菊池風磨&田中樹、いい意味で昨年と変わらない100点のパフォーマンスを魅せる 『DREAM BOYS』ゲネプロ&会見レポート
幼い頃から共にボクシングジムに通い、親友兼ライバルとして高め合っていたフウマとジュリ。しかし、現在から8年前の新人王争奪戦決勝において、フウマが3ラウンド目で突然試合を放棄したことで、同じ夢を追いかけていた二人の絆は切れてしまった。
親に捨てられた過去を持つフウマは、同じ施設で出会ったコウキを実の弟のように可愛がってきた。心臓に重大な欠陥があるコウキの命を救うため、フウマは一大決心をする。
その陰で不穏な動きを見せるエマとマリア。二人の確執が若者たちの人生を大きく揺さぶっていく――。
2021年公演から引き続いて登板となったキャスト陣は、演技、ダンス、歌、すべてにおいて洗練されたパフォーマンスを見せてくれる。菊池と田中は「去年の続きをやっているような感覚」と語っていたが、それぞれの役がさらに馴染み、彼らの人生や孤独、それぞれの苦しみといった感情が伝わってくる芝居に心を掴まれた。アドリブなど笑えるシーンも増え、全体を通して緩急がついている。
『DREAM BOYS』舞台写真
菊池は周囲に見せるクールな表情と弟のように可愛がっているコウキに向ける穏やかで優しい表情のギャップにより、見るものを惹きつける。色々なものをひとりで引き受けて解決しようとするフウマの優しさが切なくも美しい。ソロ曲は彼の孤独や葛藤が描かれつつ、凛とした雰囲気で芯の強さと内に秘めた熱さを感じさせる。
田中は昨年以上に獰猛なチャンピオンらしい佇まい。爆弾を抱えつつボクシングを続ける姿はゾッとするような迫力と危うい色気があり、目を奪われる。自分にも他人にも厳しい鋭さ、後半で見せるあたたかさはそのままに、よりフウマへの信頼や理解を素直に表現していると感じた。
二人の演技や佇まいがライバル兼親友という関係性に説得力を持たせているのも魅力的。作中でのひりつくような空気感、回想シーンの笑顔から、二人が過ごしてきた年月や絆、すれ違いによる傷が伝わり、物語を知っていても固唾を飲んで行く末を見守ってしまった。
『DREAM BOYS』舞台写真
会見で「役の理解度を深めた」という発言があった通り、フウマとチャンプそれぞれに寄り添う少年忍者・7 MEN 侍のメンバーが演じるキャラクターも一人ひとりの個性がさらに伝わりやすくなっている。キャラ立ちした結果、日常やジムでのトレーニング、試合の応援など、ちょっとしたシーンからメンバー同士の関係性やフウマ、チャンプへの思いが見え、描かれていない部分への想像も膨らむ。各陣営のチームワークがきちんとでき、土台がしっかり作られているのに加えてアドリブにも余裕があり、安定感が増していた。
『DREAM BOYS』舞台写真
チャンプがジムの仲間たちを引き連れて歌うソロ曲やフウマのスパイダーフライングは今年も健在。派手で見応え十分なダンスやアクロバット、それぞれの歌唱を楽しめる楽曲、心情にフォーカスするシーンをバランスよく取り入れた演出となっている。また、今回は二幕構成となり、2019年9月公演で披露された「Sad Song」が復活。不器用だが真っ直ぐな少年たちとは対照的なマリアやエマの見せる影、紫吹と鳳の歌唱が物語をさらに盛り上げ、大人たちのドラマにもさらなる深みが加わっている。
さらなる進化を遂げて円熟味を増した本作は、9月8日(木)より30日(金)まで帝国劇場にて上演される。
取材・文・撮影=吉田沙奈
公演情報
黒田光輝・内村颯太・深田竜生
元木湧・檜山光成・青木滉平・豊田陸人