須田祥子が語る ヴィオラ演奏集団「SDA48」~クラシックからロック、映画音楽まで、ジャンルレスに聴かせるコンサートの魅力とは
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「演者も、お客さんを楽しませるために真剣に楽しむ」
――ヴィオラがもつ個性と協調性が面白いですね。10人のヴィオラ奏者から生み出される生のハーモニーを、1月、紀尾井ホールのコンサートで聴けるのが今から楽しみです。
本当にありがたい話ですね。これまでは、お客さんと近い距離を保つことを念頭においてきましたが、紀尾井ホールの良い音響もありますので、お客様と共に私たち演奏する側も良い音にどっぷりと浸れたらいいなと思っています。
――SDA48の11年目を飾るこのコンサートですが、ここでしか聞けない曲ばかりを集めた選曲にも注目しています。
コンサートの幕開けを飾るのはロッシーニの「ウィリアムテル序曲」です。この曲はCDアルバムにも収録しました。チェロはいらない!オーケストラはいらない!と思わせてくれる一曲です。次は、ジェイコブの「8つのヴィオラのための組曲」。ヴィオラのために書かれた作品は数が少ないのですが、その内の名曲です。8人奏者が揃わないと演奏できない曲で、楽譜を手に入れるのもなかなか大変でした。どちらの曲も、ぜひ聴いていただきたいですね。
――そして、ビゼー「アルルの女」第2組曲と続きます。情熱的で人気がある作品ですし、誰もが一度は耳にしたことのある曲だと思います。
この曲も盛り上がりますよね。既に日本センチュリーではヴィオラ4人版として弾いていました。最近は、オーケストラの仕事をしながら、「これヴィオラだけでいけるかな?」とか、ついつい考えちゃいます(笑)。ビゼーの曲は、案外、全部いけるんじゃないかなと思っていて、「カルメン組曲」や「交響曲第1番」もいけるんじゃないか……と、そんな妄想をしていた中で実現しました!
――編曲はどなたが手掛けられたのでしょうか?
今回、出演者としても参加してくれている飯田香さんです。彼女のアレンジが、とにかく素晴らしい!「SDA48」の活動を始めた頃、「誰がアレンジできる?」とメンバーに尋ねたら彼女の名前が挙がって、お願いしたのが最初です。以来、新しく楽譜を作る際は、基本的に彼女にお任せしています。今では、彼女の下に外国からのオファーも来るようになったそうです。
――それはすごい才能ですね!ヴィオラのことを熟知している上に、素敵なアレンジもできるとは、心強いですね。そして、後半にはメタリカの「Master of Puppets」があります。他では聞けない一曲で、正直、驚きました!
モルゴーア・クァルテットの荒井英治さんは、私が大尊敬している方のお一人です。彼らのプログレッシヴ・ロックはあまりにもカッコいい! 英治さんに「ヴィオラ4人で何やったらいいですかね」って聞く機会があって、候補として提案していただいた曲の一つがメタリカのものでした。弦楽四重奏の曲を、今回はヴィオラ四重奏にアレンジしています。
――そして、プログラムはハードロックの楽曲に進んで行きます。X JAPANの「紅」(YOSHIKI 作曲)ですが、ヴィオラによる迫力の演奏に期待しています。
実は、この「紅」という曲は、クラウドファンディングのお礼として用意したものだったんです。「5分ぐらいのご希望の一曲を、ヴィオラ四重奏にして、動画でプレゼント」というものでした。寄付額が高額だったので購入していただけないかと心配していましたが、お2人も寄付してくださいました。その時のリクエストが、さだまさしメドレーとX JAPANの「紅」だったんです。
紅 (KURENAI) X JAPAN presented by SDA48
――おお!元々は、リクエスト曲だったんですね。
TOSHIさんの歌声はヴィオラ的なんです。わざとこう、絞り出すように歌っている。それがまるでヴィオラだったので、メンバー皆でびっくりしました。こうした縁もご支援者様のおかげです。
――新レパートリーと言えば、人気漫画『鬼滅の刃』の主題歌「紅蓮華」(草野華余子 作曲)や、『スターウォーズ』メドレー(J・ウィリアムズ 作曲)もありますね。
「紅」にしろ、LiSAさんが歌う「紅蓮華」にしろ、歌う声にとても音域・音色が近いヴィオラという楽器の特徴がよく出ていると思います。歌うものを弾くのが、ハマりやすいんです。チェロも「人間の声に一番近い楽器」とか言われますが、生身の人間に比べると低めの音ですよね。『スターウォーズ』メドレーは、当然、カッコいい曲なんですが、演奏がすごく難しいので、実はあんまり弾いてきませんでした。一つの挑戦です。
――充実のラインナップと、それを実現していく須田さんの企画力に脱帽です。他にもおすすめの曲はありますか?
今回のコンサートには入れなかったのですが、クイーンの「We Are The Champions」がすごくいい。フレディの声は、正にヴィオラの声。日本センチュリー交響楽団のYouTubeで動画を見ることができますので、是非。全員がお面をつけているので、全く誰だか分からないですが(笑)。
「いつ何があってもいいように」とお面を持ち歩いているという須田さん。
始めに話したように、つまらないコンサートがあまりにも多いんじゃないかという問題意識があります。自己満足の要素が強いのは、やっぱり良くない。ジャズピアニストの小曽根真さんと親しくさせていただいていますが、彼のステージを見に行った時に、彼自身が本気で楽しんでるのが見えました。「『こっち』が楽しまなかったら伝わらないよね」と、すごく反省させられた。演者も、お客さんを楽しませるために真剣に楽しむ。どこまで面白さを広げられるかをいつも考えています。
――今後、やってみたい曲や、ご自身の中で温めてるアイディアがあればお聞かせください。
沢山あります(笑)。SDA48のメンバーに聞くと、結構、面白い案が挙がってきます。特に、ロック系のレパートリーは増やしていきたいですね。
――次の10年間もSDA48から目が離せないですね。それでは最後に、コンサートを楽しみにされているお客様へのメッセージをお願いします。
最初の頃から、メンバーの間で共有してきた絶対忘れちゃいけないことがあります。それは、「クオリティを下げるな、じゃないと面白さが伝わらない」ということです。「高いクオリティで、あらゆることを」というのが、すごく大切なことだと思ってます。ご来場いただいたお客様には、絶対、後悔させないという思いでいます。来てよかったと思っていただけるためにメンバー全員で準備を進めていますので、是非、会場にお越しください!
取材・文=大野はな恵 写真=ヒダキトモコ