俳優・寛一郎が初舞台、初主演に挑む 舞台『カスパー』上演決定 演出はL.オリヴィエ賞受賞のウィル・タケット
『カスパー』
2023年3月19日(日)~3月31日(金)東京芸術劇場シアターイーストにて、舞台『カスパー』の上演が決定した。
日本でも大ヒットを記録したヴィム・ヴェンダース監督作『ベルリン・天使の詩』の脚本家としても知られ、2019年のノーベル文学賞受賞作家であるペーター・ハントケが、19世紀はじめに実在した謎多きドイツ人孤児のカスパー・ハウザーを題材に描いた問題作『カスパー』。
興味深い彼個人の史実を描くのではなく、「ことば」を知ることによって社会にとらわれていく一人の青年として描き、個人と社会、そして教育とは何かについて現代に突き付けてくるペーター・ハントケの初期の戯曲だ。
主人公カスパーには、映画『ナミヤ雑貨店の奇蹟』、『菊とギロチン』などで数々の賞を受賞し、現在放送中のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に源実朝を暗殺する公暁役で出演した俳優の寛一郎。本作が初舞台にして初主演での挑戦となる。
そして演出には、渡辺謙主演の舞台『ピサロ』やアダム・クーパー主演の『兵士の物語』などで日本でも人気、『The Wind in the Willows』でローレンス・オリヴィエ賞を受賞した英国人演出家、ウィル・タケット。
バレエからオペラ、演劇と様々なジャンルの演出を手がける彼が、外界との接触、他人との接触がまったくなかったカスパーが保護され「ことば」の意味を知り、文明社会に突然放り込まれていく中、カスパーは何と出会い、どこへ向かい、そして何を手に入れ、何を失うのかを、身体表現を駆使した演出で作り上げていく。
言葉を通じて他者との関係性をかたち作り、社会生活を営むことが当たり前の人間世界にあって、その根本から考えさせられる本作。この戯曲が描くテーマに惹かれて舞台に初挑戦することにしたと話す寛が、名匠ウィル・タケットとのタッグでどのような世界を魅せてくれるのか。大いに期待が高まる。
寛一郎 コメント
まず台本が非常に興味深く、そして面白かったです。作家が描いている「言葉」というものの認識の深さ、それを反芻して、言語から身の回りの事象を捉えていくという、作家の視点がとても印象深い作品だと思い、この題材を、この作品を演ってみたい、と純粋に思いました。
舞台に立つことはこの台本と出会うまで全く考えていませんでしたが、とにかくこの作品を演ってみたいと思いました。まず作品があって、それが舞台のための戯曲だったということです。初めて舞台で演じるにしてはハードルが高い作品かもしれないので、楽しみであると同時に、もちろん不安も感じています(笑)。
そしてこの作品との出会いはこれまで生きてきた自分の人生を省みることになるかもしれません。数希な運命を生きたカスパー・ハウザーという人物をもともとご存じの方、またそうでない方にも楽しめる作品にしたいと思いますので、ぜひご来場ください。よろしくお願いいたします。
寛一郎 プロフィール
1996年8月16日生まれ。東京都出身。20歳で映画『心が叫びたがってるんだ。』(17) で俳優デビュー。その後同年に公開された映画『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(17)、翌年公開の映画『菊とギロチン-女相撲とアナキスト-』での演技が高く評価されてキネマ旬報ベストテン [個人賞]新人男優賞、など日本映画批評家大賞 助演男優賞様々な賞を受賞。その後も順調に映画、ドラマに出演して実績を積み、22年にはNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で源実朝を暗殺する公暁役を演じて全国的にも印象を残した。舞台作品への出演は本作が初めてとなる。
代表作に【映画】「ナミヤ雑貨店の奇蹟」(17)、『菊とギロチン-女相撲とアナキスト-』(18)、『チワワちゃん』(19)、『一度も撃ってません』(20)、『劇場』(20)、『泣く子はいねぇが』(20)、『AWAKE』(20)、『月の満ち欠け』(22)【テレビ】『青と僕』(CX)、連続ドラマW『悪党~加害者追跡調査~』(WOWOW)、ドラマ10『プリズム』(NHK)、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)など。メインキャストを務めた映画『せかいのおきく』(阪本順二脚本・監督)が23年4月28日公開予定。
ぼくは そういうような まえ に べつじん だった こと が
ある よう な ひと に なりたい
I want to be a person like somebody else was once.
突然我々の世界に、あるいは時代へ送り込まれてしまった一人の人間。
姿は人間と同じ。たった一つのことば(音)。
「僕はそういうような、前に別人だったことがあるような人になりたい。」
を繰り返すだけ。これがこの舞台『カスパー』の始まりです。
言葉を拷問のように浴びせられ、次第にコトバを言葉として認識し、言葉に意味があることを知る。
そして社会で生きていくための言葉やルールを教え込まれ、調教されていく。
「ことば」が次第に「意味」を持ちはじめ、そこに意思が芽生えた時、
カスパーは何と出会い、どこへ向かい、そして何を手に入れ、何を失うのか。
そして「カスパー」とは何者なのか、いったい何なのか…。
立つ・歩く・座る・言葉を使う…。
我々が「社会」で生きるために身につけたスキル。
我々は自由に自らの意志と選択でこのスキルを使い、社会で暮らしている。
しかし、もしも「言葉」が我々を操作するために「調教」されたものだとしたら…。
公演情報
訳:池田信雄