MONGOL800×WANIMAコラボなど多幸感溢れた『MONSTER baSH 2022』初日レポートーー『モンバス』でみた美しい光景、感じた強い愛

レポート
音楽
2022.10.7
『MONSTER baSH 2022』 撮影=河上良

『MONSTER baSH 2022』 撮影=河上良

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『MONSTER baSH 2022』2022.8.20(SAT)・21(SUN)香川県・国営讃岐まんのう公園

2022年8月20日(土)・21日(日)の二日間にわたって、香川県・国営讃岐まんのう公園にて開催された中四国最大級の野外ロックフェス『MONSTER baSH 2022』。今年で23年目を迎える同イベントに、東京と関西からライターの兵庫慎司と鈴木淳史が参戦。本記事では初日のライブをピックアップして振り返りながら、それぞれの視点で『モンバス』の魅力をレポートする。

『MONSTER baSH 2022』

『MONSTER baSH 2022』

20周年を迎えた2019年の『MONSTER baSH』(以下、『モンバス』)に、ライブレポートで初めて訪れた際に一番に感じたのは、四国に昔から根付く全国各地から訪れたお遍路さんへ「お接待」と呼ばれる施しの風習である。ミュージシャンからはうどんを始めとする食べ物のおいしさについて聞いてはいたが、元来お接待も食べ物だけでなく応援する気持ちが含まれるように、観客・ミュージシャン・関係者を迎える温かな気持ちを現場で感じた。その時は翌年も通常通り、また四国・香川での『モンバス』で「強い気持ち強い愛」を感じられると思っていたら、コロナ禍により2020年は中止に……。

そんな中でもオンライン配信フェスとして行われ、満を持して2021年に2週に渡り3日間開催されるはずだった。しかし、まさかの開催4日前に香川県から要請を受けて、泣く泣く再び中止に。周りの薦めもあり、目標金額1000万円としてクラウドファンディングを行なうと、なんと数時間で達成して結果的には4720万円の支援金が集まった。クラウドファンディングサイトが「開催直前で中止になったロックフェスの未来をファンが救った」という言葉を綴ったポスターを作ったり大きな話題にもなったが、これは今まで『モンバス』から愛あるお接待を受けてきた観客たちからの恩返しだったのではなかろうか。

そんなドラマチックな物語を経ての3年ぶりとなる今年の復活祭は、例年以上に大きな工夫がされていた。来場者全員に「モンバスアプリ」を登録してもらったり、「モンバスシート」も来場者全員に配布されて、あらゆる場面における間隔確保のための使用を促されている。また、熱中症対策として、周りの方への配慮をした上でならマスクを外せるサイレントゾーンも新しく設置された。

ハンブレッダーズ 撮影=Hoshina Ogawa

ハンブレッダーズ 撮影=Hoshina Ogawa

やれる限りの事を一生懸命やりきった上で、遂に8月20日(土)に初日を迎えることができた。朝9時55分、オープニングアクトは大阪出身のハンブレッダーズ。「フェスをやるのがどれくらい大変か、この3年でわかったと思います。僕たちもなんとか一歩ずつやってます」とMCで話すボーカルのムツムロアキラからは、朝早くから全力の熱情が伝わってくる。20分という短い時間でもやりきる姿は、同じ関西人として凄く嬉しかった。

『モンバス』プロデューサー、株式会社デューク 定家崇嗣氏

『モンバス』プロデューサー、株式会社デューク 定家崇嗣氏

STAGE龍神のトップバッター四星球が登場する前には、『モンバス』プロデューサーの定家崇嗣氏が開会挨拶を行なった。コロナ禍でも、約5000人が入る徳島県・アスティとくしまで80人限定ライブを開催したりと、ルールを厳守しながらもライブを止めなかった四星球。

「この3年で四星球がどのようにお客さんと向き合ってるのかを見てきたので、僕のわがままですが、四星球をトップバッターにしたいと思いました」

四星球 撮影=河上良

四星球 撮影=河上良

定家氏はそう話したが、言わずもがな四国は徳島在住のバンドであり、今や『モンバス』の顔とも言える彼ら。2008年に初出場してから毎年出場しているが、彼らもホームだからこそ気合いは充分。ギターまさやんお手製の段ボールで作ったドラムセットで、何の筋書きも無くただただメンバー同士で殴りあったりする姿を観ていると、意味なんか無くても、とにかく観客に衝撃を与えたいという気概を感じる。ここからたくさんの演者が登場するが、観客たちが週明け職場や学校や家庭で思わず思い出し笑いをしてしまう、そんなライブを魅せつけてくれた。

四星球 撮影=河上良

四星球 撮影=河上良

シンガーの北島康雄はMCで、2008年に初出場した時の話も明かした。弱冠25歳の北島が緊張しながら、数多くの現場スタッフたちに四星球ならではの細かいライブ構成演出を説明しようとした時、『モンバス』を主催する四国のイベンター・DUKEの当時社長であった宮垣睦男現会長が現れて、北島の肩に手を置き、「日本一のライブバンドに育てたいと思っているので、どうぞよろしくお願いします」と頭を下げたという。さらに、私がライブレポート担当ではないのに少しだけ書かせてもらうと、2日目出演の小田和正と同じ年で50年来の付き合いがあるイベンターであり、「彼からの最後のお願いかも知れない」と小田が急遽楽曲変更してまでリクエストに応えたのも、その宮垣会長。オフコースから四星球まで、小田から北島まで、自分が信じた演者を推し続ける裏方。そんな人たちが開催しているフェスは絶対まちがいない。

古墳シスターズ 撮影=Hoshina Ogawa

古墳シスターズ 撮影=Hoshina Ogawa

そんな四星球のように、『モンバス』は四国出身のミュージシャンを毎年推している。今年の大抜擢と定家氏が事前インタビュー(https://spice.eplus.jp/articles/306039)でも話していたのが、香川高松市在住の古墳シスターズ。同じくDUKEが主催する高松の商店街を舞台にしたライブサーキットイベント『SANUKI ROCK COLOSSEUM』にも今春出場して、確実に爪痕を残した。ボーカル&ギターの松山航は、「これやるために9年バイトやったんや!」と叫びながら、マイクコードをギリギリまで引っ張って広いステージの端まで歌いに行く。『モンバス』は地元バンドに夢を与える祭だ。さぁ、そして、ここからは兵庫さんお願いします!

古墳シスターズ 撮影=Hoshina Ogawa

古墳シスターズ 撮影=Hoshina Ogawa

(取材・文=鈴木淳史)


普段は照明演出を駆使したショーを行っているが、そういう作戦が効かない朝イチの野外であっても、堂々たるパフォーマンスをやれるバンドであることを立証した、神はサイコロを振らない。20分の持ち時間を短距離走のように駆け抜け、鮮烈な『モンバス』初出演を飾ったハンブレッダーズ。GENが「呼んでもらえたのは、ここにいるみなさんのおかげです!」と感謝の意を示し、ラストの「Just」の前に「困難な世の中ですけど、音楽を片手になんとか生き抜いていきましょう!」と呼びかけた04 Limited Sazabys。

などなど、ステージの上も下も含めて、午前中の段階でもうすっかり、『モンバス』ならではの祝祭感ができあがっている……いや、「戻って来ている」と言った方が、より正確かもしれない。という中、その空気を一瞬で変える存在が、STAGE龍神の三番手で登場した。

女王蜂

女王蜂

女王蜂。「野外」「夏」「開放的」みたいな、いわゆる日本のフェス文化とは接点ゼロな道を歩みつつも支持を拡大していき、コロナ禍直前あたりから、逆に「シーンの方から寄って来た」みたいな按配で、各地のフェスの常連になっている。

全員モノトーンの衣装で登場。アヴちゃん、1曲目「KING BITCH」の途中でサングラスを外す(その目の周りは青く染められている)、4曲目の「催眠術」をちょっと歌ったところでジャケットを脱ぎ捨てる、といった一挙手一投足が、画になりすぎ。一瞬たりとも目と耳を離せないパフォーマンス。オーディエンス、「魅了されている」というよりも「呑まれている」空気感だった。

ヤバイTシャツ屋さん 撮影=Hoshina Ogawa

ヤバイTシャツ屋さん 撮影=Hoshina Ogawa

サウンドチェックでは本編でやらない曲を演奏する、だからファンはそこから観なきゃいけないのでおなじみのヤバイTシャツ屋さん、この日のリハでは「貴志駅周辺なんもない」に加えて、打首獄門同好会の「日本の米は世界一」をプレイ。咄嗟のアドリブだったようで、ちょっと演奏してすぐストップ、「あかん、打ち合わせもなしにやったら」「うん、リハーサルのリハーサルが必要や」などと言い合うメンバー。本番は、こやまたくやの「盛り上げるのに25分もいらないんですけど! 1曲で充分なんですけど!」という言葉からの「ハッピーウェディング前ソング」でスタートした。

Hump Back 撮影=河上良

Hump Back 撮影=河上良

その裏のMONSTERcircusでは、Hump Backのステージ。林萌々子、1曲目に入る前にMC。まだ3人だけでツアーを回っていた2017年、自分たちのことを信じられる時も信じられなくなる時もあったその頃に、初めて声をかけてくれたフェスが『MONSTER baSH』だった。本当にあの時から、自分たちにとっていろんなことが始まった。そんな特別なフェスだから、中止が悔しかったーーと、モンバスへの愛と感謝を言葉にしてから、「その頃の曲を。この曲から始まった!」と、「月まで」でライブをスタートする。ラストは「どいてくれ、うちらの通る道や!」と叫んだ「番狂わせ」で締めたが、まだ持ち時間が残っており、急遽「僕らの時代」を追加した。

打首獄門同好会 撮影=Hoshina Ogawa

打首獄門同好会 撮影=Hoshina Ogawa

14時45分にSTAGE龍神に登場した打首獄門同好会は、全員お遍路さん姿で、まさにそのお遍路さんがテーマの「88」(2009年の作品)が1曲目。大澤会長、出て来るなりイヤモニがトラブってきこえなくなったり、「筋肉マイフレンド」をやる前にオーディエンスと共にスクワットを行ったりするたびに、「いやあ、ありがたいなあ、ありがたいなあ」とくり返す。中盤から後半では、「時間がない時はどうすればいいか、とある四国のバンドが我々に教えてくれました」と、四星球の「時間がない時の××」シリーズに倣って、「鬼の副長HIZIKATA feat.ぼく、獄門くん」「きのこたけのこ戦争」「島国DNA」を1コーラスずつ披露、大拍手を浴びた。

ハルカミライ 撮影=河上良

ハルカミライ 撮影=河上良

2曲目「カントリーロード」で、ギター関大地が回転横飛び→床に叩きつけられる、という自傷行為みたいなアクションを見せたり、3曲目「ファイト!!」で、ボーカル橋本学が歌いながら担いだ巨大なバンドフラッグを、ステージ前に落としてしまってスタッフに拾ってもらったり、序盤から飛ばしまくりのハルカミライ。「3年長かったな、みんなよく耐えたな。その分、最高な日になってるんじゃない? 俺はなってるね、間違いなく」。ラストの「To Bring BACK MEMORIES」を終えると「あと1分あるっぽいな」ともう一回「ファイト!!」を演奏、さらに「あと30秒? 「Bring~」だな」と「To Bring BACK MEMORIES」もリプレイした。

10-FEET 撮影=河上良

10-FEET 撮影=河上良

「あっという間に終わると思うんで、先に言っときます。さよなら!」というTAKUMAのひとことから、10-FEETのステージが始まったのとほぼ同時に、雨が降り始める。後半は、KOUICHIのMCで場を和ませた後、「変わりたいと思ってる人が変われたらええな、変わりたいというテンションを持って帰れたらええな。変わりたくないと思ってる人は、その思いがもっと固くなればええな」というTAKUMAの言葉から「アンテナラスト」と「RIVER」が、オーディエンスに捧げられた。なお、雨はすぐに止んだ。

10-FEET 撮影=河上良

10-FEET 撮影=河上良

ORANGE RANGE 撮影=Hoshina Ogawa

ORANGE RANGE 撮影=Hoshina Ogawa

MONSTERcircusのトリは、5年ぶりの出演になるORANGE RANGE。「以心伝心」「ロコローション」の大ヒット曲二連発でスタート。「みんな、楽しんでますか?」と問うたRYO、フィールドを見回してから「……あたりまえのことは、きかん方がええな」。「キリサイテ 風」や「Pantyna feat.ソイソース」など、今年リリースしたばかりの新曲もオーディエンスを惹きつけていく。「屋根があるし、曇り空だけど、次は<いいね快晴じゃん>で始まる曲。ここを沖縄に染めたいわけ!」と突入した「上海ハニー」では、メンバーのリクエストに応えて、フィールドいっぱいにカチャーシーが広がった。「カチャーシー、もしかしたら今、モンパチさんもやってるかもしれない」。そうだ、STAGE空海も沖縄のバンドの時間だった。

ORANGE RANGE 撮影=Hoshina Ogawa

ORANGE RANGE 撮影=Hoshina Ogawa

(取材・文=兵庫慎司)


Rei 撮影=河上良

Rei 撮影=河上良

再度、私に戻ってきましたが、STAGE茶堂にも触れたい。お遍路さんが道中の疲れを癒す為に憩いの場として設けられた「茶堂」をコンセプトに、10年前に『モンバス』のためにわざわざ設営された。昔から公園に存在していた様な立派で雰囲気のある建物は、個人的にも大好きな場所で、ゆっくり落ち着けるコンパクトなステージ。最初に登場したのはドラムの山口美代子とふたりで挑んだRei。ふたりというミニマム編成ながらも完全なバンドサウンドで、観ている我々を圧倒する迫力。バイリンガルな彼女が流暢な英語で「Stand Up!」と訴えかけた瞬間、観客がノリながら座席から立ち上がった場面はたまらなく痺れた。

DJ石毛&ノブ(the telephones) 撮影=Hoshina Ogawa

DJ石毛&ノブ(the telephones) 撮影=Hoshina Ogawa

菅原卓郎 SESSION2022 撮影=Hoshina Ogawa

菅原卓郎 SESSION2022 撮影=Hoshina Ogawa

そんな座席あるステージながらDJセットで登場したのは、the telephonesから石毛輝とノブ。緩やかな茶堂をあっという間に賑わうディスコに早変わりさせたエネルギーはとてつもなかった。電気グルーヴ「虹」なども流れ、来年からDJステージもできたらなと願うくらいに楽しかった。そんな石毛&ノブのほか、林萌々子(Hump Back)、内澤崇仁(androp)、yamaも参加した菅原卓郎 SESSION2022。菅原、石毛、ノブと同い年であり、菅原と初絡みの四星球・北島が登場したのも『モンバス』ならではのブッキング。他出演者が紹介される度に毎回、北島がふんどし姿で登場するお約束も生まれたりと普段は絶対に観られないステージであった。

MONGOL800 撮影=河上良

MONGOL800 撮影=河上良

夕刻17時50分。STAGE空海も残り3ステージ。MONGOL800、WANIMA、そして、その2組によるコラボ。今年6月にMONGOL800×WANIMA名義でスプリット盤を発表した2組が、同じ日に出場するフェスが『モンバス』だけだったこともあり、『モンバス』でしか観ることができない大トリステージが実現した。まずはMONGOL800だが、この時点で、これまた『モンバス』でしか観られないスペシャルサプライズが! ギターがなんとWANIMAのKO-SHIN。それも1曲だけとかでは無くて、全5曲30分全てである。ユニコーンのカバー「大迷惑」も聴けて充分満足して次がWANIMA。「攻めたセットリストになってます!」とKENTAが最初に明かしたが、のっけから観客は大盛り上がりで、まさに時代に求められた時代の寵児感をびしばしと感じる。

WANIMA 撮影=河上良

WANIMA 撮影=河上良

MONGOL800×WANIMA 撮影=河上良

MONGOL800×WANIMA 撮影=河上良

WANIMAが終わり、スクリーン横のビジョンにはコラボが実現したキッカケとなったキヨサクとKENTAのラジオ対談、レコーディング、MV撮影といった模様が映し出された。コラボ楽曲「愛彌々」ではKENTAがスマホの光を照らすと、観客もスマホの光を照らし出し、それはそれは美しき夜の光景だった……。そして、MONGOL800のホーン隊であるNARIとシーサー、MONGOL800のパーティーダンサーを務める粒マスタード安次嶺も共に、MONGOL800「DON'T WORRY BE HAPPY」も披露。ラストナンバーはWANIMA「ともに」で締められる。最後はステージ後方から打ち上げ花火が何度も何度も打ちあがり、3年ぶりの初日は多幸感溢れる素晴らしきスタートを飾った。

MONGOL800×WANIMA 撮影=Hoshina Ogawa

MONGOL800×WANIMA 撮影=Hoshina Ogawa

MONGOL800×WANIMA

MONGOL800×WANIMA

また、全ライブ終了後には会場内施設にて、別制でアフタートークライブが開催。約100人収容の会場は満杯で、四星球司会のもとゲストにthe telephones石毛&ノブ、翌日のアフタートークライブ司会を務めるLONGMAN、古墳シスターズを迎えておこなわれた。トーク中、アブが乱入しただけで盛り上がるなど『モンバス』のカジュアルさ温かさが伝わる催し物に。最後はプロデューサー定家氏自ら観客に各方面のバス最終時間を伝えながら、退場誘導するのも村祭り的な親近感があり、ほっこりする場面であった。2日目へと続く。

取材・文=鈴木淳史 撮影=河上良、Hoshina Ogawa

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