石井琢磨&髙木竜馬、二人のデュオは「帰ってくる場所」~十五年来の絆を見せる"不滅のデュオ"、三都市ツアーや今後の展望を語る

インタビュー
クラシック
2023.4.27

画像を全て表示(10件)


昨年(2022年)東京で開催された第一弾公演で大好評を博した石井琢磨と髙木竜馬による二台ピアノコンサート。今回の第二弾公演では、東京のみならず、名古屋、大阪の三大都市をめぐるツアーへとさらにバージョンアップする。昨年公演のテーマでもあった”舞曲”を軸に、さらなる充実のデュオを聴かせてくれそうだ。二人にツアーにかける意気込みを聴いた。

――まずは今回のデュオツアーにかける意気込みをお聞かせください。

髙木:昨年、浜離宮朝日ホールでの公演が第一回目でしたが、今振り返ってみても、とてもいい演奏会だったと思っています。十五年来の友人である琢磨と一緒に魅力的なプログラムを、しかも今回は三都市で演奏させて頂けることにワクワクしています。

石井:親友である竜馬とツアーというかたちで三都市を周れるのは本当に嬉しいですね。無二の親友同士、お互いのことをよくわかっているからこそにじみ出る味というのがあって、僕自身も「本番ではいったいどんなことが飛び出てくるんだろう……」と、今からワクワクしています。

――今の石井さんの発言そのものが、まさに二台ピアノというものの楽しみなのでしょうか?

石井:一人で表現しきれないものをお互いに補完し合えるというところも一つの大きな点だと思います。特に「ラ・ヴァルス」ではそれがよく感じられます。この作品はソロ版もありますが「二台で演奏することによって一台では表現し得ないものを可能にする」というところがまさに魅力ですね。

髙木:奏者が二人なので単純に考えたら音量は二倍になるのですが、演奏していると自然に浴びる圧や迫力というのは二倍以上のものがあるように感じています。その+αの部分は、絶対に目に見えないものが関係していると思うんです。それは僕たち同士の関係性だったり、濃密な時間をお互いに過ごしてきたからこそ浮き出てくるものだと感じています。本番で飛び出るアドリブ的なスパークでも、そういう関係が保てるからこそ自然に表現し合えるんだと思います。

――お互い手の内を知っているからこそ、ある種、気づかいなしに自由闊達に表現し合えるという境地なのでしょうか。

髙木:二台ピアノも一つの室内楽のかたちですので、その点はお互い留意しなくてはいけないと思っています。基本的に二人で作り上げるものですので「相手がわかってくれているから」という前提のもとに勝手に暴走するのは言語道断で、一方が主役で一方がそれを支えるという関係ではなく、お互いが「支え合う」という気持ちを持ち続けています。

石井:竜馬とやっていて一つ感じることがあって。例えば、電車に乗っていて、忘れ物をした人がいるとするじゃないですか、そうすると竜馬はその忘れ物を拾って、その人のところまで届けに行くんですよ。それで、自分は電車に乗り遅れちゃうみたいな……(笑)。

このような竜馬の善の心は演奏にも出ていて、例えば、ちょっと僕が取りこぼしたところも必ず押さえてくれて、むしろそれを二倍にも三倍にも“いいもの”にして返してくれるんです。これが本当にスゴイことで、彼は俯瞰的に物事を冷静に見られるんですね。なので僕が舞台上で感情が揺れ動いてスパークしちゃった時でも、しっかりと軌道修正してくれたり、さらに良い方向に導いてくれるようにトスをあげてくれたりと、僕としては本当に安心感があって、すべて預けられるという思いがありますね。

髙木:いや~気持ちいいっすね(笑)。確かに、僕たち二人でやる時には基本的に彼がファーストで僕がセカンドのことが多いのですが、僕はどちらかというとメロディを担当して歌うというよりもバスやハーモニーを駆使して“支える”ほうが好きなんです

石井:僕がいつもファーストやりたいと言っているというのもあるのですが(笑)、竜馬はいつもセカンドのほうがいいと言ってくれて、そういう風に自然の成り行きで補完関係が成立する感じなんです。

髙木:支える側の意見としては、バス(低声部)の動きや和声感を駆使して設計図を描いているような気持ちになれるんです。むしろ描きだした図面以上の音楽の流れが実現したり、美しく歌える場合のほうが多くて、もうそれを一回体験してしまうと、本当に気持ちよくてやめられないんです。

琢磨は音色もよく響きますし、メロディラインも美しく歌って描きますし、本当にファーストラインを弾くことがマッチしているピアニストだと思いますし、お互いに性格と担当するパートというのがごく自然に一致していますね。

――ちなみにその設計図、すなわち、いわゆる手の内というのは事前に言葉で打ち合わせたりはしないんですか?

髙木:一回演奏してみると、だいたいお互いが何を考えているか、この箇所はどういう意図があって、どういう作戦を練っているんだろうということが分かり合えるので、あまり言葉で主張して伝え合う必要がないんですね。むしろ、そうやってある程度お互いに余白を作っておいたほうが、本番の時に自由にスパークして、それを互いに受け止められる余裕というものができるんだと感じています。

シェア / 保存先を選択