「お客様ファーストで盛り上げます!」~祭シリーズvol.14 シンる・ひま オリジナ・る ミュージカ・る 革命『もえ・る剣』spi・内藤大希・原田優一インタビュー

インタビュー
舞台
2024.9.1
(左から)原田優一、spi、内藤大希

(左から)原田優一、spi、内藤大希

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“祭シリーズ”最新作のテーマは「革命」。歴史マニアからも根強い支持のある「幕末・明治維新」にフォーカスし、熱く命を燃やした志士たちの青春群像劇を重厚なグランドミュージカルとして描いていく。もちろん、シリーズの持ち味であるユーモアとパロディーとカンパニーのアットホームな空気も健在。より研ぎ澄まされた作品を生み出すべく、W主演のspiと内藤大希、そして出演&演出を担当する原田優一がそれぞれに抱く作品への期待と抱負を語り合った。

ーーまずは演出も手がけられる原田さんに、今作の概要などを教えていただきたく。

原田:『シンる・シリーズ』、僕が「このシリーズでオリジナルミュージカルをやりたい」というお話をる・ひまわりさんにいただいてから、今回が3作目になるんですよね。最初はミュージカルとは言ってもどの程度のミュージカルにすればいいんだろう? っていうミュージカル具合の調整と言いますか……これまでの祭シリーズを楽しみにされているお客様もいらっしゃいますし、やっぱりあのテイストを崩さずに作るというのも僕の中でもひとつ大事なテーマだったので、そこを探りつつ1回目を作ってみて、で、「意外にミュージカルいけちゃうじゃん!」になり、欲が出てきて2回目をやらせていただいて(笑)。そこからの3回目なので、まずはまた新しくチャレンジできることがいっぱいあるんじゃないかなというふうに思ってます。今回劇場も違いますし、あと、これまでで出演者が最少人数なんですよ。

原田優一

原田優一

ーー精鋭が集っている。

原田:はい。最小人数ですがお馴染みの方も初めましての方もいらして、なんかまた新たなシン・る像っていうのが生まれそうです。しかもspiと大希のW主演になるので、もうこれはあれですよね、1部はガチッとミュージカルで行きますよ〜。もちろん2部のショーではちゃんと壊れますのでご安心ください(笑)。相変わらず最新の攻め、タイムリーな攻めをしたいと思っています。

ーー内藤さんはシリーズ参加回数も多く、もはやレギュラーです。

内藤:思い返すと本当にいろんなエンタメジャンルの方が出ていて、取材でも「異種格闘戦です」なんて答えてたんです。それぞれのホームグラウンドが細分化されてはいますけど、毎回みなさんから刺激を受ける部分もすごく多く、また新鮮さもあり、さらにはプライベートでも繋がりのある仲間と再会したりということもあって。個人的に本当に「ご褒美」みたいな舞台だったんですけど、今回は言うなれば自分にとっての「プレゼント」ですね。何しろ同い年で、同じ横須賀出身で、ミュージカル俳優としても「すごい!」って思っていたspiとこうして並んでいられるんですから。

spi:僕、大希が通ってた中学の目の前の家に住んでて。それって、すごくないですか!?

原田:すごいすごい。

内藤:きっと知らないだけで当時からすれ違っていたかもしれないよね。

内藤大希

内藤大希

spi:うん。だって僕は窓からずっと校舎を眺めてたし……プールとかも(笑)。

内藤:で、なんなら自分はそこで泳いでた(笑)。だけどちゃんと一緒に声を合わせて歌うのって、今回が初めてなんですよ。

原田:それも意外だね。なんか結構共演してそうなイメージだったけど。

spi:共演しても役的に絡みがなかったりしてたんで。

内藤:ね。だから今回すっごく嬉しいです。楽しみです。

spi:僕も! もともと一緒にテーマパークに行ったりとか普通に仲は良いんですよ。そういう大希と一緒にやれるのもだし、こうやってグランドミュージカル界で活躍している方たちの中に入れてもらえるのも最高ですよ! 精鋭と言えるメンツばかりでワクワクします。

内藤:さっきspiと話したんですけど、特にもうここ(資料を指して)がめちゃめちゃおもろい! 「この2人でスピンオフも作れるじゃん!」って。

ーー孝明天皇役の岡幸二郎さんと三条実美役の原田さん。朝廷側のふたりですね。

spi:そう、作ってほしい、朝廷タイム。いや〜、朝廷タイム超楽しみ。だって、舞台上に1人で立っても持つ方たちが、2人一緒にいるなんて、凄すぎますよ。

spi

spi

内藤:ホントにふたりのシーンは超楽しみですね……って、まだ台本がないので全然わからないんですけど(笑)。

原田:ハハハハッ(笑)。

ーー内藤さん演じる斎藤一とspiさん演じる松平容保の友情を軸にした幕末モノである今作。朝廷、新選組、革命……物語的には結構ヒリヒリとしたと内容が予想されます。

原田:そうですね。今はまだ台本を練ってる段階なんですが、僕は「とにかくspiが困ってくれ」と。spiを悩ませ悩ませ悩ませて本当に痛い目にあってほしいっていうのが、私の台本へのリクエストなんです。

spi:え、それって……人間としてですか? 俳優としてですか?

原田:もちろん役として、です。役としていろいろなものを背負っているとか、悩んでいるとか、翻弄されているspiっていうのが僕はすごく好きで。なので容保にはもう大変なものを抱えてもらいたいんです。

ーー感情が渦巻く感じの。

原田:そうですね。そういうspiのキャラクター像を思いっきり見たいですし、対する斎藤一……大希ですけど、彼には逆にまだ僕も見たことのないキャラクター、「大希もこういう役をやるんだ」みたいな、今までとは違う一面が現れることを今作では期待しています。

(左から)原田優一、spi、内藤大希

(左から)原田優一、spi、内藤大希

ーーおふたりはご自身の役についてどんなイメージを抱いていますか?

spi:『シン・る』なので、あんまりいわゆる時代劇みたいな解釈にはいかなくていいのかな、とは思っています。普通に現代語とかもおしゃれに挟んだりしながら、「ああ容保ってそういう人間なんだ」という発見というか、「こんな人間も愛せるよな」みたいなラインで考えていて……エンタメとして突き抜けた感じってのパラメータにはしたいですね。図にしたときにガンガンガンって、刺々しい形を描いているような、極端なバランスが面白いんじゃないかなぁと。

原田:いいと思う。実際あの時期は歴史的にも入り組んでるので、「もしこんなだったら……」といういろんなifが結構満載にできるなと思っているので。

spi:斎藤一と容保の関係性についても、歴史的に語られてきたみんなのイメージっていうものが結構あるわけだけど、わかんないけどそれだってもっといろいろ考えられますよね。二人だけでいるとは実は容保が斎藤にめちゃめちゃいじられてたとか、会えばいつも思い切り罵り合っているよな、とか。実はふたりがこういう関係だったら面白いよね、みたいなところにいけるよう、その起爆剤として容保がしっかり作用していければいいかなとは思ってますね。

内藤:うん、どんな友情関係になるかはふたりでしっかり話していきたいです。僕は斎藤一と聞くと世代的に『るろうに剣心』の印象が強すぎて。あと大河ドラマの『新撰組!』でオダギリジョーさんが演じていたあのイメージとかが結構自分の中で大きいんですけど……まあ、いかんせんこの見た目なのでね(笑)。自分の中ではいっそ愛嬌でいくか、それともちゃんとクールでスマートにできるか……というところで今、せめぎ合っています。

原田:いろいろできる役だよね。だからこそ、大希のキャラクターで作れるなと思ってるんです。大希って元々がとても可愛いじゃないですか。で、この可愛さで実は怖かったらものすごい怖いと思うから……。

(左から)原田優一、spi、内藤大希

(左から)原田優一、spi、内藤大希

ーーその振れ幅が大きければ大きいほど狂気じみてくる。

原田:そうそう、狂気じみてる。そんな一面もぜひ見たいです。

ーーお二人から見た原田さんの印象もお聞かせください。

内藤:僕はもう公私混同してますので、優一さんはすでにほぼ身内状態ですね(笑)。もちろんリスペクトが大前提ですけど、役者さんとしても演出家さんとしても人としても、すべてがほんとに素敵だなって思う先輩の一人です。圧倒的スキルというか、もう電波っていうか(笑)、常にご自身から発信されているオーラみたいなモノもすごいんですよ。作り手としてクリエイティブなこともできるし、役者としての表現力も素晴らしい方。全信頼を寄せてます。

spi:僕ももうめちゃめちゃ信頼してます。共演させてもらった時に感じたのは、常に“お客さんファースト”で考えているところ。稽古をしていて時に「で、これはお客さんに伝わる?」と思うことってあって、それは俳優のせいもあるかもしれないし、演出的なことかもしれないですけど、自分がそう感じた時は原田さんも同じように感じてることがよくあるんですよ。「この画ってこっちじゃない?」ってちらって思うと、原田さんが同じタイミングで「そこはこうしましょう」って言ってくださったりするので、「ああ合致してるな」って勝手にシンパシーを感じていました。自分もそうですけど、やっぱりお客様目線で作品を作っていける演出家さんと一緒にやれるのは嬉しいです。

spi

spi

ーーでは、俳優と演出家を同時にこなす現場ならではの大変さ、楽しさと言うと……。

原田:そうですね、なかなか大変なことではありますけど、でも出るのも好きだし作るのも好きだからこそ、大変でも出来てしまうんだろうなと思ったりはしてます。稽古ではある意味最前線で作品を見られるという感覚もありますね。ただ劇場に入ると一瞬でも多く舞台上を見ていたいので、舞台の上と客席側とって、ものすごく走り回っていますよ。その様子を見ていたプロデューサーの中に、演出として前から見ているところから舞台側に入って演者に変わるときのスイッチが好きだっていう、コアなことを言う人がいるんですよ。「原田さんのあのスイッチが変わるところが好きです」とか言われちゃうと、「ああもうやっぱり演出に専念せずに出続けなきゃいけないじゃん」って。

spi・内藤:(笑)。

ーー挑戦意欲がムクムクと刺激されて。

原田:僕、結構命削りますけどね、このシリーズに関しては。もうやっている間中ずーっと悩んでますもん、本当にずっと。稽古場からの帰り道、悩んでいるうちに最寄りの駅じゃなくてその先の先の駅まで歩いてたってことも何回もあります(笑)。考え事してたら二駅くらい歩くのなんてすぐ。そんな年末年始を……あ、今回はそんな気持ちを三ヶ日まで引きずることになりますね。今は脚本について考えている段階ですが、どのキャラクターもその人生の濃さの持ち分が多いので、そこを押さえつつ主演とどう絡んでいくのがいいか。新選組メンバーもそうですし、出てくる一人ひとりが今何をどのように思い、何を抱えているのかっていう人生を作っている最中。誰かが亡くなったときに、そのキャラクターが、その人が、その人生がバーっとフィードバックできるようなカタルシスが欲しいので。

ーーそしてそのドラマを増幅するのはやはり歌の力。

原田:でもやはり入れどころが難しいです。歌が素敵だからと言ってもやたらめったら入れると「なんで普通の会話を歌うんだろう」とか思っちゃうし……音楽が武器になるか邪魔になるかっていうのは、もう作り手のセンスなので。ミュージカルって難しいですね(笑)。

spi・内藤:(頷く)。

ーーお稽古、そして公演はもう少し先になりますが、本番に向けて今から楽しみにしていること、自分自身でテーマにしていきたいことなどがあればぜひ。

内藤:僕は『恋するブロードウェイ』vol.1(2011年)でスーパーバイザーをされていた岡さんと知り合って、そこからずっとお世話にはなってるんですけど、まだ稽古をしている岡さんとご一緒したことはないんです。もはや悪友だと言うのに(笑)。なのでここでガッツリと一緒にお稽古して、稽古場での岡さんのことも知りたいですし、そこで岡さんに改めて僕の成長も見てもらえることを今から楽しみにしています。

内藤大希

内藤大希

spi:僕は……笑っていたいですね、できれば。

内藤:なにそれ、武士じゃん。

spi:どういうこと?

内藤:んー、志がなんかカッコ良かった。すでに藩主っていう感じ。

原田spi:(笑)。

ーーピースフルな気持ちを大事に、と。

spi:まあそうですね。単純なポジティブだけじゃなくマイナスも含めて愛したいというか、でもやっぱりできるだけ良い風を感じていたいし、稽古も本番も空気は楽しい方がいいよねって思っています。

原田:岡さんと言えば僕も岡さんとミュージカルでしっかり共演するのがだいぶ久しぶりなのでそれもまず楽しみですし、なんか……演出家として岡さんに僕がリクエストできる立場にいられるっていうのもいいですよね(笑)。そこもとても楽しみです。あと岡さんに「実は僕らこういうことをいつも年末にやってたんですよ。どうですか?」って直接提示できることがね、すごく嬉しいんですよ。

ーー若手俳優を中心にバラエティー豊かな座組で重ねてきた挑戦が着実に成長し、実を結び、カンパニー全体、シリーズ全体が大きく骨太な存在となっている“今”を、岡さんのような存在の方にもしっかり目撃してもらえるのは、確かに大きな意義です。

原田:今や、今まで関わってきた人たちが実家に帰ってくるかのよう毎年集まれる場所。みんなそれぞれ1年間どこかしらで活躍していて、なんかまたここに集まって、ヤイヤイやって、またワーッて去っていく、みたいな。もう1年経ったんだね、また会ったね、じゃあまた1年後ね、みたいな感じになってますからね。

原田優一

原田優一

spi・内藤:(頷く)。

ーー観客側もその気持ちは同じ。劇場での再会が楽しみです。

内藤:ですね。前回からリアルタイムで2部のカウントダウンをお客様と一緒に…。。。というイベントも復活できましたし、さらに今年は年明け2日、そして大阪でもと、より長い時間みんなと過ごせることがとっても嬉しいです。ちゃんと身体も大切にしながら、みなさまに素敵な革命の物語を届けられるように、このメンバーで楽しんで稽古したいなと思います。どうぞお楽しみに〜。

spi:ずっと「出たい出たい」と言いながらなかなかスケジュールが合わず、今回やっと久しぶりに参加することができてよかった! 原田さんが関わってる以上はもう超絶とんでもないエンタメになることは間違いないので、本当に楽しみにしていてほしいですね。稽古では僕も大希も他のメンバーもみんなすごい努力もするだろうし、自分もみんなに負けないように、そして、大希とふたりで座長としてカンパニーをしっかり引っ張っていけたらと思います。期待していらっしゃってください。

原田:日本のみなさんが好きな新選組という題材でのオリジナルミュージカルの誕生。「まだこの国も舞台業界も安泰だな」と思ってもらえるような、良い作品にしていきたいです。若い人たちの熱さとカンパニーのエネルギーを集結させ、未来を感じられるような舞台に——「革命」というテーマですけど、どうやらT国劇場あたりでも『革命』しているみたいですが(笑)、「ちょっとこっちのメンバー見てくださいよ。あっちにもいそうでしょ」みたいな、ね。

spi・内藤:(爆笑)。

原田:(笑)。とにかくこっちでも負けないぐらいの「革命」をやりたいと思っておりますので、熱く熱く楽しんでいただければ……と。どうぞよろしくお願いいたします。

(左から)原田優一、spi、内藤大希

(左から)原田優一、spi、内藤大希

取材・文=横澤由香   撮影=荒川潤

公演情報

シンる・ひま オリジナ・る ミュージカ・る
革命『もえ・る剣』

【脚本】土城温美
【演出】原田優一
【音楽】オレノグラフィティ
【主催】る・ひまわり/明治座

【演目】
第一部:オリジナルミュージカル 革命「もえ・る剣」

【キャスト】
松平容保 spi        斎藤一 内藤大希
土方歳三 平野良

坂本龍馬 蒼木陣
沖田総司 前川優希
西郷頼母 加藤将
板垣退助 持田悠生
伊藤甲子太郎 野口準
藤堂平助 広井雄士

山南敬助 伊藤裕一(東京公演)/小早川俊輔(大阪公演)
近藤勇 加藤啓
高木時尾 井深克彦

三条実美 原田優一
孝明天皇 岡幸二郎

徳川慶喜 水夏希

***

語り部 相葉裕樹
 
 
【演目】
第二部:ショー「カイコクしてくだ祭(さい)」
脚本:加藤啓 
2部音楽:楠瀬拓哉 
2部衣裳::EIKI

 
<東京公演>
【日時】2024年12月27日(金)~2025年1月2日(木)
【会場】シアターH
※山南敬助役(Wキャスト)は伊藤裕一
※12月31日カウントダウン公演と1月1日昼公演でセレモニーを行います。
※料金(税込・全席指定):13,500円 (31日カウントダウン公演、1日昼公演のみ14,000円)
 
<大阪公演>
【日時】2025年1月18日(土)、1月19日(日)
【会場】サンケイホールブリーゼ
※山南敬助役(Wキャスト)は小早川俊輔
※料金(税込・全席指定):13,500円
 
一般発売:2024年10月26日(土)10:00

 
「る剣」公式HP
URL https://ru-ken.com/
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