愛知発の戯曲賞「AAF戯曲賞」受賞作『鮭なら死んでるひよこたち』を上演
愛知発の戯曲賞「第21回 AAF戯曲賞」(2022年1月)で応募総数115作品の中から大賞に選出された『鮭なら死んでるひよこたち』が、2023年11月24日(金)から 26日(日)まで愛知県芸術劇場小ホールにて、第21回AAF戯曲賞受賞記念公演として上演される。戯曲:守安久二子、演出:羊屋白玉。出演は遠藤麻衣、神戸浩、スズエダフサコ、田坂哲郎(非・売れ線系ビーナス)、リンノスケ(きっとろんどん)。プロデューサーは長年にわたり本戯曲賞および愛知で演劇に携わってきた山本麦子。
AAF戯曲賞(Aichi Arts Foudation Drama Award)は、公募から次代を担う劇作家および後世に遺す戯曲を発掘し、受賞作品を「受賞記念公演」として上演する愛知発の戯曲賞。 愛知県芸術劇場主催のもと、2000年からスタートした本戯曲賞は20年以上にわたり、固定観念に捉われない個性ある作品群から演劇に携る審査員が作品を選定。過去には松原俊太郎(2015年第15回AAF戯曲賞大賞受賞、2019年第63回岸田戯曲賞受賞)、市原佐都子(2011年第11回AAF戯曲賞大賞受賞、2020年第64回岸田戯曲賞受賞)も受賞している。2015年からは「戯曲とは何か?」をコンセプトに、劇作家の育成も行いながら、地方から文化の発信・演劇界の振興・発展を目的に、新しい価値観と出会いの場の創造を目指してきた。
今回上演される『鮭なら死んでるひよこたち』の戯曲は、2019年にデビューした岡山在住の劇作家・守安久二子(もりやす くにこ、受賞時62歳)が執筆。色付けされたことに気づかず鳴くひよこや、産卵後に死ぬサケ等のイメージから人の性(さが)や巡る命の不思議さに人生観を織り交ぜた物語。
本作の演出は、過去のAAF戯曲賞で審査員を務めた経歴を持ち、瀬戸内国際芸術祭や新潟の大地の芸術祭で地域の特性を活かした作品制作を行うことに定評がある羊屋白玉(ひつじや しろたま)。主宰する「指輪ホテル」では芸術監督を務める一方、コロナ禍ではホームレス支援などのソーシャルワーカーとしても活動する演出家だ。人や物や街など、あらゆる現象の看取りや喪失、目に見えない境界などのテーマに取り組み続けている。
稽古は今年(2023年)3月から愛知県芸術劇場でスタート。8月には札幌で創作した過程を一般に公開するワーク・イン・プログレス(公開稽古)を実施した。2024年2月16 日(金)・17 日(土)には福岡(なみきスクエア)、同月22日(木)・23 日(金・祝)には札幌(生活支援型文化施設コンカリーニョ)で、本戯曲賞として初のツアー公演もおこなう。
公演情報
『鮭なら死んでるひよこたち』
■演出:羊屋白玉(演出家・劇作家・俳優・「指輪ホテル」芸術監督・ソーシャルワーカー)
■出演:
遠藤麻衣
神戸浩
スズエダフサコ
田坂哲郎(非・売れ線系ビーナス)
リンノスケ(きっとろんどん)
■衣裳:佐々木青
■照明:則武鶴代
■音響:安達玄
■舞台監督:糸山義則
■プロダクションマネジメント・演出部:峯健、築山竜次(愛知県芸術劇場)
■イラスト:Aokid
■チラシデザイン:tami graphic design.
■制作:糸山裕子、阿部雅子
■制作アシスタント:丸田鞠衣絵
今井絢子、大島直子、高木悠子(愛知県芸術劇場)
■プロデューサー:山本麦子(愛知県芸術劇場)
※11月23日(木・祝)ゲネプロ(本番同様の最終リハーサル)に高校生以下を無料招待
※11月25日(土)・26 日(日)アフタートークあり(ゲストはウェブサイトにて発表)
■会場:愛知県芸術劇場 小ホール
■入場料金:全席自由 一般3,000 円 U25 1,000円
※U25 は公演日に25歳以下対象(要証明書)
※未就学児入場不可。25日(土)のみ託児サービスあり(有料・要予約)
○託児サービス:対象:満1歳以上の未就学児/料金:1名につき1,000 円(税込)
・申込締切:11月18日(土)
・託児申込:株式会社オフィス・パレット 0120-353-528(携帯からは 052-562-5005)
月~金 9:00~17:00、土 9:00~12:00(日・祝日は休業)
※26日(日)公演では、日本語ポータブル字幕をご利用いただけます。ご希望の方は公演前日 までに劇場事務局(052-211-7552)までお問い合わせください。
※車いすでご来場の方は、購入後、劇場事務局までご連絡ください。
※やむを得ない事情により内容、出演者等が変更になる場合があります。
■公演ページ:https://www-stage.aac.pref.aichi.jp/event/detail/000983.html
https://www-stage.aac.pref.aichi.jp/event/aaf/index.html
■戯曲『鮭なら死んでるひよこたち』
https://www-stage.aac.pref.aichi.jp/event/item/syakenarashinderuhiyokotati_gikyoku.pdf
■参考_過去の受賞作品/受賞者一覧
https://www-stage.aac.pref.aichi.jp/event/aaf_da/index.html
季節は秋。坂の多いどこかの街の広場。枯れ葉ロータリー。奥には立派であったろう石柱の門。 その先はかなりな下り坂で、池があるようだがそれ以外は何も見えない。
ムー(男)とフー(女)。彼らは、カラーひよこを売る流しのテキ屋である。平らな場所を捜す二人。 下校途中の小学生を待っている。世間的には、肩身の狭い稼業だが、自分たちとの経験がいずれ、その子 らを守るバリアや匂いを嗅ぎ分けるレーダーなると信じている。何かを求めているようにも見える二人。 「ひとづくり革命」の事業を受託し委員に任命されたことで、未来に繋がる希望を見いだした二人は、つもりの妊娠を楽しんでいる。公からの認定が、二人を後押しする。
簡単に門の中へ、入って行こうとするチャラ男を呼び止め、ひよこを見せる二人。カラーひよこをテキ屋のボー爺から盗み、死なせた過去を持つチャラ男。二人を認定しにくる理事長。理事長を捜してやってくるガリア夫人と佐川会長。その前を通る黄色いカバーのランドセルの見えない子供達。監督にやってくる監査員。
公認を後ろ盾にしてきたムーだが、監査員に反発し契約書を破棄する。チャラ男も戻り、ムーとトランクを取り合うが、ガリア夫人が加わって、チャラ男の生い立ちが明らかになる。理事長は、チャラ男、ガリア夫人を次々に任命し、自分を監査にきた監査員も任命し救済する。
見えない子供達が石を投げることに憤慨するガリア夫人は、やがて自分の絶望を語り、鮭なら死んでると、石を投げつけ「絶望の果て」の検証に旅立って行く。子らの石に、倒れていた佐川会長が、ゆっくりと服を脱ぎ始め、未来はないが予感だけがあるボー爺に生まれかわる。トランクを持って、「生きてただけや」と、チャラ男と共に、門の中へ落ちて行く。
枯れ葉を踏んで楽しむ二人、フーのお腹は、益々ふくれ幸せそう。空っぽのトランクを持って、チャラ男が門の中から戻ってくる。彼が、理事長から受け取りそこねた封書を渡すと、チャラ男は生き生きして、枯れ葉の中を泳ぐように去ってゆく。何かに任命されたようだ。空のトランクを持って、どこかへ去ろうとする二人、再申請は出来るが、受託契約は、もうどうでも良い。フーに出産の兆候が現れる。
トランクの中のカラーひよこは鳴くだけである。何も知らずに鳴くだけである。なされるがままの子供と色づけされて必死に餌を啄む大人。一匹が何千の命を生み、死んでいく鮭。生んだ絶望と生まれた絶望が、混ざり合い新たな命が生まれてくる。
一昔前、学校帰りの子供を相手に、どこかの陰でこっそりカラーひよこや消えるインクなどを売る流しのテキ屋のおじさんがいた。子供に家に帰って、百円持ってこいという彼らは一体、誰に何を売っていたのだろう。子供から受け取った百円玉で何を買い、どこに帰っていったのだろうか。不思議な記憶である。
【ツアー情報】
■日程:2024年2月16日(金)・17 日(土)
■会場:なみきスクエア
<札幌公演>
■日程:2024年2月22 日(木)・23 日(金・祝)
■会場:生活支援型文化施設コンカリーニョ
■主催:指輪ホテル、公益財団法人北海道文化財団、愛知県芸術劇場