大トリはback number、[Alexandros]、四星球ら出演ーー興奮と熱狂の『MONSTER baSH 2023』2日目レポート

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音楽
2023.10.6
『MONSTER baSH 2023』

『MONSTER baSH 2023』

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『MONSTER baSH 2023』2022.8.19(SAT)・20(SUN)香川県・国営讃岐まんのう公園

2023年8月19日(土)・20日(日)の2日間にわたって、香川県・国営讃岐まんのう公園にて開催された中四国最大級の野外ロックフェス『MONSTER baSH 2023』。今年で24年目を迎える同イベントに、東京と関西からライターの兵庫慎司と鈴木淳史が参戦。本記事では2日目のライブをピックアップして振り返りながら、それぞれの視点で『モンバス』の魅力をレポートする。

Chilli Beans.

Chilli Beans.

さて2日目。STAGE空海(9:55)のねぐせ。、STAGE龍神(10:25)のChilli Beans.を経て、この日も定家プロデューサーの挨拶→銀テープ発射から、トップの……と書き進めたいところだが、ちょっと待て。

キャリア的にはオープニング枠なのかもしれないが、現在の人気とかを鑑みると、もうここじゃないのでは? と、Chilli Beans.には言いたくなった。で、実際にステージを観たら、もっとそう言いたくなった。

演奏、すごくグルーヴィーでファンキー、シンプルなのに。こんなにライブ巧者なのか。と、圧倒されていたら、「初のモンバス、初の四国上陸でございます、おじゃまします」。そうか。だから、今年はまだこのワクになるのか。

THE ORAL CIGARETTES

THE ORAL CIGARETTES

話を戻して、銀テープ発射に続いては、THE ORAL CIGARETTES(11:00/空海)。山中拓也、「あんまりあおったらあかんねんて。だから自分たちで考えてやってください」と言いながら、1曲目の「Red Criminal」で全員座らせてジャンプさせたり、次の「STARGET」でタオルを振り回させたりと、初っ端から参加者たちをハイテンションモードに引きずり込む。

THE ORAL CIGARETTES

THE ORAL CIGARETTES

最初のMCでは、ここに来るまでの間に、クレジットカードと銀行のカードを落としたことを報告。「こんな大勢の人の前で、ロックスター気取って立ってますけど、僕、今、無一文です」。ベースのあきらかにあきらは、ホテルの風呂の排水が悪くてトイレまで水浸しになってしまったそうで、「そんな負のパワーをプラスに変えていこうと思います、最後まで楽しんで帰ってください!」。その後もジャンプやモンキーダンスなどにオーディエンスを巻き込み、「大変楽しゅうございます、ありがとうございます。完全に、また出たいなと思いました」と宣言する山中拓也だった。

CENT

CENT

昨年が最後のモンバス出演だったBiSHからは、今年はセントチヒロ・チッチが、ソロ=CENTとして、この2日目のSTAGE茶堂の二番手で (13:30)出演。アコースティック・ギター、パーカッション、本人の、3人編成でのライブである。

チッチは6曲中1曲でアコースティックギターを弾き、ラストの「向日葵」では間奏で鍵盤ハーモニカを吹く。オーディエンスは掌を掲げて振り、それに応えた。なお「向日葵」は、1年前にリリースされた、CENTとしてのデビュー曲。「お水、飲もうね。ここ(STAGE茶堂)は休憩寄りだけど、これからみんな、戦いに行くかもしれないじゃない」という言葉に、現在の彼女の気持ちが表れているように感じられた。

Saucy Dog

Saucy Dog

「『MONSTER baSH』って意味、みんな知ってますか? 直訳すると『怪物を殴りつける』って意味らしいです。でも、でも外国のスラングでは、『bash』って『パーティーする』って意味もあるらしくて」という話から、6曲目の「怪物たちよ」につなげるMCが見事だったSaucy Dog(14:00/空海)。

1曲目の「Be yourself」や4曲目の「雷に打たれて」で「歌えますか?」とオーディエンスに問いかけるたびに、大きなシンガロングが巻き起こる。まさに「サウシーの歌はみんなのうた」であることを立証するステージだった。

Saucy Dog

Saucy Dog

ハルカミライ(14:45/龍神)の橋本学は、「昨日からいる人!」と手を挙げさせ、「すごいね、体力オバケだね!」と称賛したあと、「……ちょっと晴れすぎじゃない?」と言った。まさにその時間の暑さは、この2日間におけるピーク。が、「ただ暑いだけじゃないね、ただ疲れるだけじゃないね」と言葉を足しながら、次から次へと曲を放っていく。10曲を演奏し終えたところで、まだちょっと時間がある、と、3曲目にやった「ファイト」を再度プレイしてから、ステージを締めた。続くMy Hair is Bad(15:30/龍神)の時も、「この暑い時間、ここにいてくれてありがとう。みんな大丈夫?」「スタッフ含め、出演者含め、お客さん含め、とにかく水を飲んでくれ!」と、椎木知仁が気遣う。「今この曲、新曲みたいな気持ちで歌えるよ」と言って4曲目に披露した「真赤」(2015年リリース)は、確かに新鮮な輝きを放っていた。

PIANO baSH Performed by 清塚信也

PIANO baSH Performed by 清塚信也

16:15、STAGE龍神は特別企画、『PIANO baSH Performed by 清塚信也』。清塚信也、ひとりで1曲をやったあと、普段は脇役であるピアノを主役にする企画であることを説明。そして「ここからはサポート歌手を呼んでいます」と、次々とゲストを呼び込み、聴かせていく。

PIANO baSH Performed by 清塚信也 with CENT、キヨサク(MONGOL800)

PIANO baSH Performed by 清塚信也 with CENT、キヨサク(MONGOL800)

キヨサクとCENTのデュエットで「小さな恋のうた」、歌の家入レオとキーボードの緑黄色社会peppeが加わって「Swallowtail Butterfly〜あいのうた」、清塚信也と常田真太郎のツイン・ピアノと「サポート歌手」の大橋卓弥で「ボクノート」。清塚信也、「最後にやりたいことがある」と、スキマスイッチのふたりを並んで立たせ、その間から顔を出して「ハザマスイッチ」というギャグも披露した。

ウルフルズ

ウルフルズ

その清塚信也は、「このステージでは『暑い』と『うどん』は禁止にしたいと思います。ありきたりなので」と宣言していた。確かにモンバス、MCで「うどん」を使うアクト、極めて多い。が、この清塚信也と同時刻にMONSTERcircusに出演したウルフルズ(16:15)のトータス松本は、その清塚ルールを超えていた。最近のウルフルズは、ライブで楽曲「続けるズのテーマ」を中心に構成したメドレーをやるのが恒例だが、その中でのトータスのアドリブのコールのことである。

ウルフルズ

ウルフルズ

<日の出! がもう! 山下! 山越!>とうどんの有名店を並べ、<ぶっかけ! 醤油! ひやあつ! あつひや! ひやかけ!>とメニューまでコール。さすが、香川が舞台の映画『UDON』 (2006年)に出演した男。なお、その後、コールは、<骨付き! 親鳥! カチカチ! 雛鳥! やわらげ! 一鶴!>と、これも香川名物であるところの、チキン方面に発展して行った。ラスト曲「バンザイ〜好きでよかった〜」の、全世代の参加者シンガロングっぷりが、とても感動的だったことも付け加えておく。

ヤングスキニー

ヤングスキニー

全アクトの中で、いや、おそらく2023年のすべてのフェスの出演者の中で、もっとも「ブッキングされた時点と出演時での人気の差がでかいバンド」なのではないだろうか、ヤングスキニーは(16:55/MONSTERcircus+)。このモンバスでも、ものすごい集客。かやゆー(Vo.Gt)、ラストの「憂鬱とバイト」で、歌いながらステージを下りたりするハイテンションっぷりである。4人が去っても声援がまったく収まらないさまに、現在のこのバンドの勢いが表れていた。

ヤングスキニー

ヤングスキニー

(取材・文=兵庫慎司)


さて、兵庫さんからバトンを渡していただき、ここからは私ライター鈴木淳史が書かせて頂きます。2日目もMONSTERcircus+の10:25から観に行く。初出場のケプラ。「16」、「これからのこと」と真っ直ぐ曲だけ勝負していく。朝から既に猛暑だが、そんな中での直球勝負は潔い。テンポ良い「ルーシー」、アップビートな「春が過ぎたら」と、あっという間に20分は過ぎる。立派な若者の初陣。

ケプラ

ケプラ

MONSTERcircus、11:15のトップバッターはSIX LOUNGE。リハからTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT「ダニー・ゴー」のリフが聴こえてきて、気分が高揚する。B.J.トーマス「Raindrops Keep Fallin’On My Head」の穏やかで美しいメロディーで登場するメンバー。いざ始まると1曲目「ナイトタイマー」からクールなロックンロールでぶっ飛ばす。ベースがアンプにカールコードで繋がれている事からもロックンロールを感じて、思わずニヤニヤしてしまう。

SIX LOUNGE

SIX LOUNGE

古き良きロックンロールだが、しっかりと今の時代の音が鳴っている。ボーカルのヤマグチユウモリは、車でステージに移動する時、歩いて移動する観客たちを見つつも、誰も自分たちのグッズを持っていなかったのに、こんなに盛り上がったことを素直に喜ぶ。実際は彼らのグッズを持っている人も多く、ラストナンバー「メリールー」での合唱具合を観ると、彼らが待ち望まれていたことが一目瞭然だった。ロックンロールに魅了された時間。

古墳シスターズ

古墳シスターズ

初日の初出場PRAY FOR ME同様、やはり地元の若きバンドは気になる。2回目の出場となる香川は高松市在住の古墳シスターズ。リハから「SIX LOUNGEとの落差とか言いたくない! 同じ男の子!」、「少数精鋭のみなさん! マイノリティ!」とか、とにかくボーカルの松山航が何か異様にかかっているのが伝わってくる。模索しながら全身全霊の初期衝動だった去年とは違って、経験値を踏んだ成長を感じざるを得ない。1曲目「エンドロール」から、てか考えてみたら、オープニングナンバーにエンドロールというタイトルを選ぶことが愉快すぎるが、重厚なサウンドを聴かせる。パンキッシュな彼らだが、今年は明らかに重厚さを感じた。松本陸弥のギターも火を吹いている。てか本来は当たり前だが、火なんか吹くわけがない。だけど吹いていたのだ……。

「明日の通勤の歌が変わったらロマンチックだなと思います!」

この松山の言葉はロマンチックなだけでなく、リアリティーがあって凄く好きだった。良いライブをぶちかませば、聴き手の明日のプレイリストが劇的に変わるのだ、自分たちの歌に。そして、それくらい本気で観客に向かい合っている。フェスとはいえ、或る意味大きな対バンであり、観客を取ったもん勝ちなわけだから。

古墳シスターズ

古墳シスターズ

「友達とは思っていないけど、他人だと思っていませんよ!」という、観客との距離感の表現も嘘臭くなくて、人間臭くて、馬鹿正直で凄く好きだった。

「四国のバンドかっこいいでしょ!? みなさんの街にもかっこいいバンドがいます、平日のガラガラのライブハウスにいます。土日のモンバスとかに待ちくたびれたら、平日のライブハウスへ行ってください!」

フェスでライブは終わりではない。普段のライブハウスでのライブがあって、フェスへと繋がっている。こちらも、ただ単にライブハウスをアピールするだけではなくて、平日のガラガラのライブハウスというリアリティーを打ち明けるのが誠実。全くかっこつけないなと感激していたら、そこで「あの時代を笑うためにやっているんだと思います!」という言葉が出た。かっこつけていないからこそ、かっこいいなとシンプルに思ったら、すぐに「かっこつけたらね!」という言葉を継ぎ足していて、その愚直さに笑うしかなかった。誰もかっこつけているなんて思わないし、充分にかっこいいし、その流れからラストナンバー「焼き芋フローズン」なんてかっこよすぎるでしょ! とにかく良いもん観れました。彼らの成長を観続けるために、毎年四国に来る価値があるなと、そこまで思えたライブ。

TETORA

TETORA

MONSTERcircusに移動して、TETORAを待っていると、フィッシュマンズ「いかれたBaby」が流れてくる。リハ中のTETORAがチョイスしたのか、主催者DUKEがチョイスしたのかはわからないが、ナイスチョイスな瞬間であった。今の子供たちが今の音楽を聴きに来ているという意味では、90年代の音楽なんて関係ないのかも知れないが、色々な音楽を掘って出逢ってくれたら嬉しいなと、面倒なカルチャーおじさん的に考えていたら、TETORAがトモフスキー「SKIP」をSEにして登場してきた……。何だか全てが繋がった感じがして嬉しかったし、こうやって音楽は巡っていく。そんな彼女たちはモンバスになかなか出場できなかったことを力不足と反省していたが、コロナ渦もあり、本来より致し方無く遅れてしまったのも事実。不可抗力もあったのだから、そこまで追い込まなくてもとは思ったが、本気で暑苦しくぶつかる様は素敵だった。

TETORA

TETORA

MONSTERcircus+にreGretGirlが登場するが、TETORAと同じく大阪出身なことに気付く。だから何だという話だが、彼らもTETORAとこれまた同じく2020年に初出場するはずが、コロナ渦で出れなかったバンド。その悔しさを忘れず、MONSTERcircusでハンブレッダーズを待つ観客にもアピールしていく。MONSTERcircus+は観客で溢れ返っていたし、ハンブレッダーズを待つMONSTERcircusの満杯の観客たちもreGretGirlを楽しそうに観ている。そのハンブレッダーズも大阪のバンドであり、関西のライターとしては何だか嬉しかった。

ハンブレッダーズ

ハンブレッダーズ

「リハーサルなんかしてなかった顔で出てくるので、リハーサルなんかしてなかった感じで迎えて下さい!」と、ハンブレッダーズのムツムロアキラはそう言って、リハ終わり袖にはけていったが、1曲目「DAY DREAM BEAT」での盛り上がりは想定以上だった。若くして、この貫禄と、この人気っぷり、本当に驚いた。個人的に大好きなバンドであるし、彼らが若者たちから大人気というのはもちろん知っているが、そんなイメージを遥かに凌駕する大人気ぶりだった。

「俺たち性格ひん曲がっているんですけど、ひん曲がってひん曲がって、結局まっすぐ歌いに来ました!」

そう言っての「THE SONG」はかっこよすぎたし、ここで手を叩くとか、ここで踊ってとかという制約のないバンドだと言いきったり、香川が大好きで今年3回目であり、うどんという言葉でアピールするより行動で示すバンドだと逆アピールしたりと、どれもが理路整然としていて、確かにひん曲がっているが、本当に結局はまっすぐで何も言えねぇ状態……。行動と結果が全てだと思わせてくれる。「香川県は僕らのもの」と言って「ワールドイズマイン」とか、MCから楽曲への繋ぎも端的で上手すぎる。そんな光景をじっと舞台袖後方で見つめる四星球の北島康雄。MONSTERcircus大トリの康雄が、昼14時前から見学、いや偵察に観に来ているのも、やはりフェスは対バンであることを改めて教えてくれる。

ハンブレッダーズ

ハンブレッダーズ

ムツムロはインフルエンザで2週間ぶりにスタジオに入ったが、バンドが楽しくて、ずっとライブをやりたいと再確認したと話す。売れて大きなステージへ行きたいとかでは無くて、ずっとライブをやっていたいと話したが、これだけ素晴らしいライブをしていれば、自然に大きなステージに辿り着く。これこそ有言実行。時間があるから、もう1曲やろうと急遽1曲追加する。それでも時間はまだ少しだけ余っていた。全力でやりきりながらも冷静に余裕を持って動けているなんて、本当に若くして、このバンドはどこまで到達しているのだろうか。こうして約4時間に及ぶMONSTERcircusエリアでのライブレポートを終えて、一路、STAGE茶堂へと向かう。

山本彩

山本彩

茶堂ではモンバス4年ぶりとなる山本彩が15時半という一番暑い時間に登場。そんな猛暑灼熱炎天下の状況下ながらも観客は満杯であり、入場規制がかかる。敬愛するELLEGARDENのカバーを披露したり、アコースティックならではのリラックスした空気に。また初日の茶堂とは違う雰囲気を感じながら、茶堂大トリは今や茶堂名物とも言える菅原卓郎SESSION。今年はハウスバンドにアルカラを迎えて、菅原もアルカラも浴衣姿で演奏していく。リハから「また会う日まで」を披露したりと、菅原曰く夏の名曲カラオケ大会はお祭り気分でスタート。

菅原卓郎 SESSION2023 x アルカラ

菅原卓郎 SESSION2023 x アルカラ

デュオのさくらしめじと共に「ひまわりの約束」、「夏色」と名曲ヒットパレード状態でいき、菅原とアルカラのみでも「真夏の果実」と、これでもかと名曲が歌われるが、ちょっとモノマネも入ったりと遊び心があるのもウキウキする。山本彩、CENTも加わり、「飾りじゃないのよ涙は」「真夏の夜の夢」「染まるよ」と歌っていき、ラストは出演者全員で9mm Parabellum Bulletの「Black Market Blues」で〆。来年は、どんな面子が観れるのだろうかと早くも期待してしまうのが菅原卓郎SESSIONの醍醐味である。

菅原卓郎 SESSION2023

菅原卓郎 SESSION2023

大トリ四星球を観るために、再度MONSTERcircusへと移動。昨年、康雄は、弱冠25歳で2008年に緊張しながらモンバス初出場した時、数多くの現場スタッフたちに四星球ならではの細かいライブ構成演出を説明しようとしたエピソードを話していた。そこへDUKEの当時社長であった宮垣睦男現会長が現れて、康雄の肩に手を置き、「日本一のライブバンドに育てたいと思っているので、どうぞよろしくお願いします」と現場スタッフたち全員へ頭を下げたという話が個人的には何度聴いても泣けてしまう。そんな15年前のことを思い出しながら、本番準備を袖でする康雄を観ていると、突然「わぁ!!!」という大きな歓声を上げた。何と、その宮垣会長がわざわざ本番前に激励で訪れたのだ。「気合いが入ったなぁ!」と大感激する康雄。あくまで楽屋話なので、本来のライブレポートでは必要ないかもだが、四星球のライブは準備から終了後までのドキュメントがライブレポートになるので、敢えて記しておきたい。

四星球

四星球

『MONSTER baSH』をスタバと略して、店員姿の康雄やスタバマークの段ボールをメンバーが顔につけたり、ギターまさやんがコーヒー豆をかたどった神輿に乗って登場して、観客にコーヒー豆を投げたりと、いつも以上にハミ出したライブを食らわしていく。そこまでテンションが上がるのも無理はない。四星球の前は、四星球が敬愛するウルフルズだったわけで、康雄もトータス松本のモノマネを入れたりと気合入りまくり。最近のライブではお馴染みの康雄によく似たちょんまげマンの登場など、息つく暇も無いくらいに沸かしていく。そんな良い意味でけったいなライブを観に、たくさんの観客がMONSTERcircusに訪れている。

四星球

四星球

「この時間にここを選んで来ているのはマイノリティ。そもそもロックはマイノリティ。モンスターバッシュで一番ロックをやっとります」

コミックバンドの四星球が一番ロックな姿を魅せている。ロックと言っても、色々と定義はあると思うが、個人的には他では観た事が無い唯一無二のライブを魅せてくれるのもロックだと思う。

四星球

四星球

「コラボしたいじゃん! 連れて来ていい!?」

康雄は「クラーク博士と僕」の流れで、そう言って袖に消えていった。フェスの見所のひとつは演者同士のコラボでもある。観客誰もが、どのバンドマンを連れてくるのかと固唾を呑んで見守る中、何と現れたのは康雄の実の息子! 幼稚園児の息子は手を振りながら堂々と登場して、自己紹介もする。モンバス史上最年少出場者の息子が登場するのを事前に知っていた私は、楽屋で少しグズる姿も観ていただけに、本番どうなるのだろうと思っていたが、何の心配もなかった。門前の小僧習わぬ経を読む、蛙の子は蛙など色々例えられるが、とにかく四星球の息子は四星球の息子であった。康雄と自然に丁々発止のやり取りをしたり、突然YOASOBI「アイドル」を歌い出したりと独断場! 勝手に口でカウントし直して「クラーク博士と僕」を歌い出したり、ステージ中を走り回ったりと大活躍。大衆演劇のチビ玉三郎的な歌舞伎の桃太郎的な立派な初舞台を目撃できた。これぞ唯一無二。

四星球

四星球

その後もお世話になったDUKE直営のCDショップが閉店する話をしたり、60分という持ち時間をフルに使ってライブをしていく。最後の最後までふざけまくり、最後は謎のちょんまげマン撮影会が観客フロアで開催されたりと好き勝手に暴れるが、どこか感動に包まれて終わるのが、四星球のチャーミングなところ。モンバス愛は伝わりまくったし、四星球流ガッツだぜ!も魅せつけられた。夕方とはいえ、異様な蒸し暑さであり、そこで限界まで60分ふざけ暴れまくるのは天晴れであった。全力を出し切って舞台裏でダウンするメンバーを横目に、元気にはしゃいでいる康雄の息子。大衆演劇や歌舞伎みたいに四星球も世襲制にしたら良いのにとアホみたいに本気で想ってしまった。個人的には、幼稚園児への感想インタビューで終わった今年のモンバス。ちなみに御本人はライブ云々よりもライブに出たことで買ってもらえる、ご褒美のグミで頭も心もいっぱいだった……。おあとがよろしいようで。後は兵庫さん宜しくお願いします。

四星球

四星球

(取材・文=鈴木淳史)


[Alexandros]

[Alexandros]

メインステージ・エリア、トリ前の[Alexandros](17:05/空海)は、1・2曲目の「Adventure」「Dracula La」から、川上洋平がステージを下りて柵前を歩き回ったり、ツメ(※セキュリティがお客を救助するために柵が出っぱっているところ)の先まで行って歌ったり、と、アグレッシブなパフォーマンス。4曲目では「新曲持って来ました! スペシャルゲストを紹介していいですか!」とWurtSを呼び込んで、コラボシングル「VANILLA SKY」で、オーディエンスを狂喜させる。

[Alexandros] x WurtS

[Alexandros] x WurtS

「今日は思う存分声出していいんで、ステージに投げかけてください。しゃべってる時に野次飛ばしてもいいから、うるさい方がいいから、俺」という言葉からの「閃光」では、マイクスタンドをオーディエンスに向けてシンガロングを促す。「飛べますかモンバス!」というアオリから始まったラストの「ワタリドリ」で、参加者みんながジャンプし続けるさま
は、まるで波のようだった。

back number

back number

いよいよ2日間の大トリ、back number(18:40/空海)。朝ドラ主題歌でおなじみの「アイラブユー」を、弾き語りで清水依与吏が歌い始める、というスタートである。その歌とギターにピアノが加わったタイミングで、清水依与吏、シャウト、というより絶叫。

back number

back number

次の「怪盗」でも、イントロでメンバーがハンドクラップを始める中で、また絶叫。3曲目の「MOTTO」では、1コーラス歌ったところで「モーンスターバッシュ!」と叫ぶ。なんだかすごく前のめりだ。

この街はすごく落ち着く、(地元の)群馬より群馬だなと思う。俺たちが歌う「山」とか「街」とかと、同じものを思い浮かべて聴いてくれている、それが感じられるからモンバスはすごい好きです──という、親愛の情を込めた挨拶をし、遠くの丘(があるのだ、モンバスには)に視線をやる清水依与吏。「離れたところで“盛り上がってるなあ”って見てる、あなたの歌かもしんないんで、よかったら聴いてください」と、「世田谷ラブストーリー」を歌う。

back number

back number

back number

back number

夕日がとてもきれいだった。そして、「高嶺の花子さん」で、遠くの丘の上までがスマホの光で埋め尽くされた光景は、さらにきれいだった。

「バカ野郎だからこそ歌える歌があると信じてやっていくんで。24周年おめでとうございます、これからも『MONSTER baSH』とback numberをよろしくお願いします」という言葉から贈られたアンコール曲は「SISTER」。スマホの光がさらに増え、その輝きは、曲終わりの花火に引き継がれた。

back number

back number

back number

back number

2022年のモンバスも大盛況ではあったが、マスクをして声を出さずに静かに熱狂する、という、特殊な状況ではあった(ここではマスクを外してOK、というエリアまで設けられていたのを憶えている)。あと、これはモンバスとは関係ないがーーフェスが終わって帰り着いた高松の街は、ほぼすべての店が閉まっていて、人通りもなく、ゴーストタウンのようだった。

という前年を経験しているもんで、死ぬほど暑いけどそれに負けず熱狂する2023年のオーディエンスの姿にも、同じく暑さにまいりながらもテンション全開でステージに臨むアーティストたちの姿にも、何かもう、それはもう、グッときてしまったのだった。あと、モンバスTやバンドTの人たちがたくさんいる、夜中の高松の街にも。初日の夜、去年は開いている店がなくて苦労し、今年は空いている店がなくて苦労しました。

来年からも、モンバスがこうして、阿波おどりやよさこい祭りと並ぶ、四国の重要なお祭りとして、続いていくことを願う。

ただ、現在の日本の夏の、このケタ外れの暑さに対しては、今後DUKEは、何かしらの対策を考えるんじゃないか、とも思う。「まあしょうがないよ、参加者にがまんしてもらおう」というイベンターではないので。

(取材・文=兵庫慎司)

撮影=Hoshina Ogawa、桃子、酒井麻衣

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レポートで掲載しきれなかったライブ写真やソロカットをたっぷりと公開

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