秋山瑛との“黄金ペア”で挑む『かぐや姫』。快進撃を続けるファースト・ソリスト大塚卓が明かす、舞台上で「呼吸が合う」真実
大塚 卓 photo Shinji Hosono
2026年5月5日(火・祝)~5月6日(水・振休)東京文化会館 大ホールにて、東京バレエ団による『かぐや姫』全3幕が上演される。今回、本公演で主役の道児を演じるファースト・ソリスト大塚卓のインタビューが届いた。
「不器用だからこそ、できない理由が詳しく理解できる」大塚卓インタビュー
東京バレエ団の若手男性ダンサーの中でも、躍進目覚ましく、主役キャストとして目にすることが多くなった大塚卓。ファースト・ソリストとして『眠れる森の美女』『くるみ割り人形』で王子やヒロインの恋人役を演じてきた。
東京バレエ団の入団は2020年だが、6年の間に急成長を遂げ、最近ではプリンシパル・ダンサーの秋山瑛とのペアで数々の名演を披露している。千葉県出身の大塚がバレエを始めたのは5歳。2015年には奨学金を得てハンブルク・バレエ学校に留学し、その後 クイーンズランド・バレエ団で活動、その後東京バレエ団に移籍した。
大塚 卓 photo Shinji Hosono
「ハンブルク・バレエ学校にいたのは1年4か月でした。留学する必要性をあまり感じていなかったのですが、プロになるんだったらバレエの本場であるヨーロッパに一度行ってみて、本物を見てきた方がいい、という親のアドバイスを受けて留学を決めました。ローザンヌのコンクールにも出ましたが、当時は先生に「出なさい」と言われたから出たというくらいで、ぼんやりしているうちに気づいたら会場にいた(笑)。
バレエを始めたのは幼稚園生のときでしたが、僕は性格的にこつこつやり続けるのが好きで、おそらく研究職に向いていると思います。バレエもこつこつやってきただけで、出来ないことがあっても諦めるとかではなく、「これが日常なんだ」と続けてきて今があります。
最初から器用に出来るタイプではないので、すごく苦労した記憶があります。でも、不器用だからこそ バレエを習っていて最初に苦労する子たちの気持ちがわかる。例えば、自分が今この年になって後輩たちに何かを教えるとなったときに『なんで出来ないの?』ではなく、出来ない理由が詳しく理解できる。天才から教わると天才にしかわからない注意をされるんです.僕らにしてみると出来ていないことのほうが当たり前なんだけど、「出来て当たり前」という注意をされると、延々とわからなくなってしまうわけです」
こつこつ型で「結構理系の頭で物事を考えているかも知れない」と語る。クールな一面もあるが、クラシック・バレエでは情動的でドラマティックな演技もこなす。クランコ版『ロミオとジュリエット』で彼がロミオを踊り切ったとき、客席には嵐のような喝采が巻き起こった。
「ロミオ役は終わった後は心が空っぽになってしまいますね。喜怒哀楽が激しい作品なので、自分でもどう気持ちの整理をつけたらいいのかわかりませんでした。」
『かぐや姫』舞台写真 photo Shoko Matsuhashi
東京バレエ団がレパートリーとして上演するモーリス・ベジャール作品でも重要な役を踊り続けてきた。
「入団して2年目で『中国の不思議な役人』の役人を踊らせていただきました。音楽はバルトークで、キャラクター的にサイコパスの要素もある難しい役ですが、プレッシャーを感じる間もなくひたすら打ち込んでいました。三島由紀夫をテーマにした『M』では聖セバスチャンという重要な役を踊らせていただきましたが、『M』が初めてのベジャール作品だったら、全然できなかったと思います」
2024年に完全版が初演された東京バレエ団のオリジナル作品『かぐや姫』(振付/演出・金森穣)の5月の再演では、かぐや姫が愛する素朴な青年・道児を演じる。初演では「帝(みかど)」役だったが、今回はキャラクターも正反対で、主役級の大役の抜擢となった。相手役のかぐや姫は現在黄金ペアとして組むことが多いプリンシパルの秋山瑛だ。
「色々なダンサーと組んで踊るとき、相手との人間関係が踊りに影響するのは自然なことですが、秋山さんはそうしたことをすべて飛び越えて、舞台に立ったときのそのときの感覚が、呼吸やタイミングや表情となって直接表せる相手なんです。練習では前もって「ああしよう、こうしよう」という約束事があるんですが、それを考えすぎずに、舞台に立って初めて感じることを大事にできる。そういうことが出来るダンサーはとても少ないと思います」
『かぐや姫』リハーサル写真 photo Shoko Matsuhashi
相手役の秋山瑛いわく「彼は情熱の塊。パッション・ダンサー」。技術が完全に身体に入った後は、細かく細かく色々な要素を掘り下げていく。ディスカッションを重ねる労を惜しまないという点でも、秋山・大塚ペアは似た者同士だ。
『かぐや姫』リハーサル写真 photo Shoko Matsuhashi
「踊りとして最低限のテクニックは必要で、いくらストーリーに没頭できてもグラン・パ・ド・ドゥで失敗したらお客さんを失望させてしまう。そこは外してはいけないし、可能な限り完璧に仕上げて臨みます。その上で、自分が踊っていない空白の時間も、お客さんを現実に戻してはいけないと思う。舞台に立っていないときも、他の人によって作品は続いているので、いかにお客さんをこちらの世界に引きとどめておけるか、踊り以外の部分のいわば穴埋めの作業を大事にしています。一番大変で、一番重要な作業です」
大塚 卓 photo Shinji Hosono
休日は家で過ごすことが多く、家の中が好き、と語る。
ふだんは秘めて人に見せない心も、舞台ではすべて見せているタイプのダンサーで、こういう人はどんな役もこなしてしまう。情熱家でありつつ、舞台全体を俯瞰して見るクールな視点も感じられた。
テキスト:小田島久恵 衣裳協力:HARE / アダストリア
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2023年10月、30年ぶりのオリジナル全幕作品として世界初演を果たし、絶賛を浴びた本作が、再び東京文化会館の舞台に舞い降りる。本公演は東京文化会館の休館前最後の公演でもあり、金森穣×東京バレエ団が贈る壮大で詩情豊かなフィナーレとなる。なお、本公演の後、『かぐや姫』は世界を魅了するために、ヨーロッパに向け旅立つ。
公演情報
東京バレエ団『かぐや姫』
東京バレエ団
『かぐや姫』全3幕
2026年
5月5日(火・祝)13:00/18:30
5月6日(水・振)14:00
上演時間:約2時間40分(休憩 2回含む)
音楽は特別録音による音源を使用します
演出振付:金森 穣
衣裳デザイン:廣川玉枝(SOMA DESIGN)
木工:近藤正樹
映像:遠藤 龍
照明:伊藤雅一(RYU)、金森 穣
演出助手:井関佐和子
衣裳製作:武田園子(Veronique)
■キャスト
5月5日(火・祝)13:00
5月6日(水・振)14:00
道児:大塚 卓
影姫:沖 香菜子
帝:池本祥真
翁:岡崎隼也
■キャスト
5月5日(火・祝)18:30
道児:柄本 弾
影姫:金子仁美
帝:生方隆之介
翁:岡崎隼也
S:¥16,000 A:¥13,000 B:¥10,000 C:¥8,000 D:¥6,000 E:¥4,000
※クラブ・アッサンブレ会員は、S~E の各席種1割引。
5歳以上、入場可 ※4歳以下のお子さまはご入場いただけません。