プロボディボーダー/グラビアアイドル・白波瀬海来がアニメソングを愛する理由【アニメソングの可能性 第七回】
“アニメソング”とは果たして何なのだろうか? 一つの音楽ジャンルを指し示しているように感じさせるが、しかしそこに音楽的な規則性はない。それでも多くの人の頭の中には“アニメソング”と言われて思い浮かべる楽曲の形がぼんやりとあるだろう。この“アニメソング”という音楽ジャンルの形を探るための連載インタビューがこの『アニメソングの可能性』だ。
話を伺うのは、アニメソングを日々チェックし、時にそれをDJとしてプレイするアニメソングDJの面々。多くのアニメソングを日々観測し続ける彼らが感じる“アニメソング”の形とはどんなものなのかを訊き、アニメソングというものを紐解いていこうと思う。
連載企画の第八回に登場していただいたのは、プロボディボーダーでありグラビアアイドル、、そして先日アニメソング×クラブミュージックプロジェクト『OMOTENASHI BEATS』への加入も発表となった白波瀬海来。彼女がアニメソングを好きになった理由、そしてアニメソングDJを始めるに至った理由を聞いた。最後まで楽しんでもらえたら光栄だ。
■聴く人の背中を押してくれるニメソングに魅力を感じる
――まずは白波瀬さんのアニメの原風景とは何か、幼少期に見たアニメの記憶のお話から伺いたいです。
幼少期の私にとって、アニメは日曜日の朝に見るものだったんです。当時水泳を習っていて、日曜日は朝練があって、家に帰ってくるのが9時半過ぎ、そのタイミングでテレビをつけるとアニメがやっていたんです。特に記憶しているのは『ワンピース』ですかね。
――9時半に帰ってくるということは、朝練の開始時間はすごく早かったのでは?
早かったですよ! 5時半にはプールに到着して、そこから練習でしたからね。帰ってくるのも9時半過ぎでしたから、『ワンピース』も各話後半しか見れていないんですよ。最近になって1話から見返して「あのシーンの前にこんなことがあったんだ……」なんてことを知ったりしました(笑)。
――観ていないエピソードが多かったと(笑)。では見返して印象はいかがでしたか?
改めて作品のすごさを感じました。もっと幼い時にストーリーを理解した上で見ていたら人生観が変わっていただろうと思います。
――となるとアニメソングで印象に残っているものはやはり『ワンピース』の主題歌でしょうか?
はい。中でも印象が強いのは「ウィーアー!」ですね。私がアニメを見始めた時はテレビ放映の中で使用されてはなかったのですが、劇場版を見に行くと流れるんですよ。それがすごく印象に残っています。あの“ザ・アニメソング”という感じにすごく惹かれて、今でもカラオケに行ったら絶対に歌いますね。
――「ウィーアー!」には確かに王道アニメソングというものを感じますよね。
私の中では、アニメソングって前向きで人の背中を押してくれるものという印象があるんです。それでいくとやはり「ウィーアー!」はそのど真ん中。あと、同じく『ワンピース』の主題歌で「OVER THE TOP」にも同じ空気感を感じてすごく好きですね。
――お話に出た楽曲は今でも日常的に聴かれていますか?
子供の時は試合前に、今はボディーボードの大会前によく聴いています。聴いた人の背中を押してくれるアニメソングは自分自身への応援歌としてすごくいいんですよ。試合会場に向かう車の中では一人で大熱唱しながら運転してます(笑)。
――なるほど。ちなみに日曜日の朝放送のアニメだと『プリキュア』シリーズもあったかと思うのですが。
練習時間の影響もあって見れなかったのもありますが、そうでなくてもあまり食指が動かなかったように思います。日曜日の朝、テレビが見られる時はそういった女の子向けアニメではなくどちらかというと特撮作品を好んで見ていたように記憶してます。『炎神戦隊ゴーレン(2008年~2009年放送)なんかはすごく好きでした。
――アニメも特撮作品もいわゆる“ヒーローもの”が好きだったと。
好きなんだと思います。最近になって『戦姫絶唱シンフォギア』を見始めたのですが、あれも“ヒーローもの”の空気を感じて好きになった気がします。あとは、バトルシーンがある作品が好きで、『ソードアート・オンライン』シリーズなんかも見ています。みんなで協力して敵に挑む姿がカッコよくて、それを楽しみに見ています。
――作品の好きになる基準の一つとしてバトルシーンがある。
バトルシーン自体も好きですし、バトルの中に主人公が困難にぶち当たって、それでも諦めない心が描かれるところに惹かれるんですよね。スポーツをやっている私からすると、そういったシーンにはすごく感情移入させられますから。
■バリ島で見た、クラブカルチャーと人々との距離
――なるほど。そこでアニメとスポーツが繋がるんですね。そして今度はクラブカルチャーについてもお聞きしたいのですが、クラブカルチャーとの出会いのきっかけもお聞きしたいです。
私が最初にクラブというものを目の当たりにしたのは、実はバリ島なんです。ボディーボードの大会でバリ島に行った時に、始めて現地のクラブに行って。そこには小さい子からお年寄りまでいて、みんなが音楽を聴きながらダンスを楽しんだり、お酒を飲んだりしていた。日本で噂に聞き、思い描いていたクラブのあり方と全然違って……。この人たちにとってクラブってすごく身近なものなんだ、そう感じました。
――日本では子供が入れるクラブはごく少数ですからね。その後、日本のクラブには行かれたのでしょうか?
いまだに行けてないんですよ、なんとなくまだ抵抗があって……。DJが出演されているフェス、『ULTRA JAPAN』なんかは何度か行って、DJプレイを目の当たりにはしてきているんですが、やはり屋内となると少し抵抗がある。なんとなくそこに海外との差があるような気がするんですよね。
――それはわかる気がします。では海外のクラブや『ULTRA JAPAN』で聴いていたのはどういった音楽だったのでしょうか?
ほとんどがEDMですね。正直なところ、アニメソングはおろか、日本語の楽曲が使われているところも生で見たことないんです。
――ではアニメソングを使ったDJはどこで知ったのですか?
SNSで見たんですよ。「あなたへのおすすめの投稿」でタイムラインに上がってきたのをたまたま目にして。あの時は衝撃でした。そもそも邦楽を使ってDJができるなんてことを想像もしていなかったですから。それで私も普段聴いている曲でDJをやってみたいと思うようになったんです。
■楽曲をどう解釈するのか、それがDJにとって大切なことだと思う
――普段聴いている楽曲を使ってDJをしようと思うと、身近にある音楽の聴き方も変わりませんか?
DJで流すんだったらこのタイミングで次の曲をかけよう、そんなことを意識して曲を聴くようになりました。最近はそればっかり気にしてしまって、普通に曲を聴いているつもりが、「DJだったらここで次の曲流すな」ってタイミングで間違えてプレイヤーのスキップボタン押しちゃったりしています(笑)。
――そんな楽曲をDJは繋いでいくわけですが、実際にやってみていかがですか?
正直に言うとただ曲を順番に流すだけの簡単な作業だと思っていたんですよ。でも、やってみたらすごく難しい……。繋ぎ方のレパートリーもたくさんあるじゃないですか。そのレパートリーの中からどの方法を選ぶかを、その時々で判断しないといけない。その判断をするためには、楽曲を一つ一つきちんと解釈していないといけないんだな、そう思ったんです。曲をどんな曲だと解釈したかによって、DJでの使い方も違ってくる。それがひいてはDJにとっての個性にもつながってくることに気付いたんです。今はひたすら色々なDJさんのプレイを聴いて、その人の曲の解釈を感じ、参考にさせてもらっています。
――なるほど。ではこれまで聴いてきた中で憧れた、目標としたいと感じたDJさんはいらっしゃいますか?
韓国のDJ SODAさんにはすごく憧れます。彼女のプレイには、会場のみんなをハッピーにしようという意志をすごく感じるんです。自分がDJしていない時間もお客さんと積極的にコミュニケーションをとって、会場中を巻き込んでDJしている。私もああいったプレイができるようになりたいと思っています。
――会場全体を巻き込む雰囲気作りからしているのは素敵ですね。では白波瀬さんがDJをするにあたって、自身の武器はなんだと思いますか?
グラビア活動もしているので、見た目は武器だと思っています。ボディーボードで培ったこの健康的な肉体美は活かしていきたいですね。
――ビジュアル面は確かに大きなアドバンテージですよね。白波瀬さんがでてきたらやっぱり盛り上がると思います。そしてDJとしては先ほどでた繋ぎと同様に、選曲も非常に大事ですが、どんな選曲をしていこうと思われていますか?
これまで自分自身が聴いてきたアニメソングにこだわってプレイしていきたいと思っています。世界的に見ても、アニメソングは日本が誇る一大文化じゃないですか。日本人としてDJをする以上はここの強味を生かさない手はないと思っています。海外でのアニメ、アニソンの人気もすごいですからね。
――世界におけるアニメ、アニソンの人気を感じていると。
ボディーボードの大会で海外に行くことがすごく多いんです。その行った先でアニメが放送されていたり、露天でアニメグッズが売っているところは目の当たりにしていますからね。その人気は本当にすごい、そう感じています。
■アニメソングDJという言葉が広まれば、クラブはもっと敷居の低い場所になる
――いろいろとお聞きしてきましたが、白波瀬さん自身が感じている、アニメソングDJならではの面白さとは?
他のジャンルの音楽と明確に違うのは、聴いた人が思い浮かべる映像の量だと思います。例えば普通の楽曲って、聴いて思い出す映像ってMVぐらいじゃないですか。でもアニメの主題歌はその楽曲が使われたアニメのオープニング映像に加えて、そのアニメの名シーンなんかも頭に浮かぶ。聴いていて濃い体験ができるのがアニメソング、そしてアニメソングDJの魅力だと思うんですよ。
――確かにオープニング映像や、そのアニメ名シーンが浮かぶのはアニメソングならではですね。特に物語の中の浮かぶシーンは人によって違いがあるでしょうし。さらに思い入れによってその濃度も変わってくるし。DJでそれが連続で頭の中に流れるわけですから、想起されるイメージは濃いですよね。では今後アニメソングDJシーン全体がこうなってほしい、といったものはありますか?
もっとアニメソングDJというもの自体が広く知れ渡ってほしいです。DJというもの自体の知名度は上がってきているので、その中にはアニメソングを使っている人もいるんだよ、ということを知ってもらう機会が増えてほしい。
――アニメソングDJの知名度があがるためにはどんなことが必要だと思いますか?
私自身はボディーボードをやっていることもあり、大会にDJの方がいることがよくあるんです。そういった、クラブに聴きにくるのとは別の場所でDJさんが活動する機会が増えるといい、そう思っています。これはアニメソングDJに限った話ではないですけど。
――先ほど白波瀬さん自身も日本のクラブに行ったことがないという話をされていましたが、クラブに足を運んでもらうにはどうしたらいいと思いますか?
やっぱりそこは、アニメソングDJの知名度が上がることじゃないでしょうか。以前の私もそうでしたけど、クラブって全然知らない音楽が流れる場所だと思っている人がたくさんいると思うんです。そういう人に「そんなことないよ、みんなが知っている曲もバンバンかかるのがクラブだよ」ということを知ってらえたらクラブの敷居ってすごく下がると思うんです。
――なるほど。
その敷居を下げるためにアニメソングDJってすごくいい言葉だと思うんですよね。J-POP DJでもいいですけど、J-POPだとちょっと曲のレパートリーが広すぎて、知らない曲ばかりがかかりそうだ、という印象が払拭しきれない感じがしますから。
■『OMOTENASHI BEATS』で、最も楽しそうにDJすることを目指します!
――今後の白波瀬さんのDJとしての活動についても伺いたいのですが、先日『OMOTENASHI BEATS』への所属も発表となりました。
そうなんですよ。同じチームにDJ KOOさんやMOTSUさんもいらっしゃる。その中にまだ人前でDJをしたこともない私が加入って、なんだか恐れ多いんですけど……。全力でやっていければと思っているので、応援してもらえたらと思います!
――3月10日には『AniRAVE 2023 -CHAOS-』への出演も決定していますね。
すごく緊張してます。ボディーボードでは大きな大会でも全然緊張したことがないのですが、DJに関してはもう既に緊張してガッチガチです(笑)。アニメソングのクラブも行ったことがないのでどんな場所か想像できていないですし……。
――基本、皆さんフレンドリーですよ。では注目してほしいところはありますか?
もうとにかくハッピーなプレイをする、私自信が一番ハッピーになって、それをみんなにふりまくDJができればと思うので、そこは注目してほしいって感じですかね。
――確かにDJの方が楽しそうにプレイするのは大事ですよね。
緊張してるところなんて微塵も感じさせないDJをしますよ! そこだけは誰にも負けない……とまでは言えないけど、一番を目指していきます!
――いいですね! では今後の活動で目指したいこととは?
まずはアニメソングDJをもっと頑張っていきたいのと、あとできればもっと幅広くアニメ関連のお仕事はできたらいいと思っています。私、声がちょっと特殊なので声優にもチャレンジできたら嬉しです。お気軽に声をかけて頂けたら嬉しいです。
■結び
「クラブに行くのは敷居が高い」という話は非常によくわかる。筆者もかれこれ10年ほどDJをやっているが、この入りづらさを解消しない限り、日本におけるクラブと人々の距離は縮まらないと思う。
今回のインタビューで出た、アニメソングDJの存在の認知が広がることがクラブと人々の距離を縮めるという話は、非常に理にかなった話だと思う。今よりもっとクラブが身近なものになるためにも、アニメソングDJシーン全体が活動の幅を広げていく必要があるのかもしれない。
インタビュー・文=一野大悟 撮影=中田智章
追加情報
撮影場所情報
Another Dimension
イベント情報
『AniRAVE 2023 -CHAOS-』
リリース情報
デジタル写真集『白波瀬海来 ウェットスーツを脱ぎ捨てて』
『白波瀬海来 ウェットスーツを脱ぎ捨てて』