林翔太&寺西拓人「なんでもできる」「歌が抜群にうまい」 互いを称賛する二人が主演するブロードウェイ・ミュージカル『ロジャース/ハート』再演へ
「ミュージカル俳優としての基礎を作ってもらった」
ーー改めて初演のときのことを振り返っていただきたいのですが、役者として一番の収穫になったなと思ったことは?
林:僕は初めてづくしだったんです。きちんと主演をやらせてもらうのも、ミュージカルにがっつり挑戦させてもらうのも。今までの歌い方とも違って、歌をセリフとしてちゃんと届けなくてはいけないから、悩んで悩んで……玉野さんにいろいろご指導していただきました。
それにピアノ演奏も、タップも初めてでした。あのときの『ロジャース/ハート』の経験がなかったら、その先のミュージカルもなかっただろうなと思います。全部が収穫ですし、ミュージカル俳優としての基礎を作っていただいたなと思います。
寺西:僕が印象に残っているのは、ウェイターの役。ウェイターは台本だけ読むと、ただ接客するだけの役なんですね。その通りに稽古場でやったら、玉野さんに「もうつまんなーい!」と言われて(笑)。「せっかく出るんだったら、なんかやりなよ」と言われたんです。
最初は玉野さんからいただいたアイデア通りにやっていたんですけど、途中から楽しくなっちゃって、 全然違うことを本番でやって。玉野さんに怒られるかな……と思っていたんですが、玉野さんの知り合いの方が本番を観に来てくださって、「お盆を使って遊ぶの、玉野さん、さすがっすね!」と仰ったときに、玉野さんは「いや、(寺西さんが)勝手にやっているんです」と返していて。そのときに、やったと思いました。舞台の上では無茶苦茶にやっていいんだと学んだんです。
林:今回は誰がやるんだろう?
寺西:まさくん(※中河内雅貴)じゃないですか?分からないけど。
林:楽しみだな。
ーー前回は林さんが挑戦されたピアノ。今回は寺西さんが挑戦することに?
寺西:見せ方でうまいこといかないかな〜(笑)。もちろん頑張りますけどね。
林:最初が怖いのよ。真っ暗の中で始まるから。でも、大丈夫。てらは絶対やれちゃうよ。
寺西:頑張ります(笑)。ピアノ以外の挑戦をいうと、前回は一つ一つの役をそこまで深掘りしなくてもいいというか、むしろ瞬発力みたいなのが大事だったんですが、今回は1人の人生を生きるので、その点は挑戦かも。実在した人物なので、芝居に重きを置かないといけない気がしております。
ーー林さん自身はどんな点が挑戦になりますか?
林:ロジャースとハートは全然キャラクターが違うので、ハートの自由奔放な感じをどう出せるか。挑戦というより、単純に楽しみです。前回は矢田ちゃんが演じていた役なので、どういう風に変えながら、自分の色に染められるか。
……でも今回はピアノがないというだけで、心に余裕が生まれます(笑)。初演のとき、僕が必死に練習しているのに、てらや矢田ちゃんが「楽しんでる?」と茶化しに来て全然関係のない曲を弾きに来て……!僕も必死だったので、ピアノを楽しむところまで行けてなかったんですよ。
お互いについて「なんでもできる」「歌が抜群にうまい」
ーーお二人とも柔らかい印象なのですが、お互いに俳優としてギラっとしたものを感じる瞬間はありますか?
林:てらは本当になんでもできる。
寺西:誰のことを言っているんですか!(笑)
林:いや、ほんとに。コメディチックな役からちゃんと演劇的な役まで、 本当にどんな役でもできちゃうから、すごい。特に『ダブル・トラブル』を一緒にやったときは、発想がコメディ向きだなと思いました。いろいろなアイデアを出してきて、稽古場でもちゃんと毎回違うことで笑いをとっていたし、もちろん本番に入ってからもちょこちょこ変えてきて。
寺西:確かに稽古のときはいろいろやろうと思っていましたよ。でもね『ダブル・トラブル』はドタバタコメディだから、スタッフさんも演出家さんも僕らがやりやすい雰囲気を作ってくれるんですよ。あんまり面白くなかったとしても笑ってくれる。だから、チャレンジできたんですけど、本番に入って「あれ?稽古場ではあんなにウケていたのに!違うじゃん!」ということはありました(笑)。
……僕から見た林くん。さっきなんでもできると言ってくれましたけど、それこそ林くんもなんでもできるんです。特に歌。『ロジャース/ハート』の初演でも『ダブル・トラブル』でも思いましたけど、歌が抜群にうまいんですわ。ミュージカルは、どんなに芝居ができようが、踊りがうまかろうが、やはり歌がうまいことが最強だと思うんです。『ダブル・トラブル』から1年ぐらい経っていますけど、さらに上手くなっているのでは?と思います。
林:そういう自分もうまいじゃん!(笑)。褒めてくれるのは嬉しいですけど、自分で自分がうまいと思わないですから。
ーーお互いをリスペクトし合っていることが伝わりますが、相手に対してあえて「ここは直した方がいいよ!」と思うポイントだったり、「これはどういうこと?」という謎の生態だったりはございますか?
林:えー、なんかあるかなぁ?(考え込む)
寺西:いや、(林さんは)先輩っすからね。……でも僕思うのが、できないふりするんですよ。例えば、タップ。一緒に練習をスタートさせて、全然できないできない言うのに、次の日は完璧にこなしてしまうんです。何なら僕の方がちょっと早めに始めていたのに、寝て起きたら、林くんにずいぶん先を越されているみたいな!(笑)「テスト前は勉強してないって言ったじゃん!」というタイプなんです。いやいや、俺も頑張れよという話なんですけど(笑)。
林:……てらについて直した方がいいことはないかなぁ。絞り出したいんですけど、全然ない気がする。
寺西:マジですか。じゃあ、僕も「林くんについてはないです!」としておきます……(笑)。
ーー改めて今回の『ロジャース/ハート』の見どころを教えてください。
林:見どころはたくさんありますけど、このメンバーを見ることができるだけで見どころだと思います。“ミュージカルモンスター”ぞろいなので、絶対楽しいですよ。それに今回、曲が追加されていることもありますけど、初めてご覧になる方はもちろん、初演をご覧になって再演を観てくださる人たちも「あ、前回とこう変わっているな」とか「ここ追加になっているな」などと楽しむことができると思います。
個人的なことで言うと、 てらの『マイ・ロマンス』が聞けることが嬉しいです。
寺西:頑張ります。今回は楽曲が増えたといいますが、もともと楽曲が多い作品だったので、より目まぐるしくナンバーを披露していくんでしょうね。この時代の曲っておしゃれですし、それを“ミュージカルモンスター”たちが歌ってくれるなんて。僕も出演はしていますけど(笑)、個人的にそこが楽しみです!
林:確かにおしゃれな曲が多いよね。「ここで半音なんだ!?」みたいね(笑)。そこをバチっと決めれたら、よりおしゃれな曲として届けられるんだろうなぁ。
ーーようやくコロナ禍が明けてきましたが、このコロナ禍で舞台に対する思いは変わりましたか?コロナ禍で感じたことを教えてください。
林:コロナ禍になったばかりのときは、一席飛ばしにしたりして、客席が半分だったじゃないですか。そんな景色を経て、久しぶりに満席の客席を見たときに「あぁ、こうだったな」と思い出して、改めてお客さんがそこにいてくれるありがたみをすごく感じました。
劇場に来るのも大変だっただろうし、ある程度のリスクを覚悟するじゃないですか。その中でも演劇を観にいくということを選んでくれた。いつも以上に感謝の気持ちいっぱいで過ごしていました。
寺西:一時期は飛沫感染対策のためにソーシャルディスタンスをとって芝居をせざるを得なかった時期もあって……そんなのお芝居できないじゃん!と思っていましたけど、そういう規制も徐々に緩和されてきましたよね。林くんが言っていたことと同じようなことなんですけど、お客さんが劇場に来てくれることも、舞台上でお芝居ができることも、当たり前ではないんだなと感じられたことが大きな収穫でした。
スタイリスト:嶋岡 隆(Office Shimarl)
衣裳協力:【林】チェックシャツ¥41,800【寺西】シャツ¥41,250(ともに EYCK / info@eyck-tokyo.jp)【林】カットソー¥27,280(guernika / 03-5784-3474)【寺西】パンツ¥16,990(UNFILO / 03-5476-5811)
取材・文・撮影=五月女菜穂
公演情報
The Songs of RODGERS & HART
Music by Lyrics by
Richard Rodgers Lorenz Hart
J. Barry Lewis, Lynnette Barkley and Craig D. Ames
Craig D. Ames
Florida. Louis Tyrrell, Producing Director