望海風斗、平原綾香、井上芳雄、甲斐翔真が2024年夏の『ムーラン・ルージュ！ ザ・ミュージカル』に懸ける想いをたっぷりトーク！

2024年夏に帝国劇場（東京）、秋に梅田芸術劇場 メインホール（大阪）にて上演が発表されていた『ムーラン・ルージュ！ ザ・ミュージカル』。

『ムーラン・ルージュ！ ザ・ミュージカル』は、バズ・ラーマン監督が映像によってつくり上げた、きらびやかなビジョンを、アレックス・ティンバース演出によってさらにパワーアップさせ、めくるめく世界へと観客をいざなう革命的なミュージカル。2023年6月24日に東京・帝国劇場で日本初演のプレビュー公演の幕を開け、8月31日の千穐楽まで全85回の公演を走り抜けた本ミュージカルは、他に類を見ない非日常空間と、一度観たら忘れることのできない熱気溢れるステージが多くの観客の心を掴み、開幕早々にはSOLD OUTとなった。

あの熱い夏から一年、2024年公演は6月20日（木）～8月7日（水）に東京・帝国劇場、9月14日（土）～28日（土）に大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて上演が行われる。

日本初演に引き続き、ムーラン・ルージュの看板スターで、クリスチャンと出会い恋に落ちるが、病に冒されているサティーン役は、望海風斗と平原綾香がWキャストで演じ、作家志望の青年でムーラン・ルージュでサティーンと出会い恋に落ちる、クリスチャン役は井上芳雄と甲斐翔真がこちらもWキャスト演じる。2024年公演開幕に先駆けた2月1日（木）制作発表会見が行われ、望海、平原、井上、甲斐の4人が日本初演の思い出などを語った。

望海風斗「夢の中で生きていた感覚」井上芳雄「キラキラを出そうと……」

ーーあの熱狂の夏から早半年。本番中のことでも稽古中のことでも、今どんな風にあの夏を思い出しますか？

平原綾香（以下、平原）：さっきあやちゃん（※望海さんの愛称）と話したら「あまり記憶がない」と。

井上芳雄（以下、井上）：え？一生懸命すぎたということ？

望海風斗（以下、望海）：いや、夢だったんじゃないかなと思うぐらい非現実的な毎日だったんですよね。やっぱ特に公演始まってから。劇場が赤色に染まっていることもそうですし、夢の中で生きていた感覚なので、そこから醒めた感じがして。……え、覚えてます？

平原：覚えている。

井上：望海さんだけ覚えてない（笑）

平原：去年がちょうど歌手デビュー20周年の年で、それと『ムーラン・ルージュ』が重なっちゃったから……。本当にバタバタしていて、本番が終わった後に、生放送でYOASOBIの『アイドル』を歌わなくてはいけなくて、声出しがてら『アイドル』を歌っていたら、周りの楽屋の女の子たちがびっくりしたみたいで「あーや、どうした？」って。そんな感じで。

井上：そんな感じで？！（笑）

平原：だからって全力でやっていないってわけじゃないですけど、今年は私にとってミュージカルデビュー10周年の年。今年は『ムーラン・ルージュ！』一本で！これに懸けて！……お漬物で言ったら、サティーン漬けだけど、古漬けぐらい、染みこませて……

井上：なんで漬物に例えたんだろう？（笑）でも気持ちは伝わりました。甲斐くんはどうですか？

甲斐翔真（以下、甲斐）：鮮明に覚えてますよ。

井上：『ムーラン・ルージュ！』、大好きだもんね。

甲斐：大好きですね。23年の秋にパリで観てきました。

望海：グループLINEでパリに行ったと報告していました。

井上：田代万里生と甲斐翔真がね。田代万里生は『ムーラン・ルージュ！』に出ていないけど、パリに行って、なぜかみんなにお土産を買ってくるという（笑）。……あれ、甲斐くんからのお土産は？

甲斐：今後いろいろなことを共有したいと思います（笑）。ミュージカルですけど、本場のものはもっとナイト感が強くて。クリスチャンと同じような、高揚感がありました。クリスチャンの気持ちがすごい分かったんです。

井上：やっと？（笑）。でもね、もう甲斐くんは始まる前から『ムーラン・ルージュ！』に詳しいし、やっているときも超楽しそうだった。……個人的には俺、よくあんな若い役をやってたなって。

望海：その劇場をいるときと、そうでないときの違いはあるものですか？

井上：落差がひどいですよ。舞台上ではいつもキラキラ感を出そうとやっているのに、終わった瞬間に疲れが（笑）。なけなしの若さですからね。甲斐くんはもう自前のやつで溢れていますけど。今年は（若さが）残っているのかな……。

望海：でも芳雄さんがやっぱりすごいなと思うのは、そうは言いながら、本番が始まったらやるじゃない。

井上：やりますよ。仕事ですから！

望海：それすごいな〜って。

井上：いくら疲れてたとしても、1回始まると、もうテンションがどんどん上がっていく、作品の独特の魅力ありますよね。

平原：とにかく赤いでしょ？だから牛の気持ちが分かるというか、うおーってなっちゃう。

一同：（笑）

日本初演を振り返り、Wキャストの印象や好きな曲は？

ーーサティーンやクリスチャン以外のメインキャストもダブルキャストだった本作。組み合わせによっての違いなどは感じられましたか？

井上：さっき甲斐くんがサティーンの2人の印象の違いについて、いいこと言ってた！

甲斐：聞いたことあるかもしれないですけど、望海さんはみんなで肩を取り合いながら、真ん中にいて、「一緒にいこうぜ！」という感じ。平原さんは、あーや（※平原さんの愛称）が行った道にみんなが自然とついてきてしまうというか、放っておけない感じ。

平原：迷わないかな、みたいな？

甲斐：それもありますし、漬物の話とか牛の話とか、そういうところにも表れる、この感じ。

平原：嬉しいのか嬉しくないのか（笑）。

井上：「それぞれ違うサティーン像があって成立しているって、すごいWキャストだね」と言っていたんですけど、僕たちはどうですか？

望海：2人も全然違うよねとさっき話してました。

平原：（望海さんは）思い出すのに時間がかかったけどね（笑）。

井上：一旦（出演中の）『イザボー』のことを忘れてもらって。まだ大阪公演が残っているのは知っているんですけど、一旦忘れてもらって、ちょっと『ムーラン・ルージュ！』のことを思い出そう（笑）。

望海：でもだんだん思い出してきます。きっと稽古始まったら思い出す！……え、でも忘れません？一旦終わったことだから。

井上：俺も終わったことは忘れる。稽古始まったとしても「何してたっけ？」って。

望海：でしょう！だから公演中にこういう会見してほしい（笑）。皆さんが話している間に思い出すので。

井上：で、僕たちのクリスチャンは？

平原：1番違うのは「Crazy Roling」のとき。芳雄さんは、何しても結局話し合ったら許してくれそうな感。だけど、翔真くんはもう銃で撃たれそう。もう話せないかなって。そこら辺の「Crazy Roling」度がヒートアップする場所が違う。パチンと指を鳴らすシーンがあるじゃない？あのときに翔真くんはもう怒り。でも、芳雄さんは寂しさの方が勝っている感じ。

望海：そう！あーや（※平原さんの愛称）に対してと、私に対してのクリスチャンがもしかしたら違うんじゃないかなと思って。 受ける印象がちょっと違うから。やっぱり人が変わったら、皆さんの中の動くものも変わるのかな。

……私はどちらかというと、2幕のリハーサルシーンで漂わせ方が全く違って！芳雄さんはもうストレートなんですよ。ストレートに出したら周りに気づかれちゃうからどうにかしなきゃみたいな。もう突っ走るタイプのクリスチャンで、どうやって止めようと。で、翔真くんのクリスチャンは、全身から滲ませる感じ。出し方が全然違って、止め方が違ったなって。

甲斐：「Come What May」の前の芝居、全然違いません？喧嘩みたいになって、仲直りっぽくなって、曲に入ってくるストロークが全然違う。

井上：僕が一番好きな違いは2幕が開いたときに、舞台の両端にサティーンとクリスチャンがいて。真ん中の踊りがメインなんですけど、でも実は僕たちも恋しているから、やっていることが毎回違う。だって、あそこ、演出ほとんどついてなくない？とはいえ、お客さんも観てるから、サティーンのことを見て「あっ///」みたいな小芝居している。

平原：確かに違う。芳雄くんが（サティーンのことを）1000回見てくれたら、多分翔真くんは5回ぐらいじゃない？

甲斐：あそこは、（クリスチャンとして）自分が作っているショーを楽しんでいる時間ですね。

井上：俺、あそこは休憩時間だ（笑）。演出がついていないから、あえて自分に課しているの。青春のキラキラみたいなものを出そうとしている。

ーーそれぞれに好きなシーンはどんなシーンですか？

平原：個人的には自分の「Firework」が好きなシーンの1つ。一人で客席を向いて歌える曲って、その曲しかないんですよ。すごく楽。いつもなぜ前を見てはいけないの？と思う（笑）

井上：あ、それ、中川晃教くんもそう言ってました（笑）

甲斐：僕は前を向いて歌うと、緊張しちゃうんですよね。

井上：相手に向かって歌う曲が好きですか？

甲斐：「Your Song」とか「Come What May」とかデュエット曲も素敵ですけど、「Backstage Romance」とかみんなでやる曲も見応えがありますしね。全部好きですね。

井上：僕も「Crazy Roling」。どんどん変わっていけるから、面白い。

平原：格好いいよね。1日ぐらいやりたいもの。

井上：あとは「El Tango De Roxanne」。ダンサーのみんながすごい素晴らしいペアダンスを見せていて、その間を縫うようにして歌うっていく。ほとんど今までやったことない感じがする。ちょっと間違うとさ、ぶつかりそうになって、危険も伴うんだけど、だからこそ、その歌っている状況と気持ちとガチっとあって、あれはちょっと痺れるな。

望海：私は「Your Song」のシーンが1番好きですね。自分から自発的に何か歌うというのもすごく好きなんですけど、でも、人に歌ってもらって、自分の心が動き始める、変化し始める。で、2人の心が変化し始めて、あの1曲の中でも、勘違いから起きているけど、始まるじゃないですか。あの1曲の中でも、すごくロマンチックな出来事が毎回起こるのがミュージカルの楽しさだなと。すごく好きなシーンです。

平原綾香「演劇のスイッチが入る」甲斐翔真「誇りを持っていた」

ーー日本のカンパニーにならではだなと感じたことを教えてください。

平原：はい！誰かがお誕生日だと、必ず誰かが「お誕生日おめでとう」とメッセージを送り合う文化。

井上：……記者の方が聞いた質問の意図はそこではないと思うよ（笑）。

望海：バズ・ラーマンさんがいらっしゃったときに、世界中の各カンパニーを観ていらっしゃって、日本が1番泣けるというか、悲劇性が強かったと仰っていて。日本人の特徴なのかなと思いましたね。ブロードウェイで観たときは、どちらかというと、ギリギリまで笑いが起きて、日本語にしたら絶対泣くセリフだろうなというところでも爆笑。どちらかというとワーワー言いながら見る作品だったんですね。

日本だと2幕の後半になるにつれて、だんだん皆さんが作品の中に入り込んでいく。それはやっている側もそうだし、お客様もそうだし、日本ならではの『ムーラン・ルージュ！』として完成しているんじゃないかなと思います。今年どうなるかわからないけど（笑）。

井上：マッシュアップミュージカルという特性からして、欧米の方は元の曲をよく知ってるから「キター！」となるけど、僕たちのバージョンはどうなるのかなと思っていました。やはり「キター！」という反応はなかったもんね。ただ、ミュージカルのいい曲、いいメロディーとして楽しんでくれてるなと。それも素晴らしい楽しみ方ですよね。

甲斐：カンパニーの稽古をやったときに、みんなの目が違う感じがして。誇りを持って作品を日本に届けたいという意志がすごい伝わってきました。みんなそうだったので、これはいいものになるよという確信を持ったまま、劇場に入った。そこは他の国がどうとかではなく、皆さん、そうですよね？

井上：スウィングの一人ひとりに至るまで、コロナ禍の2年間、オーディションをずっと受け続けて、そこで選ばれたという誇りがね。日本だからということでもないかもしれないけど、自分たちはコロナ禍が緩くなってきたところで「これが思い切ってできるんだ」という喜びが溢れていた気はします。

ーー今回、帝劇のクロージングラインナップにエントリーされている本作。改めて帝国劇場という劇場への思いを聞かせてください。

井上：初舞台の劇場も、オーディションを初めて受けたのも帝劇だったので、家みたいな、ホーム感がすごくて。劇場の大きさとかも帝劇が基準。まあ帝劇より大きい劇場ってほとんどないですけど。帝劇でやらせてもらうことが通常といったら贅沢ですけど、そんな感じだったので、なくなると言われた方がちょっと想像つかないというか。今のところ考えないようにしています。もちろん寂しいし、このままあってほしいなと思う気持ちもあるんですけど……でもとにかく、僕たちは記憶をなくすぐらい（笑）、毎回公演を一生懸命やってて、その積み重ねで今なので。

なくなっちゃうのは寂しいんですけど、また新しい劇場もできてくれるでしょうし、 自分たちが最後に帝劇に立つ日までそれぞれ作品もあると思うんですけど、一生懸命やりたいなと。今年、『ムーラン・ルージュ！』に立てるのは嬉しいですし、幸せだなという感じです。

望海：私はギリギリ立たせてもらえるので、間に合ってよかったなというか、観る機会の方が多かったので……でも、だいたい観に行くきっかけが芳雄さんが出ているからで。（望海さんが帝劇で出演した）『ガイズ＆ドールズ』も『ムーラン・ルージュ！』も芳雄さんですし……。

井上：帝劇＝俺みたいな？（笑）

望海：そうなんですよ。芳雄さん、覚えていらっしゃらないかもしれないけど、『ガイズ〜』のゲネのときに、私、憧れの帝劇の舞台に立つときが来たんだなとちょっとドキドキしていたんですね。そうしたら芳雄さんがゲネが始まる前にやってきて「どう？緊張している？」って。帝劇でずっとやられている方は違うな〜って、そのとき思いましたよ。

井上：やらしいエピソードじゃない（笑）。立ってみてどうでした？

望海：宝塚の劇場とちょっと似てる部分があって、すごく安心感があったんですよ。包まれてるというか、ホッとできる。でも初めて立つし、緊張もしたけど、何か感じる空気感があるなと。みんなが憧れる舞台であり、そこに立ていただけることは嬉しかったですし、今年もまた『ムーラン・ルージュ！』で立てることはすごく嬉しいですね。

平原：それまで歌手をしていると、帝劇に足を踏み入れることって、観劇以外にあまりないので、『ビューティフル』でミュージカルに初めて立たせてもらったときのすごさを、今より分かってなかったんですね。でも、いろいろな人たちから「帝劇ってすごいんだよ」と教えてもらって、 きっと歌手で言うと「やっと武道館に立った」とかそういうイメージなのかなと思っていて。

で、私はあの帝劇の匂いが好きで、あの匂いを嗅ぐと演劇スイッチが入るような気がして。私、あの匂いが大好きなんですね。だから、リニューアルされても、ぜひ匂いだけは引き継いでいただいて……新築の匂いがしたら、なんか違うとなると思うの。

井上：その場合、あーや（※平原さんの愛称）の演劇スイッチが入らない？それは大ごとですよ！（笑）

甲斐：僕は新参者で『エリザベート』で立っているんですけど、僕にとって見る場所だと思ったので。歴史ある劇場で、重厚感もすごいですし、その歴史のある劇場でいろいろなドラマが生まれてきたんだなと観ていたときは思っていたんですけど、そこにいざ自分が立つことになったとき、なんか不思議なマジックにかかったようで。自分が帝国劇場の舞台にいることは、それこそもう『ムーラン・ルージュ！』に出るように、そもそも夢のような感覚で……！

平原：それは匂いよ。

甲斐：匂いなんですね（笑）。長い歴史がある中で、こういう時代の切れ目にこういう風に作品で携われることがすごく光栄なことですし、今の帝劇でなくなっちゃうのは寂しいんですが、また新しくなった帝劇でどう歴史を作っていくかということももちろん大事なことだと思うので、俳優として頑張っていきたいなと思っています。

井上：新しい劇場では、甲斐くんたちの世代がまたメインの世代になるでしょうからね。

甲斐：素敵な匂いを作れるように頑張ります（笑）。

取材・文＝五月女菜穂