秋の雨、夜に焚き火…自然と音の織りなす幻想美に心動かされた2日間『朝霧JAM’25』総括レポート

レポート
音楽
18:00
『~ It’s a beautiful day ~ASAGIRI JAM ’25』 Ⓒ 宇宙大使☆スター

『~ It’s a beautiful day ~ASAGIRI JAM ’25』 Ⓒ 宇宙大使☆スター

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IT’S A BEAUTIFUL DAY ASAGIRI JAM ’25
2025.10.18(sat)、 19(sun)富士山麓 朝霧アリーナ・ふもとっぱら

『~ It’s a beautiful day ~ASAGIRI JAM ’25』(以下、朝霧JAM)が、10月18日(土)、19日(日)の2日間にわたって静岡県富士宮市の朝霧アリーナで開催されました。国内外より個性豊かな23組のアーティストが出演し、25周年を迎えた『朝霧JAM』を彩りました。

ANGIE McMAHON  Ⓒ Taio Konishi

ANGIE McMAHON  Ⓒ Taio Konishi

1日目のRAINBOW STAGEには、YOGEE NEW WAVES、アンジー・マクマホン(ANGIE McMAHON)、竹原ピストル、D.A.N.、ハイエイタス・カイヨーテ(HIATUS KAIYOTE)、MOONSHINE STAGEにはグソクムズ、JONAH YANO、んoon、FULLHOUSE、アンソニー・ネイプルス(ANTHONY NAPLES)が登場。2日目のRAINBOW STAGEには、ケロポンズ、BIALYSTOCKS、アニー&ザ・コールドウェルズ(ANNIE & THE CALDWELLS)、柴田聡子、ZAZEN BOYS、グラス・ビームス(GLASS BEAMS)、忌野清志郎ROCK'N'ROLL DREAMERS、MOONSHINE STAGEにはYOUR SONG IS GOOD、鬼の右腕、田島貴男、パール & オイスターズ(PEARL & THE OYSTERS)、Nariaki Obukuro、DJ スピナ(DJ SPINNA)が出演。さらに、CARNIVAL STARでは国内外から集まったDJたちが昼夜2日間、ノンストップで音を鳴らし続けました。

ZAZEN BOYS Ⓒ Taio Konishi

ZAZEN BOYS Ⓒ Taio Konishi

忌野清志郎ROCK'N'ROLL DREAMERS Ⓒ Taio Konishi

忌野清志郎ROCK'N'ROLL DREAMERS Ⓒ Taio Konishi


■DAY1:竹原ピストル、HIATUS KAIYOTEらが登場

竹原ピストル Ⓒ Taio Konishi

竹原ピストル Ⓒ Taio Konishi

初日、特に印象的だったのは竹原ピストル。ステージから放たれたエネルギッシュなメッセージに呼応するように、終演直後には「すっげーよかった~」「驚いた!」「今日来てよかった」と熱を帯びた絶賛する声が溢れていました。日が暮れて少し肌寒くなり、RAINBOW STAGEエリアにある大きな焚き火で暖をとり始めた頃、程なくしてHIATUS KAIYOTEが登場。軽やかに舞うネイ・パームがのっけから「アリガトウ!」と日本語で応えるなどして心地好い雰囲気に。次第に広大な会場を飲み込むように夜霧が立ち込めてくるも、彼らのオリジナリティ溢れるサウンドがその光景と絶妙にマッチ。自然と音楽が融合した神秘の夜となりました。

HIATUS KAIYOTE Ⓒ Taio Konishi

HIATUS KAIYOTE Ⓒ Taio Konishi

Ⓒ 宇宙大使☆スター

Ⓒ 宇宙大使☆スター


■DAY2:ケロポンズ、田島貴男、GLASS BEAMSらが登場

ケロポンズ Ⓒ Taio Konishi

ケロポンズ Ⓒ Taio Konishi

2日目はトップバッターのケロポンズ本門寺重須孝行太鼓保存会の皆さんが参加し、『朝霧JAM』の名物であるラジオ体操で幕開け。富士山も隠れた曇り空の下、『朝霧JAM』実行委員長の秋鹿博さんの「みんなで心をひとつにして、雲はどっかへ飛び散ってもらいましょう!」といった前向きな挨拶に、オーディエンスからは委員長コールが止まない一幕も。そんな秋鹿さんの言葉がヒントとなって誕生したというケロポンズの「ツイてる! ツイてる!」に突入し、大人も子どもも、さらにはテントエリアの観客までもを巻き込んで朝から元気いっぱいに踊る大盛況でした。その後もANNIE & THE CALDWELLSのソウルフルで美しく重なり合う歌声や、鬼の右腕のドラマティックな世界観に心を動かされ、ギターは弾いて叩いてサックスも吹きこなす一人ロックンロールショーを繰り広げた田島貴男では彼のシャウトにオーディエンスが大声でレスポンスする場面にも遭遇。それぞれのアーティストが異なる表現で魅了するフェスの醍醐味を味わいながら、2つのステージの往来を楽しむ来場者の姿が多くありました。

ANNIE & THE CALDWELLS Ⓒ Taio Konishi

ANNIE & THE CALDWELLS Ⓒ Taio Konishi

鬼の右腕 Ⓒ Taio Konishi

鬼の右腕 Ⓒ Taio Konishi

田島貴男 Ⓒ Taio Konishi

田島貴男 Ⓒ Taio Konishi

GLASS BEAMS Ⓒ Taio Konishi

GLASS BEAMS Ⓒ Taio Konishi

日が落ちて夜になると、第二幕が始まるような雰囲気に切り替わるのも野外フェスならでは。そこに満を持して、GLASS BEAMSが登場。インド・テイストのあるエキゾチックなサウンドと妖艶で煌びやかなビジュアル、さらに雨と靄といった自然美が加わって、ひときわ幻想的な空間が出現! 摩訶不思議な異彩を放つ圧巻のステージでした。


■富士山、『朝霧JAM』では珍しく姿を隠す

Ⓒ 宇宙大使☆スター

Ⓒ 宇宙大使☆スター

『朝霧JAM』と言えば、富士山に抱かれて音楽を楽しむフェス…ですが、今年は曇り空に覆われた2日間となり、初日の会場へ向かう道からは美しく見えた富士山でしたが、ダイヤモンド富士も見られず。富士山を拝める時間が少なかったのは残念でしたが、終始曇りで雨も少々、暑くも寒すぎることもなく快適な気温で、全体としての気候は野外フェスにはうってつけでした。

Ⓒ 宇宙大使☆スター

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■デコレーションが一新!
 25周年を迎えた『朝霧JAM』歴史を振り返るブースも

Ⓒ 宇宙大使☆スター

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25周年を迎えた『朝霧JAM』では、場内を彩るデコレーションが一新されていました。メインステージであるRAINBOW STAGEはお馴染みの虹と雲をモチーフにした従来同様の装飾に見えましたが、その外周を囲うように何本もそびえ立つ角のような飾りがツートンカラーに生まれ変わり、夜の『朝霧JAM』に浮かび上がる演出に。

Ⓒ 宇宙大使☆スター

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それから長年、MOONSHINE STAGEのシンボルだった巨大なタコのオブジェがなくなり、ステージサイドには雲とタワーのようなオブジェが新登場。「あのタコは引退なのかな?」という声も聞こえ、ちょっとした寂しさもありました。

また、Gサイトの朝霧ランドでは25周年を迎えた『朝霧JAM』歴史を振り返るパネルの展示もあり、ボランティアのスタッフと来場者が当時の話をしながら交流を深める姿も見られました。


■やっぱり美味しい!『朝霧JAM』こだわりの地消地産フード

Ⓒ 宇宙大使☆スター

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『朝霧JAM』の特徴のひとつに地産地消にこだわった、このフェスでしか味わえないフードがあります。今回も地元・朝霧高原の特産である牛乳や、それを使ったシチュー、そしてフジロックの朝霧食堂でお馴染みのぐるぐるウインナーを筆頭に多種多様のおいしいご飯が用意され、何を食べても外れなしでしたが、個人的には今回初めて食べた「炭火焼 宝来家」の朝霧ヨーグル豚(ヨーグルトン)を使った炭火焼豚丼が群を抜いて優勝でした。それから以前よりも珈琲屋が増店していて、高原の野外フェスで飲むコーヒーは格別ですからコーヒー党にとってはうれしい変化でした。

Ⓒ 宇宙大使☆スター

Ⓒ 宇宙大使☆スター

Ⓒ 宇宙大使☆スター

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■祝・「ふもとっぱらオートキャンプ」が復活

Ⓒ 宇宙大使☆スター

Ⓒ 宇宙大使☆スター

近年の『朝霧JAM』では、様々なニーズに応えて参加スタイルも多様化しており、日帰りでの参加や、宿泊施設やレンタルテントを利用できるオフィシャルツアーも可能になりました。筆者の場合はキャンプが好きなので、子どもと参加するようになってからはキャンパーの聖地である「ふもとっぱら」でのキャンプを選択しています。昨年はオートキャンプがなくなってしまい不便に感じていましたが、今回ふもとっぱらでのオートキャンプが復活したことでフェスもキャンプも同時に楽しむことができました。

2日目の夜には敷地内にあるお風呂でシャワーを浴びることもでき、気分も体もサッパリ! また、半ば諦めていた星空も僅かながら観ることができ、朝には隣接する牧場に現れた元気に走り回る牛の群れを観察したり、富士山もかろうじて姿を見せてくれたりと、有意義な家族時間を過ごすことができました。


■ボランティア「朝霧JAMS'(アサギリジャムズ)」の人たちのあたたかさ

Ⓒ 宇宙大使☆スター

Ⓒ 宇宙大使☆スター

『朝霧JAM』ではライブはもちろんのこと、おいしいフードをはじめ、マーケットでの掘り出し物を探せるショッピングや場内の至る所にあるワークショップでのものづくり体験、さらに今回は『朝霧JAM』に特化したリアル脱出ゲームが初登場するなど、来場者が楽しめるものがバランスよく用意されているので飽きることがありません。そんな数あるお楽しみの中で、とりわけ魅力を感じたのはボランティアの人たちとの交流でした。

Ⓒ 宇宙大使☆スター

Ⓒ 宇宙大使☆スター

Ⓒ 宇宙大使☆スター

Ⓒ 宇宙大使☆スター

『朝霧JAM』実行委員会はフジロックを主催するSMASHとボランティアチーム「朝霧JAMS'(アサギリジャムズ)」などの有志団体で成り立っていて、場内の受付、ごみゼロナビ、朝霧ランド、KIDS LAND、そして会場内やフジロックAVALON FIELDの「朝霧食堂」も運営しているのがボランティアを中心とした実行委員会の人たちです。フォトスポット・宇宙大使マザーシップでは「お兄さんたち、前も来てくれました?」「はい!」と笑顔で談笑するシーンに出くわし、KIDS LANDでは子どもたち同士が「覚えてる? 去年遊んだよね?」「覚えてるよ!」と声を掛け合っていて、とてもいい雰囲気だなあと感じていると、朝霧ランド内のワークショップに参加した際に「昨年もいらしてましたか?」と筆者自身も声をかけてもらい、ボランティアの方との対話を楽しみました。さらに翌日その同じ方から、ふもとっぱらでも声をかけてもらったのですが、場内ワークショップから別エリアのふもとっぱらまで、フェス全域でボランティアの方々が活動されていることを目の当たりにし、交流する喜びと共に感謝の念を抱きました。

Ⓒ 宇宙大使☆スター

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日本一と称される雄大な富士山の麓という絶好のロケーションで、日本のみならず世界各国からやってくるアーティストの奏でる音楽に触れられることが素晴らしいのは言うまでもありませんが、おもてなしの心と、「おかえりなさい」と「ただいま」がある、心が通い合うあたたかなフェス。これが『朝霧JAM』というフェスを創っている真の魅力なのかもしれません。

Ⓒ 宇宙大使☆スター

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文=早乙女 ‘dorami’ ゆうこ

イベント情報

IT’S A BEAUTIFUL DAY ASAGIRI JAM ’25
2025年10月18日(土)、 19日(日)
富士山麓 朝霧アリーナ・ふもとっぱら

■オフィシャルサイト https://asagirijam.jp
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