ダンスカンパニーDAZZLEの長谷川達也&飯塚浩一郎に聞く~結成30周年記念公演『花ト囮 -露-』で新境地へ
DAZZLE(左から)長谷川達也、飯塚浩一郎
DAZZLE結成30周年記念公演『花ト囮 -露-』HANA to OTORI -arawa–が2026年7月2日(木)~12日(日)あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)で開催される。DAZZLE(ダズル)は1996年に結成されたダンスカンパニーで「すべてのカテゴリーに属し、属さない眩さ」をスローガンに掲げ、国内外で多彩に活躍してきた。その彼らが結成30周年を迎え、伝家の宝刀ともいえる代表作に今現在の視点から新たに挑む。主宰で作・演出を務める長谷川達也、クリエイティブディレクターの飯塚浩一郎に、公演に賭ける思いを聞いた。
DAZZLE結成30周年記念公演『花ト囮 -露-』HANA to OTORI -arawa–
■独自のスタイルを追求してきた30年
ーー30周年おめでとうございます。DAZZLEは「ストリートダンスとコンテポラリーダンスを融合した世界で唯一のスタイルを追求し、映 画・コミック・ゲームなどのジャパニーズカルチャーの要素を積極的に取り込んだ物語性の強い作品を創り上げている」と標榜されています。今あらためてダンスを軸に表現することについてどう感じますか?
長谷川達也(以下、長谷川):ストリートダンスの世界で、自分たちだけのスタイルを生み出したいと願ってきました。ダンスの技術を高めること、すなわちダンサーがダンサーのためにダンスを踊るのではなく「ダンスを通して、どんな感動を生み出せるのか」という価値観を大切にしてきました。DAZZLEの特徴は物語性だと考えています。そもそもダンスは物語を表現するのに適していないと思いますが、物語があることによって多くの人が楽しめる可能性が広がります。物語性と言葉にできない感動を生み出すダンスの力を融合できないかと探ってきました。
この10年、20年の間にダンスの魅力は広がりました。舞台でもテレビでも、SNSでも、テーマパークでもダンスを見ない日はないくらい。しかし、SNSで流れてくる動画に接すると、世界中の素晴らしいダンサーの存在を知る喜びと同時に、高い技術がもの凄く早く消費されているのではないかと不安を覚えます。ダンスの価値は高まったのだろうか、果たしてこれでいいのだろうか。そうした中、舞台としてのダンスをじっくりと観る機会にこそ価値があると伝えたいです。
長谷川達也
飯塚浩一郎(以下、飯塚):僕もストリートダンスからダンスのキャリアを始めました。ストリートダンスの本質からすると「その人らしいことをやる」のが一番かっこいい。そこを追求するにはダンス的にもオリジナリティが大事です。ですが、ストリートダンサーの多くが必ずしもオリジナリティを追求しているようには思えない部分もあります。その点、DAZZLEが今では一見ストリートダンスではないように見えているとしても、意外にストリートダンスダンサー魂をコアに持ったままずっと走り続けているのではないかという感覚を持っています。
ーーDAZZLEは2017年以降、各地でイマーシブシアター(体験型公演)に取り組み、好評を博し、ロングランも重ねました。劇場公演ではなくそこに向かった経緯とは?
飯塚:イマーシブシアターはDAZZLEの良さをより表現しやすいアートフォームです。空間表現を考えて踊ることや表現の緻密さがDAZZLEの強みだとすると、イマーシブシアターには無限の可能性があります。「人がどのように物語を体験するのか」という観点から始めるので、作り込みが無限にできます。長谷川は物語を考え、そこにタイミングを合わせ美術や音楽を取り入れていく演出が得意なので、その結果、支持され続けてきたのではないでしょうか。
飯塚浩一郎
ーー近年活動を続けるうえで苦心してこられた点は?
長谷川:やはり大きな変化はイマーシブシアターでした。自分たちの表現が拡張される中で常設の小屋を構えられたのは格別で、通常の劇場ではできない演出が可能になりました。運営は簡単ではないですが、コロナ禍でも一日も休まず約1年間ロングランを続け自信になりました。苦しい時期でしたが、多くのパフォーマーたちと知り合い、表現を磨き合った経験は貴重です。
飯塚:現代に生きる僕たちは、今の時代の人々に対してしかパフォーマンスできません。現代の人間の感覚の変化と対峙せざるを得ないんですよね。今は以前よりもはるかに未知なるものを楽しむ感覚を失くし、分かりやさが求められます。そこではアート性をどう残すのかが課題です。もし分かりやすくすれば、もっと多くの人々に見てもらえるのかもしれませんが、そうすればどんどん消費されてしまう。僕たちは、伝えたいことをきちんと入れることはもちろん、アート性がありつつエンターテインメント性も備えたバランスを常に考えてきました。そのさじ加減が難しいです。
(左から)長谷川達也、飯塚浩一郎
■みずからの金字塔に今一度挑む真意とは
ーー30周年公演で『花ト囮 -露-』を上演します。『花ト囮』は和の要素が取り込まれた幻想的かつ鮮烈な作品で、2009年の初演以来再演を重ね、シビウ国際演劇祭(ルーマニア)に招聘されたほか国内外で披露してきました。今回、あらためて上演しようと思われた理由とは?
長谷川:DAZZLEの歴史と切っても切り離せません。活動の半分以上が『花ト囮』と共にあったといっても過言ではなく、抜粋を踊る機会も幾度もありました。我々を成長させてくれ、さまざまな場所に連れていってくれた作品だからこそ30周年を迎えもう一度やろうと。今の時間軸で何ができるのか。挑戦したい思いがあふれてきました。
飯塚:その時々のDAZZLEの表現が現れる作品です。毎回再演と言いつつも変化・進化し、自分たちの表現も変わってきました。今だったら何ができるのか。僕たち自身も楽しみにしています。
ーー「作品の根幹はそのままに、新たな演出手法と構成によって再構築」すると謳われていますが、どのようにリメイクされるのですか?
長谷川:各場面のクオリティを上げるだけではなく、何を削り何を追加するのか。脚本に関しても振付としても、そこが変わります。それから『花ト囮』のポイントは舞台美術です。障子を自分たちの力で動かすのですが、空間をあらゆる形で変化させていく点が大きな魅力だと感じます。そこが海外で評価をいただいた理由の一つではないでしょうか。もはやダンサーが主役なのか、障子が主役なのか分からない(笑)。空間を変化させる転換力を極限まで追求していますが、さらに詰めます。別の道具や技術を加え、より複雑・緻密に状況を作り挑戦します。
飯塚:12年前に前作を上演した際にはイマーシブシアターをやっていなかったので、今回は空間に対する意識が今までとは全く違います。イマーシブシアターでは、いろいろな部屋をめぐりますが、『花ト囮』でも長谷川が言ったように自分たちで舞台美術を動かしながら空間を生み出しダンスが展開します。今回はイマーシブシアターで得た、それぞれの空間だからできるダンス表現の魅力を舞台で表現する形になるでしょう。イマーシブシアターを続けながら劇場公演に戻ってくる団体は海外でもなかなかないので、そうした蓄積も舞台に現れるのではないかと考えています。
飯塚浩一郎
■総合舞台芸術としての新たな可能性に注目
ーー今回「露(あらわ)」という副題が付いていますが、その意味するところは?
長谷川:『花ト囮』は水に関わるシーンを含みます。晴れているのに降る雨、すなわち「狐の嫁入り」があって「霧の屋敷」のエピソードもあります。水にまつわる物語に新たに加える言葉となったときに「露(つゆ)」が出てきました。それと、この作品のテーマとして「人は分かり合えるのだろうか」があります。人間の心の中を露わにするこの作品の美しさと人間の残酷さをより表現していきたいので、この言葉を付け加えました。
飯塚:『花ト囮』という題名の中に「化ける」という字が「花」にも「囮」にも入っています。現代人はSNSなどである種のうっすらとした嘘を付きながら生きていて、本人も「本当は違うな」と気付いているし周りもそう思っているのではないでしょうか。この作品では人間の内面から露悪的な部分が隠しきれずにじみ出てきます。「そういう感情はあるよね」と重ね合わせていただけるかもしれません。
ーーほかに何か本質的な部分でこだわっている点はありますか?
長谷川:イマーシブシアターを経験したことによって、物事を伝える力が強くなっていると感じます。舞台で表現する距離感はイマーシブシアターと異なりますが、舞台表現だからこそ見える芸術性、引きで見るからこその空間の使い方はより洗練されてきました。物事を伝えるのに適してないであろうダンスを使って、どのように人の心を動かすか。物語を伝える技術は磨かれてきたので、それを舞台でいかに伝えられるのかを確かめたいです。
ーー公演に向けて意気込みをお聞かせください。
長谷川:ダンス公演ではあるけれどダンスで完結しようとは思っていません。物語があって、音楽があって、ファッションがあって、空間があってというように、さまざまな要素が融合した総合芸術です。僕自身が舞台を観て感動するのは、その人の人間力というか、エネルギーにふれたときで、動画では得られない波動を感じます。それはあらゆる知識を全部乗り越えて空間に存在し、ステージ上のパフォーマンスをただ見るだけで心が震える感覚を生み出します。その瞬間に立ち会えることをお約束できるので、ぜひ体験していただきたいです。
長谷川達也
飯塚:ダンスカンパニーは基本的に時が経つとダンサーが入れ替わりますが、DAZZLEは長谷川を中心にほぼ変わらないまま30年やってきました。DAZZLEにしか見せられない、積み重ねた時間があったからこそできる表現があると自負しています。近年は日本ではアート性がある作品がダンスでは減っているように感じます。何か問いを投げかけたり、新しい視点を提供したりすることによって、人の生き方や指針が変わる可能性があるものこそ芸術です。それを舞台上で真剣にやる姿にふれていただけると、今までとは違う衝撃を感じていただけるのではないでしょうか。ご覧いただければ幸いです。
ヘアメイク:Mashino
スタイリスト:杉山朱美
<衣裳クレジット>
セットアップ:DRESSEDUNDRESSED
シャツ:SEVEN BY SEVEN
取材・文=高橋森彦 撮影:清水隆行
公演情報
■会場:あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)
■クリエイティブディレクター:飯塚浩一郎(DAZZLE)
■振付・出演:DAZZLE ― 長谷川達也、宮川一彦、金田建宏、荒井信治、飯塚浩一郎、南雲篤史、高田秀文、三宅一輝
■出演:永森祐人、橋本有一郎、福島由羅、本橋侑季、山本幸輝、中込萌
一般席:11,000円
学生席:5,500円 *公演日当日ご入場時に学生証の提示が必要です。
DAZZLE席:14,500円 前方2列目まで、ランダムポストカード付き
※車いすをご利用の方は一般席、学生席エリアに設けられます。一般席、または学生席をご購入の上、キョードー東京
※営利目的の
※出演者変更による
※開演時間を過ぎてご到着された際は演出の都合上、指定の時間まで入場をお待ちいただきます。
キョードー東京 0570-550-799(平日11:00〜18:00 / 土日祝10:00〜18:00)
主催:キョードー東京、キョードーファクトリー
<アフタートーク>
■7月5日(日)17:00公演 終演後
登壇:長谷川達也、金田健宏、飯塚浩一郎、三宅一輝
登壇:長谷川達也、宮川一彦、飯塚浩一郎、南雲篤史
登壇:長谷川達也、荒井信治、飯塚浩一郎、高田秀文
※アフタートークは終演後、準備が整い次第開始いたします。
※登壇者は変更となる場合がございます。予めご了承ください。
※所要時間:約20分予定
日時:2026年7月11日(土)19:00開始(18:45開場)
登壇者:DAZZLEメンバー
(長谷川達也、宮川一彦、金田健宏、荒井信治、飯塚浩一郎、南雲篤史、高田秀文、三宅一輝)
ゲスト:先崎康弘
受付:キョードー東京
※登壇者は変更となる場合がございます。予めご了承ください。
※所要時間:約1時間弱予定