鄭義信(作・演出)、千葉哲也らキャスト陣が登壇し『焼肉ドラゴン』への熱い思いをコメント 制作発表会見レポートが公開
『焼肉ドラゴン』制作発表会見より
2025年に日韓国交正常化60周年を迎えることを記念し、10月より日韓合同公演『焼肉ドラゴン』を新国立劇場 小劇場ほかにて上演される(12月には新国立劇場 中劇場にてツアーファイナルも上演)。
1970年前後、高度経済成長と大阪万博に沸く関西の地方都市。そこで慎ましくも懸命に生きる在日コリアン一家と、彼らが営む焼肉店「焼肉ドラゴン」に集う人々の人間模様を、生き生きと描き出した『焼肉ドラゴン』。
この度、制作発表会見のレポートが届いたので紹介する。
制作発表レポート
日韓国交正常化60周年の記念公演であり、鄭義信の代表作にして国境を越えて広く愛され続けている名作『焼肉ドラゴン』が9年ぶりに4度目の上演を果たす。いよいよ本格的な立ち稽古も始まった、その翌日にあたる8/29(焼肉の日!)に新国立劇場中劇場にて制作発表会見が行われた。その模様をレポートする。今回はマスコミの記者やカメラマン等だけではなく、抽選に当選した今作に興味津々の一般のお客様約150名も共に観客席に座り、会見に参加。初演・再演に出演していたオリジナルキャストや再再演から引き続き出演するキャストに加え、初参加のフレッシュな面々も含めた新たな顔ぶれに、鄭を加えた登壇者たちが発する熱のあるコメントに聞き入った。
各自の主なコメントは以下の通り。
鄭義信
鄭義信
「初演時にはまさか4回も上演することになるとは思っていませんでした。みなさまの後押しのおかげでこうして4度目の公演が叶い、本当に嬉しく思います。今回は、こうして初演のメンバーも帰ってきてくれたのでもう一度初心に戻って、新たな『焼肉ドラゴン』を作りたいと思っています。
また、この『焼肉ドラゴン』はオーストラリアやアメリカでもリーディング作品として上演されたことがありまして。その時に僕が驚いたのは「これは移民の話ですね」と言われたことでした。確かに、いまや世界中どこでも戦争などで国を離れなければならない人々が大勢います。そんな時代に改めてこの『焼肉ドラゴン』という作品を観ていただくことで「それでもやはり人は生きていかなければならないんだ」というメッセージ、そして希望を感じてもらえたら嬉しいです」
千葉哲也
千葉哲也
「初演、再演以来なので、14年ぶりに出演させていただきます。哲男も何歳になったんだかわかりませんが(笑)、ともかくみなさんの足を引っ張らないように今回も頑張りたいと思っています。振り返ると以前もそうでしたが、日韓合同公演ということで日本人キャスト用の台本と韓国人キャスト用の台本の厚さが全然違うんですよ。というのも、韓国人キャストの台本はハングルと日本語と、両方のセリフが書いてあるんです。俺は東京出身なので大阪弁のセリフがとても難しいのですが、それでもなんとかなるだろうとやっていますけど、韓国人キャストのみなさんは日本語をまるまる覚えなきゃいけないわけですからね。これは本当に大変なことですし、心から敬意を表します」
村川絵梨
村川絵梨
「『焼肉ドラゴン』は伝説的な作品だという噂は以前から耳にしていましたが、私が観られたのは2016年バージョンでした。でもまさかまた上演していただけるとは、そして私を一員に加えていただけるとは、と本当に本当に嬉しかったです。しかも、こうして初演のレジェンドの方々もカムバックされるなんて、とても光栄ですし身が引き締まる思いです。昨日は立ち稽古の初日だったのですが既にあの舞台装置も建て込まれていて、初参加チームとしてはちょっと震える気持ちになりました。初日からとんでもない熱量の稽古でしたが、負けずに挑んでいきたいと思っています。どうぞ楽しみにしていてください」
智順
智順
「初めて出演のお話をいただいた時は、すぐに信じられなくて「絶対に嘘や」と思いました(笑)。もちろんすごく嬉しい気持ちもあったんですけれど、それを上回るくらい「ホントに?」という疑いの気持ちが大きくて。でも、いざ稽古が始まったらそんなことをウダウダ言っている暇もないくらい、みなさんのエネルギーが凄すぎて、とにかく今は一生懸命食らいついていこうと、そんな思いでいます。頑張ります!」
櫻井章喜
櫻井章喜
「9年前に『焼肉ドラゴン』に出た時は大量の涙と汗をだらだらと流し、大きな声で騒いで歌って踊っていたのでとにかく大変でした。「疲れたな~」という思い出が頭に真っ先に浮かびます(笑)。あの時のメンバーも大好きでしたが、今回のメンバーもみなさん本当に魅力的で。今回は鄭さんを始めとするこの大きな家族が、どんなチームに育っていくのかが今から楽しみで仕方ありません。この日韓の素晴らしい俳優さんたち、スタッフさんたちで、のちのちまで語り継がれる舞台を作っていきます」
朴勝哲
朴勝哲
「『焼肉ドラゴン』には三度の上演と、映画版も含めて皆勤賞なんですが、記者会見に出るのは今日が初めてです(笑)。僕はお店の中にずっと居続けている常連客の役なんですが、初演の時の懐かしいメンバーと、今回から参加の新しいメンバーと共に、そこから見られる新しい景色が楽しみです。自分もまたあの世界で生きられることを心から楽しみたいと思っています」
石原由宇
石原由宇
「もう、意気込みしかないくらいに意気込んでいるんですけれども(笑)。僕はデビュー作が鄭さんの書き下ろし作品だったので、またここで鄭さんの書くセリフを言わせてもらえることを本当に嬉しく思っています。ただ僕は東京人で関西弁の芝居が初めてで。現在はまったく関西弁のアドリブが言えない状態ですので、なんとか千穐楽までには関西弁のアドリブができるように頑張りたいと思います!」
北野秀気
北野秀気
「今回の時生役のオーディションに受かったという連絡をいただいた時は、公園でボーッとしていたところだったので思わず滑り台を3回滑りました(笑)。そのくらい嬉しかったです。もう、今の自分としてはとにかく誠心誠意、精一杯やらせていただきたいと思っています!」
松永玲子
松永玲子
「初演の『焼肉ドラゴン』はテレビの舞台中継で観たのですが、再演と再再演は客席で拝見して、雷に打たれたような衝撃を受けました。終演後しばらく立ち上がれなかったのを覚えています。そしてまさかの再再再演に出演依頼をいただきまして、このタイミングでいい感じのオバハンになれていた自分を褒めたいです(笑)。オバハンになったからこそできるオバハンの役があると思うので、嬉しいです。大好きな鄭さんと、この素晴らしいみなさんとご一緒できることが幸せです」
イ・ヨンソク
イ・ヨンソク
「この作品に初めて参加させていただけることが決まって、周りの知人友人からはとても羨ましがられました。韓国でも伝説的な作品として知れ渡っている作品ですので、嬉しくて夢を見ているような気持ちでオファーを受けさせていただきました。この舞台では韓国語と日本語の両方の言語が入り混じっていますが、そこにもとても大事な意味があるように思っています。今回の父親役として、どういう気持ちで演じてどういう心持ちで表現できるか、これからの稽古で悩みながらもなんとか作品に貢献していきたいと思っています」
コ・スヒ
コ・スヒ
「『焼肉ドラゴン』が上演される日をみなさん、待ち望んでくださっていたことと思います。そのみなさんの期待に応えられるだけの努力を積み重ねて、準備していくつもりです。14年ぶりに帰って来たわけですが、その時間を感じられないほど、この作品のことは身体が覚えているような気がしています。世の中は変わりましたし、私自身年を重ねて、この年齢に見合った英順というお母さんを演じたいですね。なので、より深みのある母親、そしてより深みのある『焼肉ドラゴン』になっていくのではないかとも思っています。
また『焼肉ドラゴン』は韓国内で、良い戯曲の定石、モデルとして知られていて、俳優を目指す若い方たちが学生の頃から触れてきている作品でもあるんです。今回、韓国で再演することに関しても、大勢の方がとても期待してくれています」
パク・スヨン
パク・スヨン
「僕にとって『焼肉ドラゴン』の初演は30代の時でした。そして再演は40代の時で、今回は50代で同じ役を演じることになります。年齢を経たことである意味良かったのではないかとも思いますし、ドキドキワクワクできるこの場を与えていただいたことにとても感謝しております。劇中で千葉さんとマッコリを飲み比べる場面があるのですが、僕もマッコリを飲む量が年々減ってきていまして……。ですが今回もしっかり飲めるように今、頑張って練習しております(笑)」
キム・ムンシク
キム・ムンシク
「本当に長い時間が流れました。そしてその時間が流れてこの作品に再び参加することができたというのは、想像していなかったことで、嬉しくてドキドキワクワクしています。2008年以降、韓国では『焼肉ドラゴン』の話は本当にあちこちで耳にします。今回の再演が決まったニュースが出た時にも「本当にやってくれるの?」とすごく話題になりました。韓国でも最高の作品として認められている作品ですし、それが再び韓国で上演されることに、たくさんの期待の声が上がっています」
チョン・スヨン
チョン・スヨン
「美花という役は、ベストを尽くす人だと思っています。そして夢見る人だとも思っています。彼女のキラキラしている、その輝く姿を表現できるように私も最善を尽くして頑張っていきたいと思います。皆さん、どうぞ見守ってください」
※なお、この日、佐々木健二役の崔在哲は仕事の都合で欠席でした
また会見の中盤では、アコーディオン奏者である朴の生演奏で、チョン・スヨンが劇中音楽である韓国民謡『ニルリリヤ』を披露。キャストたちの手拍子や掛け声も相まって賑やかな作品の雰囲気が伝わり、新キャストの美花の溌溂とした歌声を聴いているだけで既に胸が熱くなってくる。締めくくりのフォトセッションも、今回はいつものように登壇者たちがステージ上で決めポーズをとるだけでなく、劇場中央に移動し参加した一般のお客様に囲まれたパターンでも撮影。作品の持つ温かさ、そしてナマっぽさ、力強さを感じさせる粋な演出となっていた。
日韓の過去、現在、そして未来を可笑しくも悲しく、楽しい音楽も交えつつ切なく描きだす名舞台。今回の上演では、まずは新国立劇場 小劇場にて10/7(火)~27(月)、その後11/14(金)~23(日)には韓国・芸術の殿堂(ソウル・アーツセンター)CJトウォル劇場で上演し、12/6(土)・7(日)には福岡・J:COM北九州芸術劇場 中劇場、12/12(金)・13(土)には富山・オーバード・ホール 中ホールでの公演を経て、12/19(金)~21(日)には新国立劇場 中劇場にて凱旋公演が行われる。どうぞ、お楽しみに。
取材・文 田中里津子
公演情報
『焼肉ドラゴン』
日韓合同公演
〈日本語・韓国語上演/日本語字幕付〉
約3時間5分(休憩込) ※2016年上演時
2025年10月7日(火)~10月27日(月)新国立劇場 小劇場
2025年12月19日(金)~12月21日(日)新国立劇場 中劇場 <凱旋公演>
【全国公演】
■北九州
日程:2025年12月6日(土)13:00開演、7日(日)13:00開演
会場J:COM北九州芸術劇場 中劇場
■富山
日程:2025年12月12日(金)18:30開演、13日(土)13:00開演
会場オーバード・ホール 中ホール
【韓国公演】
2025年11月14日(金)~23日(日)
芸術の殿堂(ソウル・アーツ・センター) CJトウォル劇場
【作・演出】鄭 義信
【出演】
千葉哲也、村川絵梨、智順、櫻井章喜、朴 勝哲、崔 在哲、石原由宇、北野秀気、松永玲子
イ・ヨンソク、コ・スヒ、パク・スヨン、キム・ムンシク、チョン・スヨン
協力:芸術の殿堂(ソウル・アーツ・センター)
後援:駐日韓国大使館 韓国文化院