんです。そうしたら「お前が伝説に残る作品にするんだ」って。そんなことも経験しながら上演しこういう賞に選んでいただいたのは本当に光栄ですし、出会えてよかった作品のひとつだなって、心から思います。
ーー奥村英二役で出演された「BANANA FISH」The Stageは今年の1月に後編も上演、2部作構成の大作に。
「BANANA FISH」The Stage -前編- (C)吉田秋生・小学館/「BANANA FISH」The Stage 製作委員
原作のコミックは40年近く前の作品ですが、今読んでもスタイリッシュで、格好良くて、疾走感もあって、重厚なストーリー。「こんなすごいモノがあったんだ!」とびっくりしたのが最初の印象で、この作品に出会えて嬉しかったです。W主演の(水江)建太は下積み時代からの友人でもあるので、僕の演じる奥村英二、建太の演じるアッシュ・リンクスの関係を物語の中で描けたのもとても嬉しかったですし、周りの役者さんも本当にすごい方が集まっていて……“そこに生きている”という感覚でずっと演じられました。今自分で映像を見返しても「すごいな」って心から思える作品ですね。いろんな方々の感想をうかがっても、やっぱりたくさんの人の心に届いたんだって、実感できました。
ーー昨年はそのほかにも舞台出演が続きました。少し趣が異なりますが、ルカを演じたミュージカル『王家の紋章』も漫画が原作の舞台でしたね。
『王家の紋章』は、夢だった帝国劇場に立たせていただけた作品。素敵な先輩方がたくさんいらっしゃる舞台に自分も携われたという嬉しさ、そして、役者としてひとつステップアップできたなという思いを実感しました。また、ミュージカル『きみはいい人、チャーリーブラウン』(ライナス役)、コンサート『Disney 声の王子様 Voice Stars Dream Live 2021』など、去年は歌のお仕事もたくさん経験させていただいて、そこから『静かの海のパライソ』の現場に帰ってきた時に、できるようになったことがすごくたくさんあったんです。これはもう完全に歌を歌うスペシャリスト、そういうところで戦ってこられたみなさんに現場で教えていただいたことが自分の中にちゃんと浸透し、表現できるようになったからだなぁって思いましたし、その結果『静かの海のパライソ』がさらにいいものになってお客様へ届けることができたかなと思うので………。
岡宮来夢
ーー「この1作」という“点”の結果ではなく、出会いや経験の全てが『静かの海のパライソ』の成功、そして今回の受賞へと繋がった、という嬉しさが。
そうですね。自分だけで取ったんじゃないんだなというのは、すごく実感していますし、そこへの出会いも経験も、全部が衝撃でした。歌で言うとやっぱり『チャーリーブラウン』には中川晃教さんや花村想太くんがいてくださって、『王家の紋章』では新妻聖子さんや浦井健治さんをはじめ本当にたくさんの先輩方がいらっしゃって。表現を磨いていく上では自分で練習するのはもちろん当たり前なんですけど、現場で一流の方のモノを見て盗む、みたいなこともやっていく。ある意味モノマネから入るというか、実地で方法を身につけていくことはすごい大事だと僕は思っていて、そういう面でもスペシャリストの方からたくさん吸収させていただけた1年だったし……褒められて伸びる、じゃないんですけど(笑)、新妻聖子さんにも歌を褒めてもらったりとか、まさか、そんな日が来ようとは! もちろんまだまだな部分はたくさんありますが、でもそうした経験がなかったら果たして僕は今この賞を受賞できていたのかな? と思うぐらい、先輩方に教えてもらったことがたくさんありました。感謝しています。なので去年は本当にトップのところでずっと戦ってきたみなさんと同じ場所に立って、戦い、吸収できたことが一番大きいかなぁ。むしろ吸収しないと同じところに立っていられないというか、「なんとしてでも」みたいな気持ちはずっとあって。がむしゃらだったかもしれないですね。
岡宮来夢
ーー岡宮さんが本格的に舞台に立たれるようになったのは2018年。まさにここまでひたむきに研鑽を積み走り続けてきた、という印象ですが、活動の中心となっている2.5次元ミュージカルというジャンルについてはどんな思いを抱いているのでしょう?
僕はミュージカル『刀剣乱舞』の『葵咲本紀』という作品で2.5次元ミュージカルに初めて出演したので、やっぱり2.5次元は原点というか帰るべき場所というか、「ここが自分のメインフィールドだ」とすごく思っています。とはいえ本当にまだまだ若手で、こうやって2.5次元ミュージカルというものがだんだんと世の中のみなさんに認知してもらっているその土台には、先輩方が積み上げてきてくださったものがすごくたくさんあるわけで。今の盛り上がりはその努力の賜物だと思いますし、僕もそういう先輩方みたいになっていきたいですね。
『葵咲本紀』の稽古期間中に(千子村正役の)太田基裕さんが「舞台はその日観劇したことによって観に来てくださった方の人生を変えてしまう、変えることができると僕は思っている。だからそういうつもりで取り組んでいる」というふうに教えてくださったのも、とても印象に残っています。当時の僕は自分のことで精一杯、とにかく目の前のことをやるのが第一の目標だった。でも最近お手紙でも「来夢くんと出会って、来夢くんのお話を聞いたり、舞台を観たりすることで自分の価値観が変わった」とか「舞台の影響で自分もプラスの言葉をたくさん使うようになった」みたいなことを言ってくださる方がたくさんいらっしゃって、こんなに嬉しいことってないよなぁって。誰かの人生にリアルに影響を与えていくこと。それがきっと「芸術」であり「エンターテインメントの本質」だと思うし、2.5次元ミュージカルもたくさんの方に注目していただいてるってことは、誰かの人生を変えられる力のあるモノなんですよね。だからこそ自分も責任を持ってしっかりやりたいなっていう気持ちは常にあります。
ーー岡宮さん自身も2.5次元ミュージカルによってその人生が変わった。
変わりました。鶴丸国永という役と出会わせていただいてから、変わりましたね。だって、もっともっとお芝居のうまい人だったり歌のうまい人というのはたくさんいるわけで……だから自分は「自分が鶴丸国永役に選ばれた意味」みたいなのをずっと探してたんですけど……やっぱり2.5次元ミュージカルはそのキャラクターが2次元から出てきたとかそういうことだけではなくて、それを演じる役者さんが持ってる人間性みたいなものがあり、それが役に乗っかるからこそ輝くモノなんですよね。“その場に生きている”ということをより生々しく伝えられることが大事。今回、僕は俳優部門で、『静かの海のパライソ』も作品部門で受賞させてもらって。そこにも意味があるから、きっと僕らはこれから2.5次元を引っ張っていく存在になっていかなきゃいけないんだという使命感と、責任感と、そうなっていくぞという決意の気持ちと──いろんな思いが溢れています。
岡宮来夢
ーー見つめるべきはこの先の岡宮来夢。「さらなる野望」があるならば……。
まずは初めてのプロデュース業、『ACTORS☆LEAGUE in Basketball 2022』が10月に決まりました。バスケとエンターテインメントの融合。結構いろんな挑戦になるとは思うんですけど、僕はバスケが大好きなので、まずは僕が楽しむというのは間違いないですね(笑)。参加していただける役者のみなさん、観に来てくださるお客様にどういうふうに「明日からまた頑張ろう」と思ってもらえる時間を届けられるかは、今、新しい思考回路みたいなのを使ってひたすら考え中。すごく難しいんですけど、すごく楽しくて、すごくクリエイティブな時間を過ごしています。
あとは、ピアノを習いたい。弾き語りもできたらいいですし、作曲とか、もっともっと自分の世界観をしっかり掴めて、音楽にして届けてみたいとも思ってます。いつか自分がプロデュースする舞台で脚本・演出・主演をやりつつ作曲もする……みたいな、そんな日がきたら面白いのかなって。表現者として自分の持ってるすべての力で立ち向かっていきたい。自分の作品を一から全部作り上げていくことができるよう、これからもっともっと勉強していきたいと思っています。
ーー楽しみにしています! 今回の受賞もその野望への大きな支えになりますね。
やっぱりこれからも2.5次元というものがもっともっと世に出て行って欲しいし、自分はそれを引っ張っていける存在になりたいですし、自分の野望を持って、ミュージカルもたくさん頑張っていきたい。基本はその二本立てですね。信念を持ち、ちゃんと後輩たちを助けられる先輩になる。そして2.5次元、ミュージカルも引っ張っていける、そんな存在になれるように努力します。みなさん、引き続き応援よろしくお願いします。今回は本当にありがとうございました!
岡宮来夢
取材・文=横澤由香 撮影=中田智章
公式サイト
2.5Dアワード特設ページ https://www.j25musical.jp/25daward2021/