ミュージカル『スワンキング』通し稽古レポート ~新たなオリジナルミュージカルの扉が開く~

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2022.6.7
ミュージカル『スワンキング』

ミュージカル『スワンキング』


2022年6月8日(水)より、東京国際フォーラム ホールCにて、ミュージカル『スワンキング』が開幕する(大阪・愛知・福岡でも上演)。この度、オフィシャルより稽古場レポートが届いた。


音楽、才能、愛、裏切り、そして夢――。今、新たなオリジナルミュージカルが誕生しようとしている。

都内スタジオで行われたミュージカル『スワンキング』の通し稽古。初日まで約2週間となったこの日、稽古場を見学する機会を得た。キャスト、スタッフともに全員不織布マスクを着用しての稽古だったが、そんな状況を軽々と飛び越えるカンパニーの熱量と劇世界の広がりに、胸の高まりが収まらない時間となった。

舞台は19世紀のバイエルン王国。“狂王”とも呼ばれたルートヴィヒ二世と“天才”作曲家・ワーグナーとの関係を軸に、激動の時代を生きた人々の物語が紡がれる。

白鳥王ことルートヴィヒ二世を演じる橋本良亮。立ち姿の美しさと全身からにじみ出る気品、その凛々しい佇まいで場をけん引する姿が頼もしい。音楽を愛し、芸術で諸国を平和に導こうとするも国民には理解されず、次第に孤独に苛まれる姿が胸に迫った。

天才的な音楽家・ワーグナー役の別所哲也。天賦の才を宿す芸術家でありながら、プライベートでは欠落の多い人物を人間臭く、チャーミングに演じる。クセの強さと輝く才能とを手品のように切り替え見せるさまは流石のひとこと。

この2人を取り巻くキャラクターも非常に魅力的だ。偉大な作曲家・リストの娘で夫を持つ身でありながら、ワーグナーのもとへ走って彼を支え、次第にプロデュースすらしていくコージマ(梅田彩佳)、敬愛するワーグナーに妻を奪われ苦悩する指揮者のビューロー(渡辺大輔)、その優しさゆえに心がむしばまれていくルートヴィヒ二世の弟・オットー(今江大地)、宰相として冷静な視点を持ち国王を支えるルッツ(牧田哲也)。

さらに『スワンキング』にはミュージカルラバーに馴染み深い人物も登場する。その筆頭が夢咲ねね演じるエリザベート(シシィ)だ。じつはシシィ、史実でもルートヴィヒ二世にとっては姉のような存在で、この作品では特に冒頭とラストで重要な役割を果たす。シシィの妹・ソフィや母・ルドヴィカも作中に存在するので、ミュージカル『エリザベート』と同時代の物語という視点でも楽しめそうである。

日本のオリジナルミュージカルのアキレス腱が音楽ともいわれるが、本作『スワンキング』においてそのロジックは通用しない。これまでおもに三谷幸喜と組み『ショーガール』や『日本の歴史』といった作品を成功させてきた荻野清子の楽曲は壮大かつ繊細で、一瞬のうちに私たちを19世紀のバイエルンへと連れ去ってくれる。歌詞は脚本と演出を手掛けるG2が担っており、非常に自然で面映ゆさを感じさせない。この日の稽古場ではピアノ演奏のみだったオリジナル楽曲が生のオーケストラで奏でられ、手練れの俳優たちが歌うさまを想像するだけで心が劇場へと飛んで行くようだ。

通し稽古を取材して、本作のテーマのひとつが“夢”だと感じた。ワーグナーは荘厳なオペラを自身が願った劇場で上演する“夢”を叶えるが、彼の1番の理解者、信奉者と自負するルートヴィヒ二世の“夢”は潰える。芸術を愛し、音楽の力を信じたスワンキングの“夢”が白い衣とともに湖の奥へと消える姿はとても美しく、そしてせつない。彼は最後にどんな“夢”を見たのだろう。

『スワンキング』は史実を基に脚本や楽曲が書き下ろされた完全オリジナルミュージカルだ。日本のオリジナルミュージカルに先入観がある人や、どこか気恥ずかしさを感じる人にこそ、この作品の世界観を体感してほしい。初演の客席にいたことを、後できっと自慢できるはずだから。

美しき白鳥王と不完全な天才が織りなす物語の幕がもうじき上がる。新たなオリジナルミュージカルの扉が開くその時が楽しみでならない。

取材・文=上村由紀子(演劇ライター)

公演情報

ミュージカル『スワンキング』
 
脚本 / 詞 / 演出:G2
音楽:荻野清子
出演:
橋本良亮(A.B.C-Z) 別所哲也 梅田彩佳
 
渡辺大輔 今江大地(関西ジャニーズJr.) 牧田哲也 夢咲ねね
 
中井智彦 藤田奈那 天宮良
 
朝隈濯朗 彩橋みゆ 荒田至法 大音智海 加賀谷真聡 河合篤子 後藤晋彦 島田彩 俵和也 堤梨菜 安福毅 山田裕美子

<東京公演>
日程:2022年6月8日(水)~6月17日(金)
会場:東京国際フォーラム ホールC
金額:S席13,500円、A席9,500円、B席5,500円(全席指定/税込み)
企画制作:TBS/サンライズプロモーション東京
 
【来場者限定スペシャル・プレゼント】
特典配布日
6/13(月)13:00/18:00
6/15(水)13:00/18:00
来場者全員にルートヴィヒ二世とワーグナーのビジュアルポストカードをプレゼント
 
【アフタートークショー】
6/10(金)18:00公演
別所哲也 梅田彩佳 渡辺大輔
6/14(火)13:00公演
梅田彩佳 夢咲ねね 藤田奈那
司会:中井智彦

<大阪公演>
日程:2022年7月1日(金)~7月3日(日)
会場:オリックス劇場
金額:S席 13,500円 A席 6,500円 B席 4,500円(全席指定/税込み)
主催:関西テレビ放送/キョードー大阪 後援:FM COCOLO
 
<愛知公演>
日程:2022年7月9日(土)~7月10日(日)
会場:刈谷市総合文化センター 大ホール
金額:S席 13,500円 A席 9,500円 車いす席 13,500円(全席指定/税込み)
主催:メ~テレ/メ~テレ事業 共催:刈谷市/刈谷市教育委員会/刈谷市総合文化センター(KCSN共同事業体)

<福岡公演>
日程:2022年7月17日(日)~7月18日(月・祝)
会場:キャナルシティ劇場
金額:S席 13,500円 A席 9,500円(全席指定/税込み)
主催:RKB毎日放送/TKUテレビ熊本/キョードー西日本
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