This is LAST、満員御礼のZepp DiverCityで全国ライブハウスツアーを完走　次なる挑戦“ホールツアー”にも意欲

This is LAST one man live tour “OVER”
2023.3.30 東京・Zepp DiverCity

　ライブ動員を増やし、ネクストブレイカーとの呼び声も高いThis is LAST。千葉県柏市出身の3ピースバンドで、メンバーは菊池陽報（Gt,Vo）、菊池竜静（Ba, Cho）、鹿又輝直（Dr）で、陽報と竜静は兄弟である。現在、弟の竜静は体調不良のため活動休止中だが、サポートベースを迎え、意欲的な活動を展開中だ。共感を呼ぶ歌詞とメロディーセンスが支持され、Z世代を中心に人気が急拡大している。

　そんな彼らが今年1月からスタートさせたライブハウスツアー『one man live tour“OVER”』（全23公演）は、そのほとんどがソールドアウトし、SPICEでは3月30日に行われた完売・満員御礼のZepp DiverCityでのツアーファイナル公演をレポートする。開演前から場内はグッズのTシャツやパーカーを身に着けたファンの熱気で期待感がハンパない。バンドの勢い同様、観客の気持ちも高揚しているようだ。

This is LAST photo by 日吉“JP”純平

　客電が落ち、SEが流れてメンバーがステージに姿を見せる。SEが消えると、無音の場内には緊張感が漂う。だが、その直後、1曲目の「愛憎」でライブは一気に転がり始めた。“待って 黙って君を愛し抜けるから”――というサビ始まりの鉄板曲が始まると、瞬時にライブマジックが発動。熱狂のスイッチが入る。菊池はさらに「いけますか！　東京！」と煽り、観客を焚きつけていく。続く「距離」や「アイムアイ」「恋愛凡人は踊らない」など、ドライブ感のあるロックチューンで熱量はさらに上昇。フロアからは拳も上がり、バンドのパフォーマンスを盛り上げた。

　最初のMCで菊池は「改めて、ツアーファイナルに来てくれてありがとうございます！」と感謝の言葉を投げかけつつも、次の瞬間「話すこと、全部飛んだわ！」と笑う。次のブロックでは新曲の「おやすみ」に加え、「もういいの？」「カスミソウ」といった人気曲を続々と披露。

This is LAST photo by 日吉“JP”純平

　中盤では「#情とは」（ABEMA『花束とオオカミちゃんには騙されない』挿入歌）、「結び」「ベイビー」など、先ほどまで体を揺らせていた観客も、優しく沁みるバラード曲にじっと聴き入っている。その余韻が残る中、菊池は再びMCで今の気持ちを語り始める。イベント出演もこなしながらまわった23本のツアーについて、「すっごいツラかったです」と思いを吐露。ただ、「でも今めちゃくちゃ報われてます、ありがとうございます！」と、続けてツアーファイナルにたどり着いた充実感を語った。その言葉には、This is LASTの音楽が多くの人に伝わりつつあることへの自信も漂う。「（ツアー）23本全部で俺らは最高のグルーヴを作ってきたと思います！」

　この力強い言葉から「やれるだろ！」と何度も煽り、後半戦へと突入。フロアには再び熱気が戻ってきた。

「私、結婚するかも」「ひどい癖」など、おなじみの曲が続く。場内には男性ファンもたくさん詰めかけていたが、歌詞に共感する人も多かったに違いない。女性ファンの中には相手を翻弄してしまった体験を思い起こす人もいるだろう。日常的でありながらもドラマチックに描かれる歌詞は、間違いなくThis is LASTの強みだ。情景描写の巧みさは、曲そのものがショートムービーのようである。そして、失恋ソングが多いとはいえ、彼らの楽曲がすべてペシミスティックなわけでもない。
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This is LAST photo by 日吉“JP”純平

　本編ラストはライブ定番曲「オムライス」。ステージもオムライスを連想させるイエローの照明で温かみのあるムードを演出。フロアからは曲に合わせての手拍子や歌声のレスポンスで、一体感も最高潮に。この日は声出しもOKだったため、ステージとフロアの親密度もグッと上がったようだ。最後はハッピーな雰囲気の中で本編が終了。演奏が終わると、ステージ上の3人は深々と一礼し、惜しみない拍手に送られながら楽屋へ戻っていった。

　観客からはすかさず、アンコールの声援が起こる。声援に応え、リラックスした表情のメンバーが再びステージに現れる。すると、バンドから嬉しいアナウンスが飛び出した。何と、東名阪での初ホールワンマンツアーの開催が告げられたのである（9月2日 大阪 NHK大阪ホール、9月9日 愛知 名古屋市公会堂 大ホール、9月23日東京 昭和女子大学人見記念講堂）。場内からは喜びの声が起こる。自分達が信じて応援してきたThis is LASTがさらなるステージへと昇っていくのだ。
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This is LAST photo by 日吉“JP”純平

　おそらく、この先、ここに集まった観客の多くは、Zepp DiverCityでのツアーファイナル公演以上の素晴らしい光景を見ることになるだろう。盛り上がる場内を確認しながらも、菊池は落ち着いた口調で「もうちょっと曲をやって帰ります。よろしくお願いします」と、アンコールにつなげた。アンコール1曲目は穏やかな曲調の「バランス」。女性目線で歌われるラブソングで、恋愛中、相手に対する思いの強さのバランスの描き方が秀逸。女性の多くが感情移入できそうな名曲だ。ラストは「殺文句」。“桜舞う季節　思い出した。”という一節で始まるドライブ感のあるキラーチューンである。この日、初めて彼らのライブに来たというファンも多かったようだが、観客も歌を口ずさむみながら聴き入っていた。

　次のツアーでは、さらに新たなファンをつかむであろうThis is LAST。フェスやイベント参加も多いので、機会があれば、是非ライブを体験していただきたい。