三枝明那「次はみんなの声を聞きたいな」にじさんじ史上最大イベント『にじさんじフェス2022』が幕張で開催 幻の4周年ライブ、振替公演 Day1&Day2ナイトステージ レポート
『にじさんじ 4th Anniversary LIVE「FANTASIA」』ナイトステージ Day2 2022.10.1(SAT)ぴあアリーナMM
にじさんじ史上最大のイベントとなる『にじさんじフェス2022』が、10月1日、2日に幕張メッセにて開催された。今回はDay1の模様を取材していく。会場は全6ホールという広さ。まずホール1から3までぶち抜きとなり、美術部やプラネタリウムの他、お化け屋敷にローションカーリングなど、見るだけでなく体験もできるブースが様々だ。オープンステージの特大スクリーンではライバーも出演する各番組が生放送され、「ライバー特別授業」のエリアではここだけでしか聴けない各人気ライバーたちの講義を楽しむこともできた。
ホール4はライブホールのように囲まれたメインステージとなり、トークショーやライブ、演劇といった催しが開催。続いてホール5と6もぶち抜きでフードエリアと物販エリアが敷かれ、人気ライバーたちのオリジナルアイテムに長蛇の列が。まさに「バーチャルライバーたちの文化祭」といった華やかさだ。
なお筆者は、メインステージの演劇ステージにて、『不思議の国のアリス』を楽しんだ。こちらは物述有栖がアリス役、健屋花那がその姉役というダブルヒロインの演目。単に『アリス』の原作に沿った物語をライバー達が演じるだけでなく、不思議の国に迷い込んだ妹・アリスを、そんな妹を嫌う姉が傍観者の立場で見ているというメタな物語が展開した。最後はただの夢オチにはとどまらない、姉妹の愛を描いた物語として完成され、観覧を終えて退場していく来場客から「良かった~、泣いちゃった!」という声も聞こえてきた。また、物語の狂言回しのような立場を務める謎の紳士役・神田笑一や、ウサギ役の鈴木勝、イモムシ役のでびでび・でびる、ハートの女王役の愛園愛美など、各ライバーの個性も光る舞台となっていた。
また9月30日(金)の前夜祭に引き続き、ナイトステージとして『にじさんじ 4th Anniversary LIVE 「FANTASIA」』のDay2が開催。こちらは今年1月に開催が予定されていたものの、新型コロナウイルスの感染拡大の状況により中止となっていたライブの振替公演となる。ここからは、その模様を詳しくお伝えしていこう。
ライブに先駆け、「みなさんどうもー、シェリンでーす!」とシェリン・バーガンディが前説を行う。最初はアナウンサーばりに丁寧に注意事項を読み上げるが、最後の項で突然「大声を出すとか!激しい運動をする応援はご遠慮ください!」といわゆる「クソデカボイス」で叫び、新型コロナ感染症対策について厳しく訴えた。その後しばらくして、舞台裏から「オー!」という、出演メンバーたちの雄々しいかけ声が聞こえると、早くも客席から拍手が巻き起こった。
舞台には生バンドの演奏者たち、北川淳人(Ba.)、坂本暁良(Dr.)、ユウタマン(Gt.)、二木元太郎(Gt.)、アンドウヒデキ(Key)もピットイン。スクリーンに開催の動画が流れた後で、1曲目から今回出演の男性ライバー全員で「虹色のPuddle」を歌い上げた。
Day2の出演者は、剣持刀也、叶、加賀美ハヤト、夢追翔、三枝明那、卯月コウ、シェリン・バーガンディ、社築の8名である。それぞれお揃いのステージ衣装で登場。中でも剣持は今回、いつもは背負っている刀を腰にさしており、「一気に攻撃力上がりましたね」と突っ込まれていた。
冒頭から和気藹々とした自己紹介などのMCを行ったあと、2曲目は三枝明那がソロで「テオ」を披露。客席で赤いペンライトが揺れる中、歌詞に合わせて手を突き出すなど激しく体を動かす。力強いロック曲で早くも会場の熱気を上げていく。
3曲目にはシェリン・バーガンディが加わり、三枝明那とのデュオで「ロデオ」を歌う。2人とも、どこからか取り出した拡声器を手に持って歌う様子はバーチャルライバーならでは。しかしステージからは実際の火花が飛び散るなど、リアルな演出も見ごたえ抜群だ。
4曲目はシェリン・バーガンディ、叶、卯月コウの3人になって「テレキャスタービーボーイ」を披露。3人息の合ったダンスを披露しながらクルクルとポジションを変えていく。歌詞の2番目では一度左から「叶(イメージカラー・青)、卯月コウ(黄)、シェリン(赤)」と、まるで信号機のような並びに。客席のペンライトもそれぞれの推しの色となり、美しい光景が広がっていた。
5曲目は卯月コウがソロとなり、「脱法ロック」をマイク片手に歌う。客席は黄色いペンライト一色となり、「Wo-oh-oh, wow-oh」の歌詞はまるで「王、王」と自らを讃えるように荘厳だ。
6曲目には加賀美ハヤトと社築のコンビが登場し、「ロストワンの号哭」を披露。冒頭から曲の終わりまでシャウトをしまくり完全燃焼の彼らに、観客からは惜しみない拍手が贈られる。続く2人のMCではハァハァと疲労した様子を見せつつ、「30代が全力で……」「30代だからこそ歌えるメッセージもあると思うので」と互いに笑ってみせた。
ニコニコ動画の配信でも見れる無料パートは、こちらで終了。続く7曲目では社築がソロとなり、「ヒカリ証明論」を歌った。青空と緑の草原という映像をバックに、青いペンライトが揺れる中、力強くも優しい歌声が響き渡る。
8曲目では、社築が残るステージに加賀美ハヤトが再び合流。夢追翔も加わり、トリオで「それじゃあバイバイ」を歌い上げた。曲の途中では、なぜか夢追翔が脚立を肩に担いで運んでくるなど、バーチャルならではのアブない演出も。リアルならば大惨事になっているところである。
9曲目は、夢追翔がソロとなってオリジナル曲「おそろいの地獄だね」を披露。赤一色のペンライトが揺れる中、「僕らは皆地獄行き」という歌詞が響くのは、冷静に考えれば恐怖そのもの。しかし爽やかな歌声とバンド演奏でそれをやられると、普通にかっこよく受け入れられるのが不思議だ。
10曲目は卯月コウと加賀美ハヤトの2人になり、「らしさ」を披露。それぞれ手にマイクを持ち、10代と30代で「自分らしさってなんだろう」と歌うと、同じ歌詞でもまったく違う意味に聞こえる。雪が降るような背景映像とも相まって、情緒がかき乱されるような美しいステージとなっていた。
11曲目は、剣持刀也が「ジャンキーナイトタウンオーケストラ」をソロで歌う。腰に長い刀をさしながらも、その動きは軽快だ。間奏中も決めポーズを取るなど、さすがのパフォーマンスを見せていた。
続くMCでは、歌い終えた直後の剣持に加え、シェリン・バーガンディと卯月コウが登場。この2人は今回のステージが歌ライブ初出演となることに触れられると、シェリンは「ここに立って歌ってると体が動いちゃう」、卯月は「始まった瞬間、腹が痛いの無くなって」と、それぞれ初々しい感想を述べた。
12曲目、MCに引き続きでシェリン、剣持、卯月の3人で「女々しくて」を披露。ステージの前方からは炎が噴き上がる激しい演出もありながら、「ゴールデンボンバー」のMVさながらの振り付けで歌う3人。間奏では卯月をセンターに、剣持とシェリンが七色に光るポンポン持って囃し立てるなど、見た目にも楽しい舞台となっていた。
13曲目は、シェリン・バーガンディのソロで「爆笑」を熱唱。赤と白のドぎついバック映像と共に、シェリン自身の体の色も赤や白の単色に変わる。ハードな歌詞だけでなく目にも強烈過ぎる演出で、ひたすらステージに目が釘付けとなってしまう。「ハハハハハハッ!」という高笑いにも鬼気迫るものがあり、とてもこの日が歌ライブ初出演とは思えない。
14曲目には叶がソロで登場。今回初披露となるオリジナル曲「Jam Jam」を歌い上げた。甘い表情と甘い歌声、そしてキレのある動きで、ファンたちを“悩殺”していく。男性ばかりの今回のライブの中でも、特に優美なステージを作り上げていた。
15曲目は、社築と夢追翔が「いのちの食べ方」をコンビで歌う。社と夢追の高低差のある歌声が耳に心地よい。ラップ部分の歌詞も含め、生バンドの音に乗れば歌声ももはや楽器のようだ。
ベースソロから始まる16曲目の「東京テディベア」は、夢追翔と剣持刀也のコンビが熱唱した。ライバーのデザインが同じほーじろ氏ということもあり、「ほーじろ兄弟」とも呼ばれる2人。本当に兄弟のような見た目も相まって「エモさ」が爆発していた。
続くMCパートは、夢追翔、三枝明那、叶の3人が担当。夢追と叶がそれぞれオリジナル曲を披露したことに触れ、「めっちゃカッコよかった!」と三枝が讃える。その一方で、次の曲には「可愛いのいっちゃっていいですかー」と三枝。17曲目では叶とコンビになってポップな恋愛ソング「ねぇねぇねぇ。」を披露した。衣装も、ズボンや腰のヒラヒラがお揃いという2人。ネコのようなかわいい振り付けで乙女チックに歌い上げれば、思わずその場で「キュン死」しかけたファンも多かったことだろう。
18曲目には、加賀美ハヤトがソロでNovelbrightの「ハミングバード」を熱唱。光あふれるバック映像に、客席のペンライトも白(メテオホワイト)一色に。「神々しい」とは、まさに彼のためにあるような言葉である。間奏では「すごい今更なんですけど、楽しいですね、歌うの!」と叫び、クライマックスも近いステージをますます盛り上げていく。
続く19曲目。叶、三枝明那、剣持刀也のトリオが「お気に召すまま」を披露した。三枝の「手拍子をくださーい!」の声に応える観客。ステージの熱はまだまだ上がっていく様子だ。リズミカルなサビに、聴いている側も自然に体が動いてしまうようで、会場にも一体感が生みだされていく。
20曲目には三枝明那、卯月コウ、社築、シェリン・バーガンディが登場。μ'sの「Snow halation」を、男らしくも爽やかな声で、4人のユニゾンを響かせた。間奏では三枝が「最後の最後の1秒まで、みんなで盛り上がり切りましょう!」と叫ぶ中、ホールの前方で粉雪のようにキラキラした紙吹雪のようなものが天井から降り注ぐ演出も神秘的だった。
そしていよいよトリ。21曲目には剣持刀也、叶、夢追翔、加賀美ハヤトの4人で「オリオンをなぞる」を披露。聴くだけでも胸が熱くなる楽曲。「乾杯」のフレーズでは、ステージの両端から加賀美ハヤトと叶がそれぞれ手を高く掲げ、離れながらも「エア乾杯」をキメる様子に気持ちが高まった。最後はライブらしく、4人のジャンプでキメ。「あーりがとうございましたー!」と叫んで、舞台を去った。
だが、まだまだライブは続く。アンコール拍手の後には、オールメンバー8人が登場。「にじさんじフェス2022イメージソング楽曲」である「Hurrah!!」を力強く歌い上げた。1月に開催予定だった時点では、もちろんセットリストに組まれていなかった楽曲。披露されたことで、今回の舞台をただの振替公演ではない、スペシャルなステージへと昇華しているようだった。
バンドメンバー紹介の後で、ライバーの一人ひとりが今回のライブの感想を述べていく。以下、紹介していこう。
●シェリン・バーガンディ
皆さん、初めての僕の歌、どうでしたでしょうか?盛り上がっていただけましたでしょうか?ワーッ!(大きな拍手)全身全霊でカッコつけてみましたので、お気に召したら幸いでございます。今回本当に、歌のライブ初めてだったんですけど、こんなにも全力で汗をダラダラかきながら、脳汁ドバドバ出しながら、こんなに楽しいステージがあるとは、やっぱ歌ライブ、最高でーす!イエーイ!ありがとうございました!
●卯月コウ
若干真面目になってしまうのですが、なんつーか、今までは自分のために配信するっていう、自分なりの考えというか、それがかっこいいと思うし、そういう姿勢を崩さないようにと思ってきてたんですけれども、ライブを通じて、ちょっとはみんなに返していきたいなっていう風に思いました。ありがとうございました!
●夢追翔
本当にね、楽しかった!ありがとうみんな!ライブ何度も出させてもらってますけども、何度出てもこの興奮は本当に忘れられないし、毎回毎回、また出たいなって思わせていただいて、本当に嬉しい限り。幸せだなって思います。なんでね、ぜひまた、次の機会でお会いすることがあるかもしれないですけれども、そのときはまた、よろしくたのむぞー!
●社築
みんな今日は、ここまでついてきてくれてありがとうー!俺もね、歌ライブそんな回数は経験してきたわけじゃないんだけれど、本当に今日はファンのみんなも楽しんでくれたと思うけど、俺が一番楽しんだと思ってます。本当にみんな、応援してくれてありがとう。これからもよろしく!
●三枝明那
本日は、ありがとうございましたー!本当なら1月にやる予定のライブで、1月を狙ったのかな?っていう曲もありながら、いろいろな思いで迎えたんですけれど。逆に、半年開いたことで、できる演出とかもありましたし。半年間練習があったおかげで、叶さんと(「ねぇねぇねぇ。」を)あんなに可愛くできたので、いいところもあったのかなと思っております。本当に、いろんなライブ出させていただきましたけれども、次はみんなの声を聞きたいな。(今は)出しちゃダメだけど!(発声が解禁された)そのときはみんな、来てくれますか?(大きな拍手を受けて)やったー!
●加賀美ハヤト
総括的な感じにはなるんですけれど、本当に感動した点を強いてひとつ上げるとしたら、アンコールのときに、コメントの勢いがぜんぜん凄い。早いんですよ、尽きないし!あれは皆さん、待っていたということでよろしいでしょうか?(大きな拍手)『FANTASIA』、ありがとうございました!
●叶
(元々の開催は)1月だったんですけど、今日のライブは。悔しかった思いも、楽しみにしていた気持ちも、頑張った努力も出し切れたんじゃないかなと。今までで一番熱いライブになりました。そして、ちょっとだけお時間を……「推しカメラ」にね、見てる人達にちょっと。見てるかー?いくよー、「バーン」(銃を打ち抜くポーズと共に、大きな拍手)。本日は本当に、楽しいライブでした。ありがとうございました。
●剣持刀也
ということで見ていただきましたが、我々は配信者でございます。配信者というのは常にリアルタイムで、何が起こるかわからなかったり、不条理、そういうものに揉まれて、最終的には形にするというプロみたいなものなのかなというものでございまして。そんなわけで、我々は配信者でございます。なんかトラブルがあったとしても、1月何かがあったとしても、確実にそれもドラマにして乗り越えることを今後も約束いたします。(大きな拍手)今後も安心して見ていただきたいと思い、ドラマが続いていく中の道のりの1ページとして、今日みたいな日があったんだよということをぜひ思い出してください。今日は本当にありがとうございました。
ステージからの記念撮影の後は、「たくさんの思い出が詰まったこの曲」として、再びメンバー8人で「Virtual to LIVE」を披露。最後にはバン!という音と共に、会場の上から紙テープが弾けて落ちてくる華々しい演出が見られた。
ライブの締めくくりには、卯月コウがひとりステージに取り残されて「以上を持ちまして、本イベントの全プログラムが終了いたしました」とアナウンスを行う「最後の仕事」を全うする。最後の最後まで黄色いペンライトが揺れる中での終幕となった。
剣持も最後の挨拶で述べていたが、バーチャルライバーとは一人ひとりが配信者であり、何が起こるかわからないことも、ひとつ見る側にとっての楽しみとなっている。ときには、1月に開催される予定だったライブが中止になってしまうという悲しい出来事だって起こる。けれどそのたびに、今回の振替公演のような新しいドラマだって生まれる。
今回彼らは、今後もそのドラマを作り続けると約束してくれた。それならば我々ファンも、しっかり気持ちを持てばいい。例えば何か不安を抱え、ネガティブなツイートをしてしまう必要もない。ただ、信じて、応援すればいい。それはきっと簡単なことなのだろう。それは推しに対してはもちろん、推しを応援する自分達自身に対してもそうである。一人ひとり、己を讃えていけばいい。
もしも不安で押しつぶされそうになったのなら、また今回のライブを思い出せばいいのだと感じた。そこには一切の不安がない、ただキラキラした感動だけがあった。
今回の『にじさんじフェス2022』、会場ですれ違う人一人ひとり、キラキラした表情をしていた。推しを持っている人は、誰しも希望を抱いている。もしこれからの日々で辛いことや悲しいことがあっても、きっとこの日の自分に還れば、また心を強く持てるのではないだろうか。今回のイベントが、来場の一人ひとりにとってもそういうものであったことを信じてやまない。
文・レポート=平原 学
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