渡辺大「まさかこんなに早くできるとは」~サスペンス劇、舞台『罠』でダニエル役に再び取り組む思いとは
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渡辺大
1960年にフランスで初演されたロベール・トマ作の『罠』は、わずか6名の登場人物の騙し合いや駆け引き、スリリングな展開に客席が沸く人気作である。
新婚3ヶ月のコルバン夫妻は山中へバカンスに訪れていたが、そこで妻のエリザベートが行方不明になってしまう。夫のダニエル(渡辺大)から捜査を依頼されたカンタン警部(上川隆也)は、夫婦の身辺調査を重ねていく。そこにマクシマン神父(財木琢磨)に付き添われ戻ってきたエリザベート(藤原紀香)は、失踪した妻とはまったくの別人だった――証人として現れた絵描きのメルルーシュ(藤本隆宏)や看護師のベルトン(須藤理彩)を巻き込み、誰もが思いもよらなかった真相が明らかになる。
2024年に「読売新聞創刊150周年記念舞台」として上演された深作健太演出版は評判を呼び、毎公演完売の大盛況となった。自身にとって大きな転換点になったというダニエル役に再び取り組む渡辺大に話を聞いた。
ーー再演が決まったときはどのように思われましたか。
40代に入ってからこの舞台をやり切ったことが大きな自信になったので、またいつかやれたらいいなと思っていました。まさかこんなに早くできるとは思っていなかったため、とても楽しみです。ワクワクとドキドキが入り混じっています。
ーーお客様の期待をどのように受けとめていらっしゃいますか。
前回は本当にご好評いただいて「面白かった」「もう一回見たい」「どこで何がどうなってたんだろう」と言ってくださる方が多かったんです。皆さん真剣に、謎解きしながら観入ってらっしゃいました。これから初めてご覧になる方には、作品のインパクトを感じていただきたいですね。
渡辺大
ーー各地の公演で反応の違いはありますか。
東京は公演回数が多いですが、公演数が限られている地方では「この日しかないんだ」と、いいお召し物を着て楽しみにいらっしゃる方が多かったです。そういう様子を見ると、やることは一緒なのですが気合いが入りますね。
ーーダニエルを演じられていかがでしたか。
稽古を進めるうちに体が思い出してくると思うのですが、台詞と段取りが多く、決まりごとを押さえておかないと後々繋がらないのがこの作品の難しいところです。出演者のみんなで動きや台詞の意味を汲み取り、まるで組み手のように何回も同じことを繰り返しながら稽古をしました。開演前に袖で待機している時間が一番怖いんですよ(笑)。ただ、いざ始まるとその場その場を必死で生きていかなければならず、何があっても突っ走るしかないのであっという間に時間が経ってしまいます。共演のみなさんが百戦錬磨で、何か起きても誰かがカバーしてくれたので大きなミスはなかったです。一回も集中が切れなかったですが、終わった後はヘトヘトでしたね(笑)。
ーーダニエルとしてどのような気持ちでこの物語に向き合いましたか。
難局が降りかかってきているなか「なんてことに巻き込まれたんだ」と思いながら、最後の最後まで自分を信じて行動しました。他の登場人物と物語に身を任せ、思ったことを本気で吐露していけば観る方に納得してもらえる。それがこの作品の面白さなんです。
ーー翻訳劇に取り組まれたのも初めてのご経験でした。
日本語に翻訳されても取り組みやすい作品でしたね。どこの国で上演されても、どの世代の人でも分かるようにできているのでしょうね。
ーーベルトン役が須藤理彩さんに変わるほかは、すべて同じキャストで再演を迎えます。
舞台の再演は初めての経験なのでまったくイメージがつきません。他の出演者の方々が数多く舞台に出ていたなか、前回僕はまだ3本目で経験が浅かったんです。みなさんがサポートしてくれたから作品が成立したのだと思います。新たに須藤さんが入られることで味付けが変わるだろうし、僕も含め前回一緒だったキャストの皆様も、この2年間の肉体や思想の変化が鏡のように映し出されるのではないかと思います。
渡辺大
ーーダニエルは、上川隆也さん演じるカンタン警部と激しい応酬を繰り広げます。初演のときは上川さんからいろいろなことを学んだそうですね。
テクニカルな部分や舞台上での見せ方を教えていただきました。ダニエルとカンタン警部の「対決」は、作品を成立させるうえでの「共闘」と捉えることもできるでしょう。逃げ場のない中一本勝負をやりきったことで、気持ちが楽になりました。「どんな作品でもぶつかっていける」という心の余裕ができたんです。
ーー藤原紀香さん演じるエリザベートは、ダニエルと腹の探り合いをします。
紀香さんは最初別作品の本番があり後から入ってこられたのですが、ほぼ台詞を入れてらっしゃってすごかったです。彼女に引っ張っていただきながら稽古を重ねました。
ーー演出の深作健太さんとはどのようなやりとりがあったのでしょう。
深作さんは出演者を信頼し尊重してくださる方ですが、ところどころ大事なことを言ってくださりありがたかったです。この場面でこの役が何を思っているのかヒントを与えてくれたときは、その答えを探しながら演じました。
ーー渡辺さんは舞台と映像、どちらも精力的に取り組まれています。
舞台で学んだ見せ方や表現の方法は映像でも通じるし、映像のそれを舞台で使うこともできます。違いと共通項がちょっとずつ分かってきたので、バランスよく混ぜ合わせてハイブリッド化していくことが楽しいですね。
渡辺大
ーー今後はどのような役を演じてみたいですか。
新しい作品に巡り合うと自分の引き出しから役を探します。どんな役でもやってみたいし、やっていて楽しいんです。そこに年齢や人生、立場が加味されていくと思います。年齢を重ねていくことを楽しみながら、やれる役に挑戦していけばいいかなと考えています。役に出ている自分の色を見ていただき、そのグラデーションで「渡辺大はこんな俳優なんだ」と分かっていただきたいですね。
ーー最後にお客様に向けてお誘いの言葉をお願いいたします。
今回も休憩なしの2時間です。退屈なところは一つもないほど猛スピードで、最初から最後までピークという感じで駆け回ります。おそらく観る側も緊張が走るのではないかと思いますが、その緊張を楽しんでほしいですね。前情報がなくても必ず面白い作品ですから、損はさせないです。前回観に来られた方も、また違う角度から2026年版の『罠』を楽しんでください。
衣装
スーツ ¥300,300(ラルディーニ)
シャツ ¥41,800(ジャンネット/ともにトヨダトレーディング プレスルームTEL(03-5350-5567)
その他(スタイリスト私物)
取材・文=深沢祐一 撮影=iwa
公演情報
【作】ロベール・トマ 【翻訳】 平田綾子
【演出】深作健太
【出演】上川隆也 藤原紀香 渡辺 大 財木琢磨 須藤理彩 藤本隆宏
■東京公演
日程・会場:2026年6月6日(土)~26日(金) よみうり大手町ホール
日程・会場:2026年6月28日(日) 中津文化会館
日程・会場:2026年6月29日(月) 福岡市民ホール 大ホール
日程・会場:2026年7月1日(水) レクザムホール(香川県県民ホール) 小ホール
日程・会場:2026年7月2日(木) あわぎんホール(徳島県郷土文化会館)
日程・会場:2026年7月4日(土)・5日(日) 森ノ宮ピロティホール
日程・会場:2026年7月7日(火) 水戸芸術館 ACM劇場
日程・会場:2026年7月9日(木) 新潟県民会館 大ホール
【主催(東京公演)】 読売新聞社・日本テレビ
【企画・製作】 日本テレビ