手術シーンはRRR風に? 『ドクター皆川~手術成功5秒前~』細川 徹×皆川猿時インタビュー
(左から)細川 徹、皆川猿時
細川 徹作・演出、皆川猿時主演の『ドクター皆川~手術成功5秒前~』が2023年10月12日(木)~29日(日)に本多劇場にて上演される。本作は、細川と皆川がタッグを組んだシリーズの4本目。主演の皆川とともに名を連ねるのは、荒川良々、池津祥子、村杉蝉之介、上川周作、早出明弘、本田ひでゆき(本田兄妹)とシリーズではお馴染みの面々だ。ここに今回新しく加わるのは、ミュージカル『刀剣乱舞』などで知られる牧島 輝、乃木坂46の金川紗耶の二人。外科を舞台とする本作で新旧のメンバーがどのような化学反応を起こすのだろうか。作・演出の細川と主演の皆川に話を聞いた。
■向上心のなさが魅力的な座組み
ーー細川さん作・演出、皆川さん主演のこのシリーズも今回で4作目です。これまでの手応えや感触は?
細川:他の舞台にはないくらい、本当に「なんでもあり」のシリーズですよね。絶対入らないだろうってところに、アクションだとか、歌や踊りを入れて。客いじりも毎回必ず丁寧にやってるし、参加型の要素も多い。だから「演劇」って言葉が相応しくなくて、「劇」とか「出し物」の方が近い(笑)。実際には無理だけど、何か食べたり飲んだりしながら観るくらいの気楽さで来てほしいんですよね。そういうシリーズなんですけど、毎回稽古中には色々模索してます。ただ、最終的にはいつもと同じような完成品になるっていう……。
(右)細川 徹
皆川:何回も観てくれているお客さんにとっては「毎回想像を超えてこない」って感じなのかなぁ(笑)。超えてこないんだけど、あまりにもバカバカしすぎて最後にほろっとしちゃうみたいな。
最初の『あぶない刑事にヨロシク』からもう7年ですって。立派なおじさんおばさんになっちゃったのでね、体と相談しながらできることを、お客さんの想像できる範囲の期待には応えられるように、少し痩せようかな。
細川:期待のちょっとだけ上に行けばいいの。すごく上に行くと、やりすぎてると思われちゃうから。
皆川:いつもクライマックスにみんなが特技を披露するんですけど、もう歳だから、新しくできることもそう増えないじゃないですか。だけど、ちょっと前に村杉くんに会ったら、腕とか足とか傷だらけで。「どうしたの?」って聞いたら、「スケボー始めたのよ」って(笑)。58歳ですよ。ちょっと心配になっちゃった。(笑)。
細川:新しい特技が増えない、その向上心のなさも含めて魅力的な座組みだと思っていたんですよ。だけど、そういうことを前回僕が言ったからなのかな。
皆川:急にモテたくなっちゃったのかなぁ(笑)。
細川:ケガとかしなきゃいいな。向上心のなさで言うと、早出くんと本田くんの二人は特にすごい。そこが素晴らしい。あんまりそういう人はいないじゃないですか。だいたいみんな向上心があるから。この二人はあまりにストイックじゃないから、人として興味を持っちゃうんですよね。客いじりとかは圧倒的に上手いんですけど、それ以外を磨く気が一切ない(笑)。
(左から)細川 徹、皆川猿時
ーーお馴染みのメンバーに加えて、今回は牧島 輝さんと金川紗耶さんが新しく参加されます。
細川:二人とも若いから動けますよね。でも、二人があんまり動いちゃうと他の人が動いてないのがバレちゃうから、適度にやってもらわないと。牧島くんは歌も踊りも本物ですよね。実は、前回の『3年B組皆川先生~2.5時幻目~』でミュージカル『刀剣乱舞』のポスターの中に牧島くんが登場してたんです。「次回出るよ」って伏線を張ってたっていう。誰も考察しないですけど。
ーー金川さんはいかがでしょう?
細川:前回も乃木坂46から清宮レイさんに出てもらったけど、お芝居の経験がまだそんなにない方の場合、すごく素直なお芝居をされることが多いので、ベテランだらけの座組みの中に入るとバランスがいいんです。
金川さんとはこないだ一度会って、ちょっと天然っぽい方みたいで。この座組みをどう受け入れるのか、あるいは全然受け入れないのか、まったく予想ができないですね。歳の近い牧島くんとばかり話すようになったらつまらないので、二人の席は離しておこうかなって(笑)。
(左から)細川 徹、皆川猿時
◼️台本はすべてひらがな
ーー皆川さんは毎回どんなお気持ちでこのシリーズに参加されていますか?
皆川:細川さんの作るものって、毎回くだらなくて素晴らしいけど、実はとても繊細な芝居を要求されるんです。「新鮮な気持ちでやってください」って何回も言われるし(笑)。だから、初心に帰るようなところがありますよね。細川さんの作品に何本か出させてもらった経験が、他の現場でふざける時に活かされてるような気がする。
細川:やってることは無意味だったりシュールだったりするんだけど、感情だけはちゃんとしてるのが僕の作るものの特徴だと思うんですよね。
皆川:それがおもしろいんだよなぁ。
細川:内容の割には、ちゃんとやりますよね。あとこのシリーズは主役が一番大変で、それが間違ってますよね(笑)。主役って普通は後から登場するし、周りが合わせてくれて自分のペースでやるものなのに、このシリーズだと皆川さんが全部やる。ゴミ拾いみたいなのも重労働も全部やってるから、主役だけど主役っぽくない。だから今回は主役のあり方も見直して、皆川さんが休む時間を作りたいです。
皆川:前回はそれなりに休めたんじゃないかなぁ。それより困ってるのは、とにかく台本が覚えにくいよ。文字が全部ひらがなだから。「偏差値を下げて」って意味なんでしょうけど、もう〜覚えにくいの。だから自分でわざわざ漢字に書き直してるの!
細川:えっ、じゃあ漢字で書くよ! そんなことして時間使ってるなんて知らなかった(笑)。だけどそういえば、最近僕が書いた映画の台本を、プロデューサーが「直しました」って言うから確認してみたら、ひらがなを漢字に直しててびっくりした。
皆川:「漢字っていうのがあるんですよ〜細川さん」(笑)。
ーーところでテーマとしては、これまで刑事モノ、教師モノときて今回は医療モノです。他にも候補はありましたか?
細川:医療モノ以外の候補だと、「荒川皆川」っていうダブル浅野みたいなのができないかなって思ってました。
皆川:トレンディドラマ?
皆川猿時
細川:そう、トレンディドラマの元人気女優の現在っていうのをやりたいなって思ってたんだけど。
ーーそれもおもしろそうです。医療モノを選ばれたのは?
細川:舞台で医療モノってあまりないじゃないですか。やりづらいからなんだけど。手術中は顔が隠れてるし、オペの手元も見えないし、声も小さいから舞台に向いてない。でも、だからこそおもしろいなと思ってつい惹かれちゃうんですよ。今回だと、医療モノをインド映画の『RRR』みたいにしたいなって。
ーーおお、意外すぎる組み合わせです!
細川:食い合わせが悪いものをやろうとしてます。なるべく派手に手術をするっていう。あり得ないようなオペシーンを色々考えてて、いくつか思いついたんだけど。
ーー言える範囲で構いませんが、どんなシーンになりそうですか?
細川:舞台を所狭しと使って動き回るってことですよね。普通、手術には激しい移動はないですから。
ーー皆川さん、『RRR』となるとかなり激しいアクションになりそうですが……。
皆川:ちょっと、怖いですねぇ。膝がヤバいんでねぇ。顔と上半身で表現する感じかなぁ(笑)。我々のはひらがなの方ですよね、あーるあーるあーる。
細川:かわいい感じですね(笑)。
ーーアクションといえば、早出さんが公式サイトの動画インタビューで「皆川さんの汗はいい匂い」と言っていて気になりました。何か秘訣は?
皆川:えっ、なんだろう? 健康的な汗をかいてるからですかね。
細川:何回も着替えるからじゃない?
皆川:一回の稽古でTシャツ5枚は着替えるもんね。俺、臭くなる前に着替えてます(笑)。
細川:そういう繊細さが大事です。
(左から)細川 徹、皆川猿時
取材・文=碇 雪恵 撮影=寺坂ジョニー
公演情報
会場:本多劇場
出演:
皆川猿時 荒川良々 牧島 輝 池津祥子 村杉蝉之介 上川周作
金川紗耶(乃木坂46)早出明弘 本田ひでゆき(本田兄妹)
ヤング券 3800円(観劇当日22歳以下・ぴあのみ取扱)
お問合せ=大人計画 03-3327-4312(平日11時~19時)
企画・製作:有限会社モチロン