中川晃教&加藤和樹が魅せる、さらなる進化を遂げたミュージカル『フランケンシュタイン』ゲネプロレポート

レポート
舞台
2025.4.11

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ゴシックロマンの名著『フランケンシュタイン』を大胆なストーリー解釈で描き、流麗かつメロディアスな音楽をのせた韓国発のミュージカル『フランケンシュタイン』。日本でも2017年の日本初演、2020年の再演ともに熱狂的な支持を持って迎えられた人気作品の5年ぶりの再演が、2025年4月10日(木)より開幕した。

中川晃教/小林亮太(Wキャスト)、加藤和樹/島太星(Wキャスト)、花乃まりあ鈴木壮麻松村雄基朝夏まなとといった実力派が揃って作り上げる2025年版『フランケンシュタイン』。初日を前に行われた、中川晃教&加藤和樹ペアによるゲネプロの様子をレポートする。

<STORY>
19世紀ヨーロッパ。戦時中にビクター・フランケンシュタイン(中川晃教)に命を救われたアンリ・デュプレ(加藤和樹)は、“生命創造”を夢みるビクターの研究を手伝うようになる。同じ夢を追いかけ、固い友情で結ばれた二人。
戦争が終わってからもビクターの地元で研究を続けていた二人は、ある殺人事件に巻き込まれる。
ビクターを救うために無実の罪で命を落としたアンリを生き返らせようとするビクター。しかし、誕生したのはアンリの記憶を失い、獣のように振る舞う“怪物”だった。失敗を悟り、“怪物”を処分しようと決意するビクター。一方“怪物”は自らの境遇を恨み、ビクターに復讐を誓うのだった――。

 

初演から参加している中川と加藤は、抜群の安定感によってミュージカル『フランケンシュタイン』のダークでゴシックな世界を作り上げる。

戦地において敵兵を治療しようとしたことを咎められて処刑されそうになっていたアンリがビクターに助けられ、“生命創造”という夢に魅了されていく様子、二人が唯一無二のパートナーになっていく過程が丁寧に描かれ、後の展開がより悲劇的に感じられた。

中川が演じるビクターは、人付き合いが苦手で不遜な中に少年のようなピュアさが垣間見える青年。執事のルンゲ(鈴木壮麻)の前では子供っぽい一面を見せたり、婚約者・ジュリア(花乃まりあ)が不幸にならないか心配したりと、人間らしい情や弱さも伝わってくる。

そんなビクターの理解者であり親友でもあるアンリを演じる加藤は、穏やかで包容力がありながら常に影を感じさせる佇まいが印象的だ。

ビクターとアンリ、ルンゲのユーモラスなやりとり、一途にビクターを思うジュリアの愛情は、シリアスな展開が続く本作の清涼剤と言えるだろう。


一方、姉のエレン(朝夏まなと)がフランケンシュタイン一族にまつわる“呪い”を語る「孤独な少年の物語」では、弟を愛しながらもその闇を不安に思う複雑な心情、ジュリアの父・ステファン(松村雄基)がビクターの思想を危険視する様子なども描かれる。朝夏は包み込むような声で、親心のような深い愛情を歌いあげた。

そして、一幕後半、死を前にアンリが語りかけるように歌う「君の夢の中で」は、加藤の慈愛に満ちた表情と力強い歌声が胸を打つ。そんなアンリを生き返らせると決めたビクターが歌うのは、本作を代表するナンバーの一つである「偉大な生命創造の歴史が始まる」。悲しみや怒り、情熱、野望など、さまざまな感情が混じり合い、神がかっていると感じるほどの凄みに圧倒された。

また、メインキャストが全くキャラクターの異なる二役を演じ分けるのがこの作品の大きな見どころ。怪物の回想として語られる闘技場のシーンでは、中川が闘技場のオーナー・ジャック、朝夏はその妻で闘技場の女主人・エヴァ、花乃は闘技場の下女・カトリーヌ、鈴木はピエロのような出立ちの闘技場の召使・イゴール、松村は闘技場に出入りする守銭奴・フェルナンドを演じる。

エヴァがダンサーを引き連れ、下品で派手で血生臭い闘技場の魅力を歌い踊るパフォーマンス、サディスティックな悪党であるジャックによるジャジーなナンバー、人間に虐げられて生きてきたカトリーヌと怪物が心を通わせる様子とロマンティックな歌詞が美しい「そこには…」、カトリーヌが苦しみと痛みの中で叫ぶように歌う「生きるということは」など、キャスト陣の表現や歌唱の多彩さを楽しむことができる。特に、一幕では一途で健気なジュリアを演じていた花乃がカトリーヌを通して見せる力強さ、泥臭さは圧巻だ。

そして、加藤は無知な赤ん坊のようだった“怪物”が多くの苦しみを味わい、言葉を覚え、創造主であるビクターに復讐を誓うまでの流れをドラマティックに魅せた。カトリーヌとの交流で怪物が本来持っている素直さや愛嬌がしっかり見えるため、生まれてすぐに捨てられた戸惑いや恨み、愛されたいと願う心を歌う「俺は怪物」や、美しいメロディに乗せて自らの境遇を歌う「傷」の重みや深みも増している。

対する中川は、怪物の復讐に怯えながらも尚科学者としての自分を捨てきれなかったビクターの狂気と後悔を見事に表現。ビクター・フランケンシュタインという人物の人となり、思想を描き切った上で、ラストに向かうドラマも繊細に見せてくれた。

初日前の囲み取材では、加藤が「原点回帰で挑んだ」と語っていた今回。改めて作品やキャラクターに向き合った続投キャストと新参加のキャストによる化学反応によってどんな『フランケンシュタイン』に出会えるかを楽しみに、ぜひ劇場に足を運んでほしい。

本作は2025年4月10日(木)、東京建物Brillia HALLで開幕。2025年5月5日(月)・6日(火)には愛知県芸術劇場大ホール、5月10日(土)・11日(日)には茨城県・水戸市民会館 グロービスホール、5月17日(土)〜21日(水)は兵庫県・神戸国際会館 こくさいホールでも公演が行われる。

取材・文・撮影=吉田沙奈

公演情報

ミュージカル『フランケンシュタイン』
 
<キャスト>
ビクター・フランケンシュタイン/ジャック(Wキャスト):中川晃教/小林亮太
アンリ・デュプレ/怪物(Wキャスト):加藤和樹/島 太星
ジュリア/カトリーヌ:花乃まりあ
ルンゲ/イゴール:鈴木壮麻
ステファン/フェルナンド:松村雄基
エレン/エヴァ:朝夏まなと
 
笠原竜司 栗山絵美 石川新太
松村曜生 三木麻衣子 齋藤桐人 宇部洋之 山田裕美子
宮野怜雄奈 半澤 昇 荒木啓佑 りんたろう 伊宮理恵
吉田萌美 松田未莉亜 江見ひかる
杉山真梨佳 荒川湧太 田中真由

SWING
高木裕和 大川 永

リトル・ビクター 鈴木琉音 下永龍正
リトル・ジュリア 森田みなも 杉山穂乃果
 
【クリエイティブ&スタッフ】
音楽:ブランドン・リー
脚本/歌詞:ワン・ヨンボム

潤色/演出:板垣恭一
訳詞:森 雪之丞
音楽監督:島 健
音楽監督・歌唱指導:福井小百合
振付:黒田育世 当銀大輔
美術:乘峯雅寛
照明:高見和義
音響:佐藤日出夫
衣裳:十川ヒロコ
ヘアメイク:宮内宏明
擬闘:渥美 博
音楽監督補/歌唱指導:福井小百合
指揮:田邉賀一
稽古ピアノ:八木淳太 森 俊雄 久野飛鳥
オーケストラ・コーディネイト:東宝ミュージック
振付助手:政岡由衣子
演出助手:髙野 玲
舞台監督:松井啓悟
制作:荒川ちはる
プロデューサー:塚田淳一(東宝)/住田絵里紗(ホリプロ)
 
オリジナルプロダクション:ワン・ヨンボムプロダクション
製作:東宝/ホリプロ

【公演スケジュール】
【東京公演】 2025年4月10日(木)~4月30日(水)東京建物 Brillia HALL
【愛知公演】 2025年5月5日(月)~5月6日(火) 愛知県芸術劇場 大ホール
【茨城公演】 2025年5月10日(土)~5月11日(日) 水戸市民会館 グロービスホール
【兵庫公演】 2025年5月17日(土)~5月21日(水) 神戸国際会館 こくさいホール
公式X(旧Twitter)= https://x.com/musical_franken
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