ミヒャエル・ボーダー(指揮) 読売日本交響楽団 世紀転換期の爛熟の美に浸る稀少な体験

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クラシック
2016.1.4

世紀転換期の爛熟の美に浸る稀少な体験

 読響の1月定期は極めて興味深い。指揮はミヒャエル・ボーダー。ウィーン国立歌劇場やベルリン・フィル等で活躍しているこのドイツの名匠は、精巧な音楽作りと熱いタクトで絶賛を博し、中でも後期ロマン派や近現代作品に定評がある。日本でも複数の楽団や新国立劇場で敏腕を発揮しているが、今回読響と初の共演を果たす。

 演目では、まずツェムリンスキーの交響詩「人魚姫」が目を引く。マーラーとシェーンベルクに挟まれた不遇の天才による同曲は、1905年の初演後行方不明だった楽譜が、80年代に発見されて急浮上した話題作。人を愛した人魚の悲哀を描くアンデルセンの童話に基づいた、R.シュトラウス並みの大編成による大作で、甘美な旋律と抒情味あふれる音楽は、聴けば必ずや魅了される。この音物語を近代ものやオペラに長けたボーダーの指揮と、最近ゴージャスな輝きを増す読響サウンドで味わえるとなれば、逃すことはできない。

 R.シュトラウスの「ドン・ファン」=同時代に名声を得た作曲家の華麗な交響詩との対照も妙味十分。またリストのピアノ協奏曲第2番も、緻密で抒情的な美品にもかかわらず、1番に比べると演奏される機会は少ないので、ぜひ耳にしたい。しかも交響詩の「人魚姫」は3楽章の交響曲型で、リストの協奏曲は6部ひと続きの交響詩的な構成。この対比も示唆に富んでいる。ソロは近年急速に評価を上げる83年スイス生まれの俊英フランチェスコ・ピエモンテージ。クリアなタッチと緻密な表現力で魅せる彼が、曲の真価を清新に明示してくれることへの期待も大きい。

 これはあらゆる意味で注目の公演だ。

文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年1月号から)


ミヒャエル・ボーダー(指揮) 読売日本交響楽団​ 第554回 定期演奏会
2016.1/14(木)19:00
サントリーホール
問合せ:読響センター0570-00-4390
http://yomikyo.or.jp

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