金森穣&近藤良平が語る、Noism0 / Noism1「円環」で魅せる21年目の新展開~全国4都市をツアー
-
ポスト -
シェア - 送る
■いま、なぜ「円環」なのか
――Noism20周年を迎え、21年目に入った現在、「円環」と題された公演をやる意味とは?
金森 「円環」というのは、佐和子も言っていますが「円が閉じるというよりも、複数の円が同時に発生して、円と円の重なるところが幾つもできている」みたいな意味です。だから、アイチと賢が帰ってきて完結ではなくて、彼らが過ごしてきた円が我々の円に重なって、新しい接点が生まれている。メンバーがNoismを去っていくのはこの20年間延々と繰り返されてきたことで、その繰り返し自体も円のようであるわけだけれども、今回は一晩の公演のなかで去っていったメンバーたちが戻ってくる。めぐりめぐって前に進んでいく。良平さんが戻ってきてくださることもそう。いろいろな意味で豊かさ・時間の流れを感じられるプログラムになりそうです。
近藤 「円環」の話を聞いて、山手線に乗っていて気が付いたら1周していたみたいなことを思い浮かべました。コンドルズに置き換えれば、真っすぐの道を進んでいて、しかも乗ったら最後、降りないぞみたいな(笑)。途中で若いメンバーも乗ってくるみたいな。Noismにとって、新潟という場所は大きく、そこで培っているものは非常に影響しているのではないかと感じます。日本のダンスの歴史・流れとしてNoismの存在は重要だと思います。
――お二方からみて、井関芸術監督の仕事ぶりはいかがですか?
金森 佐和子には国際活動部門芸術監督としてプログラミングに始まりオーディションで誰を採るとか来季の契約をどうするかも一任しています。メンバーにとって何か不安があったり、心配があったら、佐和子に直接話しに行けばいい。これは誰に聞いても皆が確実に同意すると思うけど、俺に聞きに来るよりも佐和子の方が楽じゃない?(笑)そういう意味で、皆落ち着いてコミュニケーションを取れている。佐和子は物事を一歩引いて俯瞰で見ることができるので、芸術監督に向いている。良平さんの前にゲスト振付家として来ていただいた二見一幸さんもやりやすそうでした。この体制でよかったです。
近藤 佐和子さんのことは以前から知っていますが、言うべきことは言う人だからやりやすいですよ。僕は好きです。
――近藤さんは今回はコンドルズの近藤良平としてではなく、振付家・近藤良平として外部の集団と向き合って創作されています。そういう場合、普段と違い何か意識することはありますか?
近藤 コンドルズに関しては、自分も参加することもあって変えられないというか、そういう流れがあります。コンドルズ以外に振付をするときの相手方はユニットであったり、個人であったりいろいろなパターンがあるけれど、カンパニーに対してというのはあまりない。作品のためにダンサーを集めるのではなく、カンパニーに振付をする機会はなかなか無い。小さな世界だけど、影響を与えあっていくべきだと思います。
金森 自分はヨーロッパにいた頃からカンパニーに振付をしてきたし、最近は東京バレエ団(『かぐや姫』2023年10月全幕初演)とか牧阿佐美バレヱ団(『Tryptique~1人の青年の成長、その記憶、そして夢』2025年3月の「ダンス・ヴァンドゥⅢ」で初演予定)に振付をしています。逆にプロジェクトベースの機会が少ないですね。長い間、新潟のことだけに集中していたかったけれど、Noism1を佐和子に、Noism2を勇気に任せたとき、もう一度一人のアーティストとして、演出振付家として、自らの可能性ってなんだろうということを探求したくなりました。
■日本のダンスの未来に向けて
――近藤さんが2022年4月から彩の国さいたま芸術劇場芸術監督に就任しました。りゅーとぴあ専属舞踊団であるNoismを率いてきた金森さんと位置付けは異なりますが、公立劇場に深く関わっておられます。彩の国さいたま芸術劇場は、現在ダンスを中心としたクリエーション、海外招聘事業、教育的プログラムなどを行い、社会貢献を打ち出し、新しく生まれ変わりつつあるのではないかと感じます。この2年半を経ての実感は?
近藤 2022年から始めてしばらくして劇場が改修に入り、再オープンしたのは今年の3月です。なので、実質的な活動はまだ浅いんですよね。今言っていただいたような社会貢献や招聘事業に関しても、やっとつながりが見えてきたくらいの感じです。これから時間をかけてやっていきたい。イベント的にやっても、それで終わってしまうので。
――金森さんは、この20年間、各地にNoismに続く劇場専属舞踊団が生まれることを熱望されてきました。それとは違いますが、近藤さんが彩の国さいたま芸術劇場芸術監督というポジションに就かれたことに対して思うことは?
金森 舞踊をどう社会化していくかという方法論は違いますが、良平さんは何をしていくのだろうかと注目しています。自分は20年やってきて、物事を変えるのがどれだけ大変で、どれだけ時間がかかるかというのを体験してきました。だから良平さんがおっしゃったように、本当にこれからなんだろうなと。がんばってほしいです。
――舞台業界もコロナ禍、世界各地の戦争、円安などの影響が押し寄せています。1つの劇場、1つの団体ではやれることに限りがあったりするかもしれません。その点、今回はりゅーとぴあのほか、彩の国さいたま芸術劇場、J:COM北九州芸術劇場、滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールを巡演します。そうしたネットワークの連携についてどうお考えですか?
近藤 やるべきです。公共劇場だけでなくてもいいのですが、連携していきたい。日本中で舞踊の力を見せていきたいです。
金森 良平さんが芸術監督になられる前から彩の国さいたま芸術劇場で定期的に公演をしてきましたが、より埼玉でやることの価値が増した気がします。今回のように各地の劇場が主催してくださるのはありがたい。こうした機会が増えていけば、国内の状況は豊かになります。
――最後に「円環」に向けての期する思いをお聞かせください。
近藤 トリプル・ビルというのが重要だと思うんです。それぞれの役割や色がある気がします。そこは自分も背負いたい。3作品に触れて「円環」を感じていただきたいです。
金森 先の20周年記念公演「Amomentof」では、金森穣=Noismとしての20年を記念するような作品を上演しましたが、同じシーズンに良平さんをお招きしてトリプル・ビルを展開する。そのことによって、Noismという集団の企画力というか、多様性を皆さんに感じ取ってもらえるのではないでしょうか。カンパニー一同、全力を尽くします。
取材=高橋森彦 撮影=遠藤龍(Ryu Endo)
公演情報
福岡公演 2024年12月22日(日)J:COM北九州芸術劇場〈中劇場〉
滋賀公演 2025年2月1日(土)滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール〈中ホール〉
埼玉公演 2025年2月7日(金)~9日(日)彩の国さいたま芸術劇場〈大ホール〉
共同製作:りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館・彩の国さいたま芸術劇場
りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 × 北九州芸術劇場 × 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 連携プログラム
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会、一般財団法人地域創造(新潟公演) [この事業は新潟市からの補助金の交付を受けて実施しています]
演出振付:金森穣
音楽:トン・タッ・アン
映像:遠藤龍
衣裳:鷲尾華子
出演:Noism0=井関佐和子、山田勇気
ゲスト=宮河愛一郎、中川賢
演出振付:近藤良平
衣裳:アトリエ88%
音楽:内橋和久《Singing Daxophone》
出演:Noism1=三好綾音、中尾洸太、庄島さくら、
庄島すみれ、坪田光、樋浦瞳、糸川祐希、
太田菜月、兼述育見、松永樹志(準メンバー)
初演:2021.8.13
TOKYO MET SaLaD MUSIC FESTIVAL 2021 [サラダ音楽祭]
演出振付:金森穣
音楽:John Adams《The Chairman Dances》