Takassy×石川湖太朗、“ローリ”の「求心力」「人を巻き込むエナジー」への挑戦~NELKE WEST PROJECT vol.2 舞台『ペパロニ・ヴァンパイア』インタビュー

インタビュー
舞台
アニメ/ゲーム
12:00
(左から)Takassy、石川湖太朗

(左から)Takassy、石川湖太朗

画像を全て表示(8件)


NELKE WEST PROJECT vol.2 舞台『ペパロニ・ヴァンパイア』が2026年7~8月、大阪と東京で上演される。原作は、須田翔子による同名漫画。大都会のショークラブの人気No.1ドラァグクイーン“ローリ”が母の訃報を機に故郷で新しい“家族”を作っていく物語だ。主演のTakassyと演出を務める石川湖太朗(サルメカンパニー)の対談からは、本作で起こる“化学反応”の予感がひしひしと感じられた。

ーー初タッグとのこと、お互いの第一印象をお聞かせください。

Takassy:これほどしっかりとお話しするのは、じつは今日がほぼ初めてなんです。

石川:先日、僕が主宰する劇団サルメカンパニーが上演した舞台『水の間の子供たち』を観に来てくださったんですよね。

Takassy:そのときは、少しだけ感想をお伝えできたくらいで。作品を観劇させていただいて、衝撃を受けました。なんてマイナーな題材を扱っているんだろうというのと、なのにどうしてこんなにわかりやすく作れるんだろうと。私自身も、音楽の分野で演出をやっているので、つい細かいところまで見てしまって。大道具の移動や出ハケまでもが演出に組み込まれていて……まるで飛び出す絵本を読んでいるような感覚でした。悲しいお話だったのに、見終わった後に「いいもの見たわ」って多幸感でいっぱいだったんです。だから自分が演出を受けるのも、ご一緒に仕事ができるのもすごく楽しみになりました。

石川:ありがとうございます。僕はそこでお会いした時に、すごく品のある方だなっていう印象がまずありましたね。

Takassy:ふふ、そう作ってたんですよ。よかったわ!

石川:(笑)。でも今日改めてお会いしてみると、すごく正直な方だなと。話している内容に嘘がなくて、物事に対して真摯に取り組んでいるのが伝わってくる。演出家は人を見る職業でもあって、たとえばオーディションなどでは15~20分前後で相手がどういう人間か理解しなくてはいけない。そんな僕から見て、現段階ではそういう風に見えている。なので今は早く一緒に稽古がしたいという気持ちでいっぱいです。

(左から)Takassy、石川湖太朗

(左から)Takassy、石川湖太朗

ーーTakassyさんは初舞台だそうですが、本作への参加を決めた経緯をお聞かせください。

Takassy:お芝居の経験も、ほぼないといっていいくらいなんです。初めてこのお話を伺ったのは今年2月、私が所属しているENVii GABRIELLAのコンサートが終わった翌日くらいだったと思います。うちの事務所の社長から連絡が来ていたんです。「おはようございます。昨日はお疲れさまでした」に続けて、「こういうお仕事が来ているので、絶対に断らないでください」と書かれていて。読みながら「脅迫だわ……!」と(笑)。

石川:(笑)。

Takassy:「これはあなたにとってチャンスです」ともありました。普通に伝えたら、私が断ると思ったんでしょうね。というのも、私が「ミュージカルだけはなるべくやりたくないです」ってずっと言っていたんです。嫌いというわけじゃなくて、自分には向いていないと思っていて。私がやっている歌とは真逆だという印象でした。歌は、歌詞も曲も自分にあるものを出していくもの。それに対して、演技は自分を消してなりきる作業だと思っていたんです。でも、ネルケさんや湖太朗さんのお話を聞いているうちに、認識が変わりました。

石川:僕が思っている演劇は、役になりきるというよりは、人間が持っているにおいや色といった、その人の人間力のようなものが絶対に薫ってくるもの。魅力的な人が役を演じるからこそ意味があるし、その化学反応を楽しむものだと思っています。Takassyさんの色を残したまま、ローリになっていく過程をやっていけたらいいなと思っているんです。

Takassy:ネルケさんからも「この作品をずっとやりたかったんです」「ぜひ一緒にやりましょう」と言っていただけて……ストンと腑に落ちたんです。なんで私にお声がけいただいたのかっていうことも含めて、作品に対する想いに共感できた。演技をすることに対して今もまったく不安がなくなったというわけではないんですけど、ずっとそう思っているのは皆さんに失礼なので。「私はやりきる!」というのが今の心境です。

Takassy

Takassy

ーーちなみに、鑑賞側としてのお芝居についてはいかがでしょうか? もし好きな俳優や作品、ジャンルなどがあれば教えてください。

Takassy:特に映画全般がすごく好きです。好きな俳優の一人が、ウーピー・ゴールドバーグ。コメディのイメージもありつつ、すごくシリアスな題材も演じていますよね。作品としては『エリン・ブロコビッチ』。ドキュメンタリータッチなんですが、何回も見ました。『CUBE』や『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』のような「結果、なんだったの!?」という終わり方がよくわからない映画も割と好きです。

ーー石川さんは、本作のお話があった際はどのようなお気持ちでしたか?

石川:普段は小劇場で演出をしている僕に、このようなお話をいただけたのがまずうれしかったです。今年で31歳、これからどんどん外部の作品も演出していきたいと思っていたところなので。僕はもともと、差別をテーマにした作品に興味があって。『ペパロニ・ヴァンパイア』はマイノリティのお話。センシティブな内容も扱っていて、それをドラァグのショーとして、エンタメ作品に昇華している。コメディとエンタメ、シリアスの部分がいい塩梅で混ざる作品だなと漫画を読んだときに感動しました。すごく面白い作品だと。これを僕が演出できる、ローリをTakassyさんにやっていただけるということもチャレンジングで楽しい作品になるんだろうなと感じました。どういう風にお客さんに届けるかを今も常に考えています。

ーー現時点での構想は?

石川:まだ漠然としたイメージなんですが……ドラァグクイーンのショーがあって、そこに物語が組み込まれていくような。お客さんが一緒に盛り上がる場面もあれば、ドラマチックに見入る場面もあり。90年代の洋画の雰囲気ですね。両極端な演出をあえてやっても成立できる、非常に強度のある作品だと思っています。

石川湖太朗

石川湖太朗

ーー本作のストーリーやキャラクターへの印象をお聞かせください。

Takassy:ローリは、過去に対しての復讐心みたいなものを自分のパフォーマンスにぶつけている側面があって。それって、私が歌を始めたきっかけと通じているところがすごくあるんです。私はゲイだからといっていじめられた経験はないんですけど、やっぱりコミュニティに馴染めない違和感や疎外感というものはありました。そこに対して、「いつか見返してやる」って気持ちがやっぱりあって……なので、ローリのパフォーマンスに対する行動原理は共感できました。

ーー主人公であるローリと演じるTakassyさんとの親和性についてはいかがでしょうか?

石川:ネルケさんとお話ししたときも「もうローリはTakassyさんしかいない」といろんな方が言っていて。それは僕も、こうしてお話していくごとにすごく感じていますね。

Takassy:ありがたいです、本当に……。

石川:決まってから改めて漫画を読んでみると、ローリの言葉が脳内で勝手にTakassyさんの声で再生されている。ある種いちファンとして、ローリの衣裳を着て、ローリとしてパフォーマンスするTakassyさんを見てみたいんですよ。

Takassy:私自身がローリに共感しているところは、怒りが原動力になっているあの気迫と、見えないところに愛の深さがあるところ。あと、私もグループでママって呼ばれているところも似ていますね。そうそう、私もすごい面倒見ていた子にスパッと裏切られることが結構あって。最初の数ページからもう「わかる~!」状態でした。その時点からもう、ローリには愛着があって。読み進めているうちに、どんどんローリをやってみたいという想いが強くなっていきました。

(左から)Takassy、石川湖太朗

(左から)Takassy、石川湖太朗

ーー舞台化にあたって、特に押し出したいポイントは?

石川:これは原作者の須田翔子さんとお会いした際にもお話したことでもあるのですが、特にローリの求心力ですね。ローリと出会うことで他のキャラクターたちが成長していくところに僕はものすごく感動したので、やっぱりそこを大切にしたい。いろんなキャラクターにフォーカスを当ててちゃんと描いていくことはもちろん、今回はやっぱりローリがかなり中心になってくる。全部を引っ張っているのはローリである、という作り方になるのかなと。

Takassy:難しいですよね。ローリは世話焼きというよりも、どちらかといえばツンデレに近い。気持ちの中では心配しているけど、ダイレクトにイコールで表現しないから。言葉にも態度にも出していないし、自分が動くことで見せる。何かきっかけを明確に見せるのが難しそうだなって。本人にはその気がないのに勝手に周りが動き出すことが多いから。

石川:そう。まさに求心力なんですよ。

Takassy:それぐらい、人を巻き込むエナジーがないと成り立たないんだろうな……。

ーーこの取材時点では稽古開始前。今のうちに、お互いに何か尋ねてみたいことはありますか?

Takassy:好きな食べ物はなんですか?

石川:僕はウナギですね。静岡の浜松出身ということもあって。

Takassy:じゃあ、ウナギが好きなら牡蠣とかも好きですか?

石川:好きですね。

Takassy:もう一つ。普段、どんな音楽聞かれているんですか?

石川:ビートルズが昔から好きで。オアシスとか。

Takassy:じゃあUKのほうだ。U2、ミューズとかも?

石川:そうです。なんだろう、占いされてる(笑)?

Takassy:はい、だいたいわかりました(笑)。でも、今の段階ではまだこういうところから知っていきたいんです。舞台を作るにあたっては、ビジネスライクから始めるよりもパーソナルなほうから理解を進めていくほうが良い気がしていて。

Takassy

Takassy

石川:僕もです。この質問、取材のなかで一番どう答えようか迷ったんですが(笑)、やっぱりまだお仕事じゃないところの話をたくさんしていきたいなと。ちなみに僕も、好きなお酒を聞いてみようと思っていました(笑)。

Takassy:ほぼ飲まないですけど、だいたい焼酎です。飲むときはずーっとお茶割りで。

石川:おお! 僕も焼酎が一番好きですよ。

Takassy:でもね、悲しいお知らせがあって。私、ウナギが食べられません……。ひつまぶしならいけるんですけど。

石川:それは悲しい……。

Takassy:私は大好きなのは野菜ですね! 唐揚げとか、安く食べられるものが好きなんです……この話、まだ続けちゃって大丈夫ですか?

ーー(笑)。ちなみに、石川さんはどのような稽古をされるのでしょうか?

石川:僕の稽古は……いつも自分の劇団でやっている作品の場合でいうと、比較的長くやってしまうタイプかもしれませんね。とはいえ、決められた時間でやるというのも演出家の仕事なので、今回は違ってくるかなと。

Takassy:時間をかけてくださるってことですよね? 私、メンバーが嫌がっていてもリハを入れちゃうくらい “リハマニア”なんです。演劇のリハーサルってどんなことをやるんでしょうか?

石川:僕の場合は、シーンを作っていくときに、役者さんと話す時間が結構多いと思います。「どう演じてみたいですか?」「台本を読んでどう思いましたか?」というお話はもちろん、「演技はいつ頃から始めましたか?」みたいな関係ない話をすることもあります。あとは体を使うシーンを作るのが好きなので、今日は動きだけをがっつりやりましょうという日を作ることもありますね。今回は全体の稽古が始まる前に、事前にTakassyさんとプレ稽古としてワークショップもやってみたいとも考えています。

石川湖太朗

石川湖太朗

Takassy:ありがとうございます。ワークショップって何をするんですか?

石川:これは本当に演出家によってさまざまですね。僕の場合は、シアターゲームをやります。よくやるのは、6人くらいで縦一列に並んでもらって、一番後ろの人にだけ「名前を呼ばずに、〇番目にいる人にだけ呼び掛けてみてください」と明確な指示を伝える。他の5人は、呼ばれたのは自分かそうじゃないかを判断してもらうんです。

Takassy:それをやることによって、どんな効果が?

石川:これは相手にしっかり矢印が届くかどうか、距離感を掴むためですね。呼びかける側の人は、目線や動作を使わなくても自分が定めた相手にセリフを届けられているかどうか、他の人たちはそれをきちんと受け取ることができるか。

Takassy:なるほど。演劇の現場が本当に初めてなので、まだわからないことだらけなんです。すごく勉強になります……!

ーー最後に、本作への意気込みと読者の方へメッセージをお願いします。

石川:演出に僕を、そして主演にTakassyさんを呼んでくださったということは、おそらく「攻めていいぞ!」ということだと理解しています。ですので、おそらく初めてのことが多くなるはず。この化学反応を、お客さんと一緒になって共有したいです。ハードルが高い、簡単にはいかないテーマを扱った作品です。全員で、真摯に取り組んでいきます。

Takassy:原作は社会性もあり、トレンドの話題も詰まっている異色な漫画。エンターテインメントがちゃんと主軸にあった上での、社会性やメッセージ性が肉付けされている作品をお届けできたら。湖太朗さんがおっしゃる通り、私も何か新しいものができる予感でいっぱいです。決して押し付けではない、エンターテインメントとして伝えられたらと思っています。

(左から)Takassy、石川湖太朗

(左から)Takassy、石川湖太朗

取材・文=潮田茗    撮影=荒川潤

公演情報

NELKE WEST PROJECT vol.2
舞台『ペパロニ・ヴァンパイア』
 
■日程・会場
【大阪公演】2026年7月31日(金)~8月9日(日)ABCホール
【東京公演】2026年8月14日(金)~23日(日) CBGKシブゲキ!!
 
■原作 須田翔子 『ペパロニ・ヴァンパイア』(マンガボックス刊)
■脚本 鈴木哲也
■演出 石川湖太朗(サルメカンパニー)
 
■出演
ローリ:Takassy(ENVii GABRIELLA)
ペパロニ:日暮誠志朗
マッシュ:広井雄士
ダニエル:濱谷晃年
シシー:ぬまたぬまこ
ジョイ:松谷 嵐
コリンズJr.:内海太一
ジョージ:中井善朗
ほか
 
■協力 一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会
■主催 ネルケプランニング

料金
大阪公演 平日料金 7,000円
全席指定・税込 土日料金 7,500円
東京公演 平日料金 8,000円
土日料金 8,500円
 
※未就学児入場不可

■公演に関するお問合せ ネルケプランニング https://www.nelke.co.jp/contact/
 
【公演公式サイト】https://www.nelke.co.jp/stage/nelkewestproject_vol2/
【公演公式X】https://x.com/nelkewest
【公演公式Instagram】https://www.instagram.com/nelkewestproject
【公演ハッシュタグ】#ネルケWEST #舞台ペパロニヴァンパイア
(C)須田翔子/マンガボックス・Nelke Planning co.,ltd.
シェア / 保存先を選択