「もっと大きなアホになるために」劇団子供鉅人、解散を発表。主宰・益山貴司の特別メッセージを掲載。
解散を発表した「劇団子供鉅人」劇団員たち。 [撮影]豊島望
フリーキーなぐらいに個性にあふれた俳優たちが、他ジャンルの表現もいろいろと盛り込んだ自由な舞台の中で、ハイパーでいて哀愁にあふれるドラマを展開する「劇団子供鉅人(こどもきょじん)」。旗揚げした大阪から、東京に拠点を移した後も、順調に活動を続けていた彼らだが、「新しい道に進むため」という理由で解散することを、5月5日の“こども”の日に発表した。解散にともなうイベントなどは、現時点では特に予定していない。
「劇団子供鉅人」主宰の益山貴司(2019年)。 [撮影]吉永美和子
劇団子供鉅人は、主宰で作家・演出家の益山貴司&俳優・ダンサーの寛司兄弟を中心に、2005年に大阪で結成。なかなか一発では読んでもらえないという劇団名は「子供のようで鉅人、鉅人のようで子供」の略。人間や社会の清濁をあわせ呑んだようなテーマを、シュールかつファンタジックに描き出す物語を、築100年の長屋を舞台にするとか、大阪の川をクルージングしながらだとか、ガチの女子プロレスを行う(ガチ過ぎて公演中に怪我人が続出したそう)とか、びっくりするような方法論を使って上演してきた。
劇団子供鉅人『クルージングアドベンチャー3』(2014年) [撮影]吉永美和子
2014年からは本拠地を東京に移し、従来のトリッキーなやり口から、スタンダードな「演劇」を意識した路線に。100人の俳優を使ったシェイクスピア芝居や、長尾謙一郎の漫画『ギャラクシー銀座』の舞台化など、表現の幅をさらに押し広げた。劇団公演以外にも、貴司&寛司兄弟がそろって「NODA・MAP」の舞台に出演したり、山西竜矢は「ピンク・リバティ」というユニットで活躍するなど、それぞれの劇団員たちの外部活動も、高く評価されている。
パルテノン多摩×子供鉅人特別公演 100人シェイクスピア『夏の夜の夢』(2018年) [撮影]佐藤祐紀
どんなスタイルであれ、ユーモアとサービス精神があふれる作風は、間違いなく大阪人の血と、大阪独特の風土で育まれたもの。しかし大阪での公演は、コロナ禍もあって2019年の『不発する惑星』が最後となってしまった。益山貴司からの解散コメントは、劇団公式サイトにも掲載されているが、SPICEでは特別に、特に関西の人たちに向けたメッセージを送ってもらった。
関西の皆様
解散します。怒らんとったってください。大先輩の中島らも氏が「アホらしくなって」劇団を抜けたのより、もっと前向きな理由です。「もっとアホになりたい」からです。劇団員ひとりひとりがもっとアホになって、それぞれの道を突き進みたいからです。思い返せば、今はもうない「森ノ宮プラネットステーション」のパブリックスペース(実家からチャリで十分!)で、子供鉅人の前身となる劇団の、そして、人生で初めてお客様から入場料をいただいての劇場公演を行ってからはや二十年近く。大阪やからできたこと、関西やから生まれたことが沢山ありました。「それ、おもろいやん」と言う関西人のコンセプトに我々は、どれだけ救われ、勇気づけられてきたか。エピソードを思い返しても枚挙にいとまがないどころか、毎秒いとまがないくらいです。せやけど、解散します。いつかきっと、もっと大きなアホになって、「アホ鉅人」となって関西に帰ってくるでしょう。アホアホ言いましたが、本当に今までありがとうございました。ほな、またね。
劇団子供鉅人代表 益山貴司 大阪新世界にて
関西が生んだ小さな巨人たちの旅立ちは、正直言ってさびしいことだ。しかしそれぞれの道を歩みだす彼らが、さらに大きくなって……それこそ巨人の中の巨人(鉅人鉅人?)となって、何らかの形で私たちの前に帰ってくる日を、心待ちにしたい。
劇団子供鉅人 ダイジェスト集 2014 - 2017
劇団情報
■公式サイト:http://www.kodomokyojin.com/