「みんなの居場所をつくりたい」SNSで話題のぺろぺろきゃんでーが見せた、アーティストとしての覚悟
ぺろぺろきゃんでー presents『CANDY SHOWER』2024.11.16(土)
TikTokで数々のメガヒットが生まれる時代、それによって注目を集めた新人アーティストが行うライブにはなるべく足を運ぶようにしている。なぜなら、アーティスト本人のキャラクターが最もリアルに伝わってくる場だから。ある程度の数をこなすと少しずつレールが敷かれてくるし、見せ方としての方向性も定まってくる。TikTok発の子たちはまだそれがない状態だからこそ、時に危うさもあり、とにかく生っぽさが感じられて面白い。
ぺろぺろきゃんでーは昨年「話題のGAL」がTikTokで3.8億回再生を超えるヒットを記録し、様々な流行語やトレンドランキングで取り上げられ注目の的に。動画コンテンツを頻度高く更新しており、プラットフォーム上では若い世代から高い認知度を得ている。昨今はTikTokやYouTube、SoundCloudなどで広く聴かれ、そのままヴァーチャルな存在として音楽活動をスケールさせていく例も多いが、しかしこの二人はそういうわけではないようだ。実はこれで二回目のワンマン公演ということで、ライブに懸ける意気込みがかなり高い。すでにバーチャル・ヒーローである彼らが、そもそもなぜワンマンライブをやるのかーー実は、不思議に思ってもいた。
というわけで、「なぜぺろぺろきゃんでーの二人はライブをやるのか」、そして「一体どんなステージを見せるのか」という二つのテーマを持って足を運んだ今回のライブ。ワンマンには『CANDY SHOWER』というタイトルがつけられており、二人の世界観をシャワーのように浴びる空間を作っていこうというコンセプトが伝わってくる。
会場である代官山SPACE ODDに到着すると、20代のお客さんが中心といったところ。リスナー層としてはさらに若いイメージがあったが、実際にライブに来るのは少し上の年代ということなのだろう。パフォーマンスは時間通りに始まり、「トットちゃん」「わがままマーメイド」「折返鉄拳」「どんまい。」「Typical Girl」「わがままコーデ」と矢継ぎ早にプレイ。
まずは、スタイリングに驚いた。兄のSUNNY-PLAYはカラフルな柄のシャツでいつものぺろぺろきゃんでーらしい衣装だが、妹・Janet真夢叶は真っ赤でスリムなジャケットにストレートのショートボブ、黒リップという出で立ち。クールな印象で、ギャルはギャルでも、等身大のそれではなく皆を引っ張るようなリーダーシップを感じさせるスタイルだ。実際、それは発言にも表れており、MCではトレードマークの低く艶っぽい声で「みんなの居場所をつくりたい」「友達に連れてこられた人たちのギャルマインドも絶対引き出してあげるから任せて」と言っていた。ぐいぐい引っ張る姿は、頼れるギャル姉貴といったところだろうか。
初っ端のMCは長めにとられており、もう一つ大切な発言があった。そこでJanet真夢叶が語っていたのは次のような内容である。
一回目は私たちぺろぺろきゃんでーがみんなの居場所を作りたいと思って、みんなのことをLOLIPOSって呼びます!と宣言したワンマンライブだったんですけど、じゃあ今回は何がしたいのかというと、アーティストとしての覚悟を見せにきました。
なるほど、だからこそDJだけでなくドラムも組んだセットなのかと腑に落ちたのだが、ここからギャルマインドを多く含んだ曲でアーティスト性を見せてくる。まずは「話題のGAL」「話題のGAL〜兄者ージーRemix〜」「TMI」でフロアをロック。ドラムは、バンドサウンドを作り出すというよりは、音源をもっとパワフルに聴かせるために機能していると感じた。それでも二人のボーカルは負けず、特に早口ラップが売りの「TMI」はブレなくパフォーマンスできていて見事だ。もちろん、ヒット曲「色恋沙汰」は大盛り上がりで会場の熱量はピークに。
ここで後半に向けて再びMC。Janet真夢叶が「私、アニメが好きなんですけど、『テニスの王子様』のキャラクターが『バレンタイン・キッス』を歌っていく企画があって、それに参加しよう!」と突然SUNNY-PLAYに提案。「オリジナルを歌ってる国生さゆりさんにぺろぺろきゃんでーとして挨拶に行こうよ」ということで、新企画の予告だったのか単なる思いつきだったのかは分からないが、自由奔放に発言する妹に戸惑う兄という、実にこの兄妹らしい一幕。その流れで披露された「さま☆ばけ」、さらに「3回目の正直なんです」「マリオネット」「バブルガム」ではまた違った顔を見せる。特に「マリオネット」では音源をさらにデフォルメさせた甘く雰囲気のある歌唱で、陶酔感を生み出していた。
本編最後は、珍しくJanet真夢叶がSUNNY-PLAYに曲フリをお任せ。「辛いことだの寂しいことだのあったとしても、ここに仲間がいると思って聴いてください、ロリポップ!」というフリで「ロリポップ」へ。どことなく後ろ髪をひかれるような空気の中で披露された人気曲。<スウィートメロディーと淡いビート/揺らすカラダ/今宵Brand new groovy party>という歌詞にぴったりのムードでみんなが身体を揺らす。
アンコールでは「もう一回最初から始めたいと思います!それではトットちゃんを……」という台詞とともに笑いをとりつつ、新曲の「SH♡TGUN」へ。ぺろぺろきゃんでーらしいメロウな曲で、珍しくJanet真夢叶が高音を聴かせるパートも。最後は、スタバの店員との心あたたまるやり取りから着想を得た曲「SHARE SHOW」でフィニッシュした。
冒頭で書いた「なぜぺろぺろきゃんでーの二人はライブをやるのか」「一体どんなステージを見せるのか」という二つのテーマについては、十分な答えが得られたと思う。MCでは「アーティストとしての覚悟」と発言していたが、それは、「私たちがファンの子たちを引っ張っていくんだ、そのために温かい居場所を作ってあげるんだ」という心意気として伝わってきた。音源で聴くよりも、ドラム&DJと生の歌によってメッセージがより強く届いたし、愛あふれるMCでハートウォーミングな空間になっていた。
ぺろぺろきゃんでーは、ファンを引っ張っていくようなその優しさにあふれたマインドによって、恐らく今後ますます皆の心の拠り所として存在感を増していくのだろう。手の届かないカリスマではなく、皆が親近感を感じる頼れるリーダー。温かい<CANDY SHOWER>は、これからの二人が進む道をありありと想像させてくれるワンマンライブだった。
取材・文=つやちゃん 写真=オフィシャル提供(撮影:Koya Yaeshiro)
イベント情報
11月16日(土) 東京・代官山 SPACE ODD