『惰性クラブ』川島如恵留インタビュー 宮崎弁による濃密な会話劇は「観た後にはきっと気分が晴れる」作品に
川島如恵留
Travis Japanのメンバーとして全世界配信デビューを果たし、世界を舞台に活躍する川島如恵留が主演、松本哲也による新作書き下ろし作品『惰性クラブ』が2026年6月8日(月)から上演される。作・演出を務める松本は、宮崎弁による濃密な会話劇で注目を集めてきた劇団「小松台東」の主宰。本作では、夢を語るでもなく、かといって諦めきることもできない若者たちが、何もしないために来る場所『惰性クラブ』を作り、静かな日々を過ごす中で、そこに小さな変化が生まれる様子を描く。川島は、『惰性クラブ』のメンバーで、一度は夢を抱いて東京へ出るも、志半ばで挫折し、地元へ戻ってきた青年・山崎直哉を演じる。
2025年には『すべての幸運を手にした男』で舞台初単独主演を務め、俳優としても注目を集める川島に本作への意気込みと舞台への思いを聞いた。
ーー最初に脚本を読まれたときの印象を教えてください。
すでに台本は繰り返し読ませていただいていて、今、(物語を)落とし込んでいる最中です。何か大きな事件があって、それをみんなで解決していくような物語ではなく、日常の中で誰にでも起こりうることを描いています。惰性で生きてきた自分を想像して、こういう人生があったかもしれないと感じられる作品だと思いました。僕は、こうした作品が大好きなんですよ。すごく面白い。なので、この面白さを早くきちんとした形でお届けしたいと強く思っています。
ーー大好きな作品ということですが、具体的にどんなところが心に響きましたか?
もし、自分がマイナスな状況に直面したら、否定したり、訂正したりすると思いますが、直哉をはじめとした本作の『惰性クラブ』のメンバーは突っかかっていかないので、「なんで言わないの!?」というもどかしさを感じます。でも、そのもどかしさがすごく演劇的で、好きなんですよ。性格の良い役者さんが極悪な役を演じていたらものすごく感動しますよね。例えば、そういう「これがお芝居だ。これが演劇だ」っていう瞬間。僕は、それこそが舞台の良さで、役者さんや演出の凄さだと思っています。今回、台本を読んで、それと同じようなお芝居になると想像できたので、絶対に面白くなるという確信があって。そのもどかしさを、この『惰性クラブ』でも感じていただけたらいいなと思っています。
ーーそうしたもどかしさを作り出すという意味でも、間(ま)が大事になってくる作品ですよね。
そうなんですよ。直哉のセリフは、「…」がすごく多いんですよ(笑)。ここではどういう表情をするんだろう、ここはどう感じているんだろうと、今、読み解いている最中です。松本さんがこれだけ「…」をわざわざセリフに入れているのは、何かを伝えたいからだと思うので、その理由を深掘りしていくのが今、すごく楽しいです。
ーー『すべての幸運を手にした男』に続いて、東京グローブ座で主演を務めることへの思い、そして改めて今、感じている舞台の魅力を教えてください。
主演作品を2作連続で東京グローブ座で上演させていただけること、そして今回は梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティでもさせていただけることは、本当に幸せだなと思っています。昨年、東京グローブ座に立たせていただき、素敵な劇場だと感じましたし、お客さまにも喜んでいただけたという手応えがありましたので、もう1度ステージに立たせていただけることが本当に嬉しいです。
もちろん作品も違いますし、カンパニーも違うので、前回の作品とはまた違う色になると思いますが、舞台に対するワクワクは変わりません。劇場に足を運んで椅子に座って幕が開くのを楽しみにしてくださるお客さまの熱いお気持ちを、今回も感じたいと思っています。お客さまの熱量を感じられるのが舞台の良さでもありますし、熱量や愛、作品の魅力を届けられる俳優でありたいです。
川島如恵留
ーー川島さんが演じる直哉という人物について、どのようなところを意識して演じたいと考えていますか?
直哉は、惰性でなあなあに生きていますが、実は抗って生きてきた強さも持っているのではないかと、今の時点では思います。いろいろなことに挑戦してきたけれども、挫折したり、諦めたりしたことが一種のコンプレックスとして残ってしまい、惰性で生きるという選択をした。「選択をした」のなら、それは惰性で生きているわけではないのかもしれませんが、傍から見ると惰性で生きているように見えてしまうんですよね。何か薄いモヤが目の前にかかったまま、人生を歩んでいるのかなと思います。そんな直哉が今、すごく愛おしいです。きっと世の中にも頑張ってきたはずなのに、タイミングが合わなくて報われなかったりした経験のある方はたくさんいらっしゃると思います。僕もそうした経験があります。ただ、僕はいろいろな人の力を借りて、それを乗り越えて、前を向くことができた。直哉は周りと自分を切り離して考えてしまったので、前を向くことができなかった。だからこそ、背中を押してあげたくなりますし、そこが直哉のかわいさでもあると思います。強くもあるし、弱さも持っているかわいいやつなので、そのもどかしさをきちんと表現できたらと思っています。
ーー今回、セリフは全編、宮崎弁です。音源を聞いて勉強をしている最中だと思いますが、宮崎弁はいかがですか?
今(取材当時)、音声データをいただいてから1週間ほど経ちますが、初めて聞いたときは驚いてしまって、うまく入ってこなかったです。最初にいただいた台本は標準語で書かれていたので、どんな内容を話しているのかは分かっていたのですが、「今、なんて言ったんだろう?」というところがたくさんあって。松本さんが全キャスト分をご自分で吹き込んでくださったのですが、何度か聞いて、慣れてきたら意味が分かるようになってきました。英語のアルファベットが分からずに読むのと、分かって読むのでは違いますよね? それと同じような感覚でした。きっとお客さまの中には、1回だけ観に来られる方もたくさんいらっしゃると思うので、その1回の観劇で言葉の意味をきちんと伝えないといけないなと思います。それは、表情や動きでも表すことができると思うので、皆さんにストーリーをきちんと伝えられるように精進していきたいと思いました。僕が宮崎弁を話すことに違和感を感じてもらいたくないので、日常でも宮崎弁を話せるところがあれば、どんどん出していきたいと思っています。
ーー今回、出演が決まって、Travis Japanのメンバーやお友達などからどんな言葉がありましたか?
メンバーとは舞台が決まるとお互いに連絡を取り合うのですが、今回はみんなで一緒にいるときに発表ができたんです。「決まったんだよね」と言ったら、すぐにブログに書いてくれるメンバーがいたり、「如恵留っぽくない舞台で面白くなりそうだね」と言ってもらえて、ありがたかったです。家族からは「どんな舞台なの? 歌うの? 踊るの?」とまず聞かれたので、「ストレートプレイだよ」と伝えたら、「お芝居なんだね、楽しみだよ」と言ってもらえて。立たせていただく劇場のことや作品の内容についても楽しみだという言葉が多かったです。今回は、「主演おめでとう」ではなく、(主演として立たせていただくことが)「如恵留にぴったりだよ」という別の意味の「おめでとう」をたくさんいただきました。
ーー演出の松本さんとはこれまでどんなお話をされましたか?
初めてお会いさせていただいたのは、松本さんが出演されていた舞台『観測地』という作品を観に行き、終演後にご挨拶をさせていただいたときです。この『惰性クラブ』は、僕は黒髪で出演するつもりだったんですよ。今は、コンサート用に金髪にしていますが、どこかのタイミングで黒髪に戻すつもりだったんです。ですが、松本さんが「金髪の感じもいいね。如恵留くんのあっけらかんとしている感じが出ていい。そのままでいてください」と言ってくださったんですよ。もしかしたら、松本さんの中の直哉像が変わったのかもしれませんし、逆にピッタリだったのかもしれません。それは次にお会いしたときにお伺いしようと思っています。
お会いする前は緊張していましたが、(そうしたやりとりがあったこともあり)次にお会いしたときには、どこかパパのような存在に感じられて、心地よい空気がありました。きっと現場でもいろいろなお話ができるのではないかと思います。松本さんは宮崎出身の方なので、稽古場で宮崎弁でやりとりできるくらいになれればいいですね。松本さんの人の良さが感じられる、柔らかさや温かさがある、いい現場になりそうだなと楽しみです。
ーー『惰性クラブ』のメンバーである順平役の広田亮平さん、和希役の富田健太郎さん、梨奈役の金澤美穂さんとは、すでにお会いしていると聞いています。皆さんの印象を教えてください。
まだ一緒にビジュアル撮影をしたくらいで、他愛もない話しかしてないんですよ(笑)。他のキャストさんとはご挨拶もまだです。なので、これからお話するタイミングがあったときに、「あのときは初々しい会話をしたよね」って話をしようと思っています(笑)。(『惰性クラブ』のメンバーを演じるキャストたちは)同年代ではありますが、俳優としては先輩ですから、これからどういう関係性が育っていくのか楽しみです。中村まことさんとは音楽劇『A BETTER TOMORROW -男たちの挽歌-』で共演させていただいていますし、佐藤 達さんとは初共演ですが、先日、南海キャンディーズのしずちゃんさんとお仕事をさせていただいて、そのときに「旦那がお世話になります」と言ってくださったりと、どこかしらで繋がりのある方が多いので、ワクワクしています。稽古場での休憩時間などを使って、皆さんとコミュニケーションを取っていきたいです。稽古期間中に2回はご飯に行きたいと思っています。
川島如恵留
ーー今、この作品に向けて準備していることはありますか?
今、僕たちTravis Japanは『けるとめる』というサッカーをテーマにしたテレビ番組をさせていただいているんですよ。直哉はサッカーをしていたという設定なので、サッカーの練習は続けていきたいです。今、番組である技ができるように、毎日、家でリフティングを練習しているんです。この作品のためにもリフティングを続けようと思っています。
それから、直哉は父親の仕事を手伝うことになるんですが、その父親は電気工事士なんですよ。実は、僕自身も第二種電気工事士の資格を持っているんです。これまで続けてきたものが作品の中でいろいろと結びついていくのが、不思議で面白いですね。電気工事士の仕事についても、改めて復習をしたいと思っています。
ーー直哉という役を演じる上で「惰性」について深く考えていらっしゃるのかなと思いますが、川島さんご自身にとっては「惰性」とはどういうものですか?
出演を発表したときのコメントにも「『惰性』とは程遠い人生を歩んできたつもり」と書かせていただきましたが、僕自身は変化や挑戦が好きなんです。アグレッシブにどんどん変わっていこう、成長していこうとする生き方を選んできたので、惰性とは違う生き方をしてきたつもりです。だからこそ、「惰性」が分からなかったので、今回、たくさん調べました。ネガティブな印象のあるワードかもしれませんが、「惰性」そのものは決して悪いわけではないと僕は思います。無理に力まない生き方だと、ポジティブな捉え方もできます。僕の生きてきたこの31年間の歴史の中では、たまたま触れてこなかっただけで、もしかしたら、「しばらくは頑張ったときの力に乗って滑ってみる」ということかもしれない。そうした脱力の良さをこの『惰性クラブ』という作品から感じられるのではないかと思います。
ーーありがとうございました! 最後に、公演を楽しみにされている方にメッセージをお願いします。
もどかしさや、ちょっとした切なさといった感情の小さな爆発が続く作品なので、観た後にはきっと気分が晴れるのではないかと思います。ぜひ劇場で『惰性クラブ』を楽しんでいただけたらうれしいです。
ヘアメイク:natsume(JOUER)
スタイリスト:日夏(YKP)
衣装:Noen
問い合わせ先
Noen:support@noen.life
取材・文=嶋田真己 撮影=福岡諒祠
公演情報
川島如恵留
富田健太郎
金澤美穂
見津 賢
瑞生桜子
佐藤 達
村田秀亮
那須佐代子
【東京公演】
日程:2026年6月8日(月)~28日(日)
会場:東京グローブ座
お問い合わせ:東京グローブ座 03-3366-4020
日程:2026年7月3日(金)~5日(日)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
お問い合わせ:キョードーインフォメーション 0570-200-888(12:00~17:00 ※土日祝休業)
主催・企画製作:東京グローブ座