約100年前の大阪で花開いた女性画家たちに注目『決定版! 女性画家たちの大阪』後期展示の見どころ、木南晴夏のコメントが到着

ニュース
アート
2024.1.26

画像を全て表示(9件)

大阪中之島美術館にて開催中の『決定版!女性画家たちの大阪』が、1月23日(火)に約50点の展示入替を行った。後期展示の見どころや音声ガイドナビゲーターを担当した木南晴夏のコメントが到着したので紹介する。


現在、大阪中之島美術館で開催中の『決定版! 女性画家たちの大阪』は、大正から昭和初期にかけて、女性の社会的な活動が制限されていた時代に、絵筆ひとつで個性と才能を発揮した女性画家たちの活動を紹介する展覧会です。展示は第1章から第5章で構成され、50名を超える女性画家たちの作品や関連資料など約150点を展示しています。

展示室内の様子

展示室内の様子

今日では女性アーティストがさまざまな分野で活躍していますが、20世紀半ばまで芸術家の肩書をもつ人の大半が男性で、女性が芸術の分野で後世に名を残すことはほとんどありませんでした。日本画の分野においても、早い時期に名を成したのは美人画の上村松園(明治8年-昭和24年)や池田蕉園(明治19年-大正6年)ぐらいでした。

そんな中、大正元年に大阪出身の女性画家、島成園(明治25年-昭和45年)が20歳で文部省美術展覧会(文展)に入選し、その成功に刺激を受けた女性たちが、次々と大阪を拠点に画家として活動するようになります。そして島成園と、20歳前後で文展作家となった岡本更園(明治28年-没年未詳)、木谷千種(明治28年-昭和22年)、松本華羊(明治26年-昭和36年)で『女四人の会』展を開催するなど、活躍の場を広げていきます。

「女四人の会」(左から岡本更園、木谷千種、島成園、松本華羊)

「女四人の会」(左から岡本更園、木谷千種、島成園、松本華羊)

島成園は美人画の枠を超えた作品を次々と制作し、評価されていきます。京都の上村松園が「理想的な女性像」を生涯描き続けたことに対し、島成園をはじめ大阪の女性画家たちは、女性像を“見られるべき対象”としてではなく、「人間としてのリアルな女性(自分)」への思いを描きました。それは現代に生きる私たちへの問いかけでもあります。

島成園 「伽羅の薫」 大正9年 大阪市立美術館【通期展示】

島成園 「伽羅の薫」 大正9年 大阪市立美術館【通期展示】

その後も、帝展で特選を得た生田花朝(明治22年-昭和53年)が歴史風俗画を描き、江戸時代から大阪で盛んだった南画(文人画)の分野では、河邊青蘭(慶応4年-昭和6年)や融紅鸞(明治38年-昭和57年)が実力を発揮するようになります。

成功を収めた女性画家は、自らの画業を追求するにとどまらず、後進の女性を育成するため画塾を開きます。門下生たちも師に続いて公募展や塾展に挑み、大阪の女性画家の裾野はさらに広がりました。女性画家の多さは全国的にも注目され、近代大阪の文化における大きな特色のひとつとなりました。

木谷千種 「浄瑠璃船」 大正15年 大阪中之島美術館【後期展示】

木谷千種 「浄瑠璃船」 大正15年 大阪中之島美術館【後期展示】

生田花朝 「四天王寺聖霊会図(原題・四天王寺曼荼羅)」 昭和2年 大阪城天守閣【通期展示】

生田花朝 「四天王寺聖霊会図(原題・四天王寺曼荼羅)」 昭和2年 大阪城天守閣【通期展示】

河邊青蘭 「月瀬之図」 明治31年 関和男氏蔵【通期展示】

河邊青蘭 「月瀬之図」 明治31年 関和男氏蔵【通期展示】

1月23日(火)からは後期展示が始まり、約50点もの作品が入れ替わります。見どころ作品のひとつ、三露千鈴の代表作「殉教者の娘」(大正15年 大阪中之島美術館)は、赤いロザリオを手に目を閉じる着物姿の若い女性が、聖母子像のある空間で黙想する姿を描いています。描かれているのは信仰を理由に迫害された父の平穏な昇天を祈る娘の姿なのか、もしくは女性自身が殉教者なのか、見る者によって受け取り方が違う点が興味深い作品です。

三露千鈴 「殉教者の娘」 大正15年 大阪中之島美術館【後期展示】

三露千鈴 「殉教者の娘」 大正15年 大阪中之島美術館【後期展示】

本展では、大阪出身の俳優・木南晴夏さんが、音声ガイドナビゲーターを担当。商都に咲いた浪華の女性画家たちの軌跡を、大阪弁を交えながらご案内します。

木南晴夏

木南晴夏

<木南晴夏さんコメント>

私の出身地である大阪で、こんなにもたくさんの女性画家が活躍したということをとても誇らしく思います。ガイドの原稿を読みながら「素敵だな」と思ったのが、島成園の「桜花美人」です。美しい女性だなあと見入ってしまう絵ですが、若さ故のはかなさも表現していることに、意外性を感じました。美人画というのは、美しさだけを残すものではないのだと初めて知りました。男性はもちろん、特に女性の方々が大阪の女性画家たちの活躍を知ることによって、励みになったり、頑張ろうという気持ちになるのではないかと思います。パワーをいただける展覧会なので、ぜひ皆さんお越しください。

『決定版! 女性画家たちの大阪』は、四半世紀における調査研究を踏まえて、約100年前の大阪で意欲的に活動していた女性画家たちの作品に触れられる貴重な機会です。島成園や木谷千種、生田花朝などの入選作をはじめ、大正から昭和初期にかけて大阪で活躍していた知られざる女性画家たちの作品も多数展示しています。数々の「美人画」の中から、お気に入りの一枚を見つけに来てください!

『決定版! 女性画家たちの大阪』は2月25日(日)まで、大阪中之島美術館にて開催。はイープラスほかプレイガイドにて販売中。

イベント情報

『決定版! 女性画家たちの大阪』
会 場:大阪中之島美術館 4階展示室
会 期:2023年12月23日(土)~2024年2月25日(日)57日間
[展示入替]前期:2023年12月23日(土)~2024年1月21日(日)
後期:2024年1月23日(火)~2月25日(日)
開場時間:10:00~17:00(入場は16:30まで)
*2月10日~25日の期間は10:00~18:00(入場は17:30まで)
休 館 日:月曜日(ただし2024年1月8日、2月12日は開館)
および2023年12月31日、2024年1月1日
観 覧 料:一般/1,800円(1,600円)、高大生/1,000円(800円)
2枚セット券/3,000円(一般2枚セット券・前売期間のみ販売)
※価格は全て税込
※中学生以下無料
※()内は前売および20名様以上の団体料金
※障がい者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は当日料金の半額(要証明)
ご来館当日、2階カウンターにてお申し出ください
※本展は、大阪市内在住の65歳以上の方も一般料金が必要です
※前売券は2023年10月7日(土)10:00~12月22日(金)23:59まで販売
※団体鑑賞をご希望の場合は、事前に大阪中之島美術館公式ホームページから、団体受付フォームにてお問合せください
※学校団体の場合はご来場の4週間前までに大阪中之島美術館公式ホームページ学校団見学のご案内からお申し込みください
※展示室内が混雑した場合は、入場を規制する場合があります
※災害などにより臨時で休館となる場合があります
主 催:大阪中之島美術館、産経新聞社、関西テレビ放送
後 援:ラジオ大阪
お問合せ:大阪市総合コールセンター(なにわコール)06-4301-7285
受付時間 8:00~21:00(年中無休)
 
《相互割引》
本展の観覧券(半券可)をご提示いただくと、下記の展覧会が割引料金でご鑑賞いただけます。
■「モネ 連作の情景」が当日券100円引き
会 期:2024年2月10日(土)~5月6日(月・休)
※1枚につき1名様有効
※他の割引との併用不可
※休館日、開館時間等の詳細は各展覧会の公式サイトをご確認ください
シェア / 保存先を選択