ミュージカル『町田くんの世界』主演の川﨑皇輝にインタビュー~「任せていただいたからには頑張りたい」

インタビュー
舞台
2024.2.2
川﨑皇輝

川﨑皇輝


2015〜2018年に別冊マーガレット(集英社刊)にて連載された、安藤ゆきによる人気漫画『町田くんの世界』。物静かでメガネ。そんな外見とは裏腹に成績は中の下。アナログ人間で不器用……なのに運動神経は見た目どおりの町田くん。そんな町田くんが周りのみんなを変え、みんなに愛されていく新感覚人間ドラマだ。

そんな『町田くんの世界』が、東京2020パラリンピック開会式やミュージカル『チャーリーとチョコレート工場』、ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』など幅広いジャンルの演出を手掛けているウォーリー木下のもと、ミュージカル化される。主人公の「町田くん」を演じるのは、テレビ朝日ドラマ『拝啓、奇妙なお隣さま』でも主演を果たした、川﨑皇輝。今回、SPICE編集部は、本作の取材会に参加し、川﨑に作品に懸ける思いなどを聞いた。

思い入れのあるシアタークリエで、ミュージカル初主演!

ーー思い入れがあるシアタークリエで、ミュージカルをやると聞いたときはどんな気持ちでしたか? そして、ミュージカルは初主演だそうですが、主演と聞いたときのお気持ちもお聞かせください。

そうですね。やっぱりシアタークリエは思い出がすごく詰まっていて。(事務所に)入所したときからライブという形でしたけど、 毎年のように立たせていただいて、少年忍者としての初めての単独公演もシアタークリエだったので、思い入れがある場所なんです。

ミュージカルもたくさん観た場所だったので、その場所で自分がミュージカルをやらせていただけること自体がすごく嬉しかったです。事務所の舞台のミュージカルしか経験のない状況で、初めてミュージカルを本格的にやるわけですが、それが主演で、場所はシアタークリエですから! お話をいただいたときはすっごく嬉しかったですけど、 大丈夫かなという心配はもちろんあって……。

でも任せていただいたからには、頑張ろうと思って、準備を進めている状況です。さすがに緊張はしていますが(笑)。


ーーまだ完成版ではないですけども、仮の台本をお読みになったそうですね。歌も1曲出来上がったと聞きました。実際に脚本を読んだり、歌を歌ったりしてみて、どうですか?

原作の『町田くんの世界』は、このミュージカル化のお話をいただいてから読んだのですが、本当に心温まる素敵な作品で。僕もいちファンとして、何周も読ませていただいているんですけど、これがどうミュージカルになるんだろうとは思っていたんです。皆さんと同じように。

それが実際に台本になり、曲が来て……ああこうなるんだと。『町田くんの世界』をミュージカルにしたらこうなるよねと素直に思ったぐらい、世界観を表現している曲が手元に届いて。仮ではありますけど、台本も原作に忠実にといいますか、僕が好きな『町田くんの世界』がちゃんとミュージカルになっている感じがして、とても楽しみです。

一方で、今回、主演を務めさせていただく身として、実際にこれをやるんだという実感がさらに湧きました。緊張や不安などいろいろな感情が入り混じりつつ、実感がひとつ湧いたのは良かったかな。ここからしっかり詰めていけるように頑張ろうと思います。

町田くん目線で周りを見てみて……「優しさに気がつく」

ーー役作りに関してはどうでしょう? ポスタービジュアルではすっかり「町田くん」でしたが。

ポスター撮影のときはまだ全然曲も何もできていない段階だったので、一旦、町田くんになってみたという感じでした(笑)。とはいえ、町田くんを演じる上での最初のステップだったわけですけど、眼鏡選びから始まりましたね。ちょっと髪を切って、制服を着て、リュックを背負って、空を見上げて……あ、町田くんになったなって(笑)。周りの スタッフさんからも「町田くんっぽいね」と言っていただいたので、そこは自信を持っていきたいです。

……町田くんは、ちょっと特殊な人だと思っていて。 天然だし、誰よりも人間を愛していて、その愛も兄弟的な愛というか、 聖人のような人。身の回りになかなかああいう人はいないと思うんですけど、現実的にいるんですかね?(笑)特別なタイプの人だとは思うので、そこをしっかり理解して近づいていけるように、今は原作漫画と脚本を行き来しながら読んでいる状況です。

これをミュージカルにするにあたって、もちろん演出のウォーリーさんらと相談しつつ、周りの共演者さんとつくっていくうちに、どんどん変わっていくとは思うんですけども。しっかり時間をかけて、僕の知っている町田くんになれればいいなと思っています。

ーー町田くんは「人たらし」ですが、川﨑さんご自身はどうですか?

人たらしではないです。でも、人は好きで、喋るのもすごく好き。「人が好き」という部分では共通しているかもしれませんが、町田くんの「人が好き」はちょっとベクトルが違う気がしています。

……町田くんはナチュラルボーンなんですよね。いくらお芝居とはいえ、町田くんが狙ってやっているように見えたら終わりなんですよ。突然女の子の頭を撫でてもチャらく見えないのは、町田くんの人柄こそじゃないですか。うちのメンバーにもチャらめの奴がいますけど、彼らが頭を撫でたらわざと感が出てしまう。それをナチュラルにできるのが町田くん。この差は何なんでしょうね。早く解明しないと!(笑)

ーー確かに重要な役作りの鍵になるかもしれません。

でしょうね。絶対キザじゃないし、みんな兄弟だと思っている。そこが1番の町田くんの魅力ですから。それをどう舞台上でうまく表現できるか……。

ーーちなみに町田くん視点で周りを見てみたりするものですか?

あります。優しくありたいと思って、結構気をつけているんですよ。誰かが物を落としたら拾ってみようとか(笑)。本当にめちゃくちゃ基本なんですけど、そういうところから。だって、誰かが物を落としたら、町田くんは真っ先に拾うでしょうからね(笑)。

(取材中に出演中だった帝劇2024年新春公演『Act ONE』の)楽屋で右に田村海琉がいて、左に織山尚大がいるんですけど、織山がゴミを捨て忘れて帰ったことがあったんですね。そうしたら海流が普通に捨てたんですよ。「また残してる〜」とか言って。町田くん目線で周りを見てみると、そういう人の優しさに気づくようになって。海琉、いい奴って思いました(笑)。それは新しい気づきでしたね。

ーー自分が優しくなるだけではなくて、周りの優しさにも気づけると。

そうそう。自分が気をつけようと思うと、気をつけている人には気づきます。

ーーさらに川﨑さんご自身も愛の人になりそう……!

1.5倍ぐらい挨拶しています。普段から挨拶する方ではあるんですけど、もうそういうところから町田くんに触発されていますね。人間性がより高められられている気がします(笑)。

「変に気張らず、いつも通りの熱量で」

ーー今回はミュージカルということで、歌についてはいかがですか?

ボイストレーニングもそこまで経験がなく、事務所の舞台のときに教えていただいてたものを、自分のやり方として持ち込んでいる状況です。町田くんは淡々としているキャラクターでもあるので、そこまで感情をたくさん乗せて歌わないのでは? とも思っているんですが、町田くんらしさを残して歌う、キャラのまま歌うというのは、ミュージカルのひとつの醍醐味であり、見どころでもあると思うので、それをしっかり自分で表現できるかどうか。

今回は練習を重ねて、実力をつけていきたいですね。ミュージカルにおいて歌は本当に命みたいなもの。そこをしっかり歌い上げれるように、準備できたらと思っています。

ーーダンスに関してはどうでしょう。キレキレに踊れる川﨑さんですが、今回はダンスは封印……?

作品にダンスがあるのかどうかはちょっと分からないんですが、でも、もし町田くんが体を動かすとしてもね、彼は動けないですからね(笑)。封印するなら封印で楽しいと思いますよ。逆に動かさなくて済むのかと思っちゃうかもしれない(笑)。

ーー少なくとも『Act ONE』ほどは動かないわけですね。

はい(笑)。というか、どんな作品でも『Act ONE』ほど動く作品はないと思います(笑)。

ーーある意味、歌とお芝居に集中できる。

そうですね! 町田くんは体を動かすタイプでもないので、体を動かして何かを表現する場はあまりないはず。歌や芝居に集中して、作品がうまく成り立つように練習していきたいです。

ーー座長としてはどうありたいと思われますか?

座組みの空気感は座長が作るものらしくて。というのも、僕が初めての主演舞台(『ロミオとロザライン』2021年)をやったときは空気づくりなんて考えてなくて、ただただ頑張っていたんですよ。でもそのただただ頑張っている空気感に、みんなが巻き込まれていったよと後から聞いて。自分としてはそんなつもりはなかったんですけど、主演というか、この作品の真ん中にいる人の空気感が、作品自体の空気感になっていくんだなと知りました。

なので、今回も変に気張らず、いつも通りの熱量でいきたいですね。常に熱量高めにいろいろやらせていただいているタイプなので(笑)。

ーー主演舞台『ロミオとロザライン』の経験は活かせそうですか?

はい、たくさん活かせると思います。本当に基礎の基礎から細かく指導していただいて……なんでこんなことを知らずに帝劇に立てていたんだろうと思うほどです(苦笑)。

例えば「その右足の1歩は何の意味があるの?」と言われたことがありました。「言われた動きに理由をつけるのは君だよ。そこに行けと言われたから行くのではなくて、行けと言われたから行くけど、なぜそこに行くと役が考えたのかを考えるのは君だ」と。つまり、それまでの僕は何の意識もなく動いていたり、自分の癖に気づいていなかったりしたんです。それを舞台上でやってしまうと、それが役の癖になっちゃう。全部が情報であるということに改めて気づかされたんですよね。

なかなか気づけなかった盲点のようなポイントをたくさん炙り出していただいて。その後お芝居する上ですごく勉強になったし、何よりも主演をやりきったという経験と、ある意味での自信が、得たものの中で1番大きかった気がしています。

純粋にミュージカルとして楽しんでもらえるように

ーー事務所の舞台も含めてミュージカルに出演されたり、観客としてご覧になったりして、ミュージカルの魅力はどんなところにあると思いますか?

世界観が直接伝わってくる感じがいいなと思います。ストレートプレイは観ていて、こちらから感じにいくような感覚がちょっとある気がしていて……。お芝居をやる身としても、ドラマと違って舞台は「伝えなきゃいけない」というスタンスでやっているんですけど、観る側になっても、そこで行われてることから情報を得て、感じにいかなくちゃいけないみたいな感覚になるんです、僕は。

でも、ミュージカルは曲と歌とで、直接伝わってくる感じがする。世界観とかキャラクターの心情とかが、感じにいくまでもなく届く。それがミュージカルとストレートプレイの違いだと思いますし、魅力なのかなと思っていますね。

ーーそんな中で、川﨑さんが一番お好きなミュージカルは?

『Endless SHOCK』が好きですね。エンタメ性もすごく高いし、ショーとしてのエネルギーもすごいけど、作品性や物語性も意外と繊細で……すごく好きですね。毎年観に行っていることもあると思うんですけど、いつも響く作品です。

ーーこの『町田くんの世界』で初ミュージカル主演となるわけですが、この公演を通してどんなことを達成したいと思われていますか?

そうですね……やっぱりミュージカルもいけるなと思ってもらいたい。「意外と」ではなくて、「やっぱりミュージカルもいけたわ」と思ってもらいたい。こうやって主演に選んでいただけたということは、それなりに期待していただいている面もきっとあるはず。だからその期待を超えたい気持ちはあって。次のミュージカルも声をかけてみようかなと思ってもらえるようにできたらいいなと思っています。

ーーアイドルと俳優という二軸でいろいろな活躍をされています。今後の目標を教えてください。

すごく贅沢で無茶かもしれないんですけど、全部やっていたいんです。テレビもドラマもCMも舞台も。僕はずっと変わらず櫻井翔くんに憧れてここまでやってきたんですけど、それは今後も一生変わらないと思う。僕がやりたいと思う仕事は、櫻井くんが先駆者としてやっている仕事ばかりですから。

でも1番尊敬している人って、会えないもので(笑)。12年ぐらいこの世界にいて、まだ1回もお話したことないんです。不思議ですよね。そろそろお話しさせてくださいと思っています(笑)。

ーー最後に公演を楽しみにしている方へメッセージをお願いします!

本当に素敵な作品なので、絶対楽しんでいただけると思います。楽しんでいただけるように、僕も精一杯務めるので、心配せず楽しみにしていただけたら。ミュージカル初主演という個人的なイベントも重なっているんですけども、それも1回取っ払って、純粋にミュージカルとして楽しんでもらえる作品にできたらいいなと思っています! 劇場でお待ちしています!


■スタイリング:柴田拡美(Creative GUILD)
■ヘア&メイクアップ:服部幸雄  メーキャップルームプラス

■衣裳クレジット:
ジャケット ¥17,600/soerte(株式会社アンティローザ)、ベスト ¥4,180/Lull(SPINNS)、シャツ ¥28,600/CULLNI(CULLNI FLAGSHIP STORE)、眼鏡 ¥35,200/白山眼鏡WALLS(すべて税込価格)
その他スタイリスト私物

■お問い合わせ先:
株式会社アンティローザ(070-7645-3725)、CULLNI FLAGSHIP STORE(03-6416-1056)、白山眼鏡 WALLS (03-5468-0397)、SPINNS(0120-011-984)


取材・文・撮影=五月女菜穂

公演情報

ミュージカル『町田くんの世界』
 
<東京公演> 
日程:2024年3月29日(金)~4月14日(日) 
会場:シアタークリエ
 
<大阪公演>
日程:2024年4月19日(金)~4月21日(日) 
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

 
<キャスト>
川﨑皇輝  長澤樹
神里優希  斎藤瑠希  礒部花凜 大月さゆ  浜崎香帆  岩橋大  鶴岡政希
湖月わたる  吉野圭吾
 
<スタッフ>
原作:安藤ゆき「町田くんの世界」(集英社マーガレットコミックスDIGITAL 刊)
演出:ウォーリー木下
脚本・作詞:ピンク地底人3号
音楽・作詞・演奏:和田俊輔
 
■料金:11,500円(全席指定・税込)
■一般前売開始:<東京公演> 2月3日(土)<東京公演> 2月25日(日)
 
■製作:東宝
■公式サイト https://www.tohostage.com/machidakun/
 
(C)安藤ゆき/集英社・東宝
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