菊之助が獅童、松也たちと歌舞伎の力で名作ゲームの世界を体現!~『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』会見&フォトコールレポート

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2023.3.3
『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』フォトコールより

『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』フォトコールより

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2023年3月4日(土)~4月12日(水)まで、IHIステージアラウンド東京で、木下グループpresents『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』が上演される。名作ゲームの歌舞伎化だ。歌舞伎俳優の尾上菊之助の企画により実現した。客席が360度回転することで得られる没入感が話題の劇場で、名作ゲームと歌舞伎が融合する。

『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』会見より

『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』会見より

開幕に先駆けて3月2日にフォトコールと会見が行われた。会見には企画・構成・出演の菊之助のほか、中村獅童尾上松也中村梅枝中村萬太郎中村米吉中村橋之助上村吉太朗中村芝のぶ、そして坂東彦三郎中村錦之助坂東彌十郎中村歌六が登壇した。共同演出は金谷かほり。脚本は八津弘幸。補綴に今井豊茂。公演には尾上丑之助も出演し、尾上菊五郎が声で参加する。フォトコールではオープニング映像が上映された他、2つの場面が上演された。出演者のコメントを、舞台の写真とともに紹介する。
 

※掲載する舞台写真には、演出面のネタバレととれる要素も含まれます。
 

客席をスクリーンが囲む(20列目の一番下手辺りから撮影)。

客席をスクリーンが囲む(20列目の一番下手辺りから撮影)。

尾上菊之助(ティーダ役/企画・演出)

菊之助は、眠らない都市ザナルカンドで生まれ育った、前向きで感受性豊かな主人公の少年ティーダを演じる。

「ザナルカンド・エイブスのエース。ティーダっす!」

役の声でポーズを決めた菊之助。一般的な歌舞伎の会見とのギャップに記者席で笑いが起き、つられて菊之助自身照れたように少し笑った後、通常モードで挨拶をした。

尾上菊之助

尾上菊之助

「2020年に始まった企画が、いよいよ明後日(4日)初日を迎えます。演出の金谷先生をはじめ、皆さんお一人おひとりのお力添えのもと、一場面一場面を作ってまいりました。原作には世界中にたくさんのファンがいらっしゃいます。原作の世界を尊重しつつ歌舞伎の世界と融合し、互いを思いやり、愛し、諦めない心。前向きな姿勢。亡くなられた方への鎮魂。そして未来への元気をこの作品に込めてお届けしたいです」

中村獅童(アーロン役)

獅童が演じるのは伝説の剣士アーロン。亡き友との約束を胸に秘めながら、若者たちの成長を支え、真実へと導く。

「伝説の剣士、アーロン(渋い声)。劇場で、待ってるね(かわいい声&ポーズ)!」

菊之助に続き、予想外の挨拶に再び笑いが起こっていた。

中村獅童

中村獅童


挨拶の後、少し恥ずかしくなった獅童。

挨拶の後、少し恥ずかしくなった獅童。

「『ファイナルファンタジー(以下、FF)』の世界に、歌舞伎の醍醐味である立廻り、踊り、長唄、義太夫が融合しています。歌舞伎が初めての方から上級者の方にまで楽しんでいただけるのではないでしょうか」

尾上松也(シーモア役)

母との辛い思い出や父との確執から、歪んだ考えに傾倒するグアド族の若き指導者シーモア。

「エボンの老師となりました、シーモアです(落ち着いた美声)。絶対面白いよ! 見にきてね!(ピース!)」

思い切りの良い挨拶を終えた松也に、歌六が「がんばったね」と声をかけていた。

拍手を送りあう姿にもまた笑いが起きていた。

拍手を送りあう姿にもまた笑いが起きていた。

ゲームが歌舞伎化するのは、本作が初めて。松也は意気込みを語った。

「歌舞伎には先人が築いた土台があり、だからこそどんなものでも歌舞伎として成立させられます。本作には、いわゆる歌舞伎らしい要素が存分にちりばめられ、詰め込まれています。自信をもってお見せできるよう、初日に向けて稽古をさらに重ねます」

尾上松也

尾上松也

中村歌六は「後編」に出演するアルベド族の族長シド。「このチームで最年長。複雑な機構に迷路のような舞台裏。迷子にならないよう頑張ります!」と意気込み語った。

中村歌六

中村歌六

同じく「後編」に出演する中村錦之助は、大召喚士ブラスカを演じる。「ブラスカは家族思い、娘思いの聖人君子のような人物。まさに錦之助そのものです。ブラスカに錦之助を重ね合わせてご覧ください」。聖人君子の意味をあらためたくなるコメントで、共演者たちをざわつかせ楽しませた。

中村錦之助

中村錦之助

坂東彌十郎は、ティーダの父ジェクト。「ティーダの父親役ですが、子供に対して非常に不器用な父親です」と役を分析する。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では“時政パパ”として親しまれことに因み、「ジェクトパパです。今月もパッパと呼んでください!」とアピールした。

坂東彌十郎

坂東彌十郎

中村萬太郎は、ルッツと23代目オオアカ屋の二役。「金谷さんからは『オオアカ屋さんには、一番はじめにお客様とお友だちになってほしい』とうかがいました。お芝居の冒頭で、簡単に歌舞伎の決まり事などを解説させていただきます」。そして「オオアカ屋、よろしく!」と役になりきってコメントを結んだ。

中村萬太郎

中村萬太郎

中村芝のぶは、ユウナレスカ役。究極召喚を授ける伝説の召喚士だ。「素晴らしいシーンがたくさんございます。ザナルカンドにて皆様のお越しをお待ち申し上げております」。インパクトのあるビジュアルに負けない、役になりきった挨拶で一同の拍手を浴びた。「ユウナレスカは、原作では非常に薄着と申しますか。歌舞伎の女方としましては、ちょっと……(一同笑)。デザイナーの方が第二形態、第三形態の要素を混ぜて考えてくださいました。よくご覧いただくと、ユウナレスカの全てが詰まっております」。

中村芝のぶ

中村芝のぶ

坂東彦三郎(キマリ役)

彦三郎が演じるキマリは、ロンゾ族の青年。

「原作の世界を壊すことなく歌舞伎の要素を落とし込んでくださいました。メイク、衣裳をはじめ、関わってくださった方々に拍手を送りたいです」

坂東彦三郎

坂東彦三郎

中村梅枝(ルールー役)

梅枝は、博識でしっかり者の黒魔導士ルールーを演じる。衣裳は、和装にアレンジされた。

「原作のルールーは黒い服でしたが、舞台用としてやや紫気味の衣裳となりました。裏地は照明が当たるととても綺麗に光ります。気に入っております」

中村梅枝

中村梅枝

中村米吉(ユウナ役)

米吉は、父の遺志を継いでスピナーを救う旅に出る、召喚師の少女ユウナを演じる。本作におけるヒロインで、2月1日には原作ゲームの名場面のひとつ『異界送り』を再現したスペシャル動画が公開され話題となった。

中村米吉

中村米吉

「動画を多くの方にご覧いただきました。ありがたいと同時に、しっかりと勤めなくてはという怖さも感じております。舞台機構、映像、音楽。あらゆるものが詰まっております。ぜひ劇場でご覧ください」

(左から)尾上菊之助、中村米吉

(左から)尾上菊之助、中村米吉

中村橋之助(ワッカ役)

橋之助が勤めるワッカは、作中の人気スポーツ「ブリッツボール」の選手兼コーチ。

「歌舞伎は非常にぶっ飛んだ芸能です。ブリッツボールの場面では、歌舞伎らしさを面白く取り入れた見せ方を、立師(たてし)の山崎咲十郎さん、尾上菊次さん、中村獅一さんが考えてくださいました。菊之助おにいさんのティーダ、萬太郎さんのルッツ、僕のワッカにも見せ場があります。そして歌舞伎の古典作品をオマージュした演出でもあります。楽しんでいただけたら」

中村橋之助

中村橋之助

上村吉太朗(リュック役)

『FFX』は2001年7月に発売された。吉太朗が生まれたのも2001年。

「この作品と同い年の自分がメインキャストとして出演できることを嬉しく思っております」

吉太朗が演じるのは、ユウナを守る元気で頑張り屋の少女リュック。

「どのように歌舞伎になったのかご覧いただき、そしてこの舞台をきっかけにゲームをまたプレイしていただければ」。

上村吉太朗

上村吉太朗

■FFXの名シーンを歌舞伎の要素で構築する

フォトコールでは、オープニング映像の後に「シーモアとの戦い」が公開された。パーティのメンバーたちが各々の技でシーモアに挑む。

中央上段にシーモア。舞台美術は堀尾幸男、音楽監督は新内多賀太夫が担当している。

中央上段にシーモア。舞台美術は堀尾幸男、音楽監督は新内多賀太夫が担当している。

古典演目とイメージが重なる見どころもありながら、台詞は分かりやすく、歌舞伎の知識も『FFX』の知識も不要。菊之助、獅童、松也はすでに役を手の内に入れているよう。昔から演じられてきた役のように空気を作る。邦楽アレンジされた楽曲がかかり、ツケが響き、高揚感が煽られた。立廻りの美しさ、役者の迫力が空間を埋めた。

映像に頼らざるを得ないのでは? 生身の人間に勤まるのかな? など想像していた技やキャラクターは、いずれも歌舞伎のアプローチと歌舞伎俳優の身体で表現されていた。そこへ回転型ステージと巨大スクリーンを生かした演出が加わる。歌舞伎の立廻りのテンポでありながら、ゲームらしさを感じさせるシームレスなバトルだった。

会見でゲームと歌舞伎の融合について問われ、「どんなものでも歌舞伎にはなる」と答えた獅童。

「大事なのは、どれだけ原作を尊重し、歌舞伎の要素で組み立てられるか。歌舞伎をご覧の皆さんが、これは新しい歌舞伎だねと感じてくださらなくては、我々歌舞伎役者がやる意味がありません」

『FFX』を新作歌舞伎にすると聞いた時は「すごいところに挑戦するんだな、と思いました」と率直な思いも明かす。

「でも菊之助さんはこの企画を立て、役者一人ひとりにご自分で電話をかけて思いを伝えてくれました。素晴らしいと思いましたし、僕はとてもうれしかった。そういう思いが公演を成功に導くのだと思うし、未来の歌舞伎に繋がっていくと思っています。コロナ禍もようやく落ち着いてきた今、お客様にはまずは劇場へきて体感してほしい。我々役者も一丸となり勤めなくてはと思っています」

バトルシーンの後には『異界送り』が公開された。振付は尾上菊之丞。音楽、光、映像、そして歌舞伎がそれぞれの役割をまっとうし、世界で愛された名作ゲームの名場面をここに生み出すべく高め合う。この会場でこの作品を上演する必然性を強く感じさせた。パワーではなく情感溢れる美しさで米吉のユウナが空間を支配した。

記者から「共演者をゲーム内のパーティのメンバーに例えるなら?」と問われた菊之助。

「アーロンの台詞に『諦めず自分の道を進んでみろ』という一節があります。私は今回、演出卓で金谷先生の隣りに座らせていただいておりますが、劇場に入ってみたら、思い描いていたものを具現化するのが困難なことがたくさんありました。そんな時、例えば獅童のおにいさんが『カズ(和康。菊之助の本名)、こうした方がいいんじゃないか』とアーロンのように言葉をかけて支えてくださったり。ここにいる皆さんがそれぞれに力を貸してくださり、勇気をいただき、前に進んでまいりました」

2020年のコロナ禍で「落ち込んでいた時に元気をくれたのが『FFX』でした」とも菊之助は言う。

「一人ひとりの葛藤を描きつつ、パーティ一丸となり強大な敵に立ち向かいます。未来に向けて元気に進んでまいりましょう、というメッセージを受け取りました。今回人間が演じることで、よりお伝えできるところがあるのではと期待しております」

公開されたのはわずかなシーンのみであったが、どの俳優からも原作へのリスペクトと歌舞伎俳優としてのプロ意識を感じるステージとなっていた。その要素が本番までにどのように組み上がり、どのような世界をみせるのか。開幕への期待が高まる。『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』は 2023年3月4日(土)から4月12日(水)までの上演。

「しっぽ触らないで!」とキマリ(彦三郎)。「触ってない」と笑うシーモア(松也)。

「しっぽ触らないで!」とキマリ(彦三郎)。「触ってない」と笑うシーモア(松也)。

取材・文・撮影=塚田史香

公演情報

木下グループpresents 『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』
 
日程:2023年3月4日(土)~4月12日(水)
※休演日:3月8日(水)、15日(水)、22日(水)、29日(水)、4月5日(水)
【前編】11:30開場 12:00開演 【後編】17:00開場 17:30開演
各編途中休憩2回あり。前編後編の間には約90分休憩がございます。
 
会場:IHIステージアラウンド東京(豊洲)
 
企画:尾上菊之助
脚本:八津弘幸
演出:金谷かほり 尾上菊之助
 
出演:尾上菊之助 中村獅童 尾上松也
中村梅枝 中村萬太郎 中村米吉 中村橋之助 尾上丑之助 上村吉太朗 中村芝のぶ
坂東彦三郎 中村錦之助 坂東彌十郎 中村歌六 / 尾上菊五郎(声の出演)
※中村歌六、中村錦之助、尾上丑之助は後編のみの出演となります。
 
料金:
■前編・後編通し(全席指定・税込)
●SS席 32,000円 非売品オリジナルCGビジュアルアクリルスタンド付
●S席 28,000円 非売品オリジナルCGビジュアル公演ポスター付
●A席 24,000円 
●B席 19,800円
 
■前編/後編(全席指定・税込)
●SS席 18,000円 
●S席 16,000円 
●A席 14,000円 
●B席 11,000円
※非売品特典グッズは付きません。
 
一般発売日:発売中
 
主催:『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーⅩ』製作委員会
(TBS/ディスクガレージ/ローソンエンタテインメント/博報堂DYメディアパートナーズ/木下グループ/楽天/TopCoat)
後援:TBSラジオ/BS-TBS 原作・協力:スクウェア・エニックス 制作協力:松竹 
特別協賛:木下グループ 
協賛:再春館製薬所
製作:TBS
 
公式HP:https://ff10-kabuki.com
公式YouTube:https://youtu.be/WIqJuxTvucs
公式Tiktok:https://www.tiktok.com/@ff10_kabuki
公式Twitter:https://twitter.com/ff10_kabuki
公式Instagram:https://www.instagram.com/ff10_kabuki/
 
IHI Stage Around Tokyo is produced by TBS Television, Inc., Imagine Nation B.V., and The John Gore Organization, Inc.
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