スヌーピーミュージアム、自分に偽りなく生きるルーシーの魅力が溢れる企画展『今こそ、ルーシー!』LUCY IS HEREレポート
スヌーピーミュージアム 企画展『今こそ、ルーシー!』LUCY IS HERE (C) Peanuts Worldwide LLC
東京・南町田グランベリーパーク内にあるスヌーピーミュージアムにて、2023年7月15日(土)から2024年1月8日(月)まで、企画展『今こそ、ルーシー!』LUCY IS HEREが開催されている。
スヌーピーミュージアムの企画展は、カリフォルニア州サンタローザのシュルツ美術館が所蔵する貴重な原画を中心に構成されており、およそ半年ごとにテーマを変えて開催。今回の新企画展ではその名のとおり、『ピーナッツ』でもっとも長く愛されている女の子「ルーシー」にフォーカスし、原画・複製原画46点を紹介している。
展示風景
展示風景
展示風景
ルーシーはピーナッツの個性的な仲間たちのなかでも我が強く、自分に偽りなく生きている姿が描かれている。チャーリー・ブラウンに意地悪をしたり、シュローダーの前では恋する乙女の姿が見られたり、精神分析スタンドでみんなの悩み相談を受けたり……。エピソードごとにさまざまな顔を見せてくれる彼女をとおして、ピーナッツの根底にある“自分らしく生きていいんだよ”というメッセージが強く伝わってくるようだ。
意地悪で、恋する乙女 多様な顔を見せるルーシー
我々メディア向けの内覧会が行なわれた日には、カリフォルニア州サンタローザにあるシュルツ美術館からアシュリー・レクライト氏が来日し、今回の企画展について話を伺うことのできるギャラリートークも開催された。アシュリー氏は企画展のレジストラーを担当しており、作品を保有しているシュルツ美術館から日本の企画展へと作品を貸し出す際の管理を一任されているそう。作品と同じ飛行機で来日し、会場に届け、状態を確認して展示。そして前企画展の作品を回収し、飛行機に乗せて持ち帰る……。シュルツ美術館の作品を安心安全に“旅をさせる”ことができるのは、彼女のおかげなのだ。
左から:スヌーピーミュージアム 中山三善館長、シュルツ美術館 アシュリー・レクライト氏
「ルーシーは『ピーナッツ』のコミックのなかでも複雑な人格を持ったキャラクターの一人です。シュルツ氏に多大なる影響を与えており、ルーシーをとおしてさまざまな人間の感情を表現しています。チャーリー・ブラウンの野球ボールを取ってしまうような意地悪する姿が見られるときもあれば、シュローダーに片想いをするような優しい面も。とても自然体なキャラクターなので、彼女からさまざまなことを学べると思っています」(アシュリー氏)
当日一緒にギャラリートークを行なったスヌーピーミュージアム・中山三善館長から「ルーシーはチャーリー・ブラウンをいじめている姿が多く見られるため意地悪に見られがちですが、実際に意地悪なのですか?」という問いかけも。それに対して「実際には意地悪ではないと思います。そう見られてしまうのは、子供としての成長の過程だと思います。彼女は非常に強い人間なので、その姿が見えると“意地悪だ”と思われてしまうのでは」と答えたアシュリー氏。実際、これだけたくさんのルーシーのエピソードを一度に鑑賞すると、“意地悪”というひとことでは表せないほど、興味深いキャラクターだなあと実感する。
「一方で、ルーシーのかわいらしさが垣間見れるのは、シュローダーへ片想いをしているエピソードです。ピアノを弾いている彼のそばに寄っても、彼は一切振り向いてくれず、いつも一方通行です。これらのエピソードは先ほどまでの力強いルーシーとは違って、恋する乙女の部分が見られます。さまざまな感情が共存している点からも、アシュリーさんが説明されたとおり“複雑な人格だ”と言えるでしょう」(中山館長)
展示風景
どんな未来もわたしの未来
ギャラリートークの終盤では、展示作品から一点をピックアップし、アシュリー氏が解説する場面も。「このエピソードはルーシーのさまざまな表情や表現が見られる非常に重要なコミックとなっています。最初のパネルでは、ルーシーが一人で縄跳びをしているところにチャーリー・ブラウンが来て、“ちょっと聞きたいことがある”と問いかけます。次のパネルで“大きくなったら何になるつもりなのか、きみはわかっているのかい?”と、とてもチャーリー・ブラウンらしい質問をします。縄跳びをしながらルーシーは”もちろん”と答え、最後のパネルでは、得意気な顔で自信を持って“スマートクッキー!(かしこい子よ!)”と答えます。ここでは、彼女がどれだけ自信を持っているのかがわかります」(アシュリー氏)
《どんな未来もわたしの未来》
アシュリー氏の言葉一つひとつに頷きながら笑顔で聞いていた中山館長が、「とっても自信家であり楽天家であるかがわかるエピソードですよね。私が見た資料にも、“地球は太陽の周りを回っているんだよ”という問いかけに対して、“そうなの? 私はそう思ってなかった。みんなが私の周りを回っていると思っていた”というエピソードもありました。これも“さすがルーシー!”というエピソードですよね」と加えて解説。自己中でありながらもなぜか憎めない、我々を笑顔にしてしまう彼女のエピソードは随所に溢れているようだ。
ちなみに、この原画の上部に書き込みがあることを中山館長がアシュリー氏に尋ねると、「家族や友人、依頼主にプレゼントする際、ここにサインとメッセージに入れることがありました。これはフルネームでサインされているので、あまり近い人ではないようです。親しい人には“スパーキー”とサインを入れてプレゼントしています」と説明をしてくれた。こうした普段は触れることのできない原画の様子がわかるのも、ミュージアムで鑑賞する醍醐味の一つである。
スヌーピーとルーシー、チャーリー・ブラウンとルーシー、シュローダーとルーシー……。さまざまなキャラクターと接するごとにいろいろな顔を見せてくれるルーシーからは、自信を持つこと、自分を愛すること、ありのままの自分を見せること。そんなたくさんのことを肯定できる不思議な力が感じられ、展示室をあとにするころには少しだけ気持ちが軽くなった気がした。
展示風景
展示室を出た先のフォトスポット。コミックの中に入り込んだような写真が撮れる!
ワークショップで、自分だけのスヌーピーをつくろう!
この日はメディア向けに「スヌーピーのぬいぐるみ」ワークショップ体験会も開催された。スヌーピーミュージアムの1階にはワークショップルームが設けられており、そこでは不定期でワークショップを開催。ぬいぐるみやトートバッグなどさまざまな「ものづくり」を体験することができる。なかでもぬいぐるみワークショップは、各回すぐに定員となってしまう人気ぶり。そんなプログラムを体験できる機会とあって、ワクワクしながら室内へ!
ワークショップの様子
受付を済ませて座席に案内していただくと、早速目の前には横たわったスヌーピーが。オーダーシートに記入したあと、「前に展示されているワゴンからお好きなTシャツと首輪を選んでお持ちください」とスタッフさんからお声かけいただいた。言われて向かってみると、小さくてカラフルなTシャツたちが陳列されているではないか! ここでは何にしようか存分に悩もう。だってこのあと世界でたった一つ、自分でつくったスヌーピーに着せるんですから。
あのTシャツとこの首輪はどうかな……と組み合わせを考えるだけでも楽しい!
選んで席に戻ったらワークショップがスタート。作業スペースの真ん中には、綿がパンパンに詰まってふっくらしたスヌーピーと、少し余白を持たせてフニャッとした姿のスヌーピーが。それぞれサンプルとして置いてあるので、それを参考にしつつ自分の好みに合わせて綿入れを進めていく。どれくらいの容量を入れたいかは本当に各自の自由。好きなように仕上げていこう。
背中から綿を詰めていく
座らせてみて、綿の入り具合をチェック
綿入れやその他の手順はスタッフの皆さんが丁寧に教えてくださるので、その都度確認しながら進めていこう。背中を縫い合わせていただいたら、Tシャツと首輪をつけて、最終チェックとして犬小屋にのそばに座らせ、お風呂でシャワーを浴びせたら完成(ワークショップは体験者のお楽しみ。具体的な手順は省略します)。完成後には修了証も発行していただき、世界でたったひとつの“SPICEスヌーピーぬいぐるみ”のできあがり! 自分のものが仕上がる頃には周りの体験者の皆さんも完成していて、それらを見るのも楽しい。Tシャツや首輪はどんな組み合わせでセレクトしたのか、どれくらい綿を入れたのか……。それぞれが全部違って、全部が素敵なぬいぐるみに。さまざまな姿をしたスヌーピーができあがっていく過程からも、『ピーナッツ』が表現する多様性を垣間見ることができた1日だった。
なお、ワークショップは事前予約必須となっているので、ホームページでチェックすることを忘れずに。
自分でつくったスヌーピーと、ワークショップの修了証もいただきました!
Tシャツにはオーダーシートの記入に沿ってプリントをしてくれる。「SPICE」と「日付」をセレクト
ぬいぐるみを入れて持ち帰る巾着袋。多数のスタンプが用意されていて、自分なりにアレンジできる
スヌーピーミュージアムは2024年にリニューアルを予定しているため、『今こそ、ルーシー!』LUCY IS HEREはリニューアル前、最後の企画展となるとのこと。また、2023年4月からベビーカーでの入場も可能となったほか、8月31日(木)までの期間は、大人1名の入場券につき小学生以下1名が無料になるという「キッズフリー」も実施中。お子様連れの方々もより入場しやすくなっているこの時期に、ぜひ足を運んでみては。
スヌーピーミュージアムの前売券はイープラスにて販売中。
(C) Peanuts Worldwide LLC
文・撮影=SPICE編集部
施設情報
●所在地: 東京都町田市鶴間3-1-4
●開館時間: 10:00~18:00(最終入場は17:30)
●休館日: 2023年8月22日(火)、2024年1月1日(月)
●アクセス: 東急田園都市線・南町田グランベリーパーク駅より徒歩4分
●電話番号: 042-812-2723
●公式サイト: https://snoopymuseum.tokyo/
●オンラインストア: https://online.snoopymuseum.tokyo/
※4月よりベビーカーでの入場が可能となりました。