「なぜ彼らは何も恐れず、自由に生きていこうと歌えるのか」Newspeakの強さの根源、葛藤と挑戦の連続を探る、メジャー1stアルバム徹底解明インタビュー
メジャー1st EP「Leviathan」から1年8か月。Newspeakが満を持してメジャー1stフルアルバム『Newspeak』を完成させた。それまでほとんど英語で歌ってきた彼らが、初めて日本語の歌詞を大幅に取り入れた23年10月リリースの「State of Mind」を皮切りに立て続けにシングルをリリースしながら、バラードあり、ダンスナンバーあり、アップテンポのロックナンバーありと曲ごとに曲調を変えることも含め、さまざまなトライを繰り返してきた。それぞれに新境地をアピールする、それらシングルナンバーにアルバムで初出となる曲を加えたアルバム『Newspeak』の全13曲は、「Leviathan」以降のトライの集大成であることはもちろん、Newspeakというバンドが持つさらなる可能性も物語るものになっている。メジャー1stフルアルバムというタイミングで彼らが繰り返し歌うのは、ミュージシャンとしての信念だが、同時に悲しみに砕け散った傷心も歌われている。なぜ彼らが何も恐れず、自由に生きていこうと歌えるのか。その理由の1つである現在のNewspeakの強さを、Rei(Vo.Key.Gt)、Yohey(Ba)、Steven(Dr.Cho)の言葉からぜひ感じ取っていただきたい。
実験的で、これまでのNewspeakがやらなかった曲ができた
ーー前回のインタビューが3月の「Before It’s Too Late」をリリースしたタイミングで、アルバムが7割ぐらい出来上がっているタイミングだとおっしゃっていて。手応えを聞かせてもらったところ「新しいトライをたくさんした結果、Newspeakの良いところを詰め込んだアルバムになった」と。その後、アルバムを完成させて、その手応えに何か変化はありましたか?
Rei:その頃には、その後にシングルとしてリリースした「Silver Sonic」「Alcatraz」を録り終えている頃ですね。アルバムの曲は、シングルとして強い曲をたくさんリリースしていたから、そうじゃないライブでいいポジションに入りそうなアコースティックな曲だったり、打ち込みメインの曲だったり……それこそより実験的でこれまでNewspeakがやらなかったような3曲を仕上げていったので、よりおもしろみが出たのかなと思います。
ーーあー、なるほど。
Rei:「Leviathan」以降、リリースしてきたシングルが全曲入っているから、すでに強いアルバムにはなってたんですけど、そこの間をバランスよく埋めていくような3曲になりましたね。
Yohey:あと、曲順も本当にこれでいいのか最後の最後まで詰めて。
Rei:そうだね。いいアルバムになることはわかってたんですけど、シングルが多かったから、曲の並べ方が難しかったんです。でも、並べながらいろいろみんなで考えてるうちに、すごくいいまとまりになって。ミックスやマスタリングのおかげももちろんあるんですけど、そこでもアルバムに対する自分達の自信が揺らぎないものになりましたね。
ーー今おっしゃっていた3曲というのは、「Higher Than The Sun」と……。
Rei:「Bleed」と「Tokyo」です。
ーーあー、その3曲はシングル曲とはまた違う強い印象があると思いました。
Yohey:ですよね。今の時代の流れを考えて、シングルを数打っていこうっていうやり方を、「Leviathan」以降やってきたんです。だけどそうなると、やっぱり通常のアルバムの作り方よりもシングルとしての要素が強い曲が自然と多くなってくるから、アルバムだからこそ入れられる曲もやっぱり大事になるよねってこともみんなで話をしながら、その3曲を作ってきたんです。
ーーなるほど。曲としてのポジションこそ違うものの、取り組む熱量はアルバム曲もシングル曲と全然変わらない、と。
Yohey:もちろんです。
ーーアルバムの1曲目の「What If You Weren’t Afraid?」は2曲目の「White Lies」のイントロだから、「White Lies」が今回のアルバムの実質上の1曲目になると思いますけど、今回アルバムを聴かせてもらったとき、1曲目からいきなりひと回り成長したことを印象づける、こんなにスケールのでかい曲を聴かせてくれるんだってぐっと心を掴まれて。
Rei:ありがとうございます(笑)。
ーーとても聴き応えがありました。今日は、昨年10月にシングルとしてリリースした「State of Mind」で初挑戦した日本語の歌詞も含め、今回のアルバムでたくさん取り組んだというトライをさらに掘り下げたいのですが……時間も限られているので、まずはアルバム初出の曲の中から特に印象に残っている曲について聞かせてもらえないでしょうか?
Yohey:それで言うと、「Higher Than The Sun」ではビートをどこまで抜けるかというトライをしています。アコースティックの弾き語りとはまた違う形でNewspeakのサウンドにするには、どうしたらいいのかというところで試行錯誤しながら、今の塩梅になっていたり。それから「Bleed」は、Reiがデモを持ってきた段階から、歌とユニゾンしているギターがかなり歪んだ、パンチのある音になっている。一方で、リズム隊はシンベと打ち込みのドラムというダンサブルな要素もありつつ、というところの音のバランスもけっこうチャレンジングなことをしているという印象があります。
ーー「Higher Than The Sun」については、ぜひ話を聞きたいと思っていました。アコースティック・バラードと思わせ、実はアコースティックとは言い切れない音像がまさに絶妙で。
Rei:そうですね。若干エレクトロな感じも入ってますね。最初はアコースティック・ギターが中心にありつつ、最後まで走り抜ける曲を作りたかったんですよ。僕らはけっこうドラマチックだったりパンチがあったりする曲が多いから、ライブの中でみんながリラックスできる曲が欲しかったんです。「Before It’s Too Late」とか、「Tokyo」とかもなんですけど、「Higher Than The Sun」は特にそうですね。この曲をちょうど作ってる時にスタジアムなど大きいところで、いろいろなライブを見せてもらったことに影響を受けていて。なのでアコギの曲なのに大勢の人が大合唱してる景色がこの曲を作ってる時に見えちゃって、そこからサビのメロディをアンセミックなものに作り直したり、打ち込みのドラムやシンセサイザーで浮遊感を加えたり……コードもエンディングに向けてかなり浮遊感のあるものになっているんです。作り始めた時は単なるアコースティック・ソングだったんですけど、そんなふうに作りながら、最終的に普通のアコースティック・バラードではない形に行き着いたのかなって思います。
ーーみんなで歌えるアコースティック・バラードが、こういうサウンドになるところが、やっぱりNewspeakらしいし実験的だし、今の時代に出すべきものだと思って、シビれました。スネアドラムにディレイが掛かっているところがいいですね。
Rei:ディレイは歌にもめっちゃ掛けてます。特にサビは。ドリーミーと言うか、太陽の上に昇ってしまう感じが出ましたね(笑)。アレンジは歌詞にもひっぱられたところがあると思います。一晩中、天井を見上げてたのに、いつの日か太陽の上に昇って僕らは大丈夫だよっていう歌詞は最初からあったから、それに合わせてスネアにディレイを掛けてみたり、ボーカルもいっぱい重ねてみたりとかしてヘブン感のようなものが出たのかもしれない。だって、「Higher Than The Sun」って気持ち的にはもうヘブンじゃないですか。わからないけど、そんな気分だと思うんですよ。
ーー確かに。Stevenさんはトライしたという意味では、どの曲が印象に残っていますか?
Steven:「Bleed」のビートは、EDMに近いんじゃないですか。ブリッジで生のパーカッションを叩いているんですけど、キックとスネアは全部打ち込みで、そんなハードなリズムで作った曲は初めてだったから、ビートを作りながら楽しかったですね。ライブでどうやるのかまだ話し合っているところだけど。
Yohey:「Bleed」はリズムが変なんですよ。1番と2番でビートがシャッフルしてたり、してなかったりっていうのを変えてるんです。1番はビートが普通の4つ打ちのフィーリングでストレートなんですけど、2番からそのフィーリングがシャッフルに変わるっていう。フレージングは同じなんですけど、フィーリングがちょっと変わるんで、そこに気づくとおもしろいかもしれないです。
ーーどんなキッカケでそういうアレンジに?
Steven:たぶん、Aメロのギターリフがあるところは普通にストレートにしたほうがいい。でも、サビはチックチックチックってシャッフルがいいなど、それだけのことだったと思います。
Yohey:シンベの打ち込みもそれに合わせて、ちょっとフィーリングを変えたりして。
Steven:いつもね、ドラムのリズムをできるだけクリエイティブにしたいと思っているんだけど、前のアルバムはちょっと攻めすぎて、ライブでやると疲れるとか、バックボーカルを入れるのがめっちゃ難しいとかなって。だけど今回のアルバムはライブで自然に叩けるドラムになっていて、これまでと比べたらそこは意識したね。無理やり難しいビートをやっても誰も幸せじゃない(笑)。もうちょっとシンプルにして、ライブでリラックスして、もっと曲を表現できるようなパターンが今回は多いと思います。
Yohey:ドラムで言うと、アルバムの最後の「Nokoribi」はサビでロールしているんですけど、ロールをダブルにしてスネアがすごくいっぱい鳴っている感じになってます。
Steven:スネアが3人分ぐらい鳴ってる。
Yohey:そういうのはNewspeakでこれまでやったことがなかったです。
Steven:ドラムの話で言ったら、「State of Mind」「Alcatraz」「Blue Monday」、あとは「Leviathan」もそうかもしれないけど、いろいろおもしろいフレージングがあるからドラムはすごく楽しいと思う。
ーー中でも「State of Mind」のブルンジビートは際立っていますね。ドラムのフレーズをこれまでよりもシンプルにすることを意識したとおっしゃっていましたが、1曲の中でパートごとにフレーズが変化することも含め、今回のアルバムでもStevenさんのドラムは変幻自在だと思いました。
Steven:それはNewspeakのクセみたいなものだから(笑)。
Rei:もちろん、パートごとに変わっちゃうドラムもあるけど、最初から最後まであまり変えないというトライはしています。「Tokyo」とか「Before It’s Too Late」とか、ドラムも含め、できるだけドラマチックにしないというところがゴールみたいなところは、これまで以上にあったかもしれないです。以前だったら、ドラムも含め、全員がもうワンステップいってたところを抑えよう。そうしないと、全曲そうなっちゃうからみたいなことはけっこう考えましたね。
一番大きなチャレンジだった「日本語の歌詞」との対峙
ーーところで、Reiさんはトライという意味では、やはり日本語の歌詞になるとおっしゃっていましたね。さっき話題に出た「Nokoribi」のサビの歌い出しが日本語というのは初めてですよね?
Rei:確かに。言われてみると、そうですね。
ーーしかも、サビのメロディに対する言葉の当て方と言うか、譜割がけっこう大きくて、今までにないドメスティックな感じも出ましたが。
Rei:あー。でも、それはたまたまだと思います。日本語が一番ハマった曲だと思うんですけど、最初から日本語にしようと意識したわけではなく、たまたま日本語でも英語でもどちらにも行けるところにいた曲だったから。自然にサビの頭から日本語をハメても違和感がなかったと言うか、自然にすっと行けたって言うか。あと、最初に「Blue Monday」を作って、その後に「State of Mind」とか「Before It’s Too Late」をやって、慣れてきた状態で「Nokoribi」を書いたんですよね。なので自信というか、もう行ける!という気持ちになってたから、サビ頭から入れちゃえとなったのかもしれない。それともう1つ、これは話してて、思い出したんですけど…… 今回、そんなふうに歌詞に気持ちがかなり入っていたってこともあって、自分が楽器で何かしようという気持ちがこれまでに比べて、そんなになかったんです。
ーーなるほど。
Rei:だから、自分が楽器を持たないイメージでアレンジもしていて、これまでギターで何かフレーズを弾こうとか、シンセでバッキングしようとか意識していたところを歌詞に注力したから、「この曲、俺、何もやらずにピンボーカルでいいよね」「マイクだけ持ってればいいよね」みたいなことがたくさん起きてるアルバムになったと思います。
ーー今回、意識が歌詞に向かっていたのは、やはり歌いたいこと、言いたいことがたくさんあったからなんですか?
Rei:いえ、今回のアルバムの一番大きなチャレンジが「日本語の歌詞」だったから、歌詞を書くことに費やす時間がこれまでよりも多かったんだと思います。
ーー今回、歌詞も聴きどころだと思うんですけど、曲ごとに、いろいろなストーリーやいろいろな景色を歌いながら、全体的には一人の人間として、一人のミュージシャンとして、こういうふうに生きていこうということを歌っていると思うんですよね。その間に恋愛とか、人生における挫折とか、さまざまなブロークンハートを歌った曲が差し込まれていて、そういう曲も胸に刺さるんですけど、1曲目の「What If You Weren’t Afraid?」のタイトルおよび2曲目の「White Lies」の<What would you do if you weren’t afraid at all?(もし恐れるものがなかったとしたら、君はどうする?)>というリフレインが全てを物語っているように思えて。つまり、恐れることをやめて、もっと自分らしく、もっと自由に生きていこう。そして、音楽活動していったほうが絶対いいと、どこかのタイミングでReiさんが思ったんじゃないかとアルバムを聴きながら想像したのですが。
Rei:そうですね。1回無になりたい、1回リセットしたいというところで、「Be Nothing」を作ったとき、「Be Nothing」のMVのディレクターさんから、3人それぞれに今まで生きてきた中で重要な瞬間の写真を提供してほしいと言われて。古い写真を見返してたら、「White Lies」の歌詞にもあるんですけど、20歳の時にニューヨークに行って、エンパイアステートビルディングの上から撮った写真が出てきて、その時に音楽をやりたいと強く思ったことを思い出したんですよ。帰ったら就活だ。でも、何かスペシャルなことをしたいと思った時の記憶がその写真を見たとき、ばーっと蘇ってきて。もちろん就活もしたんですけど、迷いながらも何も怖くなかったからこそ、音楽を続けたんだろうなって。それで、今、ここにいるわけですけど、人生の岐路に立ったとき、怖かったら行かない方向を選んできたと言うか……「怖いけど、こっちに行こう」の繰り返しだったってことを思い出したことがキッカケになって、「White Lies」のリフレインになったんじゃないかな。
ーーなるほど。
Rei:今回のアルバムを作るとき、どういう歌詞にしようか特に考えてなかったんですけど、さっきも言ったとおり歌詞に向き合う時間が長すぎて。なぜ自分は音楽をやってるんだろうとか、なぜ、このバンドをやってるんだろうとか、なぜ俺はこんなにスタジオに籠ってるんだろうとか……思うことがめっちゃあったから、たぶん、そういう歌詞がめっちゃ増えてるんだと思います。音楽は楽しいですよ。曲を作ってる時は楽しいけど、歌詞を書いている時は基本的におもしろくないんですよ、僕は。出来上がった歌詞は好きだけど、歌詞を書いている時間は好きじゃない。だから今回はそういう歌詞になったと思うし、「White Lies」は特にメッセージがどんと出てきたから、1曲目に置きたいとなったんだと思います。
ーー「Be Nothing」で1回リセットしたいと思ったのは、なぜなんでしょうか? その「Be Nothing」では<I’m sick of trying to be something for nobody(誰でもない誰かのために素晴らしい人間になろうとすることにはもううんざりなんだ)>と歌っていますが、「Alcatraz」でも<So many faces and faces and faces to please(満足させなきゃいけない顔が多すぎてうんざりするよ)>と歌っています。実際にうんざりすることがあったんですか?
Rei:それは誰にでもあることじゃないですか。だって、自分の思ってることを、その人に向かって100%言えることなんて絶対ないし、お互いに気を遣いながらやってるし。それはメンバー同士でもそうだと思うし。
Yohey:人と関わっていれば、そういう場面が絶対出てくることだよね。
Rei:そういうこともあったと言うか、みんな、良くしようと思って、そういうことを言い合ってるわけじゃないですか。バンドって。だけど、それも自分が楽しくなかったら、何の意味もないんだからフリーになろうっていう楽しい曲ですね。
ーーそれは「Alcatraz」ですね。
Rei:そうです。
ーーこのアルバムを完成させるまでにもいろいろあったんですか?
Rei:それなりにいろいろありましたよ(笑)。音楽に関して言うと、みんなアドバイスしてくれるわけじゃないですか。「こうしたほうがいいんじゃないか」って。それがあったから歌詞も含め、今回のアルバムが出来たと思うし、苦しめてもらったからこそ出てきたフレーズもいろいろあって。だから今はめちゃくちゃ感謝してますけど、言われた瞬間はムカつくじゃないですか(笑)。でも、それがなかったら、「Alcatraz」に書いた自由になりたいって気持ちも生まれなかったから、歌詞に対して憎しみや苛立ちみたいなものが詰まってるかと言うとそんなことはなくて。今はもう「Be Nothing」で歌っているとおり<Thank you, Mr. Judgementals(ありがとう、評論家さん達)>っていう(笑)。
ーーなるほど(笑)
Yohey:インディーズでやってた頃とメジャーに来て変わったことって、そこが一番大きいのかなと思います。インディーズの頃は、僕らが作ったものに対して、「いいじゃん」っていう反応だけだったのが、メジャー・レーベルに移って現在のチームになってからは、思ったことを言ってくれる人達が増えたんです。今までそばにいたマネージャーも自分も言わなきゃって、いろいろな意見をどんどん言ってくれるようになって。チームとして、いろいろな人が遠慮せずにいろいろ言ってくれたからこそ出来上がったのが今回のアルバムだと思います。
Rei:妥協したくない、いいものを作りたいとか、本気で売りたいとか思ってるからこそ、みんな言うんだと思うんですよ。だから適当に思ってたら、これは絶対言わないだろうみたいな細かいところまで言ってくれるんです。レコーディングの最中に歌詞の助詞の使い方でケンカになりましたからね。でも、別にどうでもいいと思ってたら、そこまで言わないと思うんですよね。ちゃんと考えてくれてるからこその発言だと思うから、そういう人が増えたのはありがたいです、本当に。
リード曲「White Lies」が持つパワーと壮大なスケール感のワケ
ーーところで、アルバムのリード曲である「White Lies」は、アルバムのスピリットを象徴する曲という意味でも、曲が持つスケールという意味でもリード曲にふさわしいと思います。こういう大陸的なスケールを持つロックバラードはこれまでもありましたが、ここまで壮大になったのは、どんな工夫があったからこそだと?
Steven:シンベじゃない?
Yohey:サビの大きさも含め、曲のイメージがデモの段階からはっきりとあって、それをどういうふうに聴かせていこうかを考えましたね。たとえばガレージロック風のドラムやベースを合わせると、世界観がこじんまりしちゃうところもあるから、シンベに変えたんです。だけど、そもそも何か浮力と言うか、そういうものを感じさせるエナジーを、サビのメロディと歌詞が持っていたから強かったのかな。
Rei:メジャーになって、最初に「Leviathan」を作ったんですけど、CMソングだったから、CMの15秒という尺の中で強い曲を作らなきゃいけないということにバンドで初めて取り組んだんですよ。その時、Newspeakもここまで潔くサビで聴かせるってことをやってもいいんだと思えて、その経験が「White Lies」のメロディやどーんっていうパワー感、イントロだったり、そういうところが曲を作る最初の段階からイメージできてたのかなって思います。
Yohey:だから、サウンドメイキングみたいなことは、それに付随する本当にプラスαでしかなくて。
Rei:あとはやっぱり長年一緒にやってきたから、Stevenにしか出せないドラムのパワーがあることもわかってたから、デモを作る段階でStevenのドラムをイメージして、「これをもっとかっこよくしてくれ」って。そういう長年やってきたからこそのStevenの強さとか、Yoheyの強さとかが出た曲なんじゃないかなと思います。「State of Mind」とか、「Silver Sonic」とかも、そういうこれまでになかった強さが最初のイメージの時点であったんですよ。
ーー「State of Mind」もシンベなんですか?
Yohey:あれは生のベースなんですけど、シンベも重ねてます。
Rei:最近、そういうのけっこう多いよね。
Yohey:そうだね。僕のベースのプレイスタイルのスイートスポットが、けっこうずどんっていう音のデカさが出せるところよりも、ちょっと軽いところにあるんですよ。だから、そこを補強するためにシンベを重ねたりとか、ステレオのアイド感をシンベで足したりとかっていうのを今回は多用してますね。
ーー「State of Mind」のベースの、ちょっとリバーブが掛かっているようなサウンドがすごく良くて。
Yohey:あれはシンベの影響ですね。
ーーぶーんって鳴るベースが音像を広げている。
Steven:エンジニアのニラジ(・カジャンチ)さんがミックスしてくれたんだけど、本当にばっちりすぎて、みんな、「おぉ、やばい」ってなった。ベースのワイド感は、ニラジさんのミックスによるところも大きいと思う。
Yohey:かっこいいよね。ただ、その一方で、弾いている本人としては、やっぱりシンベを重ねていくと、生のベースのニュアンスがちょっとずつ消えていくんで、そこの匙加減が難しいと言うか、葛藤もあるんですよ。「State of Mind」の生のベースとシンベもあれこれ試した上で、最終的にこのバランスに落ち着いたっていう。
ーーたとえば「Alcatraz」のベースのファンキーなリフとか、「Silver Sonic」「Tokyo」のメロディアスなベースフレーズとか、曲によってはリード的なベースプレイもしていたり。Yoheyさんは1つのプレイスタイルにこだわらず、さまざまなプレイスタイルを柔軟に使い分けていますね。
Yohey:そうですね。ベースって見せどころと一歩退いたところのメリハリをつけたほうがいいと思っているんですけど、「Alcatraz」は「好きにしていいよ」と言われたから、思いっきり好きなように弾かせてもらいました。ブーツィー・コリンズ的なエッセンスも入れたらおもしろいと思って、フレージングももちろんですけど、MU-TRONってエフェクターを使ってフィルターが掛かった音色も入れてみました。そんなふうにメロディアスなベースがハマりそうなところはハメるけど、もう8ビートでいいじゃんみたいなところは、もう徹底して8ビートしか弾かない。そんなふうにメリハリつけるのは、弾いていても楽しいので、かなり意識しました。
ーーギターはサポートのTakeさんが弾いているんですか?
Rei:ほぼTakeです。
ーーガレージロック風にギターをかき鳴らす「State of Mind」をはじめ、ギターの音色もけっこう際立っていると思うんですけど、ReiさんがTakeさんに、こういうふうに弾いてほしいと指示するんですか?
Rei:メインっぽいフレーズやリフは、Takeのプレイのニュアンスを生かしてもらいつつ僕が考えたものを弾いてもらってます。Take自身もあまり変えたくないと言うか、そこまで変えちゃってもという感じなんです。ただ、バッキングとソロは、特にソロは僕には作れないから「お願いします!」とやってもらってるんですけど、「White Lies」同様に、そこも楽曲の強さに繋がってると思います。前作の『Turn』では僕が弾いたんですけど、やっぱりギタリストのエゴみたいなものも欲しいし、それがあるからこそバンドでもあると思うので、今回はTakeに弾いてもらうことにしたんです。今回のアルバムが持っているロックバンドとしての強さみたいなものは、Takeが出してくれたところもあるのかなという気もしますね。
日本語詞だからこそ直接的にぶつかり合える、ライブへの期待感
ーー改めて、歌詞の話ももうちょっと聞かせてください。ブロークンハートを歌った「Before It’s Too Late」「Bleed」「Tokyo」は、本当のところはわからないですけど、歌詞を書いたReiさんの個人的な体験が反映されているのかなと想像しながら聴くと、より染みますね。
Rei:もちろん、個人的な体験も反映されています。だけど「Bleed」は最初に書いた時は、もっと人間らしく生きたいという内容だったんです。でも、Stevenから「メッセージが多すぎる。もうメッセージは要らない。もっと違うのが聴きたい」と言われて。
Steven:言ったかも(笑)。
Rei:だから、全然、失恋なんてしてなかったんですけど、失恋ソングみたいな歌詞を書いてみたら2人ともめっちゃいいじゃんって(笑)。でも、「Bleed」って恋愛の曲に聴こえますけど、人を愛するって男女の関係だけに限らないじゃないですか。だから、実体験を基に書いたわけじゃないけど、人と人との関わり合いの中で「お互いのことを傷つけないように一緒にいようよ」みたいな気持ちは、僕の中から出てきたんだと思います。「これは嫌い」なんて言わないでよ。俺だって人間なんだからっていう。だから、「Bleed」はStevenに向けたアンサーソングだと思ってください(笑)。
ーーオルタナ調のインディ・ロック・ナンバーの「Nokoribi」で淡々とアルバムが終わるところもおもしろいですね。
Rei:確かに余韻を残すみたいなところはありますね。「Blue Monday」で終わろうかという話もあったんですけど。
ーーあー、アンセミックなロックナンバーの「Blue Monday」で。
Rei:でも、毎回、そういう終わり方してるし、「Nokoribi」の最後の歌詞が。
ーー<革命前夜のWingless Believer>。
Rei:そうそう。それが最後に来たらしっくり来ると言うか、もう1回、1曲目から聴きたくなるよねって話になったんです。「Blue Monday」で終わったら、けっこうおなかいっぱいになっちゃうじゃないですか。
Steven:ね。
Rei:だから、そこで満足させないと言うか、もう1回聴きたくなっちゃうようなことをやってみたかったんだろうね、俺達は。
Yohey:うん。
ーー日本語で終わるところも含め、それもトライの1つだった、と。
Rei:そうですね。たぶん。Yoheyと僕が日本人だから、こういう気持ちで終わったらいいよねってなったんだと思います。たぶん、今回、いろいろなことにトライしてなかったら、そうはならずに「Blue Monday」か、他の曲か、いつもと同じように終わってたと思うんです。だけどせっかくここまでトライしたなら、こういう終わり方もありなんじゃないか。この歌詞で終わるって、すげえ斬新だみたいな考えは、たぶん、みんなにあったのかなと。
ーーさて、この後、7月19日(金)のリリースパーティーが決まっています。そこでもアルバムの曲をどれだけ成長させられるのかという課題にNewspeakは取り組んでいくと思うのですが、次の制作についてはもう考えたりしているんでしょうか?
Rei:実は、もう4月から始まっていて。
Yohey:来月の頭にはレコーディングするんですよ。
Rei:全然止まるつもりはないので、楽しみにしててください。
ーーなんと。今回のアルバムがすごく良かったからこそなんですけど、Newspeakはもっともっと行けると思って、これからのことをどう考えているのかについても聞かせてもらいたいと思っていたら、まさかの(笑)。
Yohey:メンバー全員、性格的に常に何か作っているか、何かをしていないと、居ても立ってもいられないタイプなんですよ。
ーー楽しみです。最後にリリースパーティーの意気込みも聞かせてください。
Rei:初めて日本語の歌詞を書いた「State of Mind」をライブで歌ったとき、お客さんとめちゃめちゃ直接的な対話ができた気がしたんです。英語っていうフィルターが取れているわけだから、第一言語同士でぶつかり合うわけじゃないですか。そこに感動したんですけど、今回のアルバムは半分ぐらいがそういうことになっているんで、僕はそこを楽しみにしています。楽器を持たずに歌うだけの曲も多いですしね。目の前にキーボードがない分、お客さんとの距離もより近くなるから、直接的な対話みたいなものを楽しみにしたいし、お客さんにも楽しみにしてほしいって思います。
Yohey:今回のアルバムを作る上で、新しいことにいろいろトライしたわけですけど、その結果、どうなったのか。僕の感覚では、以前の曲よりも1曲1曲の立ち位置とか、曲の役割がすごく明確になった気がしていて。そういう新しい曲と以前の曲をライブで届けた時に、お客さんの反応がどう違ってくるのか興味があるし、それを見て、さらになるほどって思うこともいっぱいあると思うので、そこがすごく楽しみです。
Rei:Stevenは?
Steven:とにかく楽しみ。みんなに早く会いたいよ!
取材・文=山口智男 撮影=大橋祐希
リリース情報
発売日:7月10日(水)