金属恵比須の『X-masはプログレでカノジョを落とす!』~プログレBGM名盤紹介~

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ディープ・パープル『Ⅰ(ハッシュ)』(プログレに非ず)

ディープ・パープル『Ⅰ(ハッシュ)』(プログレに非ず)

今年もこの季節がやってきてしまった。クリスマスの到来である。子供のころは、プレゼントがもらえるからと心待ちにしていた日。

筆者がサンタクロースに対して最も感謝したプレゼントは小学校5年生のときで、ディープ・パープル『Ⅰ(ハッシュ)』『紫の炎』を枕元に置いてもらった。そのころから約25年間70年代ブリティッシュ・ロックを聞き続けている。そのオカゲだかセイだかわからないけれども、70年代テイスト溢れるプログレ・バンド「金属恵比須」をかれこれ20年近く運営している。

それが大人になるにつれて、段々と「受難の日」と感じるようになったのは決して筆者だけではあるまい。ことに、筆者のようにドップリと70年代ロックにハマったり、ことにプログレとかに手を出してしまった方々には共感していただけるだろう。

要はこんな古臭い音楽のマニアはモテない。キモい。女は寄りつかない。でも、仮に運よくこのクリスマス前に彼女ができたとする。そして、なにかの間違いかクリスマスのディナーでほろ酔いとなり、彼女を家に呼び入れることができてしまったとする。

彼女がプログレ・ファンであれば、キング・クリムゾン『レッド』ピンク・フロイド『狂気』を流しておけば無難。その後の会話に困ることはないだろう(しかしジェネシス『トリック・オブ・ザ・テイル』イエス『ロンリーハート』とかはやめておいたほうがいい、プログレの定義の論争の火種であり、総じて男女でこの会話をすると決裂することが多い)。

それが、彼女が音楽についてまったくわからない場合だったらBGMはどうするべきか。J-POPをかけて魂を売るか?プログレ・ファンは頑固な方が多いので、「そんな信条に反することはできない」と思うだろう。否、それ以前にそういうCD自体を持ち合わせていないかもしれない。

ということで、すでに手元にあるであろうCDで、いかに雰囲気をつくるかに焦点を当て、いくつか紹介をしたいと思う。プログレBGM名盤の探索だ。

◆イエス『イエスイヤーズ』より

マニアはご存じだと思うが、イエスにもクリスマス・ソングがあった。詳しくいうとイエスが分解した時期(1981年)に故・クリス・スクワイア(ベース、ヴォーカル)とアラン・ホワイト(ドラム)の2人のユニットとして発表された「Run with the Fox」という曲である。

教会を思わせる合唱隊や、後期ビートルズを彷彿とさせるサイケなブラスも入る超豪華なアレンジに、イエスと全く変わらぬ手数の多いブリブリベースを弾き倒す奇妙な曲。メロディはいたってポップで1度聞いたら忘れられない。個人的にはイエスの中でも名曲の部類。特に合唱隊が様々な和音を歌っている下で、ひたすら同じ音をズンズンブリブリ鳴らす箇所はイエスそのもの。


しかし、この曲1曲ではデートの間は持たない。大丈夫、このアルバムにはまだまだ入っている。クリスマス音楽“三種の神器”――パイプ・オルガン、鈴、合唱隊をふんだんに活用した曲がある。「Awaken(悟りの境地)」。クリスマス・ソングというわけではないが15分を超す荘厳な大曲で、クリスマス必須の楽器が鳴り響き、雰囲気抜群。この曲で彼女と“悟りの境地”にでも行ってもらいたい。

そして、「Awaken」から漏れた未発表曲も捨てがたい。ハープとパイプ・オルガンによる小曲「Vevey, Part 1」「Vevey, Part 2」。プログレのベスト・アルバムとして聞くと、パンチがなく中だるみしそうな曲で、正直いって筆者もここらへんは飛ばして聞いていたが、BGMともなると話が別だ。バランス良く配置されていて、心地が良くなる。

このアルバムは、1991年に4枚組のボックス・セットとして発売されたもので、音も当時のリマスタリングで今聞くと古臭い。しかし何度もいうが今回の目的はBGM。昨今のクリアで際立った力強い音では逆に耳障りかもしれないから、これぐらいがちょうどいい。決して彼女に「1991年のマスタリングだから音が悪くてごめんね」なんて謝らないように。女子に年号で物事を話すと気持ち悪がられるだけだ。

奥にしまっていたボックス・セットをもう一度引っ張り出してクリスマスに備えよう。

◆エマーソン・レイク&パーマー『作品第二番』より

これもマニアの方は十分承知だろうが、E,L&Pもクリスマス・ソングを発表している。「I Believe in Father Christmas(夢みるクリスマス)」。

グレッグ・レイク(ベース、ギター、ヴォーカル)名義でシングルとしてリリースされ、オルガンや合唱隊こそ出てこないが、鈴がアクセントとして使用されていてクリスマス感は抜群。また、キース・エマーソン(キーボード)は間奏にプロコフィエフ作曲『交響組曲“キージェ中尉”』の第4曲「トロイカ」を挿入している。この原曲自体クリスマスとは関係ないが、そりで大雪原を走るイメージを表現しており雰囲気はピッタリ。


このアルバムは個人名義でのシングルなどのよせ集めで、決して評価の高くないものだが、BGMとして聞くとちょっと様子が変わってくる。「Barrelhouse Shake-Down」「Honky Tonk Train Blues」「Maple Leaf Rag」などホンキートンク調、ラグタイム調の曲がちりばめられており、さながら洒落たレストランにいるかのよう。

また、「Watching over You(君を見つめて)」なんてラヴ・バラードもある。いつもはこの曲聞いてムシズが走ったマニアの方も、こういうシチュエーションだといい曲に聞こえてこないだろうか。

そして、極めつけはラストの「Show Me the Way to Go Home(迷える旅人)」。歌詞で “I’m tired and wanna go to bed” というくだりが3度も出てくる。その後の“行動”に踏み切れない場合、この曲をリピート再生すればサブリミナル的に……。

しかしうまくいかずに「そろそろ帰らなきゃ」なんていわれたら、その直前の歌詞、“Show me the way to go home” の方が頭に残ってしまったのかもしれない。サブリミナル効果を狙うのであればここは細心の注意が必要だ。

これもCD棚の奥底に眠っているはず。今すぐ掘り当てよう。


※以上のように、普通は「名盤」といいがたく、あまり聞くことのないプログレ・アルバムだが、こうしてクリスマスのBGMとして使うならアリかもしれないものを紹介した。

◆金属恵比須 『ハリガネムシ』より

最後に――手前味噌で恐縮ではあるが――、我がバンド「金属恵比須」のクリスマス・ソングを紹介させていただきたい。

「光の雪」

クリスマス音楽“三種の神器”もちゃんと使用し、ホワイト・クリスマスを表現してみた。この世に嫌気がさした少年へのクリスマス・プレゼントは、「地球滅亡」で、イヤな奴らはみんな高次元へとアセンションする中、少年のみ現次元に取り残され、そのまま地球を独り占めするという内容。


ぜひとも彼女との楽しいひとときのBGMとして活用していただきたい。ん? 1曲だけでは間が持たない? ――大丈夫、プログレだ。曲は長くつくってある。

ただし、その日が突然「受難の日」になってしまっても、筆者は責任を負いかねる。

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