おかえり!3年ぶりに活動を再開するART-SCHOOL。療養から復活した木下理樹、最速インタビュー
■ART-SCHOOLみたいな音楽を必要としている人はいるはずだっていう確信はある
──そもそも遡ると、木下さんにとっての音楽は10代の頃に抱えていた陰鬱さが音楽によって救われた、そういうシェルターのような役割からスタートしていて。そういう作用がART-SCHOOLの楽曲にもありますよね。
そうだね。今の10代の子たちがどういうことを感じているのかはわからないけど、ART-SCHOOLには、誰かの心の一番秘密にしている大切な部分にそっと存在しているみたいなイメージがあって。そういうバンドって多くないと思うから、いてもいいんじゃないかって思う。
──療養中に頻繁にプレイリストをポストしていたのも、苦しんでいる人にとって救いになるような音楽がある、っていうことを少しでも知ってほしかったからだと言ってました。
そうだね。こういう癒される曲があるということを知ってほしいと思ってプレイリストを作ってたけど、それは自分のためでもあったしね。スネイル・メイルがこの前出した『Valentine』ってアルバムも、リハビリ施設から出た後のことが赤裸々に描かれてるんだけど、ポップで美しいんだよね。そういう体験をエモーショナルにポップな作品として描けるのは良いなって思ったよね。曲がすごく良いし。
――今回の体験を経て、木下さんにとっての音楽の役割は何か変化したところはあるんでしょうか?
好きなアーティストの新譜は日常的にチェックしてるけど、変わったところも変わってないところもあって言葉にするのは難しいんだけど……でも、やっぱりART-SCHOOLみたいな音楽を必要としている人はいるはずだっていう確信はあって。そこを間違えなければいいかなとは思ってますね。
■みんなの前でちゃんと「復活したよ」って言いたい
──この3年間、支えになっていたものというと?
やっぱりいろんな人の想いによって支えられてきたよね。メンバーや益子さん、もちろん俺自身の思いもあるし。ART-SCHOOLらしくて、良い作品を出そうっていうのがまず最初のゴールだったから。ほんとすべての想いに支えられて辿り着いたという感じがしてますね。
──2019年の「NANA-IRO ELECTRIC TOUR」のASIAN KUNG-FU GENERATIONのステージでは、戸高さんだけでなく、かつてART-SCHOOLのメンバーだった日向秀和さん(ストレイテナー/Nothing’s Carved In Stone)と大山純さん(ストレイテナー)も参加して「FADE TO BLACK」が演奏されるという出来事もありましたね。
「おまえはまだこんなところで終わるような人間じゃないんだぞ」って言われたような気がしたよね。でも、言うは易しでレコーディングには時間がかかったけど、結果的にいい作品ができたなと思ってるので、いろんな人に聴いてほしいなあって思うよね。
──復活ライブに向けて、今どんな気持ちですか?
まあでも、そんなに気負わずにやろうと思ってる。あまり自分を追い込み過ぎても、それがプラスになったライブってほとんどないから。とにかく気負わずに、良い演奏と良い歌を届けられればいいなあと思ってますね。8月のリキッドルームはたくさんの人が申し込んでくれて。だから、みんなの前でちゃんと「復活したよ」って言いたいよね。
──2018年の『In Colors』のツアーの頃から体調を崩して薬を飲む量が増えていった要因のひとつとして、思うようなライブパフォーマンスができなかったことを挙げていましたけど、その点に対しては今どんなことを考えていますか?
今、その時より声が出てるんだよね。だから精神的なものだったんだと思う。勝手に自分を「もう駄目だ」って追い込んでた気がする。薬の飲み過ぎもあったんだと思うんだけど。はっきりとした原因は病院に行ってもわからなかったけど、療養して練習していく内にちゃんと声は蘇っていったから。何年もステージに上がってないから実際どんな感じになるのかわからなくて緊張はするけど、楽しみたいなっていうのが一番かな。ガチガチに決まった、「かっこいいだろ?」って感じじゃなく、「ああ、いいなあ」って思ってもらえたら良いなって思ってる。
──その後のことについてはどんなことを考えていますか?
このEPがめっちゃ売れて、アルバムが作れるといいよね。それを願ってるよ。「あの人がART-SCHOOLのこと好きって言ってたよ」っていうことをよく聞くんだけど、そういう人たちってあまり表立って言わなかったりするんだよね(笑)。
──ひっそりさせておきたいんですかね(笑)。
その気持ちもわかるんだけど、それを表立って言ってほしいなあと思います(笑)。
取材・文=小松香里 撮影=岩澤高雄(The VOICE)
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ART-SCHOOL『Just Kids .ep』