『骨髄バンクチャリティー第57回オープントーナメント全日本空手道選手権大会』は10/18.19開催~緑健児新極真会代表が大会の見どころを語りつくす!
『第57回オープントーナメント全日本空手道選手権大会』は10月18日(土)開幕。新極真会緑健児代表が見どころを語る
新極真会主催『骨髄バンクチャリティー 第57回オープントーナメント全日本空手道選手権大会』が、10月18、19日の両日、東京体育館で開催される。
大会の主催は、緑健児氏が代表を務める新極真会
『第57回オープントーナメント全日本空手道選手権大会』は10月18日(土)、19(日)に開催される
強豪選手同士のハイレベルな戦いに注目が集まる(昨年決勝写真)
実力者がひしめき、海外強豪も参戦して大混戦模様の組手男子、「4強」が争う組手女子、また昨年から実施されて活況を呈する「型」部門など、注目ポイントの多い今大会。見どころを語ってもらうべく、新極真会の緑健児代表に独占インタビューを敢行した。
「会場で『空手の試合』を見てほしい。必ず『自分も頑張ろう』という気持ちになると思います」
「そんなにパワフルではないですけどね(笑)。そうですね、常に私も指導者として選手育成、そして子供たちの青少年育成に一番力を入れているんですね。子供たちがこれからの日本を担っていくわけですけど、今の子供たちは学校ではゆとり教育的な指導があってほとんど『競争』をした経験がない。
しかし、社会に出れば本当に競争社会、皆さんもそうだと思うんですけどさまざまな試練や荒波に揉まれます。そうした時に『ゆとり』で育った子供たちはどうすればいいのか。さまざまな悩みや試練に対して『強い心』を持ってないと乗り越えていけない、という部分はあると思うんです」
――そうですね。
「悩みや試練に直面した時、子供たちに『フルコンタクト空手、新極真空手をやっていてよかった』と思ってもらいたい。あの練習に比べたら、あの試合に比べたら、もうへっちゃらだ、こんなの簡単に乗り越えられる、と。そんな強さを身につけさせるために指導している中で子供たちには『全力でやりなさい。全てにおいて全力で練習しなさい』と言ってるのに、私たち指導者が怠けていたら見抜かれてしまうんです。
ですから指導者として常に全力で取り組むことを心がけているわけです。全力で取り組むことは私の生き方として、今も頑張らせていただいてる部分ですね。だから指導するのも好きですし、子供たちや選手たちが練習を終えた後、達成感を味わっている顔を見るのも好きです。それが若さの秘訣ですね。これは私だけではなくて、壮年部も、各支部長も、常にトレーニングしてるからみんな若いですよ。
いい汗をかいて、ストレスも発散して、子供たちの成長を見守っていける。だから各支部長から「同窓会に行くとみんなおじさんですけど、みんなに『若いね』と言われます」と聞きますよ(笑)。これは常日頃からトレーニングをしているおかげだと思います」
――新極真会は新たな試みを次々と打ち出されています。昨年の「空手チャンピオン・オブ・チャンピオンズ(KCC)」はプロのイベントのような豪華な演出に驚きました。
「そうですね。昔、K-1の重量級が非常に盛り上がったイメージがあって、空手でも『世界最強の8人』、それも男性だけじゃ駄目で、女性にもそういう光を当てたいというのがあって『男女、それぞれ8人を集めて最強トーナメントをやってはどうか』とイメージしてました」
――空手は大人数のトーナメントが主流ですが、8人に絞り込んだ理由とは?
「大会によって選手の顔を覚えてもらいたいという思いですね。大相撲は年に6回場所があって、上位の力士の顔をみんな覚えているじゃないですか。空手の選手は、全日本大会が1回、そしてJFKOの大会が1回で、世界大会は4年に1回。露出度が非常に少ないんですね。特に世界大会の選手たちであれば活躍して『もうちょっと頑張れば世界チャンピオンになれるぞ』と思うけど、次の4年後の大会の前に引退してしまう。そういった部分があって選手の顔があまり定着しないので『空手チャンピオン・オブ・チャンピオンズ(KCC)』、8人だと覚えやすいと思いますし、選手は誇りを持って強くなっていく。
そして頑張った選手たちに賞金、奨学金を、プロと同じぐらいまではいかないと思うんですけど出す。そして2年間はその賞金で体のケアをしたり食事をしたり器具を買ったりして鍛えて強くなって、また2年後の『空手チャンピオン・オブ・チャンピオンズ(KCC)』に出てくる。こういった大会を2回、3回と続けていきたいですね。やるからには全日本大会みたいな質実剛健的な、伝統的な大会ではなく、入場曲をかけたりとか派手な演出をするのもありじゃないかと試みました」
――出場選手たちはどんな感想でしたか?
「選手は『出てよかったです』『また出たいです』と言っていました。またちょうど『ドリームフェスティバル』という国際大会の日にやるので、海外からも大会に出る子たちが大勢来ますし、日本の大会でチャンピオンなった子たちも招待しますので、日本だけでなく海外の子供たちからも『こういう大会に出たい』という声を聞きました。運営の人たちは大変ですし、スポンサーを集めるのも大変ですけど、選手たちが喜んでいる姿を見ると『また頑張ろう』と思って、次回の大会を計画しています」
――「空手の人気」は世間であまり知られていないところがありますね。「親が子供にさせたい習いごと」のアンケートで必ず「空手」は上位に入ります。
「そうですね。数日前にも『武道』という項目で上位に入っているのを見ました。他のジャンルに比べても、空手は『礼儀礼節を学べる』また『いじめられない』ということで、親が子供に空手をやらせたいという要望がありますね。
フルコンタクト空手、私たちのJFKO(全日本フルコンタクト空手道連盟)は369流派が集まった団体で、また70、80流派ぐらいは加盟していないんですけども、これだけ普及しているのはそれだけ需要があるからだと思うんですよ。なので、指導者がきちっと子供の教育をしっかりとしていかなきゃいけないと思うんですけど、これからますます増えていくんじゃないかと思います」
――そう思います。
「ただ残念なのは子供たちが空手を幼稚園、小学校から学び、小学6年生になって『これから中学、高校ともっと強くなるぞ』っていうときにサッカー、野球、ラグビーとか他の競技に行ってしまうんですよ。今、キックボクシングで活躍している選手はフルコンタクト空手出身者が多いですし」
――武尊選手や那須川天心選手を筆頭に「子供の頃から格闘技をやってプロになった選手」はフルコンタクト空手から始めた選手がとても多いですね。
「私たち新極真会の全日本大会に出ている選手たちはみんなユース出身で、ユース合宿とかで切磋琢磨した子たちがそのまま空手を続けました。島本雄二(第11、12回全世界空手道選手権大会優勝)や入来建武(第13回同大会優勝)もそうですけど、彼らと同じぐらい素質のあった子やもしかしたら彼らより強かった子たちがやめて野球に行ったりね」
――はい。ボクシングや相撲などにも「子供の頃は空手をやっていた」スポーツ選手がたくさんいますね。
「だから、フルコンタクト空手をやっている子たちがもっともっと輝ける場所、フルコンタクト空手や私たち新極真会に魅力を感じられる大会の1つとして『空手チャンピオン・オブ・チャンピオンズ(KCC)』も始めたんです。このまま空手を続けて頑張ってほしいというのは新極真だけじゃなくて、いろんなフルコンの先生方の共通の悩みでもあると思います」
――東京五輪で伝統派空手が正式種目になって注目を集めましたが、フルコンタクト空手も続きたいですね。
「テレビ局の人に、YouTubeとかSNSでも空手は非常に人気が高くて『潜在能力はとても高いです』と聞きました。また『かつてフルコンタクト空手をやっていました』という銀行の副理事長や会社の社長さんと話すと『あの厳しさ、苦しさに比べたら会社の中でいろんなことがあっても全部へっちゃらでした』と言います。今、空手の練習に励んでいる子供たちは今後ますます社会に出たときにリーダーシップを取ったり起業したりする人が増えていくだろうと思いますね」
――スポーツ選手のみならず、俳優の横浜流星さんがフルコンタクト空手でジュニア世界一になっていたり。
「そうですね。フルコンタクト空手の経験者は本当にいろんな分野で活躍していますよ」
緑健児新極真会代表
――いよいよ全日本大会が近づいてきました。今回も何か新たな試みをされるのでしょうか?
「今回は世界大会の日本代表を選ぶ選抜戦ではないので、海外からの選手も出場可能な大会です。世界チャンピオン(WFKO・中量級優勝)のアントン・ジマレフと、身長193cmのアンジェイ・キンザースキー(第19回アジアフルコンタクト大会軽重量級優勝)。2人ともカザフスタンの選手で『空手チャンピオン・オブ・チャンピオンズ(KCC)』にも出ていて、こういう子たちは非常に積極的で今度の全日本大会にも出場してきますから見どころですね。チャンピオンでありながらすぐにチャレンジしてくるところは怖い存在ですよ」
――注目の選手というと?
「組手男子ではやはり第1シードになっている遠田竜司選手。この選手は昨年準優勝でまだ19歳です。この間福岡での全九州大会でも安定した強さでチャンピオンになって『この勢いで全日本大会もチャンピオンなります』と言ってるので、この選手を軸として展開すると思います。
第2シードの岡田(侑己)選手は華麗な組手をします。オールラウンドで上段廻し蹴りや後ろ蹴りとか非常に華麗な組手で場内を湧かせる動きをしてJFKO国際大会のチャンピオンになったんですね。こういった華麗な組手をする選手を今後育成していくことが空手のファンを増やしていくと思うんです。
ここのところ同じような接近戦スタイルの組手が主流になっていて一般の人からすれば『面白くないな』と。上段(首から上)をスパンと蹴る選手が少なくなってきているので、華麗な技で一本勝ちを取れる選手がチャンピオンになると、またそういう組手の流れになっていくんですね。昔、私たちの時代にアンディ・フグ選手が第4回全世界大会でカカト落としを使った時は『こんな技があるんだ!』と私たちも衝撃を受けました。すると、次からカカト落としを使う選手がたくさん出てきたんですよ」
――後のミスターK-1、アンディ・フグさんがフルコンタクト空手の流れを変えてしまったのですね。
「だけど今、この時代になったら誰も使わないんですよ。やはりもっともっとみんながあっと驚くような、緊張感があって、ドンと一撃必殺の倒せる技を持った選手、特徴のある選手たちが増えていくと、空手ファンはもっともっと増えてくると思うんですね。そういう選手の出現を期待してますし、その中でいうと父親譲りの胴廻し回転蹴りで一本勝ちをしたり、内廻し蹴りで技有りを取ったりする塚本慶次郎選手は注目ですね」
――「マッハ蹴り」塚本徳臣さん(第6、10回全世界大会優勝)の息子さんですね!
「そうです。第1回WFKO世界大会で準優勝してますし、光る技を出してくれるんじゃないかと思いますね」
――緑代表が優勝された第5回全世界大会は名勝負続出でいまだに語られていますね。
「私たちの時代には、増田(章)選手、黒澤(浩樹)選手、七戸(康博)選手とか特徴のある選手がいっぱいいたと思います。これからはそういう選手たちがもっともっと出てくると思いますから『こんな凄い選手がいるんだよ』とメディアにおいてもサポートが必要だと思うんですよね。中にはいい選手なのにほとんど取り上げられず現役を終えてしまった選手もいるので、もっともっと選手たちにスポットを当てていきたいですよね」
――なるほど。
「組手女子では、鈴木国博支部長(第8回全世界大会優勝)の娘さんでまだ20歳ですけど、史上最年少でWFKO重量級優勝などタイトルを総なめしてグランドスラムを達成した鈴木未紘選手。この選手を筆頭に、この前WFKOの軽重量級で優勝した網川来夢選手、目代結菜選手、藤原桃萌選手の『4強』が軸になって展開されると思います。また、型も同時開催です」
――昨年から「型」部門が始まったのですね。
「ちょっと組手はなかなか厳しい、ちょっと合わないという中に『それなら型に特化して、型で世界を目指すんだ』という子たちもやっぱりいるんですね。今まで型はやっていなかったんですけど、型もやることによって選手が同じ舞台で輝き始めていくんです。型で全日本を目指す選手たちは増えてきてますよ」
――大会のプロモーション映像を拝見すると、型の部門はシニア部門で優勝、準優勝した選手たちが出場しますね。組手に比べると出場者の年齢層は上がりますか?
「組手部門もシニアの出場者は多いです。ただ、怪我をしてもう組手は出来ないから今度は型に全エネルギーを注いで、型でチャンピオンになったり選手が嬉しそうに写真を撮っていてね(笑)。
シニアの方々も、ある年齢になって会社の取締役になったり社長さんだったり、そういう人たちが本当に組手をやったりとか、また型をやってっていう。そういう仕事以外の目標ができるのはすごくいいことだと思いますね」
――空手の型が注目されたのは東京五輪でした。新極真会で昨年から全日本で型部門を実施されたのは、緑代表の発案ですか?
「これは私ではなく理事会等で話し合って、皆さんでやりましょうと決めたことですね。新極真会は7人の理事がいて、また小井事務局長がいて、いろんな案を月に1回理事会で『こうしたらどうだろう?』といろんな意見が出て話し合います。そして重要なところは総会で皆さんに了解を得て、と民主的にやっているから組織が伸びていってるのだと思いますね。これは日本だけではなく世界もそうなんです」
――全日本大会といえば重量級から軽量級まで一堂に会しての「無差別級トーナメント」ですね。
「そうですね。ちょっと僕が注目してる子が澤井天心選手。身長163cm、体重は少し増やして65kgぐらい。WFKOの軽量級世界チャンピオンになったんですけど、この子の目標は『無差別級で勝つこと』と言っていて頼もしいと思いますね。こういう子が頑張ってベスト8でも入れば凄いことですし、体格の小さな選手や子供たちが希望を持って頑張れますしね。
大山倍達総裁が常々『小よく大を制す』『柔よく剛を制す』と言っていたので、こういう軽量級や中量級の選手たちが無差別級トーナメントでベスト8、ベスト4、また決勝まで行ったらどれだけ盛り上がるか。そういう選手の出現を期待していますね」
――緑代表は身長165㎝、体重70kgの体格で重量級のライバルや大型外国人選手に勝って世界チャンピオンとなり『小さな巨人』と称賛されました。自分より遥かに大きな選手に勝つためにはどうしたらよいのでしょう?
「常々、大山総裁がおっしゃっていたのが『技は力の中にあり』。その言葉は常に現実味があるわけです。小手先のテクニックではパワーで吹っ飛ばされてしまうんです。私も第4回全世界大会でマイケル・トンプソン選手に吹っ飛ばされてしまいました(苦笑)。スピードでは絶対負けないと思っていたんですけど、相手も物凄いスピードがあってなおかつパワーもあって、吹っ飛ばされたときは『勝てないのか』とも思いました。
だけど悔しいから絶対にリベンジしてやろうと考え付いたのが自分も相手に負けないパワーをつけること。そこから肉体改造して、ウェイトトレーニングをして、相撲の四股を踏んでいったら圧力負けをしなくなりました。フットワークも使えて、なおかつ打ち合いでも負けない練習を取り入れて試合を進めていったんです。
小さい選手が無差別で勝つには、大きい選手よりも俊敏に動いて相手の攻撃を貰わずに自分の攻撃を当てていく。モハメド・アリ選手の『蝶のように舞い、蜂のように刺す』です。ヒットアンドアウェーも重要な要素だし、また打ち合う時には打ち合う。そのための体幹の強さ、パンチ力の強さも必要だし。総合的に、大きい人の2倍稽古するしかないです」
――2倍ですか! これも世間では知られてないですが、今や野球などあらゆるスポーツでウェイトトレーニングは取り入れられてます。でも日本のスポーツ界でいちはやくウェイトトレーニングを取り入れたのは空手でした。緑代表の現役時代はまだ『ウェイトで作った筋肉は硬くて競技に不向き』と言われていましたよね?
「そう言ってる人たちはあまり競技を知らない人ですね。私たちを教えてくれたコーチはボクシングもやっていました。ウェイトトレーニング“だけ”をやっていてはダメですね。ウェイトと並行してシャドーから組手、空手の稽古をやりました」
――「令和の小さな巨人」出現に期待したいです。
「大山総裁が奄美に来て、私に『もし世界チャンピオンになったら、小さな人間が夢を持てるんだよ』と話してくださいました。それで、自分が勝って小さな子供たちや身体の小さな選手たちに夢を与えられるようになろう、と頑張れました。私の後では、谷川光選手が無差別の第6回世界大会で3位になってくれたんですけど、そこから次の世代がなかなか出てきていないです。ですから先ほど話した澤井天心選手には期待したいですね」
――では最後に、この全日本大会に向けてのメッセージをお願いいたします。
「『空手の試合を見る機会』が一般の人は本当に少なくて『どこでを買えるの?』とか『瓦を割るの?』とかね。まだまだ理解していない人が大勢いるんですけど、空手を初めて見に来た人たちに聞くと必ず『もう1回見に行きたいです』という答えが返ってくるんですね。『あまり空手のことを知らずに見たら感動しました』という言葉もよく耳にするので、一度空手の大会ってどんなものなのか見に来てほしいですね。映像とかではなく、生で見ると必ず『見に来てよかった』と言ってもらえると思います。
選手が最後まで絶対に諦めずに戦う姿や空手の『型』の美しさを見たら、仕事とか学業とか自分の生き方に対して『自分たちも頑張ろう』という気持ちにさせるので、まだ見たことのない人にぜひこのインタビューを読んで、会場に足を運んでいただいたらと思います。そして、もしかしたら俺も、私もやってみようかなという気持ちにもなると思います。
空手を始めて人生が変わっていくということがあるんですね。子供たちもそうですけど、ちょっと自分に自信が持てなかった人たちも空手をやることで『自信がついた』とか『試練を乗り越えられました』『前向きになった』とかいいことばかりなんですね。また今回は日本対海外勢にもなります。強豪揃いの海外選手たちと戦う日本選手団の応援をしていただけたらなと思います」
――本日はご多忙のところありがとうございました。
緑健児新極真会代表
緑健児代表プロフィール
1962年4月18日生まれ、鹿児島県奄美大島出身。新極真会代表理事、JFKO理事長。現役時代は165㎝、70kgの体格ながら世界最強を決める無差別級トーナメント、第5回全世界空手道選手権大会(1991年)で優勝し「小さな巨人」と称賛された。
第57回全日本空手道選手権大会PV
日本一を決定する、激戦必至の2日間。『骨髄バンクチャリティー 第57回オープントーナメント全日本空手道選手権大会』のは、イープラスにて好評発売中。