島崎遥香と加藤諒にインタビュー 気心が知れている二人が感じる、太宰治版『新ハムレット』への期待とは

インタビュー
舞台
2023.5.11
(左から)加藤諒、島崎遥香

(左から)加藤諒、島崎遥香

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シェイクスピアの四大悲劇のひとつ『ハムレット』を太宰治が戯曲形式の長編小説として書き下ろした『新ハムレット』。32歳の若き太宰が、設定は原作そのままに語り直したというべきこの作品を五戸真理枝による上演台本・演出で上演する。主人公・ハムレットには木村達成が扮するほか、キャストには個性派・実力派が勢揃い。なかでも以前にドラマや映画・バラエティー番組で共演し既に仲良しだという二人、オフヰリヤ役の島崎遥香とホレーショー役の加藤諒に、本格的稽古に入る前の現在の心境や作品への想いを語ってもらった。

ーー『ハムレット』という作品には、まずどんな印象をお持ちでしたか。

島崎:ものすごい復讐悲劇というような、怖ろしいイメージがありました。だけど今回の『新ハムレット』を読んでみると、とてもユーモアに溢れていて。まるで、普通のとある家庭の親子喧嘩みたいにも思えてしまうような面白さだったんです。これなら舞台初心者の方も楽しめる、観やすい作品になるんじゃないかと思いました。とはいえ、まだ今の段階では稽古をやっていないのでなんとも言えないんですけど。

加藤:『新ハムレット』は読み物としても、シェイクスピア版の『ハムレット』よりかなり読みやすい言い回しになっていますからね。だからシェイクスピアって難しそうだな、大丈夫かなと思っている人たちにもかなり観やすい舞台になると僕も思います。僕は高校生の頃、東京までワークショップを受けに行っていたんですが、その時にまさにシェイクスピアの『ハムレット』をテキストにしてお芝居のレッスンを受けていて。当時はシェイクスピアのセリフって素敵だなと魅力に思いつつも、やはり理解するのには難しいなとも思ったりしていたんですけど、太宰版の『新ハムレット』の場合は多少はストレートにものを言っていない感じもありますが、でもそれが人間味を感じさせることにも繋がったりしているのでとても面白く感じました。

ーーお二人はこの『新ハムレット』でオフヰリヤとホレーショーを演じられますが。役柄の印象や、どう演じたいかの希望や理想などをお聞かせください。

島崎:まだまだわからないことだらけで、これから稽古で作っていく感じです。ただ、年齢的にはとても若い役だとは思っていて。

島崎遥香

島崎遥香

加藤:うん。僕だって今、33歳だけど23歳の役ですから。

島崎:幼さを思い出しておかないと。あと台本を読んでいて、父親のポローニヤスのセリフが個人的にとても刺さったんです。“遊学の心得”を長々と語るところ、とか。本当に自分が娘だったら、こんな父親が欲しいなって思うような場面なんですよ。だからお父さんとのシーンが今からとても楽しみ。

加藤:今回のポローニヤス役は池田成志さんだね。

島崎:そうなんですよ。ちゃんと楽しめるように、台本を稽古までにもっと読みこんでおきます。

加藤:でもこの作品って、いろんな愛が描かれているよね。

島崎:そう、家族愛もあるし。友情もあるし。

加藤:友情も愛だからね。僕が演じるホレーショーは、いろんな人のことを好きです、好きですって言ってるようなところがあるんです。作品を通してちょっと、LGBTの匂いのする部分もあって。

島崎:だから本当に、今の時代に合っているなって思いました。

加藤:噂話で人間関係がこじれたりとかするので、そういうところも今のネット社会、SNSの問題に通じるものを感じますよね。そのへんも、きちんと表現できたらいいなと思います。

島崎:これって何年も前に書かれた作品なのに、今を生きている私たち現代人と同じような悩みを持っているというか。答えが出ない悩みがあるところは一緒なんだなって、勇気づけられた気もしました。昔も今も、そしてたぶん未来も、人間たちは同じようなことで悩み、苦しみ続けていくんだろうなと思ったら、なんだか今の自分の悩みはちっぽけに思えてきて、明るく生きようって思えたんです。

加藤:しかも昔の人たちと比べたら、僕たちはもっといろいろなことで恵まれているんですからね。それに太宰の、さらにずっと前にシェイクスピアがそのことを書いていたわけだから。そして僕が演じるホレーショーに関しては、とてもピュアな人で。ハムレットのいい親友であり、心の支えでもありつつ、意外とストレートにいろいろなことを言える人だと思っています。また、ホレーショーはハムレットのことが好きなんですけど、僕もたっちゃん(木村)とはもう8年前くらいから共演していて大好きだというところは共通点かなって思います。

ーー木村さんも、加藤さんがいてくれるのは心強いとおっしゃっていましたよ。

加藤:え~、僕たち、ちゃんとリンクできてるじゃん、うれしい!(笑) でも、そういう今の僕たちが演じる意味も含めて、この人間関係も作品に投影できたらいいなとは思います。

PARCO劇場開場50周年記念シリーズ 『新ハムレット~太宰治、シェイクスピアを乗っとる!?~』

PARCO劇場開場50周年記念シリーズ 『新ハムレット~太宰治、シェイクスピアを乗っとる!?~』

ーー島崎さんは木村さんとは初共演なんですね。

島崎:ビジュアル撮影でご一緒したんですが、とても明るい方のように感じました。

加藤:うん、たっちゃんは明るいですよ。

島崎:良かった(笑)。私、同い年なんです。

加藤:ハムレットとオフヰリヤで、愛、育んでください。

島崎:はい(笑)。

ーー演出の五戸さんとは何かお話しされていますか。

加藤:いえ、それが僕たち、今日の時点ではまだお会いしていないんですよ。でもね、昨年の読売演劇大賞で最優秀演出家賞を取られた方だということは聞いていますので、一体どんな方なのかなって……。

島崎:私、怒られたくない!

加藤:いやいや、むしろ、怒られよう。稽古中はいっぱい怒られたほうがいいと思う。

島崎:そうなんだ。わかった。

加藤:そして、みんなで一緒に泣こう? 僕にとっても初めての演出家さんだし未知な世界ではありますけど、どんな演出をされるのかとても楽しみに思っています。

島崎:もう、胸がドキドキです。舞台、という意味ではアイドルの時からずっと舞台には立っていて。舞台で歌って踊っていたことが演技に、芝居に変わるだけだと思えば気持ちも少しは楽になるんでしょうけど……でも、なかなかそうは思えなくて(笑)。今、一生懸命、自分にそう言い聞かせているところなんです。だけどどちらにしろ、自分にとって今回は新たな挑戦になるので、30歳を前にとてもいい機会をいただいたなとは思っています。

加藤:僕は、昔から舞台に立ててこそ本当の俳優だと思っていたような人間なんですよ。だから特にシェイクスピア作品は、役者としてはぜひやっておきたい神聖な演目でもあって。一昨年にシルヴィウ・プルカレーテさん演出の『真夏の夜の夢』をやらせていただいたんですけど、その時も絶対やりたい! という気持ちでオーディションに挑んだら、まさかのティターニアという女王様の役で受かりまして。それがちゃんとシェイクスピアに触れた初めての体験になりました。だから今回の『ハムレット』にも特別な想いがあるので、参加させていただけてとても光栄だなと思っています。

加藤諒

加藤諒

島崎:私は、ほぼ素人みたいなものですけど、諒くんがそんな風に言うくらいの特別な作品だとすると自分で大丈夫なのかなと思いつつも。でも未知だからこそ何も考えずにいけるかも? ……というのは嘘でたぶん無理なんだけど(笑)、思い切って飛び込んじゃうくらいの勢いで挑んだほうがいいのかなとも思いますね。

加藤:もう、身投げみたいなもんだよ(笑)。

島崎:はい(笑)。

ーー今回の舞台で、ご自分にとって課題だと思っていること、目標などはありますか。

加藤:僕、長台詞が苦手なんです。だけど今回、長台詞のオンパレードのような舞台なので。台本を最初読ませていただいた時、ちょっと僕、大丈夫かな? って心配になったくらい。

島崎:もし、セリフが飛んじゃったら、どうしたらいいの?

加藤:その時はみんなで支え合うしかないよね。

島崎:もう、そういうことを質問しちゃうレベルなんですよ、私。

加藤:相手のセリフも、しっかり覚えておいたほうがいいなと改めて僕は今回思っていて。特に長台詞だと、自分が止まっちゃったらもうそこで大変なことになるから。しかも、そういう長台詞をお客様にきちんと聞かせられる役者さんってものすごく素敵だなと僕は思うので、だから今回は長台詞こそが自分の中の一番の課題であり、新たに掴めるものがあったらいいなと思っているところなんです。

島崎:私、オフヰリヤのイメージは今、勝手に“京女”という設定にしていて。自分が本当のことをそのまま言っているのか、それとも嘘を言っているのか、まだ感情が見えないので……っていうと、なんでそれが“京女”なのかよくわからなくなってきましたけど(笑)。でもなんか、そんなイメージだったんです。要所要所では自分が思っていることを言って、人の心を刺していくんですけどね……。そういうポイントみたいなところを、自分でうまく掴んでいけたらなと思っています。ね、稽古が始まる前にセリフは覚えておいたほうがいいの?

加藤:稽古場にもよるんだけど、なるべく覚えておいたほうがいいかもしれない。

島崎:わかりました。なんだか、相談みたいになっちゃった(笑)。

加藤:全然覚えておかなくていいよってパターンも多いんだけど、今回の場合はもう台本が出来上がった状態で稽古が始まるから。長台詞が多いと、もしかしたら稽古のスピードも速くなる気がするし。だから、ある程度は入れておいたほうがいいのかもって思ってる。これは僕の勝手な予想だけどね。

島崎:はい。今、ようやく少しだけイメージが湧いてきました。今日、諒くんに会えて良かった(笑)。

加藤:今回はとにかく信頼できる先輩方が大勢いらっしゃるから、わからないことあったら聞けばいろいろ教えてくれますよ。僕も、ぜひ聞きに行きたいなと思ってます。一緒に、がんばろうね!(笑)

(左から)加藤諒、島崎遥香

(左から)加藤諒、島崎遥香

取材・文=田中里津子

公演情報

PARCO劇場開場50周年記念シリーズ
『新ハムレット~太宰治、シェイクスピアを乗っとる!?~』
 
日程:2023年6月6日(火)~6月25日(日)
会場:PARCO劇場
※地方公演あり
 
作:太宰治
上演台本・演出:五戸真理枝
 
出演:木村達成 島崎遥香 加藤諒 駒井健介/池田成志 松下由樹 平田満
 
料金:11,000円
 
企画製作:株式会社パルコ
 
公式サイト https://stage.parco.jp/program/shin-hamlet
ハッシュタグ #新ハムレット
 
お問合せ:パルコステージ 03-3477-5858(時間短縮営業中)
https://stage.parco.jp/
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