舞台初主演に挑む河下楽の挑戦とは 音楽劇「星の王子さま」インタビュー
音楽劇「星の王子さま」/河下楽
世界中で広く愛されているサン=テグジュペリの不朽の名作「星の王子さま」が音楽劇として2022年4月28日(木)から5月15日(日)まで、兵庫、東京、愛知で上演される。「鍵盤男子」などのコンサートや自作のオペラ等で活躍中の音楽家・中村匡宏氏による演出・音楽で2019年に上演された作品をブラッシュアップ、今作では演出をダンサーや振付師、演出家として活躍するKAZOOが担い上演する。
「王子さま」役に挑むのは、コンサートや大阪松竹座などで公演を重ね着実に成長を続ける河下楽(AmBitious/関西ジャニーズJr)。「飛行士」役は、多くの舞台出演に加え、昨年、演出家としてシェイクスピア作品に挑んだ俳優・山本一慶が担当。さらに、元宝塚歌劇団星組トップスターの北翔海莉が、美しいけれどちょっと身勝手な「薔薇」、謎の「ヘビ」、本作のメッセージが込められた重要な役どころの「キツネ」の3役を担う。
今作で舞台初主演を果たす河下に、現在の心境と舞台への意気込みを聞いた。
■初主演舞台で「ステップアップできる自信はあります」
――初主演の意気込みからお願いします。
僕の個性で王子さまを全力で表現して、お客様に喜んで頂けるように頑張ります。
――初主演が決まったときは、どんなお気持ちだったのですか?
同じグループの永岡蓮王とゲームをしているときに電話で連絡が来たのですが、蓮王と2人で、「ほんまなんかな?嘘ちゃう?」みたいなことを言ってました。とにかく、10分間くらい、信じられなかったです。それくらい、衝撃がすごくて。
――気持ちの整理がついたあとは、どうでしたか?
「僕でいいのですか?」とは思ったのですが(笑)、でも、選んでもらったからには、絶対に結果を残そうと思いました。蓮王も、「ほんま、すごいな。おめでとう」と祝福してくれました。小柴陸も、「主演って、やばいな。ほんまにすごいな」と言ってくれましたし、音楽劇ということで、両親は「歌が上手くなって帰って来れるやん」と喜んでくれました。
今江大地君からも連絡が来ました。今江君も次の舞台が決まっているので、「お互いに、頑張ろな」って言ってくれました。福井宏志朗君からも連絡が来ました。福井君も舞台で主演が決まっているので、お互いに観に行こうと話してます。
友人たちも、僕が主演をやるということを知ってくれていて、いっぱい連絡が来ました。すごく嬉しかったです。家族は絶対、観に来てくれますし、メンバーも、観に来てくれると言ってくれました。いま、死にもの狂いで稽古しているので、お芝居においても、歌においても、前の自分よりもステップアップできる自信はあります。みんなに、いいモノを見せられるように頑張ります。
■王子さまに「めっちゃ共感」、役作りでは自身の〝無邪気さ”も反映
――世界中で愛されている作品ですが、台本を読んだとき、どんな印象を持ちましたか?
物語が進むにつれて、王子さまが成長していき、無邪気さは失わないのですが、薔薇や、キツネや、ヘビたちと出会って行くうちに、自分の大事なことが何なのかを知って行く過程が素敵なお話だと思いました。
――稽古に入って、王子さまの印象は変わりましたか?
台本を読んだときは、飛行士に怖がりながら話しかけているのかなというイメージがありました。ただ、立ち稽古が始まって、「天真爛漫にやったほうがいんじゃない」とアドバイスを頂きました。それがいま、しっくりきていますので、今のところ、無邪気な感じの王子さまになるかなと思っています。
――無邪気さは、ご自身にもある?
僕は、分からないことがいっぱいあるんですよ。お芝居に関しても、日常生活でも。そういうところを、お芝居にも出せていけたらなと思います。
――王子さまに、特に共感したところはありましたか?
自惚れ屋さんが登場するシーンがあるのですが、自惚れ屋さんが、称賛を欲しがるんです。ただ、そこで、王子さまは、称賛を欲しがる自惚れ屋さんに疑問を持って、「一緒に笑った方が、楽しいのに」と言うのです。称賛って、大切なことなのかもしれませんが、僕も、そんなに欲しいとは思わないんです。称賛よりも、その人と一緒に笑ったほうが楽しいなと思いますので、この場面の王子さまには、めっちゃ共感しました。
「飛行士」役の山本一慶
■椅子に座っているときは王子さま「意識して足を組んだりもします(笑)」
――ご自身に関しても、質問させてください。普段、自分のことを「王子さまっぽいな」と思うのは、どんなときですか?
椅子に座って足を組んだりすると、「王子さまだな」と思います。たまに、「王子さま」を意識して足を組んだりもします(笑) それくらいですかね。自分では、僕は王子さまの従者みたいな感じが身の丈に合っているのかなと思います。椅子に座っているときだけ、王子さまっぽいなと思います(笑)。
――周りの方で、「王子さまだな」と思う方はいるのでしょうか。
同じグループの真弓孟之君です。ルックスが男前で、天性のものなのですが、オーラが王子さまっぽいんです。僕たちの真ん中に立てるものがあるんです。
あとは、正門良規君です。王子さまとは違うのですが、正門君は「帝王」をテーマにしたソロコンサートを開催しました。その「帝王」がすごく似合っていて。僕もあんな感じで自信満々にやってみたいです。
■初挑戦の音楽劇は「すべてが新鮮」
――稽古の感触は、どうでしょう。
新しいことだらけで、とにかく、難しいです。「歌が得意」とずっと言い続けてきたのですが、音楽劇なので、歌い方が、これまでやってきたことと全然、違います。アドバイスを頂きながら、試行錯誤しながらやっています。お芝居も、前回出演の舞台『ラン・フォー・ユア・ワイフ』(2021年11月/関西ジャニーズJr. 今江大地主演)とはぜんぜん違います。演出・振付のKAZOOさんは、「自分の思ったとおり、自由に動いていいよ」と言って下さったのですが、全部が今までと違っています。なので、すべてが新鮮で、毎日がめちゃくちゃ楽しいです。
――歌は、ファンの方も楽しみにされていると思います。
これまでは、技術などはほとんど意識していなくて、自分が思うとおりに歌ってきたのですが、今回は、色んなことを意識して歌うようにしています。「感情を込めて、その景色が見えるように歌いなさい」、「一番最初の母音の発音をきれいに発音しなさい」などとアドバイスも頂いています。ボイトレをしたことがなかったのですが、発声をよくするためのレッスンもして頂きました。毎日発声のトレーニングをやっています。技術的な課題が多くて、難しいことばかりなのですが、新鮮なことが多くて毎日、うまくなってる気がして、めっちゃ楽しいです。
――芝居の方では、泣きじゃくるシーンもありますね。
僕は、感情を大きく動かすことは得意なんじゃないかなと思っています。台本を読んでいても、あのシーンでは、込み上げてくるものがあり、本当に悲しくなってくるんです。意識せずに、泣く演技ができるんじゃないかなと思います。
――あと、セリフが多いそうですね。
セリフは、尋常じゃないくらい多いです(笑) 。ずっとしゃべりっぱなしです(笑)。 独白や、ナレーション的なセリフも多いので、観に来てくださった方は、僕の姿をずっと見ることができるのではないかと思います(笑)。
――セリフは、どのように覚えているのですか?
舞台『ラン・フォー・ユア・ワイフ』に出させて頂いたときに、台本を読み込んで、そのうえで、何回も立ち稽古を重ねていけば、セリフが身に着くことを覚えました。なので、今回も、その方法で取り組み、本番までには、しっかりと覚えたいと思います。
――前作で、多くのことを得たようですね。
はい。ポジティブに考えることができるようなりましたし、「やればできる」ということを学ぶことができました。前作では、劇中での行動や感情が、すべて決まっていたのですが、今回は、「自由に、自分が思うことを探していってください」と言われています。お芝居中に、自分が考えたことを行動に移し、自然に動くことが苦手だと感じていますので、そこは挑戦になります。
自分で言うのも変なのですが、僕の長所は、まじめにやるところだと思います。今はすべてが新鮮で、まじめにやった分だけ自分のレベルが上がることを実感しているので、しんどいとは思わないんです。まじめにやることが取柄だし、前作でメンタルも強くなったので、今回も難しいことだらけですが、なんとか乗り越えて、素晴らしい作品にしていきたいです。
――今回は、座長でもありますね。
僕はまだ、座長としては全部が未熟なので、できることはすべてやり、みんなから、僕が座長でよかったと言ってもらえるくらい努力することが大事なのかなと思っています。とにかく、頑張ることしかできないので。
「薔薇」「ヘビ」「キツネ」3役の北翔海莉
■山本一慶、北翔海莉、天真みちるら共演者には驚きの連続「参考にさせて頂いてます」
――共演者の方の印象は、どうでしょう?
みなさん、優しいのですが、山本一慶さんは、特に優しいです。僕は人見知りなのですが、一慶さんは目を観て話してくださる方で、最初はあまり話せなかったのですが、一慶さんから話しかけてくれました。発声の練習をしているときもアドバイスをくださって、お世話になっています。飛行士と王子さまはずっと一緒にいるので心強いです。歌もとてもうまくて、お芝居もすごいんです。学ぶところしかないので、参考にさせて頂いてます。
北翔海莉さんは、レベルが違うと言いますか、うますぎるんです。歌でも、セリフでも、そのときの情景が見えるんですよ! 声もめちゃめちゃ通るし、読み合わせの段階でもう、お芝居がすごかったです。
「自惚れ屋」「実業家」「地質学者」「販売員」の4役を演じてくださる天真みちるさんも、すごいんです。お腹からびっくりするくらい声が出ていて、発声の仕方からぜんぜん違うんですよ。「すげえ」と、驚いています。皆さんからいっぱい学ぶところがあります。
■早朝に発生練習&ジョギング……本番に向けて生活も見直し
――公演は、兵庫、東京、愛知と全国を回ります。フィジカル的にもハードになると思いますが、コンディション作りや生活リズムで気を付けていることはありますか?
今まで朝にトレーニングをしたことはなかったのですが、発声練習のひとつに、筋トレをしながらやる練習法があります。今回はそれを毎朝やってみようと思っています。また、ジョギングもしてみようかなと。そうすれば、生活リズムもよくなるのではないかなと思います。普段は、大学がないときとかは、昼に起きたりして、自堕落な生活をしているのですが(笑)、今回の音楽劇を経て、生活リズムも正していこうかなと思っています。
■山本一慶と歌でユニゾンも!
――公演を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。
見どころとしては、後半に一慶さんと一緒に歌う二重唱のシーンがあります。一慶さんが歌がすごくうまくて、稽古では、ついていくことで精いっぱいなのですが、本番までには僕もうまくなって、一緒に歌うところを楽しんで頂けるように頑張ります。
とにかく、初めてのことだらけですが、自分のできることから毎日、努力して、最終的には、観に来てよかったなと思って頂ける王子さまになれるように頑張ります。ぜひ、観に来てください。
取材・文=竹内みちまろ
公演情報
兵庫/2022年4月28日(木)、29日(金祝)あましんアルカイックホール・オクト
東京/2022年5月5日(木祝)~7日(土)あうるすぽっと
愛知/2022年5月13日(金)~15日(日)デザインホール
原作:サン=テグジュペリ 音楽:中村匡宏 上演台本:助川順子 演出・振付:KAZOO
企画・製作:アーティストジャパン
◇ホームページ:https://artistjapan.co.jp/lepetitprince2022/
◇Twitter:@ajlepetitprince