『UNKNOWN ASIA』e+賞受賞アーティスト瀬崎百絵×ラッパーRin音、『haunted house』ツアービジュアルで交わした「アートの会話」

動画
インタビュー
音楽
アート
2022.12.8

「難解な言葉をテーマとして扱うのがRin音さん「らしさ」」(瀬崎)

Rin音「qualia」

Rin音「qualia」

ーーではRin音さんの最新シングル「qualia」について。この曲はどういう楽曲ですか?

Rin音:『Sister』というドラマの主題歌です。タイアップとしてオファーをいただき、台本を読んで「わ、すげえドロドロしてんな」と思いながら書きました。もちろんドラマの主題歌なので作品を意識しましたが、色んな友達の話や自分の経験もふまえて書きました。純粋な愛情はどっちにも転ぶなと。100%の純愛といっても、サラッサラの果汁のジュースみたいな100%もあれば、ドロドロの濃ゆーい100%もある。今回は濃ゆーい100%だと思ったんですよ。

ーーなかなか怖い話ですよね。愛情はどっちにも転ぶというのは本当にその通りで。

Rin音:多分パッと聴いたら普通の恋愛の歌に聞こえるし、ドロドロした恋愛も外から見ると普通の恋愛に見えると思うんです。でも、多分当事者は聞こえが変わる。だから最終回を見たら歌詞が全然違う意味に聞こえるようにしたくて。もちろん具体的にリリックを書くことは僕の中での定義としてあるんですけど、同じ言葉を使ってても、パッと聴くだけでは前後の繋がりが見えずに伝わらない意味もあると思うんですよ。例えばドラマを観て情景を入れた上でリリックを聴くとそのシーンが浮かんだり。最後の着地も「きっとこれだったんだろうな」と推察して終わってくれると思って。それだけ主題歌にふさわしい曲にしたかったので。

qualia - Rin音(Official Lyric Video)

ーー途中でパリンと何かが割れる音や、少し不穏な空気感が混ざっているところも、意識しないと入ってこない部分かなと思います。

Rin音:僕、結構分かりづらく作るのが好きなんですよ。パッと聞いて明るい曲なのに、実はずっと悪口を言っているような(笑)。基本ひねくれてるので、未来の希望を歌ってると思ったら実は暗いことを言いたいし、逆に暗いタイミングで未来の希望を歌いたい。ちゃんと聴かないと、歌詞を見ないと、経験しないとわからない日本語を使えるようになりたいと思っています。

瀬崎:今分かりづらくしてるとおっしゃってましたけど、Rin音さんの曲はまさにそういう印象がずっとありました。「qualia」という言葉自体も意味が難しいじゃないですか。結構難解な言葉を急に放り込んでテーマとして扱うのがすごく「らしさ」だなとも思ったんですよね。『cloud achoo』の中の曲でも難しさのある神話の言葉を織り混ぜてらっしゃるのを知っていたので、「こういうふうにあのドロドロを昇華していくんだな」と思って、楽しく聴かせていただきました(笑)。メロディーはすごくポップで明るいので、ドロドロしたドラマの中で聴くと浄化される感じがありました。

Rin音:ありがとうございます。

瀬崎:あとRin音さん自身、ひねくれてるとおっしゃっていましたけど、優しさや余白もお持ちなのかな。そこが魅力だと私は勝手に思ってるんですが、その優しい解釈も曲から何となく感じて。深い見方をされて作られたんだろうなと思いながら聴かせていただきました。

Rin音:ありがとうございます!!

ーーガッツポーズが出ました! ちなみに「qualia」をテーマにして瀬崎さんが絵を描くとしたら、どんな感じになりそうですか。

瀬崎:きっとドラマの影響もあるんですけど、女性がふたり必要だなと思っています。お互い別々の方を向いているけど、どこかで繋がってるような絵を描きたいなと思いました。「qualia」という言葉に繋げて、内面性を描けたらピッタリいくんじゃないかなと勝手に思ってます。

Rin音:さすがですね。僕だったら多分、喧嘩してる女の子を描いて終わりです(笑)。

瀬崎:愛憎という言葉でも確かに代弁できると思うんですけど、やっぱり姉妹で血が繋がっているから、どこかで絶対恨めないはずなんですよね。そういう繋がりみたいなものを曲やドラマでも描きたいのかなと、僭越ながら思っています。

それぞれの思う「演出」とは

『UNKNOWN ASIA 2022』展示の様子

『UNKNOWN ASIA 2022』展示の様子

ーー『UNKNOWN ASIA』の瀬崎さんのブースにはライトがついていて、作品が実際にネオンが光っているような演出になっていました。そしてRin音さんのライブは、演出が綺麗で作り込まれている印象です。それぞれ作品を魅せる演出について、意識されている部分はありますか。

Rin音:ハコによってどれだけ演出ができるかはもちろん違います。その中で自分の世界観を見せたいという気持ちもあるんですけど、何より1番自分がライブをしてて、盛り上がれないとライブの世界に入れないし、Rin音になれない。僕、あまりライブは得意じゃないんですよ(笑)。

ーーそうなんですか!

Rin音:僕が知る限りみんな「アーティスト」をステージで演じて、 すごくカッコ良いことや刺さる言葉、可愛らしいことを言っているんです。でも自分はRin音に入りきれない感覚がある。1枚壁があるというか。でもそれを全部取っ払って作品の意図を伝えるために「俺はステージでめちゃくちゃ良いライブを見せるんだ」という自分への覚悟の意味も込めて演出します。フリースタイルで即興ラップもするので、アイデアを掻き立てるための一部として、演出をしっかりしたい。それだけライブに入り込みたいと思っています。

瀬崎:私は逆に完全に素の自分なんですよ。「瀬崎百絵」を演出する感じではなく、自分らしさを拡張して、好きなスタイルを突き詰めていった結果、この画風になっているので。自分自身の良さを他人にどうアピールするかにも近いなと。それはお化粧やファッションのようだと思っていて。見せ方に関しても自分の絵をいかに届け、分かりやすく伝えるかを、演出でより強くしていく感じです。

「クリエティブとは、アップデートすること」(Rin音)

Blue Diary - Rin音(Official Music Video)

ーーおふたりにとってクリエイティブとは何ですか。

Rin音:結論なんですけど、僕の中では常にアップデートすることだと思うんですよ。時代は回って少し前のスタンスの音楽やファッションがまた流行したりするけど、その中のリリックや要素にその時代の背景が組み込まれています。極端な話、50年前の楽曲の歌詞に「Instagram」という言葉はないじゃないですか。ゼロから1を生むのも大事ですけど、昔のものに影響を受けた上で、どれだけ自分のものとして噛み砕いて、違うものとして出すのか。常に自分の中でアップデートのフィルムをかけて出すイメージです。それが1番自分の色にも染まるし、その上で色んな要素を出せる。

ーー毎回アップデートを意識して曲を作ってらっしゃるのですか。

Rin音:僕、同じテイストで曲を作ってくださいと言われることが、あんま好きじゃないんですよ。「「snow jam」っぽい曲を作ってください」と言われても、あの時にああいうマインドで書いたから、ああいう曲を書けただけであって、それを次に踏襲しても全然意味がない。同じことをずっとやるのは嫌だなと。でも言いたい真意や自分の想いは貫きたい。それも何だかんだアップデートされると思うんです。例えば嫌なことをされて「俺こういう嫌な奴にはなりたくない」と思ったら自分の中で上書きされていくじゃないですか。それが成長だと思うんです。同じことはしたくねえし、同じ間違いもしたくねえなという感覚です。

瀬崎:私の中で制作は本当に生きることの一部で、自分はそのために存在していたいなと思ってますね。続けるにはどうしたらいいかということだけを考えて今までも活動してきたし、これからもそうであり続けると思います。条件がどうであれ人間はいつか死ぬし、やりたいことができる極限までやるべきだと思うから。その中で1番優先順位を高く持っていたいのが、やっぱりクリエイティブ、作り続ける行為です。私今年で30歳になったんですけど、節目の時に賞やお仕事をいただいたのも自分の中では大きくて。「やってていいんだな」と思えたんですよね。反響をいただけてすごく励みになったので感謝してます。クリエイティブも今後もずっと続けていくように、自分で仕向けていきたいなと思いました。

ーー力強い。Rin音さんも頷いてらっしゃったので、お気持ちがわかるのかなと感じました。またおふたりのコラボレーションを見られるのを楽しみにしております!

「OFF-LINE(M)」

「OFF-LINE(M)」

取材・文=ERI KUBOTA

イベント情報

瀬崎百絵
■『UNKNOWN ASIA EXTRA 2022』
●会期:2022年11月28日(月)〜12月24日(土)
●会場:
・ダイビル本館 大阪市北区中之島3-6-32
・中之島ダイビル 大阪市北区中之島3-3-23
・中之島フェスティバルタワー 大阪市北区中之島2丁目3-18
・中之島フェスティバルタワー・ウエスト 大阪市北区中之島3丁目2-4
・堂島クロスウォーク 大阪市福島区福島1-1-48.51
●出展アーティスト:
【ダイビル本館】ETSUKO KASHIWAGI/xorium/新原愛美/佐治足康/吉澤ハナ/ヤマシタミユカ/瀬崎百絵/はるきんぼうや
【中之島ダイビル】吟子/Koichiro Kojima
【中之島フェスティバルタワー・ウエスト】松本 真之/ゴトウヨシタカ/吉田絵美/島上直子/IWACO/華道家 生駒 敦
【中之島フェスティバルタワー】タムロアヤノ
【堂島クロスウォーク】青松拓馬
●料金:入場無料
https://funky802.com/pages/pickup_detail/6837
 
■大阪初個展(タイトル未定)
●会期:2023年7月29日〜8月13日
●会場:excube(https://www.excube.jp/
〒556-0023 大阪府大阪市浪速区稲荷1丁目7-30

リリース情報

Rin音
シングル「qualia」(ROOFTOP / ユニバーサル ミュージック)
リリックビデオ https://youtu.be/g13Z4XNXQWU
 
<ドラマ情報>
読売テレビ・日本テレビ系 全国ネット『Sister』(よみ:シスター)
2022年10月20日(木)スタート 毎週木曜よる11:59~0:54 全10話

ライブ情報

Rin音
■『ICARUS』
日程:12月11日(日)
会場:Kieth Flack
出演:LIVE→Rin音/nns/kkn/ROB
   DJ→Wisteror/DJ Ritsu
   SPECIAL GUEST→原島”ど真ん中”宙芳
 
■『FM FUKUOKA公開録音 Rin音 クリスマストーク&ライブ in リバーウォーク北九州 光の音楽祭』
日程:12月18日(日)
会場:リバーウォーク北九州 ミスティックコート
MC:愛智望美(FM FUKUOKAパーソナリティー)
 
■『口喧嘩祭 Special in 川崎 CITTA’ 』
日程:2023年1月5日(木)
会場:CLUB CITTA’
シェア / 保存先を選択