【現場レポート】ボードゲームの祭典『ゲームマーケット2025春』初日の熱狂をお伝え
入場ゲート
【現場レポート】ゲームマーケット2025春:幕張移転3回目で迎えた最高の活況!
ボードゲームの祭典「ゲームマーケット2025春」は、幕張メッセにて開催された。幕張に移転して3回目となる今回、会場はかつてないほどの熱気と活気に包まれ、多くのボードゲームファンを魅了した。
会場の様子:アーリーから一般入場へ、熱狂の波
アーリー入場が開始された午前11時から正午にかけては、比較的落ち着いた雰囲気で、ブースをじっくりと見て回ったり、出展者との会話を楽しんだりしやすい時間帯だった。
会場の盛り上がり
しかし、正午に一般入場が始まると状況は一変した。膨大な数のボードゲームファンが一気に会場になだれ込み、場内は瞬く間に人で埋め尽くされた。来場者は人をかわしながら歩くような状態となり、会場全体はまさに「活況」という言葉にふさわしい熱狂に包まれた。この盛況ぶりは、ボードゲーム市場の広がりと、ゲームマーケットというイベントへの高い期待を改めて証明するものとなった。
【企業ブース】大行列と話題作の先行販売
会場の目玉となる企業ブースでは、多くの来場者が目的のゲームを求めて列をなした。
Engames:再販ボムバスターズに行列
ドイツ年間ゲーム大賞を受賞した人気作「ボムバスターズ」の日本語版再販がゲームマーケット初出しとなり、Engamesブースにはアーリー入場開始直後から巨大な行列が発生した。その注目度の高さを見せつけた。
ボムバスターズが人気の「Engames」
ポケモンタルカ&ババ抜き:ファミリー層も熱狂
ポケットモンスターのキャラクターを用いた新作ゲーム4作品を発表したブースでは、来場者に「ピカチュウ」のハットが配布された。ファミリー層から熱心なゲーマーまで多くの人がハットを被ってゲームを楽しむ姿が見られ、ブース内のピカチュウとの記念撮影コーナーも大盛況だった。世代を超えた人気を誇るポケモンの魅力を存分に活かした出展となった。
子供から大人まで楽しめるポケモンブース
アークライト:レイルウェイブームと整理券制の導入
主催であるアークライトのブースでは、「ボムバスターズ」で知られる林尚志氏と、シモーネ・ルチアーニ氏の共作「レイルウェイブーム」などを販売。例年大行列となる同ブースだが、整理券制が導入されており、行列が大幅に緩和され、快適にブースを回遊できる工夫が評価された。
レイルウェイブーム
林氏のサイン会も開催
その他にも、購入を目的としない来場者も楽しめるよう、大きなコンポーネントでボードゲームを試遊できる「ビッグゲームパーク」や、子供たちが安心して遊べるキッズスペース「こどもわいわい広場」など、充実したエリア出展が随所に見られた。
マーダーミステリーを数多く手掛けるグループSNE
今回も多くの来場者で賑わうホビージャパン
マーダーミステリーが一挙に集まるマーダーミステリーブース
作り込まれたオインクゲームズブース
【一般ブース】光るオリジナル作品群と熱い出展者たち
一般ブースでは、斬新なシステムと魅力的なデザインを兼ね備えた意欲的なオリジナル作品が、来場者の注目を集めた。
ごみ国際(G25):トリテのいとこ「STORM IN A TEACUP」
注目を集めていたのは、ごみ国際の「STORM IN A TEACUP」だ。3種類のカードを組み合わせて役を作り、親と同じ役を出していく「トリックテイキングゲーム」のようなシステムを採用しつつ、勝敗は手札を早くなくす「ゴーアウト(大富豪のようなシステム)」で決まるというユニークなハイブリッド作品である。「ゴーアウトの親戚、トリテのいとこ」というキャッチフレーズが内容を的確に表しており、その洗練されたアートワークも魅力的だった。
ごみ国際
ミスボドゲームズ(C06):可愛い見た目に反するゲーマーズゲーム「今日からうちの子」
ミスボドゲームズの「今日からうちの子」は、可愛いアートワークとは裏腹に、刻々とカードを出すルールが変わっていく深い読み合いが求められるゴーアウト系の作品だ。制作者が「子供でも遊べるシンプルなゲームを作ったつもりが、ゲーマーズゲームになった」と語る通り、その奥深さが光る作品に仕上がっている。
ミスボドゲームズ
ヤマダさんち(22日のみ-P18):想像力が鍵の連想ゲーム「エリンギ家族」
SNSでも話題の「エリンギ家族」は、親が引いた「エリンギ」の写真に対し、「台詞」と「シチュエーション」のみを発表。他の写真と混ぜてシャッフルされた中から、親が持っていた写真を当てるという、ユニークな連想・コミュニケーションゲームだ。その奇抜なテーマと、プレイヤーの想像力を刺激するゲーム性が人気を博した。
ヤマダさんち
Azb.Studio(H01):世界観を作り込んだ「オリジナリテ」ブース
パーティゲーム「オリジナリテ」を販売するAzb.Studioのブースは、ゲームの世界観で細部まで作り込まれており、ひときわ目を引く存在だった。元気で気持ちの良い売り子さんの対応も素晴らしく、終日活気に溢れていた。
Azb.Studio
Peerless Games(22日のみ-V07):推理重視のマーダーミステリーパッケージ
Peerless Gamesは、マーダーミステリー「呂色の殺意」「死のペトリコール」の2作品を頒布した。どちらも推理が捗るパッケージ作品で、DM(ゲームマスター)が居なくとも楽しめるのが特徴だ。マーダーミステリーはエリアにも大きなブースを構えているが、一般ブースでの出展も増加しており、意欲作が数多く発表されている。
Peerless Games
メンダコ文庫(22日のみ-U28):愛あふれるゲーマーの知見をまとめたレビュー冊子
ゲームの販売以外では、SNSに掲載された新旧600ものゲームレビューをまとめた冊子を販売する「メンダコ文庫」も注目を集めた。ボードゲームを愛し、多くのゲームを遊んだ生粋のゲーマーによる生のレビューは忖度がなく、プレイや購入を検討する上で有益な資料となる。こうした、ゲームそのものだけでなく、ボードゲーム文化を支える周辺コンテンツの出展が見られるのもゲームマーケットの大きな魅力である。
メンダコ文庫
新ボードゲーム党(H-12):佐藤雄介氏の新作2人用心理戦「プリズン・バトル」
「タイムボム」や「ゴールデンアニマル」の作者である佐藤雄介氏による「プリズン・バトル」が新作として並んだ。これは2人用の数字比べゲームを基本としながら、特殊能力を駆使することで、どの数字で勝利できるかが刻々と変化し、お互いの手の内を読みあう深い心理戦が味わえる作品となっている。
新ボードゲーム党
ハーベストバレー(H46):元事務局長が語るイベントの発展と話題の新作
元ゲームマーケット事務局長の刈谷氏が立ち上げたハーベストバレーからは、「鄭和宝船」が登場した。「ボムバスターズ」の林尚志氏がデザインを手掛け、既にクラウドファンディングで1,300万円以上のプレッジを獲得した話題作だ。
刈谷氏は、「今年はSNS上で非常に活発に情報共有がされており、盛り上がりを感じている」「会場も幕張になってからバックヤードが広く環境もよくなった」と語り、イベントの発展を肌で感じている様子だ。新作「鄭和宝船」については、非常に反応が良い一方で、ルールブックの表記の曖昧さへの指摘には真摯に対応していきたいとコメントした。さらに、刈谷氏個人の「あっと驚くような企画」が控えているとのことで、今後の動向にも期待が高まる。
ハーベストバレー
【ゾーニングブース】厳しい制約が問いかけるもの
今回、会場の一角には22日・23日それぞれ2ブース、計4ブースのみで構成される「ゾーニングブース」が設けられている。このエリアは「掲示物NG」「商品陳列NG」「値札NG」など、非常に厳しい制約が課されており、SNS上で物議を醸した。R18コンテンツの販売が禁止されているゲームマーケットに於いて、何を対象とした「ゾーニング」が必要なのか、主催者の意図と現場の実態に疑問が呈されている。
トコトコゲームズ(22日のみ-Z01):自主規制的な出展の困惑
腐女子のためのBLボードゲーム『BとL』を頒布するトコトコゲームズも、このゾーニングブースに出展した。カップリングを妄想するトークゲームであり、自主規制的な出展と見られるが、数日前まで制約の詳細を知らず、厳しいルールに困惑していたと言う。ルールを把握していない点には落ち度があるが「まさかそこまで厳しい制約があると思っていなかった」という気持ちは、多くの一般出展者にも理解できるだろう。
トコトコゲームズ
ふくらみゲームズ(22日のみ-Z02):必要性は理解しつつも「行き過ぎ」と感じる制約
正体隠匿系ゲーム「叡智人狼」(グラビア写真とダジャレカードどちらが配られたかを見破るゲーム)を頒布する「ふくらみゲームズ」にも話を聞いた。厳しい制約を理解した上で出展を決めた同ブースは、ゾーニングの必要性自体は理解を示しつつも、「運用方法は行き過ぎている」と感じていると語った。「ゾーニングエリア出展の出展料が多少高くなったとしても、もう少し制約を緩和し、出展しやすい環境を望む」との声が聞かれた。
ふくらみゲームズ
ファミリー層もターゲットとしたイベントであることは理解しつつ、この「オーバーコンプライアンス」とも言える対応が正解なのか? と筆者も強く疑問を感じた。また、ゾーニング外となる「エリア出展」の中には、煽情的とも取れるバックショット(水着などもあり)を売りにしたゲームのかなり大きな掲示物などもあり、ゾーニングの要不要の線引きをどこに設けているのかも疑問だ。今後の対応を注視していきたい。
幕張メッセという大規模な会場に移転後、回を重ねるごとに来場者の熱量と出展の質が向上しているゲームマーケット。今回の活況は、今後のボードゲーム市場のさらなる発展を予感させる。一方で、ゾーニングエリアの運用など、イベントのあり方について考えさせられる側面もあり、今後のゲームマーケットがどのように進化していくのか、注目が集まる。
ゲームマーケット2025秋は、11月22日、23日の2日間開催。