フィンランドガラスのきらめきの世界へと誘う 『イッタラ展』ナビゲーター・小関裕太インタビュー
『イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき』ナビゲーター・小関裕太
2022年9月17日(土)から11月10日(木)まで、東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムにて『イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき』が開催される。「イッタラ」は東京・表参道のショップをはじめ、日本各地の百貨店にも店舗を構えるライフスタイルブランド。グラスやプレート、インテリアアイテムなど、取り揃える製品にはデザイン性の高いものが多く、多くの人を惹きつけている。
本展の展覧会ナビゲーターを務める俳優・小関裕太は、自身もイッタラに魅了され、プライベートでも多数愛用しているという。イッタラを知るきっかけとなったフィンランドの旅から印象に残っているエピソード、そしてイッタラとの出会い、その魅力について話を聞いた。
音声ガイドには自身のエピソードも収録
遊び心ある番号を楽しんでほしい
ーー音声ガイドの収録お疲れさまでした。収録時に心がけたことや、ここは聴いてほしいと思うポイントなどがあれば教えてください。
僕自身がこのイッタラのガラス製品やデザインがすごく好きで、日常的にすぐそばにあって使っているものなので、イッタラ好きの方はもちろん、今回初めて知ったという方にも好きになっていただけるように……と意識しました。
今回の音声ガイドには、本筋とは別に、僕がフィンランドを訪れたときのエピソードだったり、イッタラの好きな部分だったりを語っているセクションがボーナストラックみたいな形で収録されています。音声ガイドってボタンを押すたびにいろんなエピソードが聴けると思うんですけど、ボーナストラックにはその専用番号があります。その番号もイッタラにちなんだちょっと遊び心が含まれているので、そんな部分も楽しみながら聴いていただきたいです。音声ガイドの本編では歴史的な部分などにも触れるし、頭を使う部分もあると思うんですけど、楽しみながら聴いていただけたら嬉しいですね。
ーー実際に見てみたいと思う作品はありましたか?
フィンランドに訪れた際にイッタラの作品は現地で結構見たんですけど、見たことのない作品があって……。それが《カンタレリ(アンズタケ)》です。フィンランドで秋の味覚として食されているアンズタケっていうキノコを表現しているガラスらしいんですけど、資料で初めて見たので、実際に見てみたいなと思っています。
フィンランドでの出会い 得たもの
また戻りたいと思える場所
ーーフィンランドに初めて訪れたのは2019年のことだと伺いました。現地での思い出など、印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
向こうでスモークサウナに入ったときのことです。サウナの場所が湖のほとりにある小屋だったんですけど、サウナ上がりに湖に飛び込んで、そのあと桟橋で寝転がる体験をしました。今でいう「ととのう」っていうのかな。鳥のさえずりや水の音、風が吹いて草木が揺れる音とか、遠くで子供たちが遊んでいる声がして。何かを考えるわけではなく、ただ目の前に広がる自然の情報がたくさん入ってきて、癒しをもらえた時間でした。またここに戻ってきたいなと思えるような瞬間だったのがとても印象に残っています。
ーー小関さんがフィンランドを訪れて得たもの、フィンランドの魅力とはなんでしょうか?
ここに戻ってきたいと思える場所ができたことが得たものだと思います。役者の仕事は楽しいことではあるけれど、自分のできなさを痛感し、成長しようと戦っている日々でもあります。そんなときにフィンランドに行って、ふっと力が抜けるような、また前に進もうと思える時間を持てたのはとても良い経験でした。一度走ったら、またここに戻ってきて、そして走って……という、ターニングポイントにできる国だなあと感じました。
ーーなぜフィンランドだったのでしょう?
もともとフィンランドに対しては、雲がかかったような先に光があるような、幻想的なイメージを持っていたんです。それと、北欧家具とかデザインが好きだったので、実際に現地に行って触れてみたいという気持ちもあって。実際はどんな国なんだろう? 知ってみたいなという思いから、フィンランドに行くことにしました。
ーーー訪れてみて、小関さんがイメージしていたものと実際とは……?
だいぶイメージと違いましたね。僕が行った時期が白夜で一日中明るかったっていうのもあるかもしれないですけど、住まう人たちもみんな明るくて、ずっとお酒を飲んでいて。気が強いわけでもなく、ちょっと日本人と似た印象を得たんですけど、僕が出会った方々は繊細な人たちが多く、総じて好印象でした。
ーーフィンランドでイッタラと初めて出会うわけですが、どんな場面で目にしたのでしょうか?
一番覚えているのは現地を訪れたとき、デザイナーさんたちがいて、制作しているアトリエがあったのですが、そこでイッタラのカラーガラスがショーケースに詰まっているのを目にしたんです。すごくちっちゃいガラスがたくさん入っているショーケースが、これまたたくさん並んでいて。それがすごくきれいで目を奪われました。あとは、どのお店に入っても “赤い「 i 」のロゴマーク” のシールがついた製品があって、こんなものが自分の家にひとつでもあったらいいな〜なんて思いながら、そのあたりからじわじわとイッタラというものを認識していきました。
ーーイッタラに出会ったときの感動を一言でいうと?
「豊かだなぁ」って思いました。イッタラって寒色が多いんですけど、寒色でもちょっと温かみを感じるところもあって。インテリアとして私生活に溶け込みながらもフォトジェニックな一面もあるし、特徴的だなと。当時、今住んでいる家に引っ越す前で、こんなガラス製品が似合う家に住みたいなあ、でも果たして買ったところで今の家に合うのかな、僕に見合うのかな〜なんて思っていました。
その後、向こうでお世話になったコーディネーターの方に久しぶりお会いしたときに、イッタラのグラスを旅土産としてプレゼントしてくださったんです。そこから僕とイッタラ製品との関わりが増えていきました。やっぱり手元にあるからにはそれに見合った部屋作りをしたいなと思って。それから生活もガラッと変わって、どんどん豊かになっていきました。例えばフラワーベース。クランクアップしたとか、撮影が終わったとか、何か区切りのタイミングでお花をいただく機会があるんですけど、それを飾る花瓶がなかったので、最初は安いものを買って使っていたんです。でもイッタラの花瓶を使うようになると、いただいた花を飾るだけでなく、自分で買うことも多くなりました。生活に彩りが増えたことで、同時に心の余裕も増えた実感があります。
ーーそうしてご自身の周りにイッタラが増えていったのですね。
仕事柄いただく機会もありますが、自分で買うことも多いです。美味しいお酒をこれで飲みたいなと自分用に買ったのもありますし、僕も27歳になって、親戚が結婚したり子供が産まれたりと祝い事が増えたので、そのお祝いとしてプレゼントすることもあります。日常でも使いやすいですし、重たすぎるものでもないから、周りにプレゼントもしやすい。それから、息抜きをするのに良い空気を吸いたいなと思ったら、イッタラの表参道店に行くことも(笑)。買わずとも見ているだけでも気分転換になります。
思い出のグラス、癒しの鳥……
生活を豊かにするイッタラの製品
ーーご自身が持っているイッタラのうち、ベスト3を挙げるとすると?
うーん(少し悩む)。1つめは、フィンランドでお世話になった方がくださったグラスです。一色として同じ色がないというコンセプトの製品らしく、僕や僕のマネージャーさんなど何人かに向けて「こういう色のイメージだったから」と買ってきてくださったんです。僕は青と緑がかったような色だったんですけど、その色は僕自身もすごくしっくりきたんです。その方が僕をイメージして買ってくださったことも嬉しかったし、自分の感覚的にも好きな色合いだったことも含めてナンバーワンですね。これ以外は2個ずつ、4個ずつとセットで持っているものも多いけど、このグラスはひとつだけ。水を飲むときなど普段使いしているのですが、思い出もあるので自分専用のものです。
2つめはオイバ・トイッカさんの鳥のシリーズで「クーラス レイン」。ボテっとしたブルーの鳥です。ボテっとしているので僕は “ボッテちゃん” と名前をつけたんですけど(笑)、置いてあるだけで癒しですね。実用的なものではなくて置物として、本当にただリビングに置いてあるだけなんですけど、ふとしたときに目に入って、癒しになっています。
3つめは、家でも使っている「ウルティマ ツーレ」シリーズのグラスですね。このシリーズが好きでいくつか種類を持っているのですが、最近は細長いタイプのグラスをよく使っています。氷がつららのような、水滴が滴るような形のデザインで、色合いも透明で涼やか。飲み物を入れるとその味まで変わりそうな印象的なものでした。さきほどお話しした、美味しいお酒を飲みたいなと思って手に取ったグラスというのがこれです。
ーーイッタラとのコラボをインスタに上げられているのを拝見しました。撮影をされているときはどんな気持ちで?
呼吸する間も無くずっと撮っていました。汗もかきながら、呼吸を止めながら。撮影しながらアイディアがどんどん浮かんでくるんですけど、スタジオの撤収時間は迫ってくるし……と、とにかく時間との戦いでした。僕、ほかの撮影もそうなのですが、頭を回転させているからか、めちゃくちゃお腹が空くんですよ。体のなかが空っぽに、エネルギーがすっからかんになっちゃって。あの撮影のときもそうでしたね。でも、集中しなきゃと思わなくても勝手に集中できる撮影現場だったので、大変なんですけどすごく楽しかったです。
ーーどんなふうに撮影を進めたのですか?
最初に物語の大筋を書き出してから撮影しました。いざ始めるとこんなシーンも撮ってみたいなと考えが浮かんできたのですが、このマグカップを手に取ってみたいなと思っていただくことと、実際に使うときに、このエピソードや写真を思い出していただけるような作品づくりにしたいということが、何よりも第一でした。作品をご覧になって、“ぼく” と “きみ” を手に取ってみたいな、お店で見つけたときに「あ、あれだ!」と思っていただけたら嬉しいです。
人によって捉えかたが違ってもいい
見るたびに新たな発見がある、アートの魅力
ーー小関さんにとってアートとはどんな存在ですか?
さっきと同じ言葉になっちゃうんですけど「豊かにしてくれるもの」かなと思います。人によって捉えかたが違ってもいいんだという点が素敵ですよね。自分が制作した作品もそうですし、自分が撮られる側になったときもそうですけど、自分が思ったことで合っているのかな……とネガティブになる必要はない。賛同する人がいる・いないはもちろんあるかもしれないけれど、「僕はこう捉えた」というのはその瞬間の自分が思ったことで、もしかしたらこれから出会うものによっては自分の捉えかた自体も変わるかもしれない。そうやって進化していくものなんじゃないかなって思います。例えばゴッホの《ひまわり》は見るたびに発見がありますし、子供の頃と今とでは感じかたも違います。たぶん、これから先もいろんな発見をすると思う。でもそれでいいし、そんな部分が魅力だと思います。
ーー最後に、本展を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。
今回初めてイッタラを知ったという方には、素敵な作品がたくさんあることをまずは知っていただきたいです。そして、触れ合うことによって「もし自分の家にあったらどんな生活なんだろう」とイメージし、考えるきっかけになったら嬉しいなと思います。イッタラの作品を既に使っている方にとっては、この140年の軌跡に触れることで、今までより一歩踏み込むことのできる機会になると思います。特に本展では「ガラス」という素材に立ち戻って注目していますので、ガラスの不思議さや製作の苦労など、音声ガイドを聴いていただけたらより理解できると思います。そして家に帰ってイッタラを使ったら、味わいがまたひとつ違ってくるかもしれません。その製品を見る味わいもそうですし、水の味でさえもちょっと変わるんじゃないかな。ぜひ、このガラスのきらめきの世界に一歩踏み込んで欲しいなと思います。
『イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき』は、2022年9月17日(土)から11月10日(木)まで、東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムにて開催。展覧会の前売券はイープラスほか各プレイガイドにて発売中。小関裕太による音声ガイドの料金は、会場レンタル版がおひとり様1台650円(税込)。
取材・文=SPICE編集部 撮影=大橋祐希
展覧会情報
IittalaーStars of Finnish Glass
会期: 2022年9月17日(土)~11月10日(木)
※9月27日(火)のみ休館
会場: Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷・東急百貨店本店横)
開館時間: 10:00−18:00 毎週金・土曜日は21:00まで
(入館は各閉館時刻の30分前まで)
※状況により、 会期・開館時間等が変更となる可能性がございます。
主催: Bunkamura、 フィンランド・デザイン・ミュージアム、 朝日新聞社
特別協力: Iittala
後援: フィンランド大使館
問い合わせ: 050-5541-8600(ハローダイヤル)
Bunkamura HP内本展特設ページ: https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/22_iittala/