「みなさんと物語を作っている」鈴木愛奈『2nd Live Tour Belle révolte -invitation to Conquest-』

レポート
アニメ/ゲーム
2022.6.2

画像を全て表示(12件)

2022年5月29日(日)、パシフィコ横浜 国立大ホールにて『Aina Suzuki 2nd Live Tour Belle révolte -invitation to Conquest-』が開催された。4月30日に大阪より始まり、名古屋、千歳、そして今回の横浜と、全国の4会場をつないで開催されてきた声優アーティスト鈴木愛奈の、2度目のソロライブツアーの千秋楽となる。スクールアイドルプロジェクト『ラブライブ!サンシャイン!!』に登場する「Aqours(アクア)」のキャストとしても実績を重ねながら、昨年は初ソロライブツアーの成功を収め、2021年末にリリースされた2枚目のアルバム『Belle révolte』の新曲もひっさげての2ndツアーとなった。1stライブツアーに比べ、より「ダークでゴシック」となった、鈴木愛奈の魅力で満ちた舞台の模様をレポートしていく。

ステージセットも凝った舞台が幕開けと自由過ぎるバンド紹介に客席も大盛り上がり

神殿を模したような舞台セットの上に、ゴシックスタイルのブルーの衣装を身にまとい、黒い旗を振りながら登場した鈴木愛奈。登場したセットの高い位置から1曲目に披露したのは、2ndアルバム1曲目の「WONDER MAP」。ブルーのライトで照らされるステージに、観客が手に持つブレード(ペンライト)も青一色に。早くもオールスタンディングで今宵の歌姫の登場を迎えた。

2曲目では、ステージは赤に。セットの階段を降りてきて頭の上で大きく手を叩けば、観客もそれに手拍子で応える。歌うのはアルバム曲続きで「暁のdetermination」。激しく力強い生バンド演奏に乗って響く、こぶしの効いた独特なビブラートが耳に心地いい。客席でもたくさんの赤いブレードが踊り、会場の熱は上がっていく。

続いて「横浜行くよ!」と叫び、3曲目に1stアルバムから「遙かなる時空-そら-を翔ける 不死鳥-とり-のように」を熱唱。3曲続けてロックな楽曲に、会場からは割れんばかりの拍手が巻き起こる。

MCパートに移り、「ありがとうございます。皆さんどうもこんばんは、鈴木愛奈です」と挨拶。「1stライブの最初に立たせていただいた場所ですよね。ここに再び帰ってくることができて、本当に嬉しく思います」と述べれば、帰還を祝う温かい拍手で会場は満たされた。

MCを終え、4曲目では「RED BLAZE : BLUE FLAME」を披露。今度は赤と青の2色の照明で照らされたステージの上、ダンスを踊るようにリズミカルに体を揺らしながら歌う。観客もそれに、片方は赤、もう片方は青と、ブレードの2本持ちで声なき声援を送る。

5曲目の「Cocoon」では、ステージの端までいき、遠くのファン届くようにも手を振る。また、歌っている最中に手を下から上へと上げていく振り付けを見せると、それにシンクロして観客もブレードを下から上へ。さらに6曲目の「月夜見Moonlight」で、ステージ照明が月の光をイメージした黄色になれば、ブレードの色も黄色1色となった。まるで客席の端から端までが演出の一部となったような一体感が生み出される。

続くMCパートで、「とっても楽しい!めちゃめちゃ熱い!パシフィコ広いわ!(ステージ端まで行っても)遠い!」と興奮気味に叫ぶ。本当に心の底からライブを楽しんでいるとわかる明るい口調のまま、続けてバンドメンバーの紹介へと移っていく。

ベース、ha-j。ドラム、一Q(イッキュウ)ことhisashi ichinose。キーボード、ミッキーこと酒井ミキオ。ギター&バンマス、ちのっぴこと知野芳彦。一人一人丁寧に挨拶を述べるが、「収録が入ってるから、皆さんキリっとされてますけど……」と、鈴木愛奈は不満げな様子だ。

そこで、他の都市の公演でもやったような「フザケたバージョンでやっていただけたら嬉しいな」とリクエストすれば、一人一人カン高い声で「ハハッ、僕はha-jだよ」「僕、ドラムの一Q」「僕、みっきー!このMCをするために半世紀ぐらい生きてきました!」と、某有名キャラクターを真似たコミカルな自己紹介をし出す。最後はバンマスの知野芳彦も、「こんばんはー!このコーナー、苦手だよー!」と声色を高くして叫び、客席からは爆笑代わりの大きな拍手が沸き起こった。

これに鈴木愛奈も大笑いしながら、「1stのときは緊張するし、絡めなかった。今なんてグイグイですもんね」と述べる。最後には彼女も「ハハッ、私、ボーカルの鈴木愛奈だよ!」としっかり物真似をキメてみせ、再びドカンと大きな拍手で会場が沸いた。

幸せなムードのまま、7曲目には「Happiness」を披露。また8曲目では、手拍子しよう!と言い、客席からの手拍子と共に「やさしさの名前」と、ポップで陽気な楽曲を続けた。間奏ではベースのha-jも手拍子を入れ、楽しげな雰囲気を盛り上げていく。

9曲目は打って変わって、ピアノソロからスタートする静かな楽曲がスタート。ha-jもベースをアコーディオンに持ち替えて奏で始めたのは、「antique memory」。鈴木愛奈は曲に合わせてワルツを踊るような振り付けも披露しながら、ひときわ大人っぽい声で歌い出す。観客もブレードをゆっくり振りながら、その伸びやかな歌声に聞き惚れた。

演奏が終わって拍手が響く中、ステージは暗転し、ボーン、ボーンと古い柱時計のような音が聞こえる。その音に、おもむろに着席を始める観客たち。10曲目、雷の音と共におどろおどろしい「魔女ノ策略」が流れ始めた。ステージにはトンガリ帽子をかぶった黒ずくめの魔女が現れ、煙たつ怪しげな鍋を中央へ運び込む。

その後、鈴木愛奈はステージセットの上から登場。誘われるように階段を降り、中央の鍋をのぞき込む彼女。煙を浴び、苦しげに頭を抱えて頭を抱えてしまう。再び2階へのぼりながらも、フラフラとよろけ、そのまま曲の締めくくりに合わせてセット端のソファの上に倒れ込んでしまった。

ここで「ダークでゴシック」なライブの前半が完結、ということだろうか。息を飲んでしまうような短い劇が終わり、ステージが暗転した後にも大きな拍手が沸き起こった。

白いドレスに着替え後半がスタート「Reverse-Rebirth」「もっと高く」などアニメ主題歌も披露

再びステージに明かりが灯って披露されたのは、後半の幕開けにふさわしい華やかなバンドソロだ。客席から温かい手拍子が送られる中、ドラム、ベース、キーボード、ギターと、それぞれのテクニックを披露していく。

やがて、客席は再びオールスタンディングに。白いドレスに着替えた鈴木愛奈が登場し、「横浜、もっともっといくよー!」と叫んで11曲目に「Reverse-Rebirth」を、さらに12曲目に「Endless Pain」と、アニメ・ゲームの主題歌を2曲続けて披露した。

そして13曲目。また雰囲気をガラリと変え、扇子を持って熱唱するのは「祭リズム」だ。和テイストのロック曲に、祭りのような赤で染まる客席のブレード。「ソーランソーラン」「ドッコイショー、ドッコイショー」などのコーラス音声に合わせて、光のウェーブが巻き起こる。間奏では鈴木愛奈も「みんないいねー。もっとイケるでしょ?」「もっと!」「最高!」と叫び、会場の熱気をいっそう高めていく。

続くMCでは「とてつもなく熱いです。みんなも熱いですか?」と言えば、返事代わりの拍手で沸く客席。しかし「次からラストスパートです」とライブが終盤に差し掛かったことを告げると、ブーイング代わりにブレードをクロスし、「×」を作ってアピールする観客も大勢見られた。それに鈴木愛奈も、「楽しんでいただけてるんだなと、うれしいです」と感謝を述べる。

14曲目には、そんなラストスパート1曲目に相応しいアップテンポでメロディアスな「isolation」を披露。何オクターブも高い声で歌われる歌詞のひとつひとつが胸に突き刺さり、思わず泣けてきそうだ。だがその次には、15曲目にアニメテーマ曲「もっと高く」を熱唱。切なくなった心を包み込んでくれるような、優しく力強い歌声を会場中に響かせた。

会場が拍手で沸く中、MCパートを挟んでいよいよ最後の曲へ。「(バンドの)みなさんが私のために作ってくださった大切な楽曲です」と言い、すべてのファンへありがとうの気持ちを込めて贈る16曲目、「愛の名が響く場所」を歌った。曲の後半では、自然に客席から手拍子が鳴る中、「ありがとうございましたー!」と大きく叫んで、感動のステージを締めくくった。

アンコールではアニサマ2年連続出演への想いも

誰もいなくなったステージに向けて、拍手が鳴り止まない。だんだんとアンコールの手拍子が早くなっていき、やがて「アンコールありがとーう!」と鈴木愛奈、そしてバンドメンバーがステージに戻ってきた。

アンコールの1曲目に披露されたのは「えとにゃんらん」だ。ネコをイメージした可愛らしい振り付けで元気いっぱいに踊りながら歌う鈴木愛奈に、客席のブレードはピンク1色で染まった。

「ありがとうございましたー!みなさんの大きな拍手が裏まで聞こえてきました」と続くMCで感謝する鈴木愛奈。グッズ紹介を挟んだ後で、「千秋楽なのでいろいろお話ししたい」と、少し真面目に、長めのトークを行った。

1stライブのときは無我夢中で、楽しむと言うよりは不安と緊張でいっぱいだったと言う彼女。2ndライブではツアーを楽しめるようになっただけではなく、「(ライブツアーは)ひとりで作っているんじゃなくて、みなさんと物語を作っているんだ」と気持ちの変化があったことも述べた。

また、今年の夏にも『アニサマ』の出演が決まっていることや、主題歌や声優で参加するアニメ『邪神ちゃんドロップキックX』が放送開始されることにも触れ、「アーティストとしても声優としても成長して、(ファンのみんなに)恩返ししたい」と語った。

そんな気持ちを込めながら、アンコールの2曲目には「今日のわたしをこえて」を披露。「本当にありがとうございました!楽しかったよー!最後まで楽しんでいくよ!」と言い、手を振りながら歌い出した。

それだけでは終わらない。3曲目には本当のラストの曲として、「ヒカリイロの歌」を熱唱。彼女が「横浜ーっ!」と叫べば、客席からの手拍子もその日一番の力強さで鳴り響いていく。ブレードは、それぞれが思い思いの色に。カラフルな光が会場中に伸びていく。「最高だよみんな!ありがとう!大好きだ!」と、最後は大きくジャンプで舞台を終えた。

演奏終了後、舞台の上から観客も含めた集合写真を撮り、バンドメンバーを舞台の向こうに送り出した鈴木愛奈。1人舞台残って客席に手を振り続けながら、最後のMCトークを行った。ソロデビュー直後に世間がコロナ禍になってしまい、「ソロでは声だしのライブを経験したことがない」と言う彼女。「楽しめる日がきっとすぐきてほしい。通路を練り歩いたりして、みなさんの近くにまで会いに行きたい」という新たな夢を語った。

それができない今だからせめてということだろうか、最後まで舞台の端から端へ行き、一人一人と目を合わせるように、ずっと手を振り続ける。やがて舞台の袖に向かって行きながら、最後にうやうやしくおじぎをすると、客席からは一層大きな拍手が鳴り響いた。

1st、2ndと、ツアーを重ねてきた鈴木愛奈。ソロ2回目にして、ここまで完成されたライブがあるのだろうかと驚いてしまう。だが、今回の舞台の中だけでも「ダークでゴシック」な色合いを強めながら、他にもさまざまな色の輝きを見せてくれた。そんな風に、今後もまたいろいろな形で発展・変化していくことを期待させるような舞台になったと感じた。

アニソンシンガーを夢見て北の大地から旅立ち、一つひとつ夢を叶えている彼女。彼女が願うのだから、このコロナ禍の世の中だって、もうすぐに終わりを迎えるような気がしている。少なくともそんな希望を抱ける舞台だったことは間違いない。何十回でも何百回でも、またこうやって輝けるライブを目にしてみたくなった。

取材・文:平原 学

セットリスト

Aina Suzuki 2nd Live Tour Belle révolte -invitation to Conquest-@パシフィコ横浜 国立大ホール

2022.5.29(Sun)

01. WONDER MAP
02. 暁のdetermination
03. 遙かなる時空-そら-を翔ける 不死鳥-とり-のように
04. RED BLAZE : BLUE FLAME
05. Cocoon
06. 月夜見Moonlight
07. Happiness
08. やさしさの名前(TVアニメ『モンスター娘のお医者さん』EDテーマ)
09. antique memory
10. 魔女ノ策略
11. Reverse-Rebirth(TVアニメ『逆転世界ノ電池少女』EDテーマ)
12. Endless Pain(アプリゲーム『N-INNOCENCE-(エヌ・イノセンス)』主題歌)
13. 祭リズム
14. isolation
15. もっと高く(TVアニメ『いわかける! - Sport Climbing Girls -』OPテーマ)
16. 愛の名が響く場所
En01. えとにゃんらん(アニメ『えとたま ~猫客万来~』テーマ)
En02. 今日のわたしをこえて
En03. ヒカリイロの歌(TVアニメ『はてな☆イリュージョン』EDテーマ)

 
シェア / 保存先を選択