石井琢磨&髙木竜馬、二人のデュオは「帰ってくる場所」~十五年来の絆を見せる"不滅のデュオ"、三都市ツアーや今後の展望を語る
――ラインナップについてお伺いします。今回も、ラフマニノフに始まり、ラフマニノフに終わり、その間にフランス、ウィーンにちなんだ曲やハイライトとしてプレトニョフ版のシンデレラ組曲が入ります。
髙木:今回の構成はもちろん二人で考えたのですが、「我ながらよくできているな!」と自画自賛しています(笑)。かなり綿密に二人で話し合いました。
石井:それにかこつけて飲むという(笑)。
髙木:昨年のコンサートのテーマが”舞曲(Tanze)”でしたので、今回も基本的にそのベースラインは受け継いでいるかたちです。加えて(冒頭の)ラフマニノフと(終曲の)ラフマニノフで全体的に大きなアーチを描いて、その中にプレトニョフ編曲作品を二作入れての小さなアーチがあってと、一見、バラエティに富んだ詰め合わせのようにも見えるのですが、互いの作品が緻密に繊細に結ばれ合っています。
――特に石井さんは舞曲好きでご自身のアルバムにもそのタイトルを付けていますね?
石井:もちろんそれもありますが、「ラ・ヴァルス」とラフマニノフの二台ピアノ用の組曲というのは、いわゆる二台ピアノ作品の金字塔といわれるもので、デュオの実力がすぐにわかってしまうようなスリリングな作品です。お互い初のツアーで「自分たちがどこまでこれらの作品に向き合って対話していけるのか」というのを試してみたいというのもありました。
もう一つは、テーマを立てると統一感も生まれますし、“舞曲”という親しみやすいテーマを置きつつ、僕も竜馬も「皆さんの知らないような作品も入れたいね」という強い思いも感じていました。なので、今回はプロコフィエフの「シンデレラ」を入れることにしました。
髙木:あともう一つ、このプログラムの全体像として、まず一人ひとりのソロ演奏で初めて、次に連弾が入って、最後に二台ピアノでの演奏というようにクレッシェンド的な構成になっています。さらに、その中でいろいろな国を旅して、さまざまな時代を行き来して頂ける趣向になっていますので、そのような意味でも楽しんで頂けると思います。
――ドビュッシーの小組曲と「ラ・ヴァルス」はすでに以前のお二人の演奏会でも披露していますが、今回、第二弾として、さらにどのような境地を目指していますか?
石井:二回目ということのアドバンテージももちろんあると思うのですが、あえて「二回目と思わないフレッシュさ」というものも持ち続けていたいと考えています。そういう意味では作品を寝かせることもとても大切で、今まさにちょうどその状態です。そうすることによって新たな気づきが生まれてくる、見えてくることがたくさんあると思うんです。
髙木:「ラ・ヴァルス」はYouTubeの配信やスタクラ(STAND UP! CLASSIC in AKITA )などでも演奏させて頂いたので、少なくとも20回は合わせていて経験値はかなり上がってきていると思います。ですが、お互いに「もっともっと上を目指せるよね、できるよね」という思いはありますね。
石井:構成や技術的な面に始まって、音楽的なグロテスクさや華麗さなど、様々な要素をさらに深く捉え、お互いに満足することなく、さらなる上を目指しつつ勉強していきたいと思っています。「絶対できる!」と確信しています。
――デュオ活動について、今後の展望はどのように考えていますか?
石井:まずはこの三都市ツアーをしっかりと完走させることですね。気合いを入れて体調管理も万全を期していきたいですね。
髙木:僕自身、お蔭様で最近は室内楽や教える機会も増え、新しいことに挑戦し、人生経験の幅も少しずつ増えてきています。琢磨も僕も互いにいろいろな活動をしている中で、二人で演奏できる瞬間というのは、“帰ってくる場所” であって――「二人で我が家に戻ってきて演奏しているとすごくピュアな気持ちになれる」――そんな場所なんです。なので、今後さらにいろいろな活動できるようになったとしても、お互い、いつまでも続けていきたいと思いますし、こうして帰る場所があるのは本当に嬉しいことだと思うんです。
――不滅のデュオですね。
石井:「不滅のデュオ」&「二台ピアノは僕たちの帰る場所!」いいですね。
髙木:メロドラマ感があるね(笑)。
――最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。
髙木:SNSなどでも暖かいお言葉をかけて頂いて本当にありがたく思っています。今回僕たちにとって二回目のコンサート、そしてツアーが実現したのもそうしたファンの皆様のお力によるものだと思っていますので、僕たちは演奏を通してお返しできたらと思っています。皆様に各会場でお会いできるのを楽しみにしています。
石井:大親友の竜馬とのコンサートが実際、舞台でどのような展開になるのか、ぜひともファンの皆様にも見届けて頂きたいと思っています。お一人おひとりに「聴いてよかった!」、「また明日から頑張ろう!」と感じて頂けるよう、僕たち二人で明日への背中を押せるようなパワーあふれるコンサートにしたいと思っています。
取材・文=朝岡久美子 撮影=福岡諒祠
公演情報
P.チャイコフスキー(M.プレトニョフ編):「眠れる森の美女」よりアダージョ ※石井琢磨ソロ
C.ドビュッシー : 小組曲 ★
M.ラヴェル : ラ・ヴァルス
J.シュトラウス2世(K.アライ編) : 美しく青きドナウ
S.プロコフィエフ(M.プレトニョフ 編):「シンデレラ」Op.87より抜粋
※★は連弾です