岡田奈々、3年連続リリースとなる3rdフルアルバム『Unformel』を通してみえた現在進行形の想い
岡田奈々
2023年のソロデビュー以来、アーティストとして着実な成長と実績を積み重ねてきた岡田奈々。2025年11月12日(水)には、3年連続のリリースとなる3rdフルアルバム『Unformel』をリリースする。収録曲全ての作詞をが担当、アルバムリード曲「あなただけを求めてる」では作曲にも初挑戦している意欲作となっている。昨今珍しいくらいのハイペースで楽曲を世に生み出し続ける岡田に、その精力的な活動へと繋がる現在進行形の想いを訊いた。
──1stソロアルバム『Asymmetry』のリリースから間もなく2年が経とうとしています。
あれから3年連続でフルアルバムを作ることができて、しかも全曲で作詞を担当するなんて、自分でもびっくりですね。
──1年間に10数曲部の歌詞を書くわけですが、ネタに困ったりしませんでしたか?
1stアルバムや2ndアルバム『Contrust』では「これも言いたい、あれも言いたい!」とすらすら書けたんですけど、今回は自分の中から言葉が出てこなくなってしまって、行き詰まるという経験を初めてしました。
──最初の1、2枚は初期衝動で乗り切れる部分があるけど、ストック含めてすべて出し切ったあとの3枚目はある意味本当に表現したいものなのかもしれませんよね。
そうですね。なので、自分の作詞能力が問われるのは今回の3rdアルバムなんだろうなと思っています。
岡田奈々
──では、その3rdアルバム『Unformel』制作に向けてどんなことを考えましたか?
今回はアルバム全体のテーマをまず決めて、そのあとで1曲ごとのテーマをしっかりと決めて制作に臨みました。
──その3rdアルバム全体のテーマというのは?
今回の3rdアルバムではロマンティックをテーマにしていて。1stアルバムのときに恋愛ソングも結構書いたんですけど、なかなかアルバムの雰囲気に合わなくて、最終的には外してしまったんです。なので、今回はその1stアルバムのときに使いたかった曲をロマンティックというざっくりとしたテーマのもと様々な曲を制作しました。
──実際に歌詞を読むと、ロマンティックという大きなテーマはあるものの曲ごとにいろんなことが表現されていることに気付きます。
よかったです。10曲全部違うものを、というのを意識して作ったので、そう感じてもらえて安心しました。
──過去のインタビューを拝見すると、ご自身的にはダークめな世界観が好きだとおっしゃっていましたよね。でも、今作にはポジティブさが充満していて、聴き手の背中を押してあげるような応援歌的な楽曲も含まれています。
明るくてポジティブな曲も作っていかなくちゃっていう思いと、でも従来の岡田奈々らしさも捨てたくないという思い、その2つのバランスの取り方は難しかったんですけど、最終的にはいい塩梅になったんじゃないかと思っています。
──ファンの皆さんが求める「岡田奈々らしさ」とご自身の中でやりたいことの距離感って、この2年ぐらいでどう変わってきましたか?
1stアルバムの頃は「自分さえよければいい」みたいな気持ちもあったんですけど、それもどんどん変わってきていて。そもそもファンの方が私に求めているものも、一人ひとり全然違うじゃないですか。もちろん皆さんの意見もたくさん取り入れつつ、私のファンじゃない方が聴いても刺さるようなものも意識して、かつ自分らしさも忘れたくないっていう欲張りな作り方に、今はどんどんシフトしているんじゃないかなと思います。
──確かに、1stアルバムを初めて聴いたときは「これを聴け!」みたいな、良くも悪くも我の強さが伝わってきましたし。
「今の私はこういうことが言いたいんだ! 聴いてくれ!」っていう感じでしたね(笑)。
──でも、今作はその強さも適度にありつつ、「もっとこういう面も見てください、こういうこともできるんですよ」といういろんな顔が見える、「岡田奈々のカタログ」のような作風なのかなと。
カタログ、いいですね! ただの自己満足だけじゃ続けていけないですから、しっかり人に寄り添うような曲を多く生み出していこうという思いを込めて、今回は選曲しています。
岡田奈々
──作家さんに楽曲をオーダーする際、その楽曲で歌いたいことやテーマを事前に伝えているんでしょうか?
例えば、「これをライブでみんな一緒に歌えたらいいな」とか「ライブで映えるようなロックなテイストで」とか、そういう簡単なテーマとか曲調を決めてからお願いしました。実際に上がってきた曲を聴いて、そこから得た印象をもとに歌詞の世界を広げていく。そういう作り方でした。
──今作を制作する上で、「これでこのアルバムはいけるぞ、大丈夫だ!」という鍵となる曲ってありましたか?
自分っぽくないと言ったらあれですけど、2曲目の「夏の追憶」ですかね。これはアルバムの中で最後に完成した曲で、本当に追い込まれて時間がない中で歌詞を書かなきゃいけない、来週にはレコーディングしなくちゃいけない、どうしよう……ってときに、何度も何度も書き直して完成しました。歌詞の中に〈手を離し現在(いま)を生き抜いてみるよ〉というフレーズがあるんですけど、私はAKB48時代、アイドルとしてたくさんいい経験をさせてもらってきました。そういう過去はもちろん今も大事だけど、過去に縛られすぎず、一旦手を離して今現在の人生を生きてみようという意味が込められていています。このフレーズが出てきたときは自分の中で何かが開けたような気がして、ちょっとグッときました。
──僕もこの曲を聴いたときに、歌詞のテイスト含めて今までとの違いを感じ取れましたし、もっと前に進んでいきたいんだ、違った景色が見たいんだという強い意志が伝わってきました。
このままここにはとどまれないなっていうのは、最近ずっと感じていたことなので、そういう思いを今回のアルバムにも詰め込みたくて。なので、その意思を表現できた「夏の追憶」は私の成長を伝えられた1曲かもしれません。
──そういう決意の楽曲が2曲目に配置されているという点も興味深いですが、アルバムの曲順はスムーズに決まりましたか?
すごく悩みましたね。最初は歌詞にお花の名前が入っているので、その花の咲いている時期をイメージして曲を並べてみたんですけど、そこから流れを考えて変えたりもしました。あと、アルバムのラストはリード曲の「あなただけを求めてる」でどうしても締めくくりたかったので、バランスを取るのは結構大変でしたね。
──アルバム前半にロックでアップテンポな曲を固めて、後半にはスローだったりムーディーだったりとじっくり聴かせる曲が並んでいる。結果的に、すごく聴きやすい流れだと思いましたよ。
そう言っていただけてホッとしました。実際ファンの方はどう感じるのか、感想も今からすごく楽しみです。
岡田奈々
──今作では全曲の作詞はもちろんのこと、「あなただけを求めてる」では初めて作曲にも挑戦しています。これまで作曲をしてみたいと思ったことはありましたか?
いや、それがまったくなくて。周りからは「作曲してみてはどうですか?」と言われることもあったんですけど、私自身は「絶対に作曲だけはしないぞ!」となぜか頑なに決めていたんです。だって、よくアーティストさんが言う「音が降りてくる、降ってくる」っていう感覚がずっとわからなかったから。でも、今回初めて降ってくる感覚を味わうことができました!
──それはどんなタイミングに?
AKB48のステージを観る機会があったんですけど、帰宅してから家でビールを飲んでいて。そのときに「頭の中で音楽が鳴っているぞ?」という不思議な感覚になって、少し酔ってはいたんですけど、ボイスメモにそのメロディを残してみたんです。翌日になって聴き返してみるとちゃんと曲になっていたので、「ああ、降ってくるってこういうことなのか」と実感しましたね。
──もしかしたらAKB48のステージを観て、刺激を受けたのかもしれないですよね。そのメロディにどんな歌詞を付けようと考えましたか?
最初は自分のコンプレックスとか劣等感とか、そういう葛藤について書こうと思っていたんですけど、いざ書き始めるとネガティブな印象が強くて。「こんなにネガティブなことばかり書いてちゃダメだ」と、思ったんです。ファンの方も聴いていてあまり嬉しくないかなと思って。でも、鶴﨑輝一さんに作曲を手伝ってもらったら、使っている音色にもよると思うんですけど、すごくポジティブさが感じられる曲調に変わっていったので、だったら歌詞も救いのある終わり方にしたいなと思って、今の形になりました。
──使っている楽曲や乗せている音によって、導かれる言葉も変わってくると。
あと、言葉の響き方も変わりますよね。「あなただけを求めてる」も歌詞だけを読んだらどこか暗さを感じると思うんですけど、あのメロディと音に乗せて歌うことで光が感じられるような曲に生まれ変わってく。それぐらいメロディとかアレンジって大事なんだなと、この曲を通して実感しました。
──同じように、メロディや音に引っ張られて歌詞が変わった曲って今回ありましたか?
「インコンプリート」はそうかもしれないですね。最初は恋愛ソングが書きたかったんですけど、いただいたメロディがすごく疾走感があって、ちょっとアニメソングっぽい雰囲気を持っていたので、「恋愛じゃなくて夏をイメージした歌詞が合っているんじゃないか?」と路線変更をしました。そういう柔軟性が付いたのも、自分としては一歩成長できたのかもしれません。
──「あなただけを求めてる」は自分でメロディを作っているだけに、ほかの曲と比べて歌いやすかったのでは?
そう思っていたんですけど、歌いやすさを重視して作っていなかったので、実は……だいぶ難しいんですよ(笑)。鼻歌で歌いながら作ったからなのか、サビも自分のキーの中でも意外と高くて、ファルセットにするか地声で歌うか悩むギリギリのライン。こういうあとあとの影響についてもひとつ勉強になりましたし、今後の課題でもあるのかなと思います。
──個人的には「爆裂ロンリーガール」が、曲調含めてお気に入りで。「夏の追憶」からの流れがすごく気持ちいいんですよね。
嬉しいです。この曲はボカロ曲をイメージして作ってもらったんですけど、私自身も中学生の頃ボーカロイドにすごく影響されて、こういう音楽が大好きだったんです。「夏の追憶」からの落差もすごくいいですよね。
──アルバム中盤に配置された「Undead Anniv.」も、ライブで盛り上がりそうな仕上がりです。
私、こういう爆発的な勢いがある曲がすごく好きなので、このアルバムの中でも特に「爆裂ロンリーガール」や「Undead Anniv.」はお気に入りです。
──こういうライブ向きの楽曲があるからこそ、後半のミディアムナンバーやバラードがより映えることになる。
本当にそうなんですよね。その幅広さもじっくり堪能していただきたいですし、今後のライブの見せ方もよりバリエーションが広がると思うので、そこも楽しんでいただけたら嬉しいです。
岡田奈々
──そのライブですが、アルバムリリースの5日前にあたる11月7日には恒例となったバースデーライブ『岡田奈々 BIRTHDAY LIVE 2025』も東京・harevutaiにて行われます。
アルバムリリース前なので、3rdアルバムからの楽曲をどこまでセットリストに入れるか悩んだんですけど、それでも半分くらいは披露したいなと思っていて。みんなまだアルバムを聴く前だから、きっとポカーンとするかもしれませんね(笑)。
──岡田さんのお誕生日を祝う場なのに、祝われる岡田さんからお客さんへの新曲サプライズがあるという(笑)。
そうなんですよ(笑)。お誕生日とアーティスデビュー2周年の記念日なので、お祝いしてもらったお礼にプレゼントできたらなと思っています。
──当日は普段の単独ライブやツアーともまた違った内容になるんでしょうか?
ある意味では自分らしさ全開かもしれません。自分のオリジナル曲だけでも30数曲あるので、ライブのセットリストもだいぶ作りやすくなりましたね。
──バースデーライブならではの特別感って、どういったところにあると思いますか?
いい意味で私の気が抜けているところかもしれないです(笑)。
──素の岡田奈々が見られる?
はい(笑)。私の誕生日当日というのも相まって、普段のライブとは違ってより一層アットホームな雰囲気で歌うことができるんじゃないかな。
──お客さんの雰囲気も、普段のライブと違ったりするんでしょうか?
違いますね。去年もバースデーライブをやったんですけど、お祝いムードがすごいんですよ。しかも、いい意味で緊張感があまりない、すごく温かくて歌いやすい空気といいますか。もちろん、ステージに立つ前は緊張はするんですけど、それでも今年の28歳のバースデーライブはただただ楽しい時間を過ごせるよう、歌いたいです。
──もしかしたら、今回のバースデーライブが初めての岡田さんのライブという方もいるかもしれません。昼夜の2部構成で行われる今回のライブにおいて、初めて観る人たちは何を期待していればいいのでしょう。
私は「岡田奈々のライブって、すごく見やすいな」と思ってほしくて。スタンディング会場での公演なので、ライブの尺も基本的に1時間半以内に収めることを自分のルールとして作っていますし、バンドの生演奏にもこだわっています。オープニングにはファンの間でメジャーな曲だったり有名な曲を持ってきて、そのあとはアップテンポで盛り上げていき、途中でバラードをしっかり挟んで、最後はみんなで口ずさめるような曲で締めくくる……そういう起承転結のはっきりした構成は、常に心がけています。もちろん、その間にはMCもちゃんと入るし、お客さんとのコミュニケーションも忘れない。あと、ライブ中にはいつも撮影タイムを設けているので、思い出を残すこともできたりします。初めて来た人も何度も来ている人も絶対に飽きさせない、観ていて気持ちいいな、また観たいなと思ってもらえるよう、心の底から楽しんでもらえるよう準備しているので、変に気が負けることなく、気楽にいらしていただけると嬉しいです。
──ソロとしてのライブ活動を始めてから2年以上経ちますが、「岡田奈々のライブ」における確固たる武器や魅力ってどういったところだと、ご自身では思っていますか?
「岡田奈々のライブ」の魅力は……「不完全さ」ですかね。私、歌が完璧にうまかったり、ライブの構成や演出が完璧すぎたりすると、なぜか物足りなさを感じてしまうタイプなんです。そういう意味では、どこか未完成で不完全で未熟なところを見せ続けながら成長していく姿っていうのは、アイドル時代の自分の活動と共通するものであって。時には成長したり、時には失敗したりするところを包み隠さず見せながら、ファンのみんなと一緒に一歩一歩進んでいく形は、AKB48出身の私ならではだと思うし、そういう姿勢はほかのアーティストの方とはちょっと違うところかもしれません。
──確かに、48グループって日々の劇場公演を通じて成長していく過程を見てもらうところが醍醐味ですものね。
そこを10年間にわたってAKB48で経験してきた私だからこそ、表現できるやり方じゃないですか。私はすでにアイドルではないですが、「自称・みんなの心のアイドル」のつもりなので(笑)、これからも私の成長をそばで見守ってもらいながら活動していくことを大切にしたいです。
──ロック的な言い方をすると「生き様を見せていく」ってことかもしれませんよね。いいところはもちろん、ダメなところも取り繕うことなく、どうやって困難を乗り越えていくのかを全部見てもらうという。
まさにそれです。全部包み隠さず見せていくことで、ファンの方にも「自分も岡田奈々のファミリーの一員だ」と思っていただきたいですし、そういうファンの方との絆を誰よりも大事にしながら音楽活動を続けていきたいです。
──では、この先の音楽人生において何か目標であったり、達成させたい夢はありますか?
私、そういう将来のイメージってまったく作れないんですよ。とにかく今目の前のことに集中して頑張ることに精一杯で、逆に先のこと考えると「音楽を続けられなかったらどうしよう」とか「食べて行けなくなったらどうしよう」とか「ファンの人がいなくなったらどうしよう」とか、すごく不安になってしまうんです。それに、今をどれだけ頑張るかで未来が生まれるじゃないですか。1年先や5年先のことをイメージしたって絶対に日々変わっていくと思うので、目の前のファンの人たちを大切にしながら今日を必死に生きていくことが、些細かもしれないけど一番の目標です。
──アーティストとしてこうなりたいとか、そういう理想像は持っていますか?
常に唯一無二でいたいです。私は元アイドルですけど、アイドル上がりだからこそできることっていっぱいあると思うんです。例えば、ファンの方とのコミュニケーションの取り方も特別で、一緒に旅行をすればファンミーティングを開いてゲームもするし。ファンというよりも家族っていう距離感で私はやっていきたいから、この先もこの距離感だけは変えずにいたいです。「AKB48を卒業しても引き続き音楽をやっている子、いるんだね」と認知してもらえるように頑張りたし、その頑張りがちゃんと周りに浸透すれば、今AKB48で活動している後輩たちにも「私も卒業後、音楽を続けたいかも」と思ってもらえるかもしれない。そういういいお手本になれるくらい、唯一無二の路線を築きたいと思っています。
取材・文=西廣智一 撮影=大塚秀美
岡田奈々
ライブ情報
2025年11月7日(金) [東京] harevutai
1部 開場:14:30 開演:15:00
2部 開場:18:30 開演:19:00
※一部演出でカメラ撮影可能
※ご入場の際、別途ドリンク代必要
◆プレミアム
※非売品記念グッズ付き
※優先入場
※終演後本人より非売品記念グッズのお渡し
※一部演出でカメラ撮影可能
※ご入場の際、別途ドリンク代必要
リリース情報
■CD+フォトブック
AVCD-63804 ¥5,700(税込)
CD
01.インコンプリート
02.夏の追憶
03.爆裂ロンリーガール
04.睡蓮プラグマティズム
05.Undead Anniv.
06.ゼロセンチ
07.恋煩い
08.この枯れない花
09.僕らだけの音で
10.あなただけを求めてる
封入特典:トレカ6種+シークレット1種 合計7種より1種ランダム封入【Type-A】
AVCD-63805/B ¥5,700(税込)
CD
01.インコンプリート
02.夏の追憶
03.爆裂ロンリーガール
04.睡蓮プラグマティズム
05.Undead Anniv.
06.ゼロセンチ
07.恋煩い
08.この枯れない花
09.僕らだけの音で
10.あなただけを求めてる
Blu-ray
01.あなただけを求めてる Music Video
02.あなただけを求めてる 楽曲制作ドキュメンタリー
AVCD-63806 ¥3,500(税込)
<収録内容>
CD
01.インコンプリート
02.夏の追憶
03.爆裂ロンリーガール
04.睡蓮プラグマティズム
05.Undead Anniv.
06.ゼロセンチ
07.恋煩い
08.この枯れない花
09.僕らだけの音で
10.あなただけを求めてる
オフィシャルHP