日本画家・木島櫻谷の障壁画が京都・南陽院にて新発見 特別展『木島櫻谷 ― 山水夢中―』に合わせ特別初公開
南陽院(室中)
近代京都画壇を代表する日本画家・木島櫻谷(このしまおうこく 1877-1938)による障壁画が、京都・南禅寺塔頭 南陽院にて発見された。この秋、泉屋博古館(京都・鹿ヶ谷)にて開催される特別展『木島櫻谷 ― 山水夢中―』の準備中に見つかったもので、展覧会開催に合わせ、2022年11月3日(木・祝)より期間限定で特別公開される。
写実と抒情が融合する洗練された画風で近年再評価が進む注目の画家・木島櫻谷。南陽院本堂の5室50面にわたる障壁画は、最盛期を迎えた櫻谷34歳渾身の大作で、櫻谷の山水画の代表と位置付けられる。これまで専門家の間でも認知されておらず、またこれほどの規模の障壁画をひとりで手がけた現存例は、近代京都でもあまり知られていない。その注目ポイントをご紹介しよう。
南陽院 木島櫻谷障壁画(室中)
南陽院 木島櫻谷障壁画(室中)
〔注目点1〕歩いて写した、古きよき日本の風景
峡谷や海浜、湖沼など、古き日本を思わせる風景が部屋ごとに展開。櫻谷が訪れた飛騨・甲府・福井・明石・奈良など日本各地の写生が生かされている。古来、禅院の山水画といえば中国の景観に根ざす理想世界を描く通例に対し、実景を踏まえたきわめて近代的感覚の山水障壁画といえる。
〔注目点2〕西洋画の影響―古くて新しい水墨山水
水墨画という古典技法を用いながら、その表現には西洋絵画の立体表現や遠近法、陰影表現といった要素がさりげなく取り込まれている。その背景には洋画家浅井忠との出会いが大きく影響していると考えられ、櫻谷は卓越した筆技で、光や大気までも描きだした。
〔注目点3〕郷愁をかき立てられる、どこかで見たような、どこにもない理想郷
題材・画法、いずれも従来の禅院にない要素が持ち込まれているが、それは実際の風景そのままではなく、画家が接した各地の風光が自身のなかで再構成された理想の世界だと言える。
南陽院(外観)
南陽院本堂の木島櫻谷の障壁画は、11月3日(木・祝)から一般に特別初公開。
南陽院より徒歩10分の泉屋博古館では、『特別展 木島櫻谷 ― 山水夢中―』が開催され、障壁画の制作背景や櫻谷の山水画の全貌が詳しく紹介される(11月3日(木・祝)~12月18日(日))ほか、同期間中には、櫻谷ゆかりの京都各地で特別な展覧会が行われる。
木島櫻谷が生前暮らした邸宅=櫻谷文庫の入場券、木島櫻谷のすべてがわかる新刊美術書『木島櫻谷―画三昧への道』・泉屋博古館展覧会図録(2冊とも泉屋博古館でお渡し)がセット(7,100円相当)となったプレミアム(価格:6100円)がイープラス限定で販売されるほか、様々なセット券が用意されている。
なお、南陽院の特別公開は、30分25名限定での公開。特別サイトでの時間予約が推奨されている。
イベント情報
休館日:月曜日
開館時間:午前10時 ~ 午後5時(入館は午後4時30分まで)
入館料:一般1000円 高大生800円 中学生以下無料
※本展覧会の入場料で青銅器館もご覧いただけます
※20名以上は団体割引20%、障がい者手帳ご呈示の方は無料
南陽院本堂《木島櫻谷 山水障壁画》特別公開
2022年11月23日(水・祝)~12月11日(日)
*月曜休
*拝観料:1,000円、時間指定制
*取扱:イープラス
木島櫻谷旧邸 特別公開
*観覧料:600円
「木島櫻谷の扇展」
*観覧料:無料